元殺人鬼は提督になったとさ   作:ツメナシカワウソ

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主人公の化け物度がドンドン進行していきます。どうしましょ。


第13話『真撃の鬼神』

横須賀鎮守府旧入渠施設。先日の深海棲艦による大規模襲撃事件で甚大な被害を受けたこの場所で、楼牙と裕翔は喪服姿で立っていた。どちらもいつものような表情はなく、重苦しい顔をしている。特に裕翔は、背負った苦しみが今にもはち切れてしまいそうな雰囲気を纏っており、楼牙にもそれが感じられた。

 

「・・・裕翔」

 

「なんです?楼牙さん」

 

至って普通の口調で応えたつもりだったが、どこか素っ気ない返事となった。それを受け入れ、楼牙は再び口を開く。

 

「多くの犠牲が出た」

 

「えぇ。全部あの忌々しい少佐のせいでね」

 

「いや」

 

「え?」

 

強く否定の意を示した楼牙に、裕翔は驚愕する。そして、不安定になっていた彼の心を大きく揺さぶった。

 

「まさか・・・貴方も彼奴らの仲間なんですか?そうなんでしょう?あの時・・・砲弾が撃たれた時、貴方なら止められた筈だ!貴方が動いてくれれば僕は・・・僕は!電を失わずに済んだんだ!なのに!」

 

そこまで言うと裕翔は楼牙に掴みかかる。それだけでなく、髪も青く変化する。そして目には、涙が浮かんでいた。

 

「貴方は動かなかった・・・彼女達を助けなかった!何故ですか!貴方が・・・貴方が!」

 

「・・・すまなかった。あの時・・・オレも動けなかったんだ。だが、助けられなかったのは事実。恨むならいくらでも恨め」

 

「わかってますよ・・・貴方でも動けなかったことぐらい。貴方に当たっても、彼女は帰ってきませんし。でも・・・すみません。忘れてください」

 

裕翔はそう言って楼牙を離すと、嗚咽と共に涙が溢れ、遂に堪えていた悲しみが決壊した。そして彼はまた泣いた。枯れることなどない涙を流し続けた。楼牙はそれを見守っていた。否、見守ることしかできなかった。罪悪感と責任感に縛り付けられた彼に、泣くことも、裕翔に寄り添うことも、許されなかった。しかし、それを無作法にも打ち壊す警報の音が鳴り響く。この時、楼牙の中で何かが切れた。そして闘争本能と怒りと憎しみに支配され、身体がそれだけで再構成されていく。そして眼前の海には敵、敵、敵・・・

 

 

 

 

 

 

「GRRrRrrrrRrrrrrOooooooooOOAaaaaaaaaaaaaaAAaAaAaaAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

その時、この世に真正の鬼神が降り立った。身体は何倍にも巨大化し、白く、荒々しい髪は逆立ち、神をも殺すような眼力を備えた鬼のような形相を持ち、握った刀は黒く禍々しいモノへ変貌する。更に皮膚はまるで鎧のように変異し、最早全く人間の形を為さなくなった。そして、その雄叫びは海に蔓延る悪鬼羅刹をして、恐怖でその身が凍りついた。しかし、それすら脳が理解する前にそれらは海の藻屑と化した。限界を超えた鬼神の怒りは、無限の斬撃となって仇なす者を全て葬り去ったのだ。それは、例え日本の裏側でも例外はない。こうして地上で観測されていた深海棲艦は全滅した。だが、そんなことでは怒れし神を鎮めることは出来ない。程なくして、かの神は海の底へと進んでいった。勿論、深海棲艦の多くが防衛のために突撃したが、触れることさえ叶わずその気迫に殺された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻。深海棲艦本拠地にて。

 

「キ、緊急事態発生!超巨大反応ガコチラへ接近中!総員!大至急退避!」

 

突然現れた怒りの神に、その怒りの矛先を向けられた憐れな者達は今まで見たこともないような速さで一目散に逃げていく。逃げていく以外の者は絶望に直面し、既に息絶えている者だろう。何故なら、狂人でさえ一目散に逃げ出していたからだ。

 

「慌てるな我が艦隊よ!せっかく増えた仲間を大量に死なせることは悲しいが、また増やせばいい!だから今は走れ!海の果てまで走れ!私と共に走れ!」

 

深海棲艦へ寝返った幸彦はそう叫びながら、海の中を凄まじい速さで駆けて行った。しかし、鬼神に追いつくことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「幸彦・・・貴様ヲ、殺ス!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして振り下ろされた裁きの剣は愚か者の心臓を貫き、海を赤く染めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全てが終わった後、楼牙は鎮守府へ戻り、裕翔の元へ向かった。

 

「あれ、どこ行ってたんですか楼牙さん?ついさっき天龍が探してましたよ」

 

平静を装う裕翔だが、やはり以前とは違ってどこかぎこちない雰囲気があった。それを感じ取った楼牙だが、一切気にすることなく懐に入れていたものを取り出した。

 

「うっ・・・!?なんですかそれ・・・血生臭くて吐きそう」

 

そこには、神の怒りを買った愚か者の首があった。

 

「奴の首を取ってきた。彼女も浮かばれるだろう」

 

楼牙はそれだけ言うと、取ってきた首を裕翔に手渡して去っていった。

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