イナズマイレブン 〜熱き太陽の導き〜   作:チェリブロ

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なんとか先月に引き続き更新できました。次の更新はさすがに時間かかりそうですが、もし順調に進めば全国の募集の方も締め切りが見えてくるかなぁと思うので、参加しようと思っている方は活動報告の方にお願いします。さすがにしばらく更新止まりそうな気もしてますが・・・


vs準決勝 双輝中学 終盤

前半終了ギリギリで同点にされてしまった。できれば点差をつけ、余裕をもって折り返したいところだったがやはり思い通りにはいかない。

 

皇帝ペンギン2号でもう一点を取りたいところだが、三人技という性質上隙は大きく手間がかかる。もう通用するとは思えない。威力は充分のため隙があれば話は別なのだが。

 

加えて守りを振りきるため全力疾走したこともあり疲労が溜まっている。途中から出場した麻宮はまだ余裕があるものの、獅子神と佐原は厳しい。特に最初から隙を見てシュートを打ち、初心者スタートの佐原はもう限界だった。

 

「いよいよ私達の出番というわけですね」

 

そうなると交代するしかない。今回が初出場の二人。相手のデータに一切かからないこの二人なら、相手のミスや隙を作ることが可能かもしれない。

 

問題があるとするなら、この二人にシュート技はない。つまりできるのはゴール前まで運ぶこと。そこからは自力で点を取らなければならない。皇帝ペンギンが使えない今、残された勝ち筋は少ない。

 

仮に取れたとしても一点が限界。すなわちもう一失点すら許されない。勝たなければならない。もっと自分に力があれば、皆に迷惑をかけずに━━━━━

 

「━━━テン・・・キャプテン!」

 

自分を呼ぶ声で意識を戻す。また悪いところが出てしまっていたようだ。

 

「さっきから元気ないなぁ?」

 

「あ、あー・・・ごめん。ちょっと疲れてさ・・・」

 

半分は嘘ではないが、半分は嘘である。たしかに疲れているが、体力的な疲れではない。あくまで精神的な疲弊である。

 

「おいおい、まだ後半もあるのにへばってんのか?」

 

「・・・無理そうなら交代した方がいいかもしれませんね」

 

「いやそれは大丈夫だから!!」

 

ただでさえ迷惑をかけているのに、このまま交代といくわけにはいかない。チームに貢献するべく無理やり元気な姿を見せ、そのまま交代せずに残った。

 

 

━━三日月━━━━麻宮━━━

 

━赤城━━━━━━━寺國━━

 

━━━━━━盤上━━━━━━

 

━淀屋━━━━━━━━伊喜━

 

━━支倉━━黒鉄━━裁野━━

 

━━━━━━東条━━━━━━

 

後半戦のフォーメーション。最終的にかなり大幅なメンバー入れ換えを行った。五人のDF、そして中盤にもディフェンス技の使える盤上と堅い守りを有したフォーメーションでまとまる。いくら双輝中学といえど、この守りを突破するのは容易ではないだろう。

 

「キャプテン、これ・・・ホントに点取れる?」

 

「隙をつけば大丈夫・・・だと思う・・・」

 

同時にかなり受け身ともとれる姿勢。点を取られれば厳しい展開になるとはいえ、同点なのだからこちらも点を取らなければ勝てない。

 

加えて相手の守りを突破できる手段が乏しい。レオロアーを使える二人はベンチ。折角の皇帝ペンギンも使えない。たしかに激戦ということもあって疲れは溜まっていた。交代自体は致し方ないのかもしれない。

 

だが守備寄りにした上で何か点を取れる策があるのかというとそういうわけでもない。

 

恐れたのだ。二得点などできない。もし一点でも取られたら勝つことはできなくなる。だから守りを固めた。

 

ただこちらはまだ新入りの二人という最後の策が残っている。これが不発に終わればもう何もないが、逆にこの二人の不意打ちなら一点は取れる可能性はある。もうそこに賭けるしかなかった。

