ユーノの罪と罰   作:泡泡

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 道を踏み外したユーノ・スクライア。


1話:始まり

 

 なのはが落ちた・・・と言う話を聞いて急いで病院に向かった。そして『廊下は走らないでください』と注意する看護師を振り切り、走って手術室へと向かった。そこにはヴィータやはやてらがすでに佇んでいた。その横にはリンディさん、フェイト、アルフ、クロノも一緒にいた。

 

 「ヴィータ・・・」

 

 「ユーノか、すまねぇ・・・」

 

 「どうして謝るの?」

 

 ユーノはその謝罪に対して怪訝な顔をしてヴィータに聞いた。

 

 「あたしが付いていながら襲撃に気付けなかった。なのはの調子が悪いのは少し前から気づいていた。だが大丈夫だと言うなのはの言葉を鵜呑みにして任務を行なったのがこの結果だ。あたしが守っていれば・・・」

 

 「ヴィータ・・・」

 

 と、そこになのはの家族やアリサ、すずからも到着した。その場にいた看護師に事情を聞いている。そして僕に気づいた。高町士郎さんがいきり立った様子で、こちらに足早に近づいてきたのを僕は遠い目で見ていた。

 

 

 ――多分、これから僕に振ってくる言葉は予想できるものだから――

 

 

 「あんたが・・・あんたが魔法なんてものになのはを誘わなければ・・・こんな危ない目には合わなかったのに。お前の責任だ!!どうしてくれる・・・?」

 

 「・・・・・・」

 

 

 ――ははは、やっぱり・・・僕が疫病神だったんだ・・・――

 

 

 「黙ってないで何か言ったらどうなんだ?ええっ?」

 

 「僕のせいでした、申し訳ありません・・・とでも言ったらあなたの気は収まりますか?はっ、収まらないでしょうね。それともその腕力をもってボコボコに殴り倒しますか?あなたが考えているのはただの責任の擦り付けに過ぎないんですよ。あなたもそれを容認したでしょ?自分の娘の将来が気になるんだったら魔法から遠ざけてれば良かったんですよ・・・」

 

 「てめぇ・・・」

 

 「やめろユーノ。君らしくないぞ」

 

 あからさまな挑発行為にクロノが止めに入る。

 

 「クロノ、君は僕の何を知っている?何も知らないだろうさ。なのはがこうなったのにはクロノたちも関係しているんだぞ。ジュエル・シードが地球にばらまかれた時に、なのはと言う戦力が必要だったから現地協力者って言う扱いで組織に組み込んだ・・・。結果は火を見るより明らかだろ?」

 

 「何?」

 

 温厚なクロノもその言い方には少々戸惑いながらも怒っているようだ。横にいるフェイトとアルフがオロオロした様子を見せているからだ。

 

 「僕はそろそろ行くよ。誰かさんが無限書庫での仕事を増やしたからね。無理を言って抜け出させて貰ったんだよ。じゃあね・・・。あと僕は疫病神みたいだからもう呼ばなくて結構!!」

 

 「ユ、ユーノ!!」

 

 そうぶっきらぼうに言ってから歩き出したが、後ろからクロノの怒号が聞こえてくる。それに高町家の苛立った声も・・・。はやてやフェイトらは戸惑いを隠せないのか小声で『どうしちゃったの?』と言っていたようだ。

 

 「(そう、それでいいんだ。なのはが魔法を知ったのは僕のせいだ。僕が何とかして原因を取り除かないと・・・。あとできたら僕が償わないと。それが自己満足だとしても・・・)」

 

 

 この日からユーノは無限書庫にこもって何かを探している姿が度々見られた。それも狂気に囚われたように探していたので、司書らは声を掛けることもできずに。出来ることといえばただ遠巻きに眺めているだけだった。その様子を聞いた仲間たちもいて、心配して声を掛けようとしたがほかの司書らから門前払いを喰らうだけだったので、おかしいなとは思いつつもなのはの事にかかりっきりになって段々と誰もユーノの事を気にかける者はいなくなった。

 

 それから数週間後経つとなのはが昏睡から目覚め、見舞いに来た人々を安心させるのであった。それでもユーノは来る気配がなく、それを悲しむなのはに“忙しい”や“もう少ししたら来る”と楽観的な事ばかり述べていた。それからほどなくしてなのはの怪我が将来に響くものであることが判明した。

