元殺人鬼は提督になったとさ   作:ツメナシカワウソ

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昨日友人に読ませたら「ペンギンがほぼワド●ディじゃね?」と言われました。確かにそうかもしれない。


第6話『断海叫砲』

横須賀鎮守府訓練施設。数日前から聞こえるようになった鉄と鉄が派手にぶつかる音が今日も聞こえる。それも当然。天龍をはじめとした近接武器を使う(三人しかいないが)艦娘達へ、楼牙が剣術の指南をしているからだ。

 

「とりゃあ!」

 

「・・・」

 

天龍の渾身の一撃を、澄ました顔で受け流す楼牙。それを真横で見ている休憩中の龍田は、自分の得物である薙刀をへし折られて明石に修理してもらっている最中であった。そんな話をしている間も天龍は楼牙に刀を振るい続けるが、一回足りとも当たっていない。

 

「動きが単調すぎる。すぐ動きに騙される。力任せに刀を振るうな」

 

刀を振るう度に淡々と楼牙からの指摘を受け続ける天龍。徐々に頭に血が上ってきたようで、その刀の振り方は型からかけ離れためちゃくちゃなものになっていく。

 

「おらぁぁぁ!」

 

「っ!?」

 

その姿の何かに恐れをなした楼牙は、思わず本気の力で天龍の得物を弾いてしまった。さて、普通の人間の何倍もの戦闘能力を持つ艦娘の攻撃をいとも容易く受けきれる男が本気を出したらどうなるか。その答えは一瞬にしてわかった。

 

 

 

キィン!!

 

 

 

鋭い金属音が鳴った後、天龍の手にもった刀だったモノから刃が喪失していた。しかし、楼牙はそれが何処に向かうかという事を全く考えていなかった。刃は一直線に、訓練施設の外へ飛んで行った。

 

「あっ・・・」

 

「・・・」

 

その場に流れる沈黙。やがて楼牙はため息を吐き、一言。

 

「取ってくる。待ってろ」

 

「はぁ!?何処まで飛んだかわかんねえのにとってくるとかバk」

 

天龍が最後まで文句を言い終わらない内に、弾丸さえ止まって見えるような速さで楼牙は飛び出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻。横須賀鎮守府近郊海域にて、一部の人ならざる姿をした化け物・・・深海棲艦が集団での攻撃を開始しようとしていた。そんな中、本来なら存在してはいけない筈の、人型の深海棲艦が先頭に立つ。その深海棲艦はコートのような服を着ており、服に付属した黒いフードを頭にかぶっている。また、胸から臍にかけては素肌が露出している。背中にはリュックサックのようなものを背負い、首にはアフガンストールのようなものを巻くという格好であり、何よりも目を引くのはその笑顔。深海棲艦というものは感情を読み取ることが至極難解な無表情をしていることが多いため、このような個体は特に珍しいだろう。

 

「キキキ・・・オマエ達。準備ハ整ッタカ?」

 

笑顔を浮かべたままの個体はそう言うと、自分の後ろにいる大勢の深海棲艦の無言を聞く。

 

「ヨロシイ。デハ・・・横須賀鎮守府殲滅作戦ヲ開始スル」

 

その言葉を皮切りに、全速力で全艦が横須賀鎮守府の方角へ突撃していく。その姿はさながら怪物の艦隊であり、熟練の艦娘でも勝てるかどうかは怪しいだろう。否、勝てる確率は恐ろしく低い。何故なら先頭で誰よりも速く航行しているのは戦艦レ級。かつて、多くの艦娘を轟沈させた恐怖の象徴であるからだ。そのスペックは計り知れず、これから襲撃されるであろう横須賀鎮守府も最大級の警戒をしている。しかし、彼女達は進む。その狂気的な笑顔と共に。

 

 

 

 

 

ーーーーだが、その進撃は一瞬にして止まった。

 

突如、謎の飛行物体が艦隊の右翼を急襲する。

 

「グァァッ!?」

 

「何事ダ!?」

 

多くの深海棲艦が移動を停止した。それが、彼女達の敗因だろうか。気付いた時には100近くあったであろう軍勢が、たったの6隻にまで減っていた。更に驚くべき事に、生き残りの目の前には、長い白髪を持つ男が、鋭利な鉄の何かを持って立っていた。

 

「お前ら・・・何の用だ?」

 

男は圧倒的な殺気を放ち、歴戦の猛者であるレ級達を怯ませた。それは彼女達に大きな焦りを生んだ。恐怖で身体が動かないという体験を、彼女達はしていなかったためだ。艦娘を何千何万と殺し続けていく内に自分の力を過信していたのもあるかもしれない。兎に角、彼女達は絶対的な強者を前に、完全に思考を停止させていた。それを見た男は、まるで平和ボケでもしているかのように頭をボリボリと掻くと、こちらに近づいてくる。

 

「答えられないか・・・」

 