 

「みんなー!後半も頑張ろうな!!」

 

双輝のキャプテン、天城はチームを鼓舞していく。この後半戦で決勝にいけるかどうか決まるのだから気合いは一層入る。

 

とにかく今は相手に攻められるのは絶対に避けなければならない。いくら守りを固めたとはいえ一点でも与えたら致命傷のこの状況。赤城はかなり緊張していた。

 

「全員!一回下がれ!」

 

「オッケー、ちょっと待ちや~。・・・よし!ゴー!」

 

「寺國!後ろは任せい!気合い入れてくるんじゃぞ!」

 

細かくパスを繋ぎ、隙を見て寺國へボールを出す。切り札をこんなにすぐ使ってしまうのはもったいないが、だからといって温存する余裕はもうない。

 

「ジグザクスパーク!!」

 

まずはジグザグにドリブルし、電撃をチャージ。ある程度進んだところで溜まった電気を解放し、相手を痺れさせ、早速相手を突破する。

 

「新入りのやつか!」

 

「なかなかやるじゃん!」

 

人が密集すればするほど動きが制限される。そんな混戦状態になっているところを細かいプレーで捌いていくのはさすがのテクニックといったところだろう。

 

「三日月先輩!あとは頼むっす!」

 

「アクロバットキープ!!」

 

残っている相手のDFも技を使って軽やかにかわし、FWへパス。三日月も勢いのままに突破し、残るは椈月の二人。

 

「こんな状況だし、もう出し惜しみしなくていいよねー!」

 

「まっ、決勝戦のために温存・・・なんていってる場合じゃなさそうだし、覚悟しなよ!」

 

二人は例によってモップを取り出した。そう、一人ではなく二人が同時に取り出したのだ。

「「ザ・スイーパー!!」」

 

「うわわっ!?」

 

取り出したモップで相手を挟み込むようにフィールドを叩き割る。足場が崩れ、相手を吹き飛ばしボールを奪取した。

 

「まだあんなヤベー技を隠してたっすか!?」

 

こちらが二人を温存していたように、相手も見せていない技があった。それを使ってくるということは向こうも余裕がないということなのだが、状況は最悪だった。

 

「イーグルグライド!!」

 

双輝中学は相手が崩れたのを見逃さない。ボールを奪い取るやいなや完璧な連携を見せつつ、ロングシュートで一気に畳み掛ける。

 

「思いどおりにはさせたらへんわ!!メガトンヘッド!!」

 

ここは淀屋のシュートブロックのみで止める。ロングシュートなら一人でも対応できる。

 

「今度こそ!ブレイズファルコン!!」

 

「シャイニングカット!!」

 

光壁の上をギリギリ越すことには成功。しかし完璧に避けられたわけではなく、少し当たってしまいバランスを崩してしまう。そんな隙を見逃す相手ではない。

 

「もーらいっ!」

 

「あっ!?」

 

着地に少し手間取った間に距離を詰めてボールを奪う。見ての通り守りには余裕があるものの、攻めの方は上手くいかない。攻めの人数はもう少し多くするべきだったかもしれない。

 

「いくよ!マッハウィンド!」

 

「コールドカッター!!」

 

「まだまだぁ!!ウルバンキャノン!!」

 

「・・・ザ・ウォール!!」

 

「クロスブレーダー!!あ、あぶねぇ・・・」

 

攻めが上手くいかないと、相手の攻めが苛烈になる。結局守りの方に負荷がかかってしまう。実際前半からずっとシュートを受け続けている東条の疲労はかなりのもの。

 

にも関わらず、後半戦はまだ一発もシュートを打てていない。早く一点を取り、余裕をもって対応できるようにしたい。

 

「さぁ、ドンドンいくっすよ!!」

 

「さっきのやつか!油断すんなよ!」

 

