お待たせしました。轟雷です。久々の投稿です。って、なんですかこれは!?
え? 私が書いたものは? どうして私が書いたものが消えててクラウンさんが書いたものが。ちょっと待t
これからマスターとの思い出をお話しします。
私はクラウン。マスターの初めてのオリジナルフレームアームズガール。と言っても、既存の部品をミキシングして生まれたのだけど。
マスターのところでは九番目に目覚めました。目覚めた時、真っ先にプリムからのセクハラを受けたのを覚えています。確かすごく胸を揉まれたんだったかな。
まあそれはそれとして、私はマスターが好きです。大好きです。一目惚れです。ああ、きっとこの人は私を大切にしてくれるんだなってすぐにわかりました。
実際マスターにはとても可愛がられています。どうして私は人ではないのだろうと、時折思ってしまうくらいに。
マスターには色々なところへ連れて行ってもらいました。マスターが遠出する時は大体ついて行きました。
まるで夫婦の新婚旅行――なんて夢見なことを思いながら、一緒の時間を過ごしました。
その中でも飛びっきりの思い出の一つをお話ししたいなって。大事なことなので二回言いました。
それは私だけじゃなく、轟雷にとっても思い出だったりするんだろうけど。でもきっと、私の方がマスターのことが好きだから。私の方がマスターのことを愛しているから。だから私がこの思い出を語ります。
いわばこれは乗っ取りなのです。
◇
「レディースアンドジェントルマン! これより第一回、マスターとの旅行切符は誰の手に!? チキチキ、運命のあみだくじを開催します!」
響き渡る轟雷の謎宣言。
今日は七月の二十五日。マスターは仕事から帰ってきて開口一番に、こんなことを言いました。今週の土曜日、県外に遊びに行くぞって。
なんでも日曜日にあるイベントがあるらしくて、そこに友達と行くそうな。つまりは一泊旅行です。
で、私達の中で一人だけ同行できるという話が持ち上がりました。
正確には、轟雷が同行するのは確定しているらしいです。
なにそれズルい。マスターと出かけるのは、妻である私の役目なのに。
「それでこれからあみだくじで決めるわけだけど、みんないい? 恨みっこ無しの出たとこ勝負よ?」
真ん中に置かれたあみだくじと睨めっこしながら、ローズがみんなの顔を眺めます。
私も、そして他のみんなもマスターとお出かけしたいのです。
「まあ私は正直ローズちゃんがいないなら別にって感じなのだけど」
相変わらずローズラブなプリムは、そんなことを言ってのけます。
だったらなんでこのあみだくじに参加するんだと言いたいんだけど、この人もマスターのことが大好きってことは知っている。
「私がマスターと行くんだからね!」
アルテナが自信ありげに踏ん反り返っています。実に憎たらしい。その私にはないボディも。
「轟雷が行くんですもの。私が行くのは当然ですわ」
ただいま轟雷にゾッコン中の白虎が、愛しの轟雷と遊びに行けるということで、私が座るべき席を狙っています。
この子もアルテナに負けず劣らずのドスケベボディ。正直羨ましい。きっとマスターはこういう体型が好きなんだろなって思うから。
「私もマスターと轟雷と一緒に遊びに行きたい。みんなは沢山お出かけしてるけど、私はまだ無いから私が行くべきだと思う」
色々なところを露出しているフレズがそんなことを言いました。
確かにこの子はまだ起動したてだから、多少は譲ってあげたいという気持ちもある。けどやっぱりマスターとの遠出は譲れない。
「私はマスターと楽しく遊びたいから行きたい!」
「それは私も同じよ! ねえ妹?」
「うん……私はお姉ちゃんとマスターと一緒に行きたい」
そしてバーゼ、イノセンティア姉、イノセンティア妹の順に目を輝かせて言いました。
空いてる席はひとつって言ってるのに、イノセンティア妹ちゃんは話を聞いていたのだろうか。と思いたくなるけど、まあ大好きなお姉ちゃんと一緒に行きたい気持ちは理解できる。私も大好きなマスターと一緒に行きたいから。
「それで? クラウンはどうして行きたいのかしら?」
ローズが腕を組んで問いかけてきました。
そんなの決まっている。
「私は……私は大好きなマスターと沢山一緒にいたいから」
「そ。ま、あんたらしい理由ね」
なんだかんだ、みんなマスターとの一泊旅行をしたい様子だ。何故か確定している轟雷を糾弾しないのは、優しさからかそれともマスターの決定に従っているからなのか。
わからないけど、ともかく今私たちの戦いが始まる。あみだくじを選ぶだけだけど。
大好きなマスター。愛しいマスター。そんなマスターと過ごせない時間が少しでも生まれてしまうのは、私が何よりも嫌っていること。
だからこのマスターとの一泊旅行(おまけ付き)は何がなんでも獲得しなければならない。
しかし使われるのはマスターが作ったあみだくじ。つまり不正はできない。というかマスターの前で不正はしたくない。
お願いします。マスターとの一泊旅行をさせてください!
