あと最近無性に募集したい欲が出てきたのでふとした時になんか出すかもしれません。案はあるので存外すぐ出すかもしれないというどうでもいい報告でした。
その日の城翔中学は朝から騒がしかった。なぜそんなことになっているのか、理由は簡単だった。
「決勝!!決勝!!決勝戦だぁぁぁぁぁ!!!」
「うちらの努力の成果なんヨーーー!!」
誰が予想しただろうか。誰一人として期待していなかった。それどころか認識すらされていなかったサッカー部。今年に入ってようやく人数が揃い、近くの中学校と練習試合。
実践を通して意外といけると自信をつけたのも束の間、大阪三強の双輝中学と戦い敗北。本当の強さを見せつけられた。しかし心は折れず、負けるものかと練習を繰り返した。
そして開幕したフットボールフロンティア。流れの怖さ、試合中の怪我、後半からの追い上げなど苦難の連続だった。それでも一度は大敗した双輝中学を倒し、ついに決勝戦の舞台へ手が届いた。
「おめでとうサッカー部!!」
「まっさか決勝までいくなんてよぉ、四月の頃は想像できなかったよなぁ」
「正直一回戦勝てりゃ御の字だと思ってたわ・・・わりぃ、訂正する!今のお前達なら全国大会優勝も夢じゃない!」
「決勝は私達も応援する!だから頑張ってね!」
「負けたって誰も文句言わねぇからよ、全力で当たってこい!!」
同じ学校の仲間達も応援はしていたものの、まさか本気で決勝戦までいけるとは思っていなかった。数ヵ月で激戦を乗り越えるなんて予想できるわけがない。
最も実際には一年前から活動しているが、部員二名という状況を考えると今年が実質一年目なので数えなくてもいいだろう。それに一年目だろうが二年目だろうが、少ない期間で決勝までいけたという事実は誇るべきことに変わりない。
「おうよ!ワシらに任せとけぇい!」
「私達が大阪で一番強いんだって見せつけてやるわ!!」
やる気は充分。そしてここまでの戦いと練習で身に付けた力と知識、精神力。その成果を決勝戦でも見せてくれるだろう。
「しっかしもし優勝できたら俺らも鼻が高いわなぁ!親戚みんなに自慢して回るわ!!」
「別にあんたは何もしてないでしょ!」
「でもさでもさ、優勝したら俺達一生自慢できるよな!」
気が早いようで、周りはもう優勝した時のことを考えている。しかしサッカー部の面々はそうもいかない。もちろん嬉しく思っているが、次に向けて前を見ていた。
「・・・そろそろ時間だな。いこう」
「絶対優勝したるからな!お前ら見とれよ!」
「ああ!期待してるからな!」
学校中の応援を受け、決勝戦に向けて練習を開始する。予選最後の戦い。今まで以上に厳しい戦いになるだろうが、負ける気はない。悔いのないよう残った時間を全力で過ごす。
場所は代わり、校長室。ここでは監督である荒凱がソファに座り、校長と教頭の話を聞いていた。厳密には聞かされていたというのが正しいかもしれない。
「いやぁ、まさかうちの学校から全国大会に出場する部活が出てくるとはね。いやはや感慨深い」
教頭や校長も例外ではなく、サッカー部が活躍するなど思ってもいなかった。それどころかサッカー部ができていたことも小耳に挟んでいた程度で気にしてすらおらず、ここ最近でようやくそんな部活うちにもあったな、思い出した。
「これこれ、気が早い。次の決勝に勝たねば全国にはいけんのだからね」
「おっと、これは失礼しました。しかし決勝に勝たずとも・・・いや負けた時の話などやめましょうか。折角ですし、勝ってもらいたいものです」
「そうだね。もうすでに充分話題にはなったし負けてくれてもいいんがね?何せ優勝したらしたらで献金やらなんやらで金も入る。まあ負けたとて問題はあるまい
・・・いやいや、どちらに転ぼうと甘い蜜を啜れるとはね。こんなに美味しい話はないよ荒凱君!」
「・・・はぁ、そうですか」
まったく気のない返事をする荒凱。校長と教頭は全く気にしていない。いや、気づいてすらいなかった。それほどに受かれている。
「仮にですよ、仮に優勝すればどれほどの反響があることか・・・一気にサッカー強豪校の仲間入り。いやぁ、入学する生徒も増えるんじゃないですか、校長」