それでもチャンスは訪れた。寺國の先程のプレーで警戒したのか、意識がそちらに向いた。これなら連携技を打つ余裕がある。

 

「へへっ、甘いっす!三日月先輩!」

 

「しまっ、そっちか!」

 

対策されている可能性は高いが、どうせ他にはない。今ある最大火力を出すしかなかった。

 

「キャプテン!久々にいくんヨ!」

 

「・・・ハイバウンドフレイム!!」

 

高所からの落とすことで大きく動かすことに成功したバウンドフレイム。前回の試合で唯一得点を奪うことができたこの技に賭ける。

 

対して黒桐は右へ左へ大きく動くボールを確認するように少しの間だけ目で追うと、ゆっくり拳を後ろに動かした。

 

「チェーンボルテックス!!」

 

後ろに下げた拳を突き出すと、黒い鎖が拳を中心にして出現。鎖は渦のように広がり、ボールを包み込みシュートの勢いを止めた。

 

「そ、そんな・・・」

 

「悪いな。二回目なら対策の一つや二つは用意できる」

 

ボールが止められたこの瞬間をもって、今のチームの火力では双輝中学のゴールを突破できないことが確定してしまった。

 

シュートチェインをすれば希望はあるかもしれない。しかしそんな余裕があるだろうか。今回のシュートは不意を突いてようやく打てた一本。それを止められた。

 

こうなったらもう・・・勝ち目はない。

 

 

 

 

 

 

「ザ・スイーパー!!」

 

「ダメっす!どうやっても突破できないっすー!」

 

悪い流れは止まらない。シュートどころか相手の守りを崩すことすらできなくなっていた。どれだけ頑張っても最後には椈月達の手によって防がれてしまう。仮にこの二人を突破できたとしてもキーパーの技を破る手段がない。

 

「えへへ、何回来てもここは通さないよ!」

 

「コラー!こっちは頑張ってるんだからさっさと点取ってこーい!」

 

幸いなのはまだ点を取られていないということ。しかしこのまま耐久したところで延長になったら疲弊しているこちらが不利なだけ。となると後半で点を取るしかないのだが、後は知っての通りである。

 

「やべぇぞどうすんだこれ!?」

 

いつもは楽観的な考え方の選手も多い城翔中学だが、さすがに今回ばかりは焦っていた。

 

「隙ありっ!」

 

「しまっ━━━━」

 

たかが一点、されど一点。たった一点あれば希望が出てくるが、その一点がひたすらに遠い。

 

「どうしました?かなり疲れているみたいですが」

 

「そう、見えるかのう?いつもの筋トレよりはマシじゃ・・・!」

 

後半から入った選手も息があがっている。前半からの選手はもう走るのもキツそうだった。いくら止めても希望が見えてこないこともあり、身体も心も苦しい。

 

「・・・わりぃ、ミスった・・・!」

 

「大丈夫、まだ点を取られたわけやないで・・・!」

 

それでも諦めずに戦ってきたが、相手のシュートを止めきれなかった。コースは逸れてゴールは避けたものの、ラインを越えたため相手のボール。何も解決していない。

 

特に守りに重視しているメンバーは全員肩で息をしている。これ以上は耐えきれないだろう。

 

「へへっ、可愛いDFにああ言われたんじゃ、決めないわけにはいかねぇよな!俺達が決めてやるよ!!」

 

「懐かしい。リオンのことを女の子と勘違いして玉砕していたな」

 

「エースストライカーさん、それまだ言います?」

 

相手は軽口を叩く余裕を見せるが、シュートはまったく軽くない。重厚な一発が放たれる。

 

「「アンビシャス・グレイブッ!!!」」

 

先程よりも強い、気迫のこもった相手のシュート。どうすればいいだろう。東条だけでは止められない。ならシュートブロックするしかないが、それをすれば残りの時間戦えるだろうか。

 

