混血の艦隊   作:corin7121

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パラオの人達

清霜が目を覚ました翌日、彼女は工廠に足を運んでいた。壊れてしまった自分の艤装を直すためだったのだがそこで思わぬ人物と遭遇してしまった。

 

「おお!提督から話は聞いているぜ。茶ぐらい出すからゆっくりしていきな!」

 

「は・・・はひ・・・」

 

重巡棲姫。ここではココアと呼ばれている彼女は艤装の開発やメンテ等を一手に引き受けているパラオにはなくてはならない人材だ。

 

最近ではオリジナルの武器を作って霞に説教を喰らったのは一度や二度ではない。それなりに使えるものを作ったりしてくれるが、どうしてこうなった的なものも作る。例えばパンジャンとか風船爆弾とか。

 

そんな彼女に自分の命と言っても過言ではない艤装を預けているのだ。清霜は気が気でなかった。

 

「あ、あの!あたしの艤装なんだけど!」

 

「あー、あれか。今修理中なんだけどさ。よくもまぁあれだけぶっ壊れていたのによく助かったもんだよ。あんた悪運強いね!」

 

ココアの話によると何時沈んでもおかしくないほどの壊れ方だったらしい。直すより一から組み立てた方が良いとまで云わせた程メチャクチャにされていたそうだ。

 

「まあちゃんと直してあげるから心配しなくて大丈夫さ。お望みなら何か面白機能も付けてあげるけど?」

 

「い、いえ!普通で!普通でお願いします!」

 

昨夜に説明を受けて此処に居る深海棲艦達は敵意がないと知ってはいるが、清霜の中では彼女たちはまだ信用できないでいた。少し前まで殺し殺される関係が急に味方だと言われても整理がつくわけがない。

 

それに総旗艦も言っていた。

 

「あいつに全部おまかせするのはやめておいた方が良い」

 

なんでも昔とんでもない兵器を作り出したらしい。詳しく話を聞きたかったが、皆口を揃えて「思い出したくない」とまで言うレベルのヤバいものだったそうだ。

 

ただ一人、ミイラ女だけが「そうか?」と気にしていない発言をしていたが、その直後に全員から袋叩きに合い話そのものが無かったことにされた。

 

「ところで清霜君。君に一つ質問があるのだが」

 

「な、何でしょう?」

 

急に真剣な表情になったココアは清霜に質問をした。

 

「君、ロボットに興味はあるかい?」

 

「ろぼっと?」

 

「実は司令官にも内緒で極秘のプロジェクトを進行しているところなんだが、君操縦士になってみないかい?」

 

ここにきてようやく清霜は目の前にいる深海棲艦のヤバさを痛感していた。自分は余所者なのにこんな話を外部に流していいのだろうか、と。

 

「既に設計図はできていてね。無線で動くのも悪くはないがロマンがない!わかるか!?やはり人型決戦ロボットは内部に操縦席があってこその・・・」

 

「そのロボット興味あるわね。もう少し聞かせてもらえるかしら?」

 

「いいとも!兵装は大和型の装甲を一撃で打ち抜く追尾ミサイル四門に腕にはドリル!そして極めつけは口から必殺のレーザービーム!!この新兵器『姫龍』の前には艦娘も深海棲艦も裸足で逃げ出すわ!!!」

 

「へえ。それでそれを作るのにどれだけ資材をつぎ込むの?」

 

「製作に必要な資材はざっと見積もって各百万もあれば余裕で・・・作・・・・・れ・・・」

 

 

夢中になって気付かなかったココアだが、直ぐ目の前には物凄いいい笑顔をした霞がいて一瞬にして熱が冷めていった。

 

「ふぅうん。なるほどなるほど。百万で無双ができるなら安いものね」

 

「なので予算をちょっと上乗せしてくれたら助かるんだけどな~」

 

「ココア」

 

「ひゃい!」

 

「歯ぁ食いしばれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(*ò言ó)ヴェアアアアああああああああああああああああ!!!

 

 

 

 

 

 

工廠にてココアが霞にシバかれて艤装の修理が出来なくなった清霜はとりあえず泊地の周囲を散歩してみることにした。

 

海側は一部砂浜になっており海水浴も楽しめそうになっていた。実際浜辺にはイ級やロ級に加えて潜水艦のはずのソ級までいる。害はなくてもあの輪の中に入っていくのはどうしてもためらわれる。そこで清霜は海とは反対側にある密林に足を踏み入れた。

 

熱帯特有の湿気が肌にまとわりつくがトラックでは見ない植物ばかりで清霜はあっちにフラフラこっちにフラフラ。気が付けば知らぬ間に随分と奥地にまで進んでしまっていた。

 

「・・・・・・迷った」

 

見知らぬ土地で迷子。勘を頼りに進んでみるものの見覚えのない場所にしか辿り着けず、かれこれ二時間も彷徨っていた。

 

「・・・誰にも知られずに死ぬのかな、あたし・・・」

 

思い出すのは艦であった時の最期、航空機からの攻撃をかわし切れずに被弾・炎上した。艦隊から落伍し最後は爆発を起こして暗い海に消えていった。

 

誰にも見られることなく。

 

艦娘としてトラックに配属となり、これから華々しい活躍をという時に私はまた死ぬのか。

 