やがて男は、彼女達の頭を纏めて鷲掴みにし・・・

 

「いいかお前ら・・・

 

 

 

 

 

用も無えのに・・・

 

 

 

 

 

 

 

こんな所に・・・

 

 

 

 

 

来るんじゃ・・・

 

 

 

 

 

ねぇぇぇぇeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee!!!!!」

 

 

咆哮にも似た怒鳴り声と共に、深海棲艦達を海の底まで叩きつけたのだ。重要なのはそこではなく、彼の叫んだ場所から海水が消えていることだ。海の底がくっきりと見える状況である。つまり男は、深海棲艦達を地上から約1000km程離れた場所まで叩き落としたということになる。というか叫び声だけで海に穴を開けたのである。

 

「・・・帰るか」

 

そんな人間離れした所業をやってのけた彼は、何事もなかったかのように海の上を歩きながら鎮守府へ帰ろうとした・・・その時である。

 

海面から、艦娘が浮き上がってきたのである。

 

「ッ!?」

 

これには流石に男・・・楼牙も驚いたが、直ぐに艦娘の容体の安否を確認するために側へ駆け寄る。癖っ毛で緑色の長い髪を高い位置でハーフアップにして動物の耳のような形の黒いリボンを付け、前髪は左右に黒いヘアピンを2つずつ留めているその艦娘は、よく見ると酸素を身体に取り入れるべく小さな胸が上下しているのがわかる。

 

 

 

「・・・」

 

 

 

楼牙は大いに迷っていた。また何かやらかせば裕翔からの説教は免れられない。しかし一人の少女をここで見殺しにするのは寝覚めが悪い。そして考えるに考え、5分後。遂に楼牙は行動を起こした。彼は目を覚まさない艦娘をお姫様抱っこの形で抱えると、そのまま戦闘機さえ余裕で追い越すであろう速度で鎮守府まで駆け出した。途中、何人か艦娘が戦場跡に向かっているのを見たが、そんなことは楼牙にはどうでもいいことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

横須賀鎮守府執務室。事務仕事を楼牙が放棄して勝手に海へ出ていることを天龍から聞いた裕翔は、ペンギン達の手を借りながら黙々と作業を進めていた。ペンギン達もいつもの仕事ぶりは健在で、書類を見事な手(羽?)捌きで整理していく。そしてペンギンには負けていられまいと裕翔にも火がつき、執務室の机から約40分で書類の山が消えた。

 

 

 

「ふぅ〜。ご苦労様。ご褒美ですよ〜」

 

 

 

裕翔は優しげな声でそう言いながらイワシをペンギンに1匹ずつ与えていく。

 

 

 

「しっかし・・・こうして動いているのを見ると可愛く思えてくるのは僕だけなんですかね?」

 

 

 

裕翔はそう呟きながら、ペンギンの一羽を膝の上に乗せ、撫で始める。実のところ、ペンギン達が執務室に大量にいた時は楼牙の身勝手さに呆れたが、ペンギンそのものにおいては愛着を持っていたのだ。そんな彼にとって、ペンギン達と過ごす時間は日々のストレスの解消に役立っていた。

 

 

 

「よ〜しよしよしよし良い子だな〜♪」

 

 

 

赤子をあやすような声で、ペンギンを思う存分可愛がる裕翔。当然、皆の前では見せられない一面である。だが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パリィィィィン!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然執務室の窓ガラスが破壊され、少女をお姫様抱っこした楼牙が飛び込んできた。

 

 

 

「・・・」

 

 

 

「すまない。窓は空いていると思った。あと艦娘を拾った」

 

 

 

呆れてものも言えない、というよりペンギン達と戯れていたのがバレたのではないかという思いが裕翔の脳を覆い尽くす。事実、裕翔の膝の上にはペンギンが三羽ほど座っている。

 

 

 

「えー。あー。えー・・・見ました?」

 

 

 

敢えて何がとは言わない。

 

 

 

「ペンギン、好きなのか?」

 

 

 

その言葉で、完全にバレたと直感する裕翔。しかしポーカーフェイスは崩さない。

 

 

 

「楼牙さん?」

 

 

 

「何だ?」

 

 

 

「天龍達の武器をへし折ったことはチャラにしますし、勝手に海へ出て行ったのもまぁいいでしょう」

 

 

 

「そうか」

 

 

 

「でも条件があります」

 

 

 

「何だ?」

 

 

 

楼牙が首を傾げると、裕翔はずいっと顔を近づかせる。

 

 

 

「くれぐれも此処で起きたことは黙っているように。いいですか?く れ ぐ れ も です!絶対ですよ!絶対!」

 

「お、おう」

 

てっきり説教が飛んでくると思っていた楼牙は、鳩が豆鉄砲を食らったような顔で執務室を出ていった。




レ級は本当は即死させたい所でしたが、また別の機会に。
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