自分のことは自分が一番よくわかっている。ここで守れば、もう体力は限りなくゼロになる。なんとか消耗を抑えつつ、守れる方法はないか。

 

「・・・いや」

 

そうして何になる?ここで消耗を抑えたとしても、体力の回復は微々たるもの。どうせ延長戦になっても戦えない。

 

後のことは考えず、今この瞬間に全ての力を出しきることにした。

 

「ザ・ウォォォォォルッッッ!!」

 

「コールドカッタァァァァァ!!」

 

「淀屋!伊喜!俺達もだっ!!」

 

「こうなりゃとことん足掻いたるわ!」

 

「初試合から随分と大仕事を任されましたね!」

 

五人のDFが最後の力を振り絞る。それぞれが技で、守れる技がない、もしくは技が出せない者も己の肉体を使って応戦する。

 

だが止まらない。試合開始直後ならまだしも、ずっと戦い消耗した選手達の全力では大した力にはならなかった。

 

「デスブレーダァァァァァッ!!!」

 

それでも成果がないわけではない。仲間からの支援を受け、最後の壁である東条も残った力をフルに使い真っ向から対峙。

 

「負けるかァァァァァァァァァ!!!」

 

雄叫びを上げて必死に踏ん張る。少しずつ刃にヒビが入るが、ボールの勢いも緩やかになっていき、止まりかける。これならいけると笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ━━━━━━━」

 

その油断がよくなかった。

 

 

 

 

 

 

 

割れた。刃が割れてしまった。二本の鉈の破片が宙を舞った。

 

それでも弾くことには成功した。気合いを入れて全力で守ったおかげでゴールは免れた。東条達は打ち勝ったのだ。

 

だが、DF達は先程のシュートブロックで力を使い果たした。東条も同じだった。それが何を意味するのか。

 

 

 

 

 

 

 

「あのシュートを止めるなんて、さすがだな━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━でも・・・この勝負は俺達の勝ちだ!」

 

弾いたボールを取るものが、誰もいなかった。

 

「クッソ、こんなとこで・・・負けてたまるかよ・・・!」

 

東条は立ち上がろうとするが、力が出ない。DFも同様、すぐにシュートブロックという余裕はなかった。

 

「キャプテン!決めてください!!」

 

「エースがやるべき美味しいとこ、今回だけはあげますよ!!」

 

「これで終わりだ!!スティングアロー!!」

 

仲間の繋いだボールを無駄にはしない。人はいるが、実質無人のゴールに向かって無慈悲なシュートが放たれた。

 

「やった!!僕達の勝ちだ!!」

 

「チクショオォォォォォォ!!!!!!」

 

あと少しで決勝戦の舞台に手が届いた。誰も責めはしないだろう。無名校がここまで来たのなら充分、むしろ快挙だ。それでも、ここまできたのなら・・・勝ちたかった。

 

そんな思いもむなしく、ボールはゴールへと吸い込まれて━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

「・・・アァァァァァァァァッッ!!!!!」

 

━━━━いこうかというその時、ゴールまで戻ってきていた赤城がらしくない雄叫びをあげ、その身体を割り込ませた。

 

「なっ!?キャプテン!?」

 

「いつの間に!?」

 

まさかこんな強引なやり方。そもそもここまで下がっていたことに気づいていなかったため、誰しもが驚いた。

 

「うわぁっ!?」

 

ギリギリだったこともあり、身体を使って止めにかかった赤城。反動でその場に倒れるが、そのおかげでボールは止まった。

 

「おい、キャプテン!!大丈夫か!?」

 

近くにいた東条が駆け寄る。強いシュートではなかったが、必殺技を直に受けているためダメージがないことはないだろう。

 

「俺はいいから・・・」

 

「モロにくらって大丈夫ってことはねぇだろ。誰かと交代した方が━━━━」

 

「それはダメだ!!俺はまだ、何も・・・!!」

 

