ここはArkadia、深海棲艦が集まる大きな船舶。
今日も多数の深海棲艦達が戦闘練習をしたり遊んだりと1日を楽しんでいる。
「…出来た」
「何だこれ」
銀髪の少女…ヲ級が作り上げたのは奇妙な形をした長いライフル銃だった。
頭に乗っている黒い怪物は驚いているが、ヲ級専用艤装のアルベルトには見たことの無い物だ。驚くのも無理はないだろう
「どうやって使うんだこれ」
「…対物ライフル…これで私も戦う…アルベルトだけに負担はかけられないから」
「いや俺は戦う為に造られたんだからな、負担にはなってないしお前が怪我をする方が俺はよっぽど怖いんだが」
ヲ級の心配をするアルベルト、他のヲ級がそんな武器を持って戦うなんてありえない行為だからこそ大きな事故に繋がるかも知れないからだ。
「…艦載機も積めない状態のアルベルトだけじゃ心配だもの」
「すいませんでした」
アルベルトは残念ながら言い返せない。全くもってその通り何も出来ないんじゃ返って危険だからだ。
「…暇だね」
任務時間までまだ1時間ある。ライフルの整備も終わっているしやる事がない。
「…じゃあヲ級、飯食いに行くか」
深刻な資材不足、本部から支給される資源では余りにも少ないのだ、他の泊地と比べてもこれはかなり少ない数字だった。
理由としては7つの深海鎮守府が本部に統合したばかりだとか手続きが間違っていたとか問題を抱えているからとか色々あるらしいが余りにも酷い。
それに敵の本拠地が側にあるArkadiaにこれだけの資源しか支給されないのが異常な気もするがその分食料は様々な物が送られてくる。
肉や野菜。魚や米…調味料など海では取れないような物も多数送られてくるのである。
そう、この船で食べられる物はかなり多いのである……ヲ級達は今日も期待に胸を膨らませ食堂に向かうのであった。
「…やっぱり混んでるね」
Arkadia所属艦なら無料でいくらでも食べ放題の食堂は今日も賑わっている。
それもそうだろう、本部の料理長である中間棲姫の監修を受けた限定メニューも日替わりで提供されるのだ。他泊地の深海棲艦にもリピーターが続出している伝説の料理が無料なんてここArkadiaだけであろう。
ヲ級達は空いている席に腰掛けると卓に置いてあるメニュー表に目を通す。
「おお、今日の日替わり定食は生姜焼きか」
「…じゃあそれにしよう」
ヲ級達は食堂の浮遊要塞を呼びかける。
「じゃあこの生姜焼き定食はを一つ頼むわ」
「…私も同じ物を」
「アイヨ」
さて、注文が終わったら後は待っていれば料理が届く
それまでは好きな事をして待っていれば良い。実際隣のテーブルではカードゲームが行われている
どうやら今日の旗艦を決める為の勝負をしているらしい。
「戦慄のバスタードラゴン!!召喚ッッ!」
「ふっ、今日の旗艦は私で決定だな…」
キラキラ光ったカードを机に叩きつけるト級。決め台詞付きなところを見ると恐らく強いカードなのだろう。
「じゃあカウンターマジックで」
「馬鹿なぁぁぁぁぁ!」
どうやらチ級の出したカードによりト級のカードは負けたらしい。
「…私もカードゲームやってみたい」
目を輝かせるヲ級はメニュー表を机に叩きつける。正直迷惑だ
「あ〜…南方あたり誘ってやってみるか」
「…うん」
「オマタセシマシター。ごユックリ〜」
そうこうしているうちに完成していた生姜焼き定食が届く。
味噌汁に大盛りの白飯、そしてメインディッシュの生姜焼きだ。
千切りキャベツの上乗るこんがりと焼き目のついた肉が食欲を唆り、300gと言う圧巻のボリュームに感動すら覚える。
これが本部の料理、中間棲姫が作る伝説の料理…。
「良し食おうぜヲ級」
「…いただきます」
ここArkadiaでは食堂の箸は全てプラスチックで作られた物を使用している。割り箸の使用をしていた頃もあったらしいが平和の海を取り戻す我らが何故資源を無駄にしているのかと本部で議論になってから全ての泊地で割り箸は使われなくなったらしい。
アルベルトは箸を持てない為皿を持ちそのまま飲み干しているが味合わなければ勿体ない。
まずはそのまま一口。
…美味い、甘辛いタレが肉によく絡んでおり白米を食す手が止まらない。
恐ろしい事にご飯と味噌汁はおかわりし放題、無限に食べられるなんてこれは犯罪的である。
ただでさえ美味しい生姜焼きに玉葱が入る事によりしつこさと言うものを全く感じさせない。
少し刺激が欲しいならテーブルに備え付けられている七味トウガラシを少し振り掛ければ良いだろう、味にメリハリが付きまたまた箸が進む。
こんなに美味しいのに日替わり…つまり明日には無くなってしまう事が悔やまれる。毎日食べても良い味だったのだけど現実は非常である。
「…美味しい」
「マジで美味いな!おかわり!」
「アイヨ」
アルベルトはこれで何杯目だろうか、意味のわからない速度で味噌汁と白飯を食べている。
腹が減っては戦は出来ぬと南方棲姫は言っていたが食べ過ぎは良くない気がする…
そう言えば他の皆は何を食べているのだろうか。
やはり日替わり定食…生姜焼き…ではないらしい。
隣の席のト級達はカツ丼を食べているしこちらに気付き手を振り返してくれた南方棲姫は赤ワインを飲みながらローストビーフを食べている。
今あるメニュー全てを食べているレ級も居るが…あれはレ級がおかしいのだろう。
やはりここまで別れるとなるとArkadiaの食堂は凄まじい。
食事面は本部にも引けを取らないのではないか、他の泊地にも誇れるだろう。
そしてお腹がいっぱいになったら
近海に生命樹や人類艦が現れなくなったのも原因であろう。…
「…ごちそうさまでした」
「良し行くとするか…艦載機の補充って出来るか?」
食堂を出るとアルベルトが備蓄庫を指差した。
「…まだ準備出来てないって」
「まぁじかよぉ〜」
ボーキサイト不足の為Arkadiaを支える第一部隊が優先的に補給される。
やはり深海棲艦の中でも上位の力を持つ鬼や姫級の為ボーキサイトの消費量も私達より何倍も多い。
その分戦いには良く赴くし本部からの信用もかなりの物だと聞いている。
だから私達に補給される分は後回し、大きな作戦の前などに回される。
「…だからこのライフルを作ったんだし」
鈍く黒く光る漆黒のライフルを構え練習用の的を狙い弾丸を放つと被弾した的は粉々に砕け散り爆発する。
「それ爆発すんのかよ」
鉄の球が物体にぶつかると爆散するようになっている。生命樹を一撃で葬り去る為の弾丸だ。
ただ人類艦には少々効き目が薄い気もする為艦載機補充までは油断は禁物である。
「…私のオリジナル」
「俺もオリジナルの弾作っといて良いかぁ?面白そうだしな」
「…いいよ」
ガッツポーズをするアルベルト、艦載機を積めない今は暇でしょうがないんだろう。
「…じゃあ行こうか」
「おう、そうだな」
そして
戦争をしている身でこんな事をしているのはおかしいのかも知れないけどそれで良いと思う。
だって恨んでばかりじゃ何も始まらない。楽しまなきゃ意味がない。
それも出来ないんじゃきっと平和な海を取り戻すことなんて出来ないんだと思う。
だから私は精一杯今を楽しもうと思う。これからどんなに残酷な未来が待っていようと、私は……
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