「そんなわけで、昨日の講義から一夜明けた今日!私史上初の艦隊作戦会議を始める!」
部屋にいる叢雲と霧島はティーの宣言を冷たく流す。
「2人ともテンション低くない?」
「作戦会議にテンションは不要よ。」
叢雲の反応は部屋の温度を更に下げる冷たさだった。
霧島はホワイトボードを全員が見える位置に持ってきて、資料や地図や必要なものを貼っていった。
「で、出撃予定はどこら辺なの?」
「ん?どこで戦えばいいんだ?」
叢雲はティーを睨む。
ティーは慌てて答える。
「いやだって、私、何も知らされてないから。実際どこまでが深海棲艦の支配領域なのさ。」
ティーは霧島に助けを求めるように視線を移す。
霧島は地図にマグネットを1つ置く。
「ここが、最前線のラインです。磁石側は深海棲艦の海域です。」
「敵戦力は?」
「こちらの写真の艦種が確認されています。」
霧島はホワイトボードに写真を6枚貼る。
「そーいや、アンタは深海棲艦って見たことあるの?」
「……あるぞ、数年前にな……」
不自然な間を持って答えたティー。叢雲はその間を問い質すような野暮なことはしない。
沈黙が生まれたが、すぐに霧島が咳払いをして空気を戻す。
「以前はこの編成で敗北しました。」
6人の艦娘の名を書き連ねる。
「んで、その結果を受けて霧島、お前ならどんな作戦を立てるのさ。」
霧島はしばらく考えた後、前回の報告書を手にする。
「前回は空母を中心とした作戦で敗北を喫しました。境界線ですから突破より持久戦に向いた敵艦が常在しているみたいですね。」
霧島は新たなる編成を書き始めた。
「昼は相手を削る程度で、夜戦での撃退を目指すのがベストかと。轟沈は狙えなくても常在している艦を撃退できれば進軍がしやすくなります。まずはそれを目指すのはどうでしょうか?」
霧島が書いた編成は
金剛、川内、夕立、雪風、麻耶、千歳
だった。
「前回も出撃しているのは千歳と川内だけか。流石にメンツを変えすぎじゃないのか?」
ティーは編成を見て質問する。
しかし先ほど霧島が編成の基準を述べている通り、前回中心だった空母は夜戦に強い駆逐艦に変更の必要がある。
「こちらの空母を減らした分、対空に強く出るために重巡は麻耶に変更したいですね。」
霧島は編成の意図を伝える。
「旗艦の戦艦の変更理由はあるのか?」
霧島は答えられない。
「あー、榛名さんって体調良くないんだっけ最近。」
叢雲が助け船を出した。
「その嘘は何の為だ?」
叢雲にティーの視線が刺さる。声色も表情も変わらないが叢雲の心を完全に見通していた。
叢雲は一瞬にして縮こまる。
「まぁ出たくないなら別に出なくてもいいけどさ。ただ出られるなら出て欲しいな。私も勝手が分からん中、前回の局面を理解している人員を理由なく減らすのは得策とは思えん。」
霧島はホワイトボードの『金剛』の文字を『榛名』に書き換える。
ティーはしかめっ面でその編成を見る。
そして一言。
「そういえば私は出撃できないのか?」
叢雲も霧島も開いた口がふさがらなかった。
同日夜 比叡・霧島の部屋
「新提督初の出撃は榛名が旗艦に決まったわ。明日の午前中に召集がかかるはずよ。」
「霧島?どういうことデース?榛名は『人間の提督』と上手くいくとは思えないネ。」
「でも霧島の決めたことなら、榛名は大丈夫ですよお姉様。」
「それに何となくの勘だけど、あの提督なら大丈夫な気がするなぁ。」
「比叡は、榛名が『人間の提督』から受けた被害を忘れたんですカ!」
「そんなわけありません!散々弄んだ上、隠蔽のため無茶な進軍を命じられたなんて、忘れるわけありません!」
「金剛お姉様、比叡お姉様、大丈夫です。司令は提督としての艦隊指揮を何も知らないようでした。ですから、戦いの中で必要な判断は旗艦に任せるように教えました。判断に困った際には司令に連絡するという形式で作戦は行われます。」
「ありがとう霧島。」
「Hey 榛名、困ったことがあったらお姉ちゃんに相談するんですヨ?」
「これが作戦の概要です。以前会敵していますので詳細は各自で資料を確認してください。」
翌朝、執務室では霧島から出撃する艦娘たちへ作戦が告げられていた。
ティーは霧島の横で立っているだけで何もせず終わった。
「司令の方からは何かありますか?」
一通りの説明を終えた霧島はティーに話を渡す。
「現場での判断は旗艦の榛名に任せる。有事の際のこっちでの判断は私と霧島で行う。ま、戦果よりも全員が無事に戻ることを優先してくれ。」
今までの提督とは全く異なる説明に艦隊は戸惑いを隠せないようだった。
ティーが提督に着任してから初の出撃が行われる夕方まで各々が各々の時を過ごしていた。