交代を拒む赤城。彼は自分のせいで負けそうになっていると強く思っていた。自分の粗末な考えのせいでチームがピンチに陥っている。

 

またチームに迷惑をかけてしまったと酷く後悔していた。だから自分はどうなってもいいと言わんばかりに身体を張って止めた。

 

これでもまだ迷惑をかけた分を返せていない。ここで交代して、またチームメイトに迷惑をかけるわけにはいかない・・・と、交代することを拒んだのだ。

 

「・・・よくわかんねぇけど、わかった!おいみんな!キャプテンにばっかいい格好させんな!俺達も派手にいこうぜ!!」

 

心配ではあるが、これはチャンスでもある。相手の疲労もあって攻め込んでいた双輝中学はラインを大きく上げてきている。この隙を逃すまいと東条はもう一度力を込めてボールを前に飛ばした。

 

「止めたとはいえ疲れは抜けてないな!甘いぜっ!」

 

「おやおや、もう一仕事ですか。仕方ない、ですね!ワンダートラップ!!」

 

疲労からか上手く投げられずボールを奪われるが、カバーに入った伊喜がボールを奪う。なんとか止める。彼女は後半から参戦。比較的疲れがない。

 

「さあ、最後に笑うのは私達ですよ!」

 

もうこうなったらやけくそだと言わんばかりにDFも前に出て攻め込む。キャプテンのガッツを見せられ、疲れている場合ではないと言わんばかりに走り出す。

 

「体力も残ってないのにそんなに飛ばしたら、延長戦もできずに不戦勝ですよ!!」

 

「たしかにそうやわ。でも、後輩があんな頑張っとるのにウチら先輩が気合い見せんでどうすんねん!!」

 

後輩にだけ苦労は背負わせない。支倉は先輩の意地を見せるべく、冷気を纏わせたボールを空中に蹴り上げ、巨大な氷塊に閉じ込める。

 

「フロストクラッシュ!!」

 

氷塊を相手に向かって投げつけると、衝撃による揺れで相手の動きを阻害し、そこへ砕けた破片が飛び散り相手を吹き飛ばした。

 

「あー、もう今度こそ無理やわ。頼んだで!!」

 

「任されたんで、バリバリいくっす!ジグザクスパーク!!」

 

繋いで繋いで掴んだラストチャンス。ここを逃せば今度こそ勝ち目はなくなる。なんとしてでも突破しなければならない。

 

「本当にしつこいね!」

 

「頑張ったけどここでおしまいだよ~!」

 

「「ザ・スイーパー!!」」

 

立ちはだかるのは椈月姉弟。モップでグラウンドを叩き割り、地面を崩れる。

 

「・・・何事も経験してみるものだな」

 

「うそ~!避けてる~!?」

 

しかしボルダリングの練習をしてきた麻宮。崩れる足場を上手く渡っていく。まさか役に立つとは思わなかった。

 

「帝瑠!!」

 

それでも突破しきれない。バランスを崩しながらも取られるより前に三日月へとパスを出す。受け取った三日月はキーパーとのリベンジマッチに臨む。

 

「おっしゃ!一発派手にぶちかましたれ!!」

 

「うん!任せて!!」

 

あの時は連携技でなんとか一点取った。しかしそう易々と連携技をさせてもらえるはずがない。ましてや止められた時のリスクもある。自分が決めるしかない。

 

だが、プレッシャーはない。むしろ楽しいと感じている。ギリギリの戦いでしか感じることのできないこの感覚、それを望んでいるのだ。

 

「・・・絶対に、決めるんヨ!!」

 

しかしバウントフレイムでは決めることはできないだろう。だが策がないわけではなかった。

 

ヒントはあの練習。そう、麻宮も行ったボルダリング。正攻法で攻略することを諦めた彼女は、別の抜け道を見つけた。

 

 

 

 

 

 

 

「思いついちゃったんヨ~」

 