「はっはっはっ、そうなると嬉しいね。しかし荒凱先生も監督デビューして一年もたたずに全国大会デビューとは。これまた話題性がある。あとサッカー部キャプテンの・・・なんだったかな?まあとにかくあの子にも取材の練習をさせておかないといけないね」
「我が校の名を全国に広めるチャンスですからねぇ。くだらない失言でもされたら困りますし、今度取材の練習させておきますか?」
「ああそうだね。しっかり教育しておくようにしよう」
ここ数日だけでも取材の話はかなり来ている。サッカー部すらなかった学校。一人の生徒がサッカー部を結成し、優勝しようものならイナズマイレブンの再来となる。メディアからすればこれほど話題性があるものはない。 需要と供給は釣り合っているといえばいいのだろうか。
校長としても断る理由がないため本当ならすぐにでも取材を受けたいところだが、先程の理由も含めて今は断っている。最も表向きは大会に集中力を削がせたくないというそれらしい理由をつけている。
ひとまず現状はサッカー部への取材は禁止、代わりに校長や教頭が取材を受けるという形でメディアも納得し、今はその取材や試合の特集などを組むだけに留めていた。
「私も取材に慣れてきてね。最近は鏡が手放せなくなってしまったよ。はっはっはっ、今度いい時計でも買いに行こうかな?」
「どうです、荒凱先生。あなたもメディア出演をなさっては?悪くないものですよ、有名人の気分は」
「いえ、私は結構。大したことはしてないので」
「では今まで通り我々が代わりに出ようか。何せ今日も取材が入っていてね。まだ時間はあるんだが・・・いやぁ忙しいものだよ」
「(・・・あんたらは何もしてないんだがな)」
荒凱は一方的でつまらない話を適当に聞き流しながら、この後も校長達の話に付き合った。
「さて、ここらで一休み・・・としたいところだが、もう一頑張りとしようか」
「では佐原先輩。練習に付き合ってもらえませんか。少し修正したいところがあるのですが」
決勝戦を前にいつもより気合いの入った練習が始まる。練習は楽ではない。鍛えるのは苦しいし、それだけやってもボロ負けしたこともあった。
「おい、動きが遅いぞ!それでは攻撃される一方だ!!一歩目をもっと速く出せ!」
「う、うす!」
「よっしゃー!!ガンガン打ってこい!!俺が最後の砦だからな!!どんなシュートも通さないぜ!!」
「正面だけじゃなくもっと全体をカバーしないと!!簡単に通されるんヨ!」
努力は必ず実を結ぶ、というわけではない苦しい現実。それでも不思議と辞めようとは思わなかった。練習後の爽快感は心地よかった。強敵にも諦めずに戦い、勝つことができた時の喜びは最高だった。
「よっしゃぁ!もう一丁!気合い入れたるわぁ!!」
「こんなもんやないでぇ!全部凍りつかせたるわ!」
何よりも楽しかった。実戦の中で努力の成果を感じることができる。現に決勝戦の舞台にまで来ることができたのだ。自分達がどこまでいけるのか、楽しくて仕方なかった。
「ガハハハハ!!ワシの筋肉が躍動する!!心が踊るわい!!」
「やれやれ、今日もうるさいですね。まあ・・・気分は悪くないですけど」
次の試合が終われば結果はどうあれ一区切りがつく。皆が笑顔で終われるように地区予選決勝に向けて、期待に胸を踊らせ練習に励んでいた。
━━━━━━ただ一人を除いて。
「はぁ・・・はぁ・・・」
誰もいない修練場でひたすら練習を続ける赤城。そこに笑顔などない。最初は誰よりもサッカーを楽しんでいたはずのキャプテンは誰よりも重荷を感じていた。
「もっと知識が・・・もっと力が・・・」
前の試合、守りに重視したのは間違いだったのか、それとも正解だったのか。結果的に勝てたのだから守ったのが正解だったといえばそれまで。
実際スポーツは結果論で考えるべきことも多い。練習なら過程が大事だが、本番なら結果がすべて。赤城がやった選択は決して間違っていなかった。
だが今の赤城はそう思う余裕はなくなっていた。
あの状況、耐えたところで意味などない。むしろ選手層の厚さから長引けば長引くほどこちらが不利になる。考えれば考えるほど自分の選択が無意味だったのではないかと思えてくる。
「勝たなきゃ・・・みんなと一緒に勝たなきゃ・・・でも、自分に何ができる・・・?」
自分は何か役に立てたか。身体を張って止めた?別に自分である必要なんてなかった。もっと力があればそんなことをする必要もなかった。