そう両手を合わせて願うしかない。
「じゃあ、行くわよ。まずはジャンケンで勝った人から自分の進む道を選ぶ。いいわね?」
取り仕切るローズ。やはりこういう時しっかり者の彼女がいるとやりやすい。
そうだ、お祈りをする前にまずはこのジャンケンを制さなくては。
各々手をこねくり回したりと、気合を入れてジャンケンに望――て、あれ?
「最初はグー!」
「パー!」
「わーい! 私の勝ちー!」
「おいこらバーゼ。それはズルでしょうが」
「違うよー? だってローズ、ジャンケンのルール説明しなかったもん」
「そんな典型的な屁理屈言ってんじゃないわよ!」
ツッコミを入れるローズと悪気もなくヘラヘラ笑うバーゼ。側からみればアニメで見た光景と全く一緒だ。
いや、そんなことはどうでもよくて。
「バーゼちゃんってば可愛いわねぇ。ちょっと体すりすりさせて?」
「え、いやそれはちょっと」
「いいから、ほらほら。遠慮しないで?」
「やだー! プリムどこ触るかわかんないんだもん!」
「じゃあちゃんとやりましょうねぇ?」
「あ、はい。ごめんなさい」
意外と頭にきたのか、プリムが黒い笑いを浮かべていた。
ほんと、相変わらずこの人は怒った時のオーラがすごい。いつも呑気なバーゼでさえ、体を震わせている。
いや、それもどうでもよくって。
「ねぇみんな」
「ん? どうしたのクラウン」
「いや、ジャンケンで決めるって意気込んだはいいけどさ……マスター、もうあみだくじに名前書いてる」
「は?」
私の指摘に全員一斉にあみだくじの書かれた紙の方へ目をやった。
「あ、ほんとだ。名前書いてある」
フレズが呟く。
そう、いつの間にかマスターが名前を記入していたのだ。いわく「疲れてるから早く終わらせたくて」だそうな。
「え? じゃあ私もしかして怒られ損?」
バーゼの呟きに他のみんなが一斉に頷く。怒った張本人であるプリムでさえも。
するとバーゼは目元に涙を浮かべて、
「わーん! プリムのバカァー!」
と泣き出してしまったのでした。めでたしめでたし。
◇
気を取り直して、全員があみだくじ上に書かれた自分の名前の上に立つ。
これはマスターとの運命が試される瞬間だ。
「じゃあ、私から行くわよ」
まず初めにローズの結果を見る。名前からスタートし、ゆっくりと道を追って行き、その結果は――ばつ印がついていた。
「くっ、私はダメだったわ」
どこか悔しそうなローズ。後から聞いた話によるとローズは、絶対に余計なお金を使うであろうマスターをある程度抑制するために同行したかったそうな。
なるほど。確かにローズは度々マスターのお財布の中身を確認している。あと通帳も。まるで家計を心配する妻かのように。
しかし結果はバツ。つまり同行できない、彼女はマスターの妻たり得ないということだ。
「じゃあ次は私ね」
次はプリムの番だ。
プリムの名前からスタートし、順を追って線を辿っていく。そして結果は――。
「あら、私もダメね」
ばつ印だった。
「でもやっぱりローズちゃんがいないんじゃ、面白くないもの。ね? ローズちゃん」
「えっ? ええ、まあそうね。私もプリムと一緒の方がいいし」
「でしょでしょ? 嬉しい! やっぱり私はローズちゃんが大好きよ!」
「私だってプリムのことその……す、好きだし」
イチャイチャしおってこの一番目二番目カップルめ。
大体ローズ、あんた夜は積極的なくせして、なんでみんながいる前ではそんな恥ずかしそうにしてるのよ。
「ねぇローズちゃん。キス……しましょ?」
「ふえっ!? で、でもみんながいるし……」
「はいはい、あの二人は無視しようねー」
次の番であるイノセンティア姉も、流石に呆れた表情を浮かべていた。
「それじゃ、私の番だね!」
イノセンティア姉が嬉々とした表情で自分の名前を指差し、宣言する。
「私がオッケーなら妹の同行も決定ね!」
いや、その理屈はおかしいと思う。
で、結果はというと。
「ダメだった……こんな不甲斐ないお姉ちゃんでごめんね妹よ」