どう考えてもこれは人間の成せるわざではない。しかし入江は言った。使っていいのは足だけ、ボールを使い、光っている箇所のボタンを時間内に押す。

 

そう、足場があるとは言ったものの絶対に使えとは言っていない。何もボタンを押すのに自分が登る必要はないのだ。

 

彼女はバウンドフレイムの跳ねる性質を利用し、ボタンを押す作戦を決行した。

 

「よーし、いっけーーー!!・・・あれ?」

 

ただし実際にやるのは簡単ではない。少し蹴り方を変えるだけで跳ね方は大きく変わる。自由にコントロールするのは簡単なことではない。

 

「うーん、おっかしいな・・・でも諦めないんヨ!」

 

そこから足場登るのはやめ、ボールをコントロールする練習に切り替えた。自分の思うようにボールを誘導する、完璧なコントロール技術。

 

なんとなくビジョンはでき、少しずつ完成に近づいている。少しずつの進歩ではあるものの、動かせるようになってきた。

 

「試合まであと少し・・・ちょっと間に合わないかも・・・?」

 

ただコントロールを意識するあまり、威力がない。バウンドフレイムの炎にすら届かない火。威力を補う方法がなければ簡単に取られてしまうだろう。

 

威力とボールを動かす方法、彼女は試行錯誤を続けた。

 

 

 

 

 

 

結局のところ練習でも完成はしなかった。それだけ難しいことに挑戦し、ぶっつけ本番を迎えた。成功する確率は低い。それでもやるしかない。だって他に方法はないのだから。

 

不安な感情もないわけではなかったが、上等だと言わんばかりに笑みを浮かべた。こんなに楽しいことは他にない。できるとわかっていることをやったって仕方がない。

 

「ナハハ!やっぱりこうじゃなくっちゃ!」

 

いたずらっぽい笑みを浮かべ、手の平を合わせるとパンッと乾いた音が響く。すると周りに青白く光る火の玉が無数に現れ、その場でメラメラと燃え続ける。

 

その内の一つに向けてシュート。するとボールは火を吸収し、進行方向を別の火の玉の方へ変えていく。まるでボールが生きているかのような自由な動き、三日月は完全コントロールしていた。

 

「これが、うちの新しい技━━━━━

 

 

 

 

 

 

━━━━━狐火バレットッ!!!」

 

全ての火の玉を吸収した後したボールは大きな炎を揺らす。小さな火でも一つ一つが合わさることで強力な炎となり、ゴールへと向かっていく。

 

「チェーンボルテックス!!」

 

前とは圧倒的に火力が違う。直接対峙ぜすとも外からでも差がわかった。鎖がギリギリと音を立て、ヒビ割れていく。

 

「ぐ・・・ぐぐ・・・っ!」

 

双輝中学の思いは一つ。負けたくない。何か手はないか考える。考えても出てこない。負けたくはないが、認めなければならない。どうやらこの試合の勝敗は・・・決したようだ。

 

「・・・なあ、千刃」

 

天城は千刃に語りかける。千刃は何も言わず下を向いている。だが、思いは同じだった。

 

「勝ちたかったな・・・」

 

「・・・ああ」

 

静かに目を閉じる。そのすぐあとに均衡は破れ、ボールはゴールに吸い込まれる。城翔中学の得点、そしてホイッスルが鳴り響く。

 

城翔中学が決勝進出を決めた瞬間だった。




無事に準決勝終了。今回の試合はさすがに苦戦しましたが、なんとか勝利した城翔中学。ついに決勝戦への切符を手にしました。例によって一話、もしくは二話程度挟んだ後決勝戦を始めたいと思います

今回は特筆する必殺技はないのでコーナーはお休みです。基本的に参加者さんの技は活動報告に書いてるのでそちらを見ていただければ

それでは次回更新をお待ちください。そして双輝中学のメンバーを送ってくださった皆さん、ありがとうございました!!

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