追いついても皆はすぐ先へと行ってしまう。いっそマネージャーになってサポートに従事した方がまだみんなのためになるかもしれない。
しかし、それは嫌なのだ。わがままな話だが、それは嫌だった。
サッカーはしたい。皆と一緒に試合に出て、共にプレーして、喜びや悔しさを分かち合って楽しみたい。でもチームメイトに迷惑をかけるのも嫌だった。
「どうしたら・・・どうしたら・・・!!」
始まった頃の最初の元気はどこへやら。人前でこそ表に出さないが、彼の心はボロボロになってしまった。どうしてこうなってしまったのか。
無理もない。彼のサッカーをしたいという思いは大義があったわけではない。ただ寂しかっただけ。彼は一人っ子、加えて両親も家に帰る頻度が少なかった。ゆえに誰かと一緒にいたいという気持ちが人より少しだけ強かった。
そんな時に見たイナズマジャパンの姿。彼には眩しく見えた。子供がヒーロー番組を見て、自分もああなりたいという憧れ。さらにたくさんの仲間に囲まれる姿に強く惹かれた。突発的な憧れ、それが始まりだった。
実際になってみたらわかる苦しみ、悩み、焦り。屈強な肉体もなく、他を出し抜く知恵もなく、強靭な精神もない。何一つない一般人がヒーローになれるわけがなかった。
すぐに事実に気づき、諦めて止まることができれば良かった。しかし彼の場合、気づいた頃にはあまりにも進みすぎてしまっていた。不安なまま事が進んでしまったのだ。ここまで来てしまった以上、今さら止まることなどきない。
「強くなりたい・・・もっと強くならなきゃ・・・!」
不安な気持ちを失くそうと練習に没頭しようとするが、頭から離れない。余計なことを考えながら練習していたせいなのか、ボールが明後日の方向へ飛んでいってしまう。
「あっ・・・」
ボールが壁に当たり、乾いた音が響く。蹴り損ないのため大した威力ではないはずなのだが・・・壁が凹んだ。
「・・・・・・え?」
いや、厳密には凹んだわけではない。ここは隠しボタンになっていた。一定以上の力で押すと、壁が動くシステムになっていたのだ。
「な、なんだろう?」
隣の壁がゆっくりと音を立てて開く。人一人が入れるぐらい小さなスペースが出現する。少し躊躇ったが、恐る恐る中に入る。特に何もない空間だが、奥の方に光るものを見つけた。あったのは紫色の石だ。
前にここを使っていた人の忘れ物だろうか。見たことないものだが、とても綺麗で魅入ってしまう。宝石というわけではなさそうだが、その石は魅力的で、もっと近くで見たいと手を伸ばす・・・が、途中で手を止めた。それ以上に別に気になるものを見つけたからだ。
「・・・秘伝書?」
もう一つ置かれていたのは秘伝書。必殺技を習得するためのアイテムである。一応店でも買えるもので、大半の選手はまずこれを使って技を覚える。
一応相性などもあるようで、覚えられなかったり覚えても大した威力にはならなかったりと種類は千差万別。何にせよ決して手に入らないような珍しい代物ではない。
ただ、なぜこんなところに秘伝書があるのか。それはわからない。誰かが置き忘れるにしては厳重すぎる。意図的に隠したようにしか思えないところに置いてあった。
「ええっと・・・シュート技かな?」
あからさまに怪しい秘伝書だが、無言で内容を読み始める赤城。勝手に読むことに罪悪感を感じつつも、もしかしたら何か変わるかもしれないと一抹の希望を持って読み進める。
「・・・・・・」
結論から言うと、この技がどれほどのものなのかはわからない。だが今の彼に選択肢などない。目の前にあるものにすがるしかなかった。
「試してみようかな・・・」
赤城はこの秘伝書の内容を会得することにし、先程の小さな石はいったん放置する。もし大事なものならまた取りに帰ってくるだろうと考えたからだ。
そうして練習を再開するしてみてわかった。この秘伝書の技は簡単な技ではないようだ。相当レベルは高い。ただ幸いにも相性は悪くなさそうだった。
「強く・・・なるんだ。みんなが笑って終われるように・・・もっと強くならなきゃ・・・!」
決勝戦まで残り僅か、そこで待ち受ける試練に打ち勝つことはできるのだろうか……。
次回更新は未定ですが、まだ諦めておりません。仕事に勝てるわけない?バカ野郎勝つぞ俺は