混血の艦隊   作:corin7121

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一ヶ月近く更新止まっていましたがなんとか再開です。






遅れた理由ですがネタが出ないくせに別のネタに手を出したのが悪いのでしょう。
おかげでまた一月ばかり更新しないかもしれません。


鬼のいないパラオ

「~~~~♪」

 

提督の赤座と秘書艦の霞がパラオを発って少し。誰もいない廊下を天津風はツインテールをなびかせながら上機嫌に歩いていた。

 

提督の話だと明日の夕方までは帰ってこれないかもしれないそうだ。磯風を連れ戻すだけでそんなに時間がかかるとも思えないが、この時間は貴重だ。

 

なにせ部屋の主も。それを咎める秘書も今は居ない。

 

それが今日一日。

 

部屋に侵入しても証拠を消す時間はたっぷりとある。こんな時のために危険を冒して合鍵を作っておいて正解だった。

 

(まずは部屋に入ったらたっぷりと深呼吸するでしょ。そして提督のお布団にダイブして・・・・・)

 

「うへへへへへ」

 

口角が上がるのを抑えきれず変な笑い声が漏れた。最早手遅れなまでのストーカーになりつつあるが、この手の奴らは困ったことに自覚がない。

 

とにかく今日は一日提督成分を補給して英気を養おう。そう思って部屋のドアノブに手をかけて気付いた。

 

カギが掛かっていない。

 

「まったく無用心な提督がいたものね」

 

提督がカギをかけ忘れただけ。意外に抜けているところもある人だから単に忘れていただけだと天津風は思った。

 

 

 

 

 

「すーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー・・・」

 

まさか自分と同じ性癖の人物がいるとは思いもしなかった。

 

「矢矧さん?何しているんですか?」

 

「うぇっほ!!?あ、あああまあまつつつかじぇ!?こここれはその」

 

提督のワイシャツに顔をうずめて深呼吸していた矢矧は不意に後ろから声をかけられて激しく咽た。しかも犯行の現場を押さえられたのだから動揺しまくりである。

 

「全部言わなくてもこれは後で報告ものだわ。流石に提督の部屋に無断で侵入したとなれば裁判ものよね」

 

少し前まで自分も同じようなことをしようとしていたのにもうこの態度である。

 

「そ、そう言う天津風はなんで此処にいるのよ!?あなたもこの部屋に侵入するつもりだったんでしょ!?」

「な、なな何をををを根拠にぃ!?」

「その慌てようだけで十分クロじゃない!」

「私はまだ未遂です!!・・・あ」

「やっぱりやる気満々じゃない!」

「いいじゃない!提督が好きなんだから仕方ないでしょ!」

「私だって彼を愛しているわよ!!」

「私だって!!」

「いいや!私!!!」

 

もはや一触即発の雰囲気。このまま取っ組み合いのケンカに発展するかと思われたが矢矧は冷静だった。

 

「ちょっと待って。ここは一つ落ち着きましょう。折角のチャンスなんだからここは停戦といきましょう」

 

「そうね。無駄な時間を過ごすわけにはいかないわ。矢矧さんはシャツ。私はベッド。それで異論は?」

 

「大有りですよ馬鹿野郎ども」

 

「「!!!!?」

 

気付けば部屋の中には春雨が居た。海上に出ることができないため泊地内で家事全般を担当している春雨は今日も提督の部屋を掃除しようとやってきたら雌豚二匹がぎゃーぎゃーと騒いでいるもんだから相当怒っていた。

 

「提督も霞ちゃんも居ないからといって調子に乗り過ぎです。これはお仕置き決定ですね♡」

 

春雨は菩薩のような笑顔をしながら仁王のようなオーラを纏っていた。

 

これ、あかんやつや。

 

「とりあえずシバキ倒しますのでまずは部屋の外に出てください」

 

そう言うと春雨は背後から白いこん棒のようなものを取り出した。

 

「な、何よそれ!?」

 

「春雨です♡」

 

「あんたの名前なんて聞いてないわよ!その手に持っているのが何なのか聞いているの!」

 

「だから春雨です」

 

春雨曰く、茹でた春雨を何重にも何重にも織り上げて作った護身用の武器らしいが・・・。

 

「食べ物を粗末にしないの!」

 

「粗末になんてしていませんよ?毎日のメンテナンスは欠かせませんから」

 

「そういう問題じゃない!!」

 

「第一、そんな軟なものじゃ牽制にもならないdグホッ!?」

 

「矢矧!?」

 

天津風が気付いた時には矢矧は頭のたんこぶから煙を上げながら床に突っ伏していた。

 

よく見ると春雨の手には赤い液体を滴らせた春雨(鈍器)が・・・。

 

「さ。次は天津風ちゃんの番ですよ?」

 

 

 

 

 

 

提督の自室で惨劇が起きようとしていたころ、泊地に接している砂浜では熱い戦いが繰り広げられていた。

 

「オーラーイ!」

「野分!そっちに行ったぞ!」

「のわっち!!」

「ぃよっしゃーーーー!」

 

