生命の樹が神の街に根付くのは間違っているだろうか   作:ねをんゆう

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7.ダンジョン狂いのダンジョン拒否

カポーンと室内に木霊する音。

バシャバシャと跳ねる湯の塊。

一面を真っ白に染める湯煙群。

 

ここはロキファミリア自慢の大浴場。

比較的女性率の高いロキファミリアではやはり浴場に関する要望が多く、この場所はオラリオ内でもトップクラスの施設となっていた。

そのせいか大抵は常に誰かが入っているような状態となっているのだが、現在は時間も遠征前の夕食前ということもあって僅か5人しか入っていないというラッキーな環境。

 

そしてその5人もまた先程見たばかりの組み合わせとなっていた。

 

「へー、ってことはやっぱりアイズの子ってわけじゃないんだ」

 

「ん……そんなことない、エルゼは私の子」

 

「はいはい、ややこしいからあんまり言い触らさない方がいいわよそれ。レフィーヤが気絶したところ見たでしょ」

 

「うう、恥ずかしいです。忘れて下さいアイズさん……」

 

そう言って湯に浸りながら項垂れるレフィーヤをアマゾネスの姉妹は慰める。

そんな彼女を他所に肝心のアイズはと言えば、かつてリヴェリアにされていた頃を思い出しながら必死になってエルゼの髪を洗っていた。

石鹸を使っても問題がないことを確認したのは良かったものの、以前の世界では髪を極端に短くさせられ今のような長髪を泡で洗った経験がなかったため、彼女は必死になって目を瞑っているのだ。

そこに人の髪を洗った経験が皆無なアイズが加わればそれはもう惨状である。

 

どんどん泡ダルマになっていく2人を見て苦笑いが笑えない部類にまでなってきた3人は一度顔を見合わせて頷きあった。

 

「「「アイズ(さん)!そこ変わりなさい(ってください)!!」」」

 

アイズ戦力外通告の瞬間である。

 

 

 

 

「あ、あの……ありがとう、ございました……!」

 

 

「いいのいいの、気にしないで!」

 

「そうよ、子供が遠慮しなくていいの」

 

「はぁ〜♪なんだか小さいアイズさんみたいで可愛いです〜♪」

 

「……むすっ」

 

あの後、泡塗れになった2人を必死になって救出した3人は、その後の流れる様なスムーズな後始末の手際からエルゼによって大いに感謝されていた。

一方で必死になってもやらかしたアイズは後ろを向いて拗ねていたが……こればかりは誰にもフォローすることができず放って置かれている形である。そんなアイズを心配してチラチラと見ているのもエルゼではあったが……

 

「えっと、エルゼ、でいいよね?エルゼはダンジョンに潜ったりするの?」

 

「だんじょん、ですか……?」

 

「そそ、ダンジョン。アイズがエルゼと同じくらいの頃にはもうダンジョンに潜って大暴れしてたんだよ?エルゼはやらないの?」

 

「え、ええっと……」

 

「こらティオネ、あんまり困らせないの。あれはアイズが異常なだけで、普通の子はこの歳でダンジョンに入ろうだなんて……」

 

 

「駄目」

 

 

「「「「へ?」」」」

 

それは『ダンジョンに入る』という言葉が出た瞬間であった。

バシャァァンと派手に水を撒き散らして立ち上がったアイズは瞬時にその場を移動し、一瞬のうちにエルゼを誘拐し湯船の隅まで後退した。

 

あまりの早業に何が起きたのか分からぬうちに移動させられていたエルゼは軽く目を回してアイズにしがみ付く。

 

「ちょ、ちょっとアイズ!?いきなりどうしたのよ!?」

 

「駄目、エルゼにダンジョンは行かせない。私が許しません」

 

「いや、許しませんってアイズ……それをダンジョン狂いのアイズが言っても説得力無いんじゃ……」

 

「駄目です、許しません」

 

「あ、アイズさんが凄く過保護なお母さんみたいになってます……」

 

「うわぁ、今の姿をリヴェリアにも見せてあげたいわね。絶対に『お前が言うな』ってはっ倒されるわよ、あれ」

 

いやいやいやよ、と必死に首を振ってエルゼのダンジョン行きを否定するアイズに対し、ティオネとティオナ物凄く冷たい目線を送る。

一体どの口がそんなことを言っているのか、と。お前がいつも無茶してすっ飛んでいくのをこちらはどれだけハラハラして見守っているかと。

この件に関してはベートですら味方はしてくれないだろう、彼が稀にドン引きするくらいにアイズという女は無茶をする人間なのだから。

 

「わたしでも、だんじょんに、いけるんですか……?」

 

「行けるよー。神の恩恵って言うのをねー、ロキにちょちょーいってやって貰えば直ぐだよー!」

 

「だめ……!絶対に許さない……!」

 

「ア、アイズさんって意外と子供を持ったら過保護なお母さんになるタイプなんですね……」

 

「リヴェリアに似たんでしょ」

 

 

『誰がママだ。』

 

 

「いたっ!!」

 

スコーンと飛んできた桶のブーメラン。

思いっきり頭部に当たったティオネはそのまま湯の中へ沈み込んでいく。

もちろんその見事な投球を見せたのはファミリアのママことリヴェリア・リヨス・アールヴ。入浴時間の長いバカ共を呼びに来たのだった。

 

「……全く、黙って話を聞いていれば勝手なことを。止めても止めてもダンジョンに潜り込む命知らずが一体どの口を開いてそんなことを言っているのやら……なあ?」

 

「あうっ……」

 

「アイズ、いくら世話をするといっても、お前にその子の自由を奪う権利は無いのだぞ。どうしてもというのならば、せめてお前も少しは自重できるようになってから言うのだな」

 

「あううっ……」

 

次々と投げ込まれる直球ストレートにボコボコにされていくアイズ、もはや完全涙目である。

 

「それと、だ。もう1つ伝えておかなければならないことがある」

 

「なにリヴェリア……」

 

「本人の確認を取ってからになるが、エルゼに恩恵を与えたいとロキが言っていた。持っていて不利になることはないだろうからな、それをどう使うかは本人次第だ」

 

「うぅぅ……ダンジョン行っちゃ駄目ぇ……」

 

結局この後、これまでとは逆にエルゼに縋り付きだしたアイズを引き剥がすのに謎の労力と時間を費やすこととなった。

ただ、少しずつアイズ自身も自分と周りを見ることができるようになってきたことは好ましいことであると、ロキ・ファミリアの面々は感じていた。

……もちろん、他にも色々と問題点が浮かび上がっては来ているのも事実であるのだが。

 

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