────くるしい。
漆黒に身を包んだ禍々しいバケモノがこちらに近づいてくる。
────つめたい。
身体から生命が流れ出る音がする。
────くらい。
バケモノの唸り声が。破壊音が。そして、生命の音すら遠ざかって消える間際。
バギィッッ
「死ぬな!! 生きろ!!」
そんなこえがきこえたきがして。
口に何かを押し込まれる感覚とともに私の意識は闇に沈んだ。
◇◇◇◇◇
いつも通りの朝だった。
日の出とともに起床し、朝ご飯を食べ、猟に行くお父さんを送り出す。そんな平和な朝だった。
異変が起きたのは昼頃、お父さんが深刻な顔をして村に駆け込んできた時だった。
「避難しろ! 今すぐだ!」
お父さんは今まで見たことない程焦りながらも村人に避難を呼びかけ始めた。
「あなた! 何があったの!?」
「見たこと無い黒い竜が、暴れまわってる!」
それを聞いた村人たちは素早く準備を始めた。こういうことはないわけではない。見たこと無い竜というのは気がかりだが、しばらくすればギルドから派遣されたハンターがなんとかしてくれるだろう。そう思いながら準備を済ませた村のみんながお父さんの指示で避難を始める…………まさにその時だった。
「─────ァァァ!!」
黒い竜が森の中から姿を現した。
黒く不気味な身体で天を仰ぎ、咆哮する黒い竜。その身体からはおどろおどろしい黒い
「くそっ! もう来たのか!!」
悪態をつきながら得物の弓を取り出したお父さんは黒い竜の頭らしき場所に矢を撃ち込みつつ避難を促す。囮となることを選んだ父に一抹の不安を抱いたが信じるほか無い。そうして避難を始めた矢先、空を黒が覆った。
「ガァァァァァ!!」
先程より数段禍々しさを増した咆哮に、思わず足を止めて振り返ってしまう。そこにはさっきまでなかった紫がかった角を妖しく光らせ、翼のような、腕のようなものを地につけ6脚になったバケモノがいた。
「ひっ……ぅぁぁ……」
そのあまりにも禍々しい様相に私は恐怖で足が竦み、座り込んでしまった。
「こっちに隠れて!」
そんな私をお母さんは物陰に引き込み、抱きしめてくれた。しかしその身体は、震えていた。
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お父さんは激しくなったバケモノの攻撃をうまく躱しながら、バケモノを私たちとは逆方向へと誘導していた。怪我が原因で、一線は退いていたものの、ハンターであったお父さん。最盛期にはかの空の王者を狩ったこともあったという。現に手に持つ弓は『プロミネンスボウ』という火竜の素材で作った弓らしい。そんなお父さんは、矢を放ち竜の気を引きながら黒い竜の攻撃を躱していく。幸い黒い竜は身体を使った攻撃しかしてこない。その破壊力は脅威だが、大振りなので読みやすいようだ。これならなんとかなるのではないか。希望が見えた気がした。
しかし、その油断をバケモノは許さなかった。
あまりに突然だった。バケモノの口から山なりに放られたソレ。一度は避けたソレが3つに分裂し、お父さんに襲いかかった。死角からの攻撃になんとか気づくも反応できず、吹っ飛ばされるお父さん。
「ぐぁッ……!?」
「お父さんッ!?」
吹っ飛ばされ、何度も転がったところでようやく止まる。その姿を見て最悪の想像をしてしまった瞬間、さらなる最悪が待ち構えていることに気付いてしまった。
お父さんが転がったその先にいたバケモノはその半身を大きく持ち上げていて、
そして、振り下ろした。
叩き潰されるお父さんの胴体。その光景を私は呆然として眺めていた。
「お父……さん……?」
信じられない。これはきっと悪い夢なんだ。だから、早く覚めてほしい。お願いだから、早く。そんな願いは、どこにも届かなかった。
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バケモノはお父さんが動かなくなったことを確認したのか、翼を広げ宙に浮かび上がる。飛び去るのかと思いきや、次に向かったのは避難中の村人たちのもとだった。
「こっち来たぞ!」
「死にたくない……!」
初めから気付いていて、逃がす気などなかったのだろう。地を擦るように飛び、村人たちに突っ込んだバケモノは暴れまわった。
「ギャッ……」
「や、やめっ……」
「がっ……」
その牙が、腕が、尾が振るわれるたびに血が流れていく。仲良かったあの子が。優しかったあの人が。まだ小さかったあの子が。ちょっと気になっていたあの人が。逃げ惑い、泣け叫び、そして殺される。
「うぅ……ぁぁ……」
私は、涙に震える母に抱きしめられ、物陰で怯えることしかできなかった。
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気が付けばみんな倒れていた。ある人は引き裂かれ、ある人は潰され、ある人は噛み砕かれた。大人も子供も、女も男も関係なく。すべての生命を奪ったバケモノは、振り返り、近づいてきた。
(気付かれた!?)
心臓が止まったように思えた。
(お願い……! 来ないで……!)
目をぎゅっと閉じ、息を止め、震えて縮こまる。バケモノの足音が近づき、真横を通り、そして音がやんだ。願いが届いたのかと恐る恐る目を開けたその瞬間。
黒の爆発に巻き込まれた。
◇◇◇◇◇
全身を襲う痛みに意識が覚醒する。
視界があまりよくないが、手足に違和感を感じる。なんとか首が動いたので見てみると右腕と左足に折れた木材が刺さっていた。
「アァァァァァァ! ゲホッゲホッ……うぅぁぁぁ……」
それを認識した途端、改めて感じる激痛に意識から明滅する。呼吸がとても苦しい。身体の中も外も激痛が止まない。
バケモノがこちらを見ていていた。
「ガァァァ!!」
バケモノが近づいてくる。
────霞む目が閉ざされる。
誰かが上からバケモノを斬りつける
────世界から音が消える。
角の消えたバケモノが逃げていく。
────意識がどこかへ消えていく。
誰かが駆け寄って来て。
「お願いだ……目を覚してくれ……!!」
そんな祈るような声に、私の意識は覚醒した。
改めて、はじめまして。グリしんです。
久しぶりに4Gをやって、いろんな設定を見てたらインスピレーションが湧いてきたので思い切って書いてみた次第です。あまり早く投稿できないと思いますが暇なときに気が向いたら見に来てくれれば嬉しいです。