 

「「「サメ獲ったどおおおぉぉぉ!」」」

 

「何ですか・・・これ?」

 

偶然浜に来ていた清霜は目の前で繰り広げられている漁に疑問しか浮かんでこなかった。

 

おそらく地引網漁をしていて偶然大きなサメがかかったんだろうとは思う。

 

問題はそれを艦娘と深海棲艦だけじゃなく、

 

「ooh。コレはオオモノデスネ」

 

「いえいえ。これはジミーさんの手柄でもありますよ!」

 

「やっぱりジミーさんスゲー!」

 

「ソ、ソーデスカ?」

 

地元の人たちと一緒に漁をしていることに驚きを隠せなかった。

 

まだ世界的に見ても深海棲艦は人間と敵対しているのに、ここの人達はまるで警戒をしていない。

 

「不思議かい?人間と艦娘と深海棲艦が仲良く漁業をしていることが」

 

「えっ!?」

 

気付けば隣にココアが来ていた。手にはどす黒いコールタールのようなものを入れたカップを持っている。まさかそんな重油のようなものを飲むのか、この人は。

 

「あ、これコーヒーだよ?」

 

コーヒーにしては粘度が高すぎるものにしか見えないのだが。

 

「徹夜明けだからね。クッソ濃いエスプレッソに砂糖一瓶とガムシロップ大量に突っ込んだ激甘仕様のコーヒーさ。飲んでみるかい?」

 

「遠慮します!」

 

そんな糖尿病一直線になりそうなコーヒーは甘党な清霜でも飲みたいとは思わなかった。

 

「さてと。とりあえず君の艤装の修理は完了したよ。トラックに戻りたいなら好きにしな。提督には私から言っておくから」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「いいって。そんな仰々しくお辞儀なんかしなくても。これが私の仕事なんだからさ」

 

そう言ってココアはズゴゴゴゴと酷い音を立てながらコーヒーを啜った。わざわざストローで飲んでいるがこの粘度。飲みにくくないのだろうか。

 

「あ、そうそう。帰る前に一つ。資料室のオバケが君を探していたから、顔だけは出しておきなよ?」

 

「お、おおおおおおばばばばけぇぇえ!!!?」

 

「ああ、君はホラー系はダメか。シュウが探していたから資料室に来てほしいそうだよ?」

 

「あ、そっそういうことですか・・・」

 

「そういうこと。それじゃ元気でやりなよ」

 

軽く手を振ってココアは野分達がいる浜の方へ歩いて行った。どうやらまたサメがかかったらしい。それもさっきよりも大物が。レックスとヲリバーが地元住民達を避難させながら野分はいつも通りにナイフ一本でサメに斬りかかっている。

 

(・・・楽しそうだな)

 

トラックも昔はこんな雰囲気だったことを清霜は思い出していた。毎日大変だったけれどそれでも皆笑って過ごしていた。

 

天国とまでは言わない。楽園とは程遠い。でもあの時のあの場所はとても居心地が良かった。

 

(まだ、なんとかできるはず!)

 

あの頃を取り戻す。そのために自分たちはトラックから逃げてきたんだ。

 

急いで事の顛末を伝えてトラックを救わないといけない。

 

こうしている間にも仲間たちはあの監獄で苦しんでいる。

 

―――――――だから。

 

もう少しだけ耐えていてほしい。

 

必ず助けてみせるから。

 

 

 

 

 

 

正午を少し過ぎた頃、清霜は資料室の前まで来ていた。途中、気絶した天津風と矢矧を引きずる春雨と遭遇したのだが、春雨の笑顔の前に清霜は軽く恐怖を覚えていた。先日の演習には参加していなかった春雨だが、あの天津風と矢矧を戦闘不能にまで追い込んだのだから相当な実力者だと思われる。

 

(ここって本当はすごく危険な所なんじゃ・・・)

 

よくよく考えてみれば此処には深海棲艦と艦娘が一緒に暮らしているのだ。それだけでもここが相当危険な場所だと取れる。

 

つまりここは大本営のはみ出し者と深海のはみ出し者が寄せ集まって暮らしている。そんな場所だ。大本営サイドも、そして深海サイドとも敵対している。少なくとも彼らからの支援は一切無い。

 

救援を依頼したところで本当にトラックを救ってくれるかわからない。そうなればまた旅に出る必要がある。当初の予定通りここより西のタウイタウイ泊地を目指すか、北上して直接大本営にまで乗り込むか。どちらにしろ危険な一人旅になる。辿り着く可能性はゼロに等しい。

 

そういえば。今朝磯風さんに話を聞いてもらっていた時、

 

「シュウさんに相談してみたらどうだ?あの人はウチの御意見番だ。素直に話せば何か掴めるかもしれないぞ?」

 

トラックを救うためにはもはや手を選んでいる猶予は残されていない。たとえ深海棲艦であろうと手を組む必要が有るのなら。それでトラックを救えるのであれば。

 

大好きだったあの頃を取り戻せるのならば。

 

意を決した清霜は資料室のドアノブに手をかけた。

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