フレームアームズ・ガール 轟雷の活動日誌   作:姉川春翠

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 轟雷です。今回、マスターががっつり喋ります。本当はマスターは一切喋らない形態を取りたかったのですけど、すみませんが今回の話、私の技量では無理でした。あとなんか話もぐだぐだです。
 そんなわけですので、これから時折マスターも喋る話が出てきますのでご理解のほどをお願いします。
 では、本編をどうぞ。


第五夜 初めての映画館

 

 七月二十三日、火曜日。この日、一日休みだったマスターは、今日もぐーたらと過ごしていました。

 その夜のこと。他の皆さんが寝静まり、私も眠りに入ろうとしていた時です。突然、マスターが私を掌に乗せて、顔の位置まで持ち上げました。

 

「おう轟雷、明日映画観に行くぞ」

「どうしたんですか突然。あれですか、彼女いないけど女の子と映画観にいきたいとかそんなんですか?」

「そうそう。もう生まれてこの方彼女がって違うわ!」

 

 絵に描いたようなノリツッコミをするマスター。面白いかと言われると、正直つまらないです。

 しかし映画とは。映画館に行くのははじめてなので、少し楽しみですね。

 

「それで、なにを観に行くんですか?」

「ん? これ」

「えっ……これですか?」

 

 マスターはそう言って、映画の告知の紙を私に見せます。その映画が映画なもので、思わず私は息を飲みます。

 

「マスター、これって……」

 

 その映画とは、私たちフレームアームズ・ガールを取り上げたあのアニメの劇場版作品。ここまで言えばわかるはず。そう。『フレームアームズ・ガール きゃっきゃうふふなワンダーランド』です。

 

「……これって、マスターもう六回くらい観てませんでした?」

「うん、観たな」

「しかも最初はプリムさんと。その次はローズさんと。さらにその次はクラウンさんと観たやつですよね?」

「おう。そこからさらにみんなで三回ブルーレイ視聴したな」

「どんだけ好きなんですかマスター」

 

 いえ、その素晴らしさは私もよく知ってます。一回だけ起動してから皆さんと観ましたからね。特に源内あおの轟雷の可愛さと言ったら、声も相まって最高に可愛かったですし、スティレットも可愛かったですし、いやもうみんな可愛くて堪りませんでしたけども。

 だからと言って、さすがにそう何度も観たいとは思わないってこともなく、私も何度も見てもいいんですけど。作品の内容が内容だけに、果たして本当に私なんかでいいんだろうかという思いが。

 

「あの……なんでですか?」

 

 マスターが「なにが?」と首を傾げます。

 

「だって、私まだ起動してから一週間ほどですよ? そんな私が映画館でマスターと一緒にこの作品を見ていいものか」

「いやいいに決まってるだろ。それとも嫌か?」

 

 嫌なわけがないです。だって私もなんだかんだマスターのこと気に入ってますし、映画館は行ったことがないですし。

 

「その……いいんですか?」

「いいって言ってるだろ?」

 

 というわけで私は翌日の七月二十四日の水曜日に、マスターの職場について行ったのです。

 さすがに仕事場にまではいけませんので、私は車の中で待機です。

 マスターが帰ってくるまで、私は色々と考えました。その主な内容は、マスターにとって私はどういう存在なのかということ。

 マスターは私を、ガールの案内役に抜擢しました。それがただの気まぐれからのものであるというのは私もよくわかっています。それでも、マスターに特別な役割を与えられたというのは嬉しかったです。

 けれど、以降私はガールの皆さんに何かしてあげたことはあっても、マスターに何かをしてあげたことがありません。

 私はマスターにも何かをしてあげたい。

 

「マスターはどう思っているんでしょうか……?」

 

 思わず、考えていたことを口に出してしまいます。

 それから数時間して、マスターが車の中に帰ってきました。

 今回は私との映画を見るということで、なんとか残業無しにできたご様子。いつもは残業で帰りが遅かったりするんですけど。

 そんなわけで私とマスターは、職場から家への帰り道の間にある映画館にやってきました。

 ここは映画館だけでなく、いわゆるショッピングセンターですので、ほかにも色んな店があります。そのため、映画までの時間を潰すために店の中を見て歩くことにしました。

 私はマスターの肩に乗って、店内を眺めます。どこを見ても、カップルと思わしき男女ばかり。ガールと一緒にいるのなんて、マスターくらいなものです。まだガールは浸透していませんからね。一応視線は感じますけども。