ばつ印だった。
「大丈夫。私がオッケーなら……お姉ちゃんも一緒に行ける」
「そうか! よし、任せたぞ妹よ!」
だからその理屈はおかしいと思う。
その後、イノセンティア妹、バーゼ、アルテナ、アルキテクトの順でくじを見た。
結果はその全員がばつ印。つまり、残ったのは私とメラスと白虎とフレズの四人ということになる。
そして次は私の番だ。
緊張で胸がドキドキする。それこそ喉から心臓が出てきそうなほどに。まあ、私たちに心臓ってないんだけども。じゃあなんでこんなに鼓動が波打ってるのかは、正直私も不思議だ。
私はマスターとの時間を過ごしたい。二人きりじゃないのはちょっと不満だけど、それでも泊まりがけは、例え轟雷がいたとしても楽しいに決まっている。
「ふっふっふっ、さて私と一緒に行く選ばれしものは誰ですかねぇ?」
ただこうやって踏ん反り返って天狗になっている轟雷を、ちょっと思い切り蹴飛ばしてやりたい。マスターに喧嘩するなって言われるからやらないけど。
「よし、私の番だね……」
どこからやってきたのか分からない生唾を飲み込む。
他の三人はマスターとも轟雷とも行きたいメンツだ。つまり今彼女たちは念じているに違いない。外れろ、と。
けど私には譲れない思いがある。だから私が、当ててみせる。
「はい、よーいスタート」
「もう少しやる気のある合図したらどうなの? 轟雷」
轟雷の合図とローズのツッコミとともに、私はあみだくじの線を辿る。
左へ、右へ、下へと突き進んでいく。目指すは一点。ゴールの丸印だ。
確率は四分の一。大丈夫、私ならきっと引ける。だって――
「や……やった……!」
私がこの中で最もマスターを愛しているのだから。
「やったー! 私だ! 私が選ばれたー!」
思わず私はその場で飛び跳ねる。
ヤバイ、嬉しさで涙が溢れそうだ。
「まさか私の番が回る前に決まってしまうなんて、なんだか悔しいですわ」
「まあなんか、なんとなくこうなる気はしてたけどねぇ」
「うん、私もそんな気はしてた」
残った三人が苦笑する。
彼女たちにはもう席はない。私がひとつの席を手に入れたのだから。
「マスター! やっぱり私とマスターとの間には運命の赤い糸が結ばれているんだわ!」
「この子ったら、しれっと私でも言わないような恥ずかしい台詞を言ったわぁ」
「嘘つきプリム。夜にたまに言ってるくせに」
「え? な、なんでバラしちゃうの? それにみんなの前で夜の話は……」
「なーに恥ずかしがってんのよプリム。朝はいっつも積極的なくせして」
また所構わずイチャつきはじめたバカップルはさておき、これで私は晴れてマスターと旅行の切符を手に入れたのです。
ちなみにマスターはお仕事の疲れからか、私たちが奮闘している間に寝てしまっていました。
私はその素敵な寝顔に軽く口づけをしてから、隣でこの日の夜を過ごしました。
そして時間はあっという間に過ぎていき。
「クラウンさん、楽しみですね! 一体どれだけ楽しい時間が待っているのでしょう!」
「うん、そうね。正直轟雷がいない、マスターと二人きりの時間を送りたかったけど」
「それは私も同じですよーだ。でもこうなった以上せっかくですし、一緒に楽しみましょうよ」
「ま、確かにそれもそっか」
マスターとの旅行の時間がやってきたのです。
どうもこんにちは。こちらでははじめましてですね。私はクラウンです。マスターが最も愛すべき妻です。
まずは私が拙い文章で書いた日記の一部を読んでいただきありがとうございました。
どうでしたか? 轟雷に負けてない文章でしょ? 何せ小説を書くのが大好きなマスターの隣にいたんですから当然です。
一応予定としては中編、後編と続くつもりです。おまけ付きのマスターとの思い出旅行の話。どうぞ楽しんでいただけたらなと思います。
そして胸に刻んでください。一体誰がマスターの妻に相応しいのかを!
というわけで、次回でまたお会いしましょう。クラウンでした。