生命の樹が神の街に根付くのは間違っているだろうか   作:ねをんゆう

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1.沈む光

その日、1人の少女が誰に看取られることも無く、その幼い命を失った。

原因は衰弱死、と言えばまだ聞こえはいいだろう。

だが実際には挙げればキリがないほどの多くの病を抱え、苦しみ、力尽きたというだけである。

 

生まれた時から染色体の異常をその身に抱え、親にも恵まれず、誰からも忌避され、強要された過酷な幼少期は元から脆弱であった彼女の体を容赦無く蝕んだ。

 

 

自分は一体なぜ生まれてきたのだろう?

 

 

彼女は何度も自問自答した。

誰にも愛されることもなく、誰からも必要とされることもなく、恐れられ、気持ち悪がられ、邪魔だと言われ、死ねと言われ、殺してやるとまで言われた。

誰の為にもなることができず、誰かの負担になることしかできず、こうしてたった1つでも生きていた証を残すこともできずにこの世界を去るのだ。

 

何のために生まれてきた。

誰のために生まれてきた。

ただ生まれ、苦しみ、死ぬ。

神はなんのために自分を作ったのか。

自分はどうすればよかったのか。

 

最期の瞬間まで彼女の問いに答える者は居なかった。

 

 

 

 

"欲しいものはなかったのかい?"

 

……うまれたいみがほしかった

 

"どんなふうに生きたかった?"

 

あいされたかった

けど、ほんとはあいしてみたかった

それもできなかったけど

 

"どんな君になりたかったんだ?"

 

……『き』

『き』みたいになりたかった

しずかで、やさしくて、でもつよくて

たいようのひかりをいっぱいあびて、

みんなをえがおにしたかった

 

"なるほど、君は優しい子だな"

 

ううん、そんなことない

わたしはみんながうらやましかっただけ

けど、わたしにはなれないってわかったから

せめてちかくでみていたかったの

『き』になって

みんなをまもりながら

 

"……そうか"

 

"それじゃあ、最後の質問をしようか"

 

"もし木のような強い身体になれたら、君はこの世界をどうしたい?"

 

 

 

 

すきになりたい

 

 

 

"………………"

 

 

わたしはこのせかいがきらい

このせかいのひとがきらい

そうおもうじぶんもきらい

 

……でも、わたしはまどのそとしかしらない

じぶんいがいのひとをしらない

ひとのやさしさをしらない

 

だから、すきになってみたい

このせかいのことをたくさんしって

このせかいのことをうけいれてみたい

 

 

"世界を変えたい、とは思わないのかい?"

 

 

おもわない

 

だって

 

たしかにこのせかいのひとはきらいだけど

 

 

このせかいの"あい"へのあこがれは、すてられないから

 

 

 

 

"……やはり俺の思った通りだ。この力は君にこそ渡すに相応しい"

 

 

 

……?

 

"確かめさせて貰おう。俺ではない人間が、この力を使って一体何を為し得るのか。果たして俺は間違っていたのか。他の人間ならばまた違う結果へと至るのか。……君ならそれを結論付けられる、楽しみにしているよ。天霧 絵留然(アマギリ エルゼ)。"

 

 

 

まって……!

 

 

 

 

何の理由があってか、誰の思惑があってか、そういったことを少しも明かされることもなく、少女は再び理不尽に振るわれる。

次に味わう理不尽は、果たして彼女に何を齎し、彼女を何処へと導くのか。

 

神の住む街オラリオに落とされた一つの小さな命の種は、誰に気付かれることも無く、その根を地へと伸ばし始めていた。

 

 

 

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