 そう考えると、今の私たちもカップルということになるのでしょうか。いやいや、私マスターとそんな関係になりたいわけじゃないですし。なりたいのはクラウンさんで十分でしょうし。いや、好きか嫌いかで言ったら――。

 

「腹減った。なんか食いに行こう」

「へ? あ、はい」

 

 マスターはレストランのある階へと早々に足を運んでしまいます。なんとなく、マスターと雑貨屋とかを見てみたかった気もしますが、仕事帰りですからね。お腹が空いているのでしょう。

 そしてマスターが向かったのはインドカレーのお店です。ここでマスターはチキンカレーとナンを選びこれを食します。

 カレー……美味しそうですね。さすがに腹を空かせているマスターにはたくさん食べて欲しいので、下さいとは言いませんが。いつか食べてみたいものです。

 そして食べ終えた後、丁度映画の上映時間間近になっていました。そのため私たちは、映画館のある階に向かったのです。

 

「見た感じ、私たち以外いませんね……」

「まあ、こっちじゃあ、この作品何回も見る人少ないだろうしなぁ。初日以外ほとんどいないんじゃないか?」

 

 映画館のある階、ポップコーンやドリンクを買う売店の付近を見渡しますが、私以外にガールがいる様子がありません。私たちは話題にはなっていますが、それでもマスターの住む地域ですと少ないのでしょう。

 つまり、ほぼ私とマスターの貸切状態になる可能性がある、ということです。

 

「見る間に飲み物欲しいし、なんか飲むかな」

 

 マスターはそう言って、売店で炭酸飲料を買います。

 よくマスターは甘い炭酸飲料を飲んでいますが、美味しいのでしょうか。そういえば口にしたことがありません。

 

「あの、マスター。私にも一口くれますか?」

「ん? いいぞ。そいやお前たちって飲み物とか食い物一応食えるんだったな」

「はい。アニメの中の設定ですと食べれませんが、私たちは可能です」

「どういう技術使ってんだか。ていうかなんでアニメではそういうことにしたのか……」

「次元の歪曲というやつでしょう」

「あ、はい。そうですか……」

 

 私の意味深な発言に、マスターは困惑します。それはまあ、そういう反応になるでしょうね。

 ちなみに私たちに備わっている食事機能はマスター――つまりは人間とほぼ同等の情報を得ることを目的に取り付けられています。

 そのためあくまで補助機能に過ぎず、摂取できる量は限られています。一応は摂取したものをエネルギーに変換することは出来ますが、一度に変換すると処理し切れずにオーバーフローするのでせいぜい一口くらいが限度です。

 

「まあいいや。ほい、飲んでみ?」

「ではいただきます」

 

 マスターにドリンクを差し出され、私はカップの中に顔を突っ込んで一口だけ飲んでみます。

 

「こ、これは! シュワっと弾けるこの刺激とフルーツの甘味が合わさりとても美味しい仕上がりになっています!」

「あ、うん。てかお前すごい飲み方するね」

「だってこうするしかないでしょうに」

「まあ、そうなんだけど」

 

 そう言って、マスターはストローでドリンクを少し飲みます。

 ん? もしかして、ストローで頑張って飲んでいればある意味間接キスというのになったのでは!?

 くっ、これは失敗しました。せっかくだからそういう風な経験もしてみようと今更ながら。しかしこれ以上私は飲むわけにはいきません。主に量的な意味で。

 

「と、そろそろ入れるな。行くか」

 

 どうやら上映会場内に入れるようになったようで、私はマスターの肩に乗ってそこへと向かいます。

 中は案の定、誰もいません。まさに貸切状態。実に素晴らしいと言えるでしょう。

 ところで今更ながら思ったのですが、これっていわゆる映画館デートにあたるのでは?

