元殺人鬼は提督になったとさ   作:ツメナシカワウソ

5 / 14
テストが終わって早くも課題が大量に出されました。理不尽だ。


第4話『初陣する戦獣』

横須賀鎮守府近郊海域。手に入れたばかりの得物を鞘に収め、海を歩く男が一人。服装はボロボロの着物であり、髪は全く整えられていない白髪。そしてその目は、まるで新たな戦いを今か今かと待ち受ける獣のようであった。

 

「フゥ・・・」

 

その獣・・・楼牙は静かに息を吹き出すと、本物の獣のように姿勢を低くし、クラウチングスタートのような形をとる。更にその体勢でさっきからうるさい懐の無線機を取り出し、耳の押し当てる。

 

『警告。前方700mに敵性反応あり。非戦闘員は速やかに退避せy』

 

バキッ。

 

新たな獲物が来た。そう直感した楼牙は、思わず無線機を握り潰した。その破片が海に落ちる頃には、そこに彼の姿はどこにもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方。横須賀鎮守府近郊海域戦闘区域にて。突如として現れた深海棲艦達を前に、巡回していた天龍(てんりゅう)、龍田(たつた)、及び響(ひびき)、暁(あかつき)を中心とする第六駆逐隊は劣勢を強いられていた。

 

「チッ・・・敵艦、連撃来るぞ!」

 

「わかってるさ!・・・でもこの量をどうやって凌げと!?」

 

敵flagship級戦艦の連撃が始まる。一隻であれば彼女らでもなんとか勝てたであろう。問題は、それが5隻あったことだ。完全に包囲された状況下、集中砲火を浴びる艦娘達。遂に響が大破してしまう。

 

「うぐっ・・・」

 

「響!?」

 

大破。それは艦娘にとって命の危険を意味する言葉である。通常、大破後10秒間は『艦の加護』と呼ばれる特殊な力によって無敵状態となるが、それが過ぎればただの人間と変わらない、弱い存在となってしまう。更にその状態で攻撃を食らえば、艦娘にとって死を意味する轟沈となる。

 

「みんな・・・私は大丈夫だから、早く撤退して・・・」

 

「何言ってんだ!お前一人見殺しにできるわけないだろ!?」

 

響の言葉に対し、天龍が叫ぶ。死は、戦うことを宿命とされた彼女達にとっても辛いことなのは変わりない。

 

「でも・・・もう私は・・・」

 

響がそう言いかけた時、再び敵艦の連撃が迫る。

 

(ああ。もう終わりか・・・死にたくないなぁ・・・)

 

彼女がそう考えた時だった。

 

 

 

 

 

 

「Grooooooooooooaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!」

 

 

 

 

 

突如、獣のような咆哮が、割れんばかりに木霊する。

 

「!?」

 

敵艦もその轟音に耳がやられたのか、動きが完全に止まる。しかし、驚くのはまだ早い。

 

「なっ・・・あれは、提督!?」

 

「はぁ!?嘘だろ!?なんで提督が海の上を走ってんのさ!?」

 

戦いに飢えた獣が、赤く光る刀を携え、戦場に馳せ参じたのだ。

 

「Grrrrr....」

 

その声は、獣のように荒々しく、敵を威圧する。

 

「Grroooooo!!」

 

その剣戟は、修羅のように凄まじく、敵をバターのように斬り裂いていく。その場に彼女達の居場所はなく、ただ呆然と、獣の乱舞を見ることしかできないのだった。

 

「ねぇ、電(いなづま)」

 

「ど、どうしたのです?暁」

 

「本当にあれが・・・あれが、司令官なの?」

 

恐怖に駆られた暁が、金色の目をしており、茶色い長髪をアップヘアーにして束ねている艦娘・・・電と身体をぴったりと密着させる。こうでもしなければ、あまりの恐怖でどうにかなってしまいそうだったのだ。

 

「はわわ・・・わからないのです。あんなに優しそうだったのに、こんなことになってしまうなんて・・・」

 

少女の嘆きも届かず、獣は目の前の敵が木っ端微塵になり、海の藻屑となるまで刀を振るうことをやめない。既にその白髪は血で真っ赤に染まっており、身も心も血で染まっていってしまうのではないかという不安を掻き立てる。しかし獣は、止まるどころか一層その刀を強く、速く振るう。最早彼女達では視認出来ないほどまで高められた速度での斬撃は、戦艦を失い、慌てふためいていた小さな深海棲艦にも及び、次々と殲滅していく。やがて、辺り一帯の海が血で染め上げられた頃、獣は猛々しく雄叫びをあげる。自らの強さを誇示するかのように。

 

 

 

 

 

 

 

 

「Gurrrroooooooooooooooooooooooo!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2時間後。艦娘達は入渠施設で傷を癒し、楼牙は執務室で裕翔に正座させられていた。

 

「えーと・・・まぁ・・・えー・・・もう私の予想の斜め上を行くことが多過ぎて何処からどう突っ込めば良いのやらですが・・・」

 

「・・・反省はしている。だが彼女達は助かった」

 

「いやまぁそれについては賞賛されるべきだとは思ってますよ?それでも敵艦からのドロップ品を切り刻むわ、ペンギンがめっちゃ執務室にいるわ、相当貴重な資源を自分の武器に使うわってどういう神経してんですか?」

 

ただでさえ上司が狂人なので気苦労が絶えない裕翔。艦娘達と共に血に塗れた楼牙が帰ってきたときはストレスで胃に穴が空くかと思ったほどだ。

 

「いいですか?次からは絶対オーバーキルはしないことです。ドロップ品は貴重なんですから!マジで!」

 

「・・・すまない」

 

かくして獣は、躾というものを覚えた。

 




因みに躾と言ってますがそっち系の番外編を出す予定はありません。期待しても無駄です。僕は女の子と女の子か男の子と女の子かの二択なんですよ残念ながら。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。