混血の艦隊   作:corin7121

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初投稿なので誤字脱字その他諸々あるかもしれませんがよろしくお願いします。


ようこそパラオへ

今から何十年も昔のことになる。東南アジアの海で正体不明の生物が発見された。新種の生物たちは人間に対して悪意を持っているのか近辺を航海する船舶を手当たり次第攻撃・沈没させていった。

 

民間の漁船であろうと、軍籍のイージス艦であろうと容赦なく沈める彼ら「深海棲艦」に対して人間は太刀打ちできないでいた。

 

シーレーンが破壊され後が無くなった日本だったが、「ようせい」と名乗る不思議な生き物たちの手により生み出された「艦娘」たちにより有効打を与えることに成功。反撃の狼煙を上げた。

 

その後、当時の海上自衛隊から独立した「大本営」と呼ばれる組織を中心とした大規模な反攻作戦が幾度となく繰り返された。

 

結果日本近海から深海棲艦を追い返すことには成功したものの、決着はつかず。今なお一進一退の攻防が連日行われていた。

 

 

 

 

 

 

太平洋・旧パラオ諸島

 

かつてこの諸島では深海棲艦が根城にしていた島が幾つもあり、過去に幾度も上陸作戦が行われた。透き通るほど美しかった海が艦娘と深海棲艦の血で黒く染まったころ、大本営は簡易的な泊地を建設。東南アジアの深海棲艦達の勢力にくさびを打ち込むことに成功した。

 

だが深海棲艦側も黙ってはいなかった。島を取り返すために大船団を引き連れて襲撃。一年にも及んだ戦闘は緑で覆われていた島々を破壊しつくした。戦略的価値も無くなったこの島に残ったものは無用の長物と化した泊地程度しか残っておらず、深海棲艦も大本営も放棄を決定。それ以降この島には絶海の無人島として長年放置されることになる。

 

 

 

「さて、今日の予定は・・・哨戒か。僚艦はたしかあの娘たちか。問題を起こしそうで今からでも胃が痛くなってきたわ」

 

宿舎の一室で一人の少女が予定を確認しながらため息をついていた。廃墟だったこの泊地を立て直した初期メンバーの一人であり、戦艦・巡洋艦を差し置いて第一艦隊旗艦を務める駆逐艦の少女は色々と気苦労が耐えなかった。

 

「今からでも編成を変更できるかな・・・」

 

無理とはわかっているが、やはりというか気が重い。なにせ今回はブレーキ役になれるのは自分だけなのだから。

 

「旗艦が遅れるわけにもいかないし、さっさとドッグに向かおう」

 

やらかしたならやらかしたで仕方がない。諦めにも似た境地で少女は装備を整えにドッグへと向っていった。

 

それから数分後。

 

案の定やらかした僚艦にキレていた。

 

「で?なんで集合時間になってもドッグに来なかったの?」

 

少女の目の前には冷や汗を瀑布の如く垂れ流す駆逐艦の少女が正座を強要されていた。

 

「あ、あのその・・・寝坊・・・しました。はい。すみません」

 

白髪のツインテールをしていた少女は正直に頭を下げた。目を覚ましたら時間はとっくに過ぎていたため急いで身なりを整えてドッグに駆け込んだ。

 

そこに居たのは修羅だった。後ろ姿だったため表情は確認できなかったが、間違いなく怒っていることは容易に想像できた。あまりのオーラに踵を返そうとしたが、

 

「どこに行くつもり?」

 

地獄の底から聞こえたようなドスの効いた声で全身が硬直。

 

「座れ」

「ひゃい!」

 

これ以上怒らせたら標的艦として処分される。解体なんぞ生温い言いそうな気迫に気圧された僚艦一号はコンマで土下座した。

 

しかしまだ彼女は温情をかけられた方である。この時点で集合時間から十分経過していた。そしてまだ二人は来ていない。

 

壁に掛けられた時計の針がチクタクと時間を刻む毎にドッグ内の空気が倍に倍に重くなっていく感覚を味あわされていた。旗艦の少女は一言も発してはいないが無言の圧力で緊張のあまり過呼吸気味になりかけたところで漸く二人目がドッグに到着した。

 

「遅れてすみませ・・・ん」

 

急いでドッグに来てみれば異様な光景。直ぐにでも逃げ出したい気持ちにかられたが場の空気がそれを許さなかった。そして戦術的撤退が不可能と判断した二号は誰に言われるまでもなく一号の隣で土下座をした。

 

(あんた何遅刻なんかしているのよ!?)

 

自分の事は棚に上げた一号は隣に来た二号にアイコンタクトを取る。

 

(私のせいじゃないよー)

 

そう。彼女の場合は自分のせいではなかった。ただ運が悪かった。不幸な目に遭っただけなのである。

 

この泊地にはいろいろと訳アリの艦娘が多く在籍している。脱走兵もいればブラック鎮守府で虐待を受けていた者もいる。その中の一人、某超弩級戦艦は拷問の末に両目をえぐられてしまい全盲になってしまった。

 

この泊地の司令官に救助されたものの適切な処理がされていなかったことなどもあり彼女は永遠に光を失ってしまう。解体も已む無しと判断されていたが司令官が引き取り訓練を施した結果まさかの艦隊の主力の一人になるまでの急成長をすることになるがそれはまた別の話。

 

そんな彼女だが、生来の不幸体質なのか何かしらの不運を引き寄せる厄介な体質を持っている。今日も階段を踏み外し頭から真っ逆さまに落ちたところ補修中の床に頭から突っこみ上半身が抜けなくなるトラブルに見舞われた。

 

そんな場面に遭遇した二号は無視するわけにもいかず、一人で彼女を救出していたのだ。その後自室までエスコートしたまではいいが、時間はとっくの前に超過している。事前に無線で連絡をしているためそこまで怒られないと思ったが、ふたを開けてみればこの修羅場である。

 

残すはあと一人。

 

この泊地に所属する駆逐艦だけで見れば問題児筆頭とも呼べる奴がまだ姿を現さない。

 

「遅い・・・」

 

旗艦の少女がぼそりと呟いた。それだけで反省中の二人はビクッと肩を震わせる。そして思った。

 

((死んだ!))