 いや勿論、ほかに何名か同じことをした方がいますけれども、考えてみると少し意識してしまうというか。

 

「ほい。椅子用意したぞ」

「おお。これは映画前売りムビチケ特典第一弾の映画館の椅子ですね」

「いやに説明的ですねー」

 

 マスターの棒読みを無視して、私は椅子に座ります。ペーパークラフトで出来ている椅子であるため、少し冷んやりしています。

 

「今度これにクッションつけてみませんか?」

「あ、それ連れてった他三人にも言われたわ」

「でしょうねー。なんかこう、柔らかいものが欲しいというか」

「すまんな。いつか付けるよ」

「それは一生つけない可能性があるやつですね、わかります」

 

 他愛のない会話をする。これがデートの醍醐味というのかは知りませんし、こんな内容ロマンスのかけらもありませんけど、私は楽しいです。

 そして劇場内の明かりが消え、間も無くして上映が開始されました。

 映画の内容を詳しくは言いませんが、簡単に言うと主人公の轟雷と源内あおの思いで振り返り、みたいな内容です。あれ、なんかこれ全部語ってるも同義な気もしますが……まあ大丈夫でしょう。

 それにしてもこれが映画館で映画を見るということですか。確かに、テレビで見るのとはわけが違います。

 まず迫力の音響。戦闘の際の音声がこれでもかと凝っており、アニメとはまた違った迫力と緊張感があります。また動きの一つ一つもより繊細で綺麗にも見えます。流れるBGMも堪りません。

 これはマスターが何度も行きたくなるのも頷けます。まあ、半ば来場特典が目的なのもあるでしょうけど。

 

「思い出映画鑑賞会……ですか」

 

 思い出。私はまだ起動して一週間ほどしか経っていません。仕事で忙しいマスターとの思い出は皆無といっても過言ではない。そんな私が、この映画を見て一体なにを振り返るのでしょうか。

 きっと他の方は、マスターとの思い出話をしたのでしょうね。プリムさんもローズさんもマスターとの付き合いが長いですし、クラウンさんはよくマスターの旅行について行ってたと聞いています。それぞれきっと濃い思い出があったことでしょう。

 でも私にはそれがありません。どこか空虚な気持ちが、私の中で渦巻きます。

 あ、いえ。ひとつだけありました。私が起動した時のことです。そう、手首にヒビが入ったとかというあの発言。あれはね、忘れるわけにはいきませんよね。てか早く治してください。

 なんてことを考えていると、ふとマスターの指が私の頭を撫でました。

 

「マスター?」

 

 小声で言うと、私は首を傾げます。

 マスターはというと、映画を見たまま無言で撫で続けます。まるで私の心を洗うかのように。

 その心地よさに私は目を細めます。なんだか顔も熱くなってきました。

 そして私は、映画が終わるまでマスターに撫で続けられていたのでした。

 

 

 

 

 

 

「いやー、やっぱりこの作品を映画館で観るのは最高だわー」

「私、オープニングのセッションベースの起動音が大音量で流れた時は思わずおおっとなってしまいましたよ」

「お、気が合うねぇ。俺もそこが好きでなぁ。最初聞いた時は鳥肌立ったわ」

「あとは大音量で流れる数々の楽曲がよかったです」

「わかるわかる。どの歌も良かったし、エンディングなんてお前ちょっとうるって来たからな? あの歌詞は何度聞いてもダメだよ。卑怯すぎる」

「私もあの曲は好きですね」

「そいや明日CD届くやんけ。はよ入れてリピートで聴きたいわ」

 

 映画が終わり、各々の感想を述べる私とマスター。マスターは余程この作品が好きなのか、興奮しています。勿論、その気持ちは私も同じです。

 

「その、マスター。連れてきてくれてありがとうございました」

「いえいえ、どういたしまして」

 

 とても楽しい時間を過ごせました。途中、何故か頭を撫でられてずっと言い様のない気持ちになりましたけれども。

 

「と、せっかくだし記念撮影していこうぜ」

 

 そう言ってマスターが指差したのは、源内あおと轟雷が描かれた記念撮影用のボードです。

 

「ほれほれ、ここに乗りたまえよ轟雷くん」

「なんか変なテンションですねマスター」

 

 マスターのハイテンションさに若干引きながらも、私はボードの台座部分に乗ります。

 するとマスターはスマホのカメラをこちらに向けて「はい、チーズ」と言って撮りました。

 

「さてと、んじゃ帰りますかー」

 

 少し名残惜しいですが、いつまでもここにいるわけにも行きません。私は意を唱えることなく、マスターの肩に乗ります。

 それにしても、マスターはどうして私を選んだのでしょうか。他にもガールはいます。それこそ、マスターを好いているアルテナさんや付き合いの長いイノセンティア姉を選んでもおかしくないでしょうに。

 気になった私は、車を運転するマスターに問いかけてみることにしました。

 

「あの、マスター。どうして今日、私と映画を見ようと思ったのですか?」

「んー? なんとなく、お前とひとつ思い出づくりをしたいなって思っただけだよ」

「思い出づくり……」

 