清霜は知らないうちに泣いていた。また独りさみしく死ぬのか。そう思うと涙は止まらず呼吸もままならなくなった。

 

こんなところで死にたくない。その想いだけで足は動いてくれたがその一歩に力はなく、苔むした倒木に足を取られて派手に転んでしまった。

 

「痛っ・・・!」

 

運が悪い時はそれが重なるもの。転んだ拍子に足首をくじいたのか、よく見ると右足が紫色に膨れ上がっていた。

 

「うぅぅ・・・。誰かいませんかー」

 

力なく叫んでみるものの誰かにこの声が届くわけもなく。力尽きた清霜は傍にあった倒木にもたれ掛かった。

 

その時だった。少し遠くでガサガサと草をかき分けたような音が聞こえた。まさか猛獣?艤装も何も持っていない今の清霜は艦娘であっても人間と変わりない。その上足のケガのせいで逃げることすら儘ならない。

 

もはやこれまでと縮こまっていたが現れたのは昨日泊地で見た艦娘の一人・野分だった。

 

「あれ、清霜さん?こんなところで何をしているんですか?」

 

「た・・・助け・・・え?」

 

「?」

 

「グルルルル」

 

「きゃあああああああああああああ!!!!」

 

野分の横にいた人一人は軽く飲み込めそうな巨大なトラを見た清霜は叫び声を上げながらついには失神してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!」

 

清霜が目を覚ますとそこは見知った場所。パラオ泊地の医務室のベットの上だった。

 

「帰ってこれた~」

 

最期は流石に死ぬと覚悟した。あんな化け物トラに襲われたら命が幾つあっても足りやしない。

 

「あれ?気が付いたかもです?」

 

「うん。また気絶しちゃったみたい」

 

ひょっこりと顔を出した高波に清霜は苦笑いで返した。パラオに来て早々気を失うとは思ってもみなかった。

 

「しばらく安静にしていてくださいね。骨にヒビが入っていたから」

 

「うそぉ。バケツとかお風呂に入れば治らない?」

 

「治らないかも。戦闘で受けたケガじゃないから・・・」

 

深海棲艦との戦闘ではそれこそ腕がもげようが足が吹き飛ぼうが入渠を行えばキレイに完治することができる。さすがに心臓や頭といった主要な臓器が正常に機能しなくなり戦死してしまうと効果は表れないが。

 

しかし長年の研修でわかったことだが深海棲艦が撃つ砲弾や魚雷には呪いのようなものが付与されているため入渠をすれば解呪ができる。その結果腕や足が無くなろうとも再生することができるとか。詳しい研究結果はまだ上がっていないが、深海棲艦から受けたダメージは生きてさえいれば回復すると思えばいい。

 

では日常生活で負ったケガはどうなのか?結果だけいえば極限られた範囲までなら回復するらしい。例えば出血が止まったり、痛みが緩和されたりする程度で完治とまでは程遠い。

 

その為この泊地に居る扶桑と春雨はどれだけ入渠をしようと視力は戻らないし足も生えてこない。深海棲艦との戦闘で負ったものではなく鎮守府の人間から受けたものだからだ。

 

「バチが当たったのかな・・・」

 

「バチ?何か悪いことでもしたかも、です?」

 

一つ思い当たる節があった清霜はぼそりと呟いた。

 

「ううん!そんなことないよ!きっと思い過ごしだと思うから」

 

慌ててかぶりを振った清霜は手をぶんぶんと振って否定した。何か思うところがあったのかもしれないが、今無理に聞いても清霜は話してはくれないだろう。

 

「後で野分さんにお礼を言ってあげてください。清霜さんを連れてきてくれたのは彼女かもですから」

 

「やっぱり野分さんが助けてくれたんだ」

 

きっと気を失った自分を身を挺してあのトラから守ってくれたんだと清霜は思った。実際はというと。

 

「帰ってきたと思ったらひよちゃんがあなたを銜えていたから何事かと思っちゃいました」

 

「ひよちゃん?」

 

「清霜さんは見ませんでしたか?トラのひよちゃん」

 

「トラのひよちゃん・・・」

 

まさかあのトラの事だろうか?そもそもトラは人に懐くものなのか?

 

「高波、お客さんのケガの容態は?」

 

「あ、噂をすれば。丁度いま野分さんの話をしていたところだったかもです」

 

「わたしの?」

 

「あの、助けていただいてありがとうございました!」

 

「気にしなくていいわよ。日吉丸が見つけてくれたようなものだったから」

 

「・・・・・・。そのひよしまるさんって今どこに居ますか?」

 

「そこ」

 

野分が指した場所、丁度清霜がいるベットの下には何やら黄色い毛玉の山が。

 

視線に気づいた毛玉はもそりと起き上がると恐怖で固まったままの清霜の顔をベロっと舐めた。

 

「元から人懐っこい子だけど清霜の事が気に入ったみたいね。よかった」

 

それからしばらくの間、清霜は日吉丸に一方的にじゃれつかれていたがその時の記憶は一切なかったそうな。




今回の話に登場した日吉丸にはモデルが居ました。

ウチで飼っていた元野良猫で名前がひよでした。

第一話を投稿する前日の朝に病気で亡くなってしまいましたが、いつの間にかウチに居座るようになって家族の中心になっていました。

まだ心の整理はついていませんが投稿は頑張って続けていきたいと思います。
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