 

情状酌量の余地なし。この旗艦の腕なら痛みなく一瞬で水底、あの世まで送り届けてくれるだろう。心の中で未だやって来ない三号に合掌をしてから数分後。

 

「すまない。遅くなった」

 

全く悪びれもせず堂々とドッグにそいつはやって来た。一号二号は今直ぐ土下座しろと目で訴えかけるが全く通じていない。

 

「磯風ぇ。あんた今何時だと思っているのよ?」

 

「0905ぐらいだな。それがどうした?」

 

時計を見て時間を確認している磯風に一号は白目をむいて開いた口はふさがらず、隣の二号は逆に目をぎゅっと閉じて神様に祈っていた。

 

「昨日私が言った集合時間は何時だったか憶えている?」

 

「0800だったな、確か」

 

「一時間も遅れた理由は?」

 

「厨房で今晩の夕食の仕k「チェエストオオオオオオォォォォォ!」ごっふぉ!?」

 

一号は見た。それはそれは綺麗なコークスクリューブローだった。あんなものを喰らえば胸に風穴が空いてもおかしくないと。

 

しかし旗艦の制裁はまだ終わっていなかった。心臓破りを喰らい既に満身創痍の磯風の前で左右にウェービングを∞軌道を描くこの前動作―――

 

「あんたは!」

「がふっ!?」

「料理を!」

「ごへっ!?」

「やるなと!」

「ぼふぉっ!?」

「何遍言ったら!」

「おうっ!?」

「理解するの!!!」

「ぎゃあああああ!」

 

デンプシーロールが炸裂した。あまりのスピードに上半身が三つに分身して見えるほど、暴打の嵐の前に磯風は抵抗する事さえ許されなかった。

 

「はあっ・・・はあっ・・・」

 

一通り殴り続けた旗艦は肩で息をしながら仰向けにぶっ倒れた磯風に一瞥をくれると、

 

「天津風、照月」

 

「「はっ!」」

 

遅刻一号・天津風と二号・照月は飛び上がりながら無意識に敬礼をしていた。

 

「哨戒は私一人で行ってくるわ。あんた達はそいつを入渠ドッグに突っ込んだ後、厨房の産業廃棄物の片づけ。いいわね?」

 

「「イエス、マム!!」」

 

艤装を背負い、一人ゆっくりと海上へ出ていく旗艦を二人はその背中が見えなくなるまで直立不動のまま敬礼を続けていた。

 

やがて水平線の向こうへと消えたのを確認してから二人はようやく息を吐くと同時に緊張も解けた。一時間も正座をしていた天津風は足が限界だったのかその場に崩れ落ちた。

 

「怖い・・・。自分が悪いのはわかっているんだけれど、怖すぎでしょあの人」

 

生まれたての小鹿の如く天津風は全身をプルプル震わせている。声も震えているし目元には涙もたまっていた。

 

「し、仕方ないよ。あの人に反抗できる人なんて司令官ぐらいでしょ?」

 

「この前執務室で尻に敷かれているのをこっそり見たわ」

 

「あ・・・」

 

つまりこの泊地には彼女に逆らえる人物は一人もいないということになる。

 

「それよりも急いで磯風を入渠させないと」

 

「・・・息ある?」

 

「・・・・・・かろうじて」

 

その後二人は入渠施設に放り込んだ後、厨房にてまたもや地獄を垣間見ることになる。

 

 

 

 

 

 

「まったく、何でウチにはまともな奴がいないのよ・・・」

 

元々この泊地に居る連中は色々と訳アリが多いため一癖二癖もある濃いものばかり。それをまとめ上げるのが自分の仕事なのだが、どいつもこいつも自重という言葉を知らないやつらだ。司令官は信頼はしているもののどちらかというと甘い。

 

「やっぱり自分がもっとしっかりしないといけないわね」

 

とりあえず戻ったらあいつらに説教をしてあげよう。そう思案していた時、視界の端に黒い煙が上がっているのが見えた。近海で戦闘でもあったのか?もしそうだとすると少々まずい。何故なら今諸事情により下手に泊地に近づかれるわけにはいかないからだ。

 

船速を上げ現場に急行すると既に戦闘が終わった後だったのか、何体かの深海棲艦が力なく水面に漂っていた。近づいても抵抗の意思もないことから見て機能停止、つまり死んでいるのだろう。

 

艤装の形状からみておそらくはタ級。しかしこの周辺でタ級はあまり見かけない艦種だ。もしかしたらどこか別の海域から流れてきたか、あるいは―――

 

「・・・?何かしら、電探に感があるわね」

 

水中からの反応じゃないとすれば潜水艦ではない。となればまだこの戦場跡のどこかに生存者がいるのか?

 

注意深く辺りを探っていると、いた。海面を漂いながら意識はすでに手放しているのだろうが時折指先を痙攣させている辺りまだ轟沈はしていない。

 

「ちょっと!しっかりしなさい!まだ沈むんじゃないわよ!」

 

海上に流れ出した重油に全身が汚れているが、まだ数分前にしばき倒した磯風よりは息がある。正義感の強い旗艦の彼女は未だ意識の戻らない少女を背負いながら血と硝煙の臭いがする戦場を離脱。一路パラオへと帰還を急いだ。

 

 




深海棲艦たちは次回から登場予定です。
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