 どうやらマスターはエスパーのようです。

 

「でもそれを言ったら、フレズだって」

「確かにあいつともまだ付き合いは短い。だから本当はあいつも一緒に連れていこうと思ってたんだが、断られてな。曰く、轟雷の方がマスターと思い出を作りたいと思ってるから、だってさ」

「あの子、そんなこと言ってたんですか?」

「おうよ。まあ、あいつは別の映画にでも誘ってみるつもりだけどな」

「それはなんかズルイです……」

 

 でも確かに、私がマスターともっと思い出を作りたいと思っているのは本当です。マスターと色んなところに行ってみたい。その思いから私は常日頃からマスターに「マスターの案内役をします!」と言っているわけです。

 

「まあ、そんなわけだから今日、お前と一緒に映画を観ようと思った。あと、仕事で荒んだ心を癒そうと思った」

「あー、まあ確かに帰り遅くてたまに爆発寸前までいってましたからねー」

 

 マスターの真顔の発言に少し苦笑してから、くすりと笑います。

 

「そんな時はいつでも、映画にお付き合いしますからね?」

「おう。その時はよろしく」

 

 ここでふと、マスターが仕事している間に考えてきたことを聞いてみようと思いました。

 私の質問に、マスターは少しだけ「うーん」と唸ります。

 

「俺とお前の関係って、そりゃ家族じゃないか?」

「家族……ですか?」

「そうそう。お前だけじゃなく。他のやつともな」

 

 それは少し、私が期待していた答えとは違いながらも、胸に来る答えでした。

 私はその言葉を噛み締めて、俯きます。

 

「ところでだ。俺からもひとつ質問いいか?」

「え、あ、はい。なんですか?」

「轟雷は、本当に俺の案内役をやりたいと思っているのか?」

「それは……」

 

 何故そのような質問を投げかけてくるのか、わかりません。なにか深い意味があるのか。

 しかし見たところ、マスターの表情からは純粋な疑問といった感じです。

 確かに私の案内役をしたいという思いの中には、勢いとノリも混じっています。ですが。

 

「勿論したいです。だってそれがマスターとの思い出づくりの一端になると思っていますから」

「なるほど。そうか……」

 

 マスターは少し考えるような表情すると、こう言いました。

 

「んじゃ、ひとつ案内役を頼みましょうかねぇ」

「えっ?」

 

 今まで頑に断っていたマスターの口からそんな言葉が出てきて、思わず驚きます。

 それはそうです。だってマスターは自分が行く先は大体把握している人です。だから、そもそも案内役なんて知らない土地に行かない限り必要がないはずです。

 そんなマスターが、こういうことを言った。これはなにか裏がある。私の直感がそう言っています。

 

「あの、なんの案内役を頼むっていうんですか?」

「いやな。お前と思い出づくりをしようって話と繋がってくるんだがな」

 

 マスターは少しだけ溜めるようにして、間を置きます。

 息を呑み、その続きを待ちます。そして放たれた発言に私の胸は高鳴りました。

 

「今週の日曜、幕張メッセに行くぞ」

 

 そう。それはとあるイベントへのお誘いなのでした。

 

 

 




 マスターのマスターによる以下略。どうも皆様。轟雷のマスターです。

 いやー「フレームアームズ・ガール きゃっきゃうふふなワンダーランド」良かったですよねぇ。ファンには堪らない一作だったのではないでしょうか。人によっては、新規映像これだけかよって思った方もいるかもしれませんが、私は満足でした。そもそも予告の時点で総集編って分かってましたからね。
 まずあの音響。堪らないですよねぇ。アニメ本編よりも重厚感が増していて、実に迫力のある効果音になっていました。オープニングでは思わずうおお!?となったものです。
 そして何より曲! 流れていた曲のどれも改めていい曲だと思わされましたし、新規楽曲の「満場一致LOVE ENERGY」も「ハートボイルドに愛して」も「キミとコントラスト」も最高でした。
 またあの映画館の大音量で見たいなぁ。ちなみに映画館では最終的に5回観ました。

 長々と書きましたが、この日誌を読んでいる方の中にも私のようなマスターがいると思います。皆様も是非、うちの子とたくさんの思い出を作ってみて下さい。以上、マスターでした。

 それにしても一体なんのイベントなんでしょうねー?←白々しい
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