夕日が海とくっつき始めた頃、最果島から6人の艦娘が列をなして出撃した。
出撃港では霧島とティーがその後姿を見送っていた。
「夜戦前提の作戦だから部屋でゆっくり待つとするかね。」
ティーは執務室に向かって歩き出す。
霧島もその後を追う。
「彼女たちの速力でどのくらいで夜戦ポイントに到達するんだ?」
「1時間もかからないかと。作戦要綱読んでませんね?」
「そもそも受け取ってすらいないんだが。」
霧島は作戦要綱と書かれた紙を一枚渡す。
陽が沈むと同時に今回の作戦の肝である夜戦ポイントに入り、撃退作戦を開始する。
「夜戦までどの程度の戦力を保てるか、だな。」
艦隊の足は順調に進んでいた。
前線に出ていた雑魚は砲撃戦で蹴散らし、今回のターゲットが鎮座するポイントへ向かう。
「榛名さんは新しい提督に旗艦任命されたの?」
川内は先頭を走る榛名に訊ねる。
「いえ、作戦説明の時もそうでしたが、今回の作戦は霧島の用意したものです。ですから私はまだ提督とは直接的にやり取りしていません。」
今回の隊の駆逐艦以外は榛名と前任提督のことを知っている。
「みなさん、もうすぐ作戦ポイントです。気を引き締めていきましょう。」
最後尾から千歳の声がする。
大きな太陽は水平線にほとんど溶かされていた。
小さな島は太陽の陽を失えば闇夜に包まれる。
「なんつーか落ち着かないもんだな。」
ティーは窓の外の夜空を見上げながら呟く。
予定通りなら夜戦は既に始まっている。
むしろ優勢なら撃退成功すらありうるくらいではある。
「作戦成功の報が無いことから、苦戦もしくは拮抗しているのでしょうか。」
霧島は前回作戦で確認された敵の資料を眺めている。
「単純な戦力的には拮抗しそうなのか?」
「いえ、前回と異なり相手の戦力を把握して組んだ艦隊ですし、夜戦のプロである川内、判断力の高い麻耶が有事の際には上手く立ち回ってくれるはずです。それに、
ビービービー
通信の音が部屋を満たす。
霧島が通信機のボタンを押すと波と風の音が聞こえた。
「あーあー、麻耶だ。執務室聞こえるか?」
「聞こえています。続けて。」
「霧島さん。ヤベェ状況になっちまった。かなりの持久戦の後に予定通り敵を撃退した。ただ持久戦は相手の作戦だったんだ。帰投を始めたところに潜んでいた敵の増援に不意打ちを食らった。」
「交戦はしていないの?無理に戦わず退くことは困難?」
「それがヤベェんだ。最初の不意打ちで榛名さんの走行具が壊れて航行不能になってるんだ。艤装は一部無事だから沈んじゃない。ただ誰かが引っ張らないと動けないもんで俺らと敵の丁度真ん中くらいに取り残されちまった。」
「そんな……」
「敵もそれに気づいて無理に攻撃を仕掛けてこないんだ。榛名さんを助けにいけばソイツが狙われる。全員で動けば囲まれる。助けなければ榛名さんが落ちる。」
「霧島さん。どーすりゃいい?」
霧島は答えられなかった