 

 空を飛べる事ができなくなるかもしれないのだ。それは空を飛ぶことが好きななのはにとって本当にショックだった。加えてそれを聞いてもユーノが来る事は一度も無かった。家族にユーノの話を振ると怪訝な顔をしてあからさまに話題を変えようとする。そのことが何度も続くとなのは自身も不思議さを隠せなかったが自分の中で整理して考えるようになった。

 

 「うん、みんなからの話を纏めると何かいざこざがあったみたいだけど、なのはが嫌われたわけじゃないみたいだし・・・。ホントに無限書庫が忙しいのかもしれない。私が入院するのも長くなりそうだし、その間に来てくれると嬉しいなぁ・・・」 

 

 無限書庫内では相変わらず忙しい毎日があった。期限ギリギリに間に合わせた内容を担当している局員に譲渡しても感謝されることなく罵倒される毎日。ユーノの精神的ダメージも大きく、それをつなぎ止めているのがなのはを助けることだけ。そのためだったら自分の命など惜しくはないとまで思うようになっていた。

 

 

 ――それがあのような結果を招くとは・・・――

 

 

 「見つけた。これがなのはを助ける唯一の方法だ・・・。誰にもバレてないよ、ね・・・」

 

 ユーノ・スクライアは誰にも気づかれることなく、無限書庫内で転移魔法を作動させなのはが入院している病院の同階までやってきた。時刻はすでに真夜中。静まり返っている廊下を足音を立てることなくそ~っと歩き、病室前にたどり着いた。

 

 「・・・・・・」

 

 無言のまま入る。誰かに見られたら警備の人を呼ばれるかもしれないぐらいそれはとても怪しい行動だった。

 

 「ユーノ君・・・?」

 

 「っ!!・・・なのは?何だ、寝言か。念には念を入れてっと・・・」

 

 翠色の魔法が数秒輝くと、なのはに深い眠りを与えた。これで眠りから覚めることはまず無くなった。それからユーノは自分となのはの間に魔法のラインを繋げ、無限書庫で見つけた魔法をなのはにかける。ここまで誰にも気づかれていなかった。そしてこの行為は誰にも言うつもりもなかった。

 

 「あとは・・・うん、これだね・・・。この事を知ったら君は軽蔑するかな?まぁその感情も僕に向かないんだけどね・・・」

 

 忘却魔法を念入りにかける。なのはがユーノの事を友達と想ってくれているのは知っていた。それでもそれ以上の関係になることは無いとタカをくくってた。そんな感情を抜きにしても、一度も自分のお見舞いに来なければ誰だって不安になるものだ。

 

 「僕の事を忘れますように・・・っと」

 

 ユーノが無限書庫内で見つけたなのはの怪我を大幅に治す魔法の内容はこうだ。つまり術者に関する記憶を代償に対象者の怪我やそれに準ずる事柄を修復すると言うものだった。だからこれを行なうことによってなのははユーノの事を忘れ、将来は空も飛べるまでに回復が見込まれる。これが封印されていた経歴は、記憶を媒介として何かを治す事は悪用されかねない、と言う管理局の言い分だったようだ。

 

 それでも長い年月を経て、その封印は簡単に解除されるまでになっており再び封印するために無限書庫に来る人などいないのでこの度、ユーノの手に堕ちた。

 

 そして忘却魔法も第一級危険魔法に相当するもので万が一発覚すると、それなりの処罰を身に受けることになっていることもユーノは知っていた。それでも使ったということはそれ以外の親しいと思われている人物にもかけなければならないことを指し示していた。

 

 「はは、最初になのはにかけたからもう良心なんて無くなっていたと思ってたのに・・・こんなにも失うのが怖かったんだな。これが自己満足と言われようとも僕には何も残すことなどできない。歪な考えでなのはを魔法の世界に巻き込んでおきながら自分だけ助かろうとしている。それが知られた時にどう影響するかなんて分からないけど今のうちに謝っておくよ」

 

 ――ごめんね――

 

 一筋の涙がユーノの目から出てなのはが寝ている布団の上に落ちたが、それに気付く者などいるはずもなくユーノの最初で最後の心からの謝罪はそのまま闇に消えていった。これが最後と思い寝顔を数分の間眺めていたが、それを止めてユーノはなのはの病室から転移していった。

 

 

 なのはの怪我はその日以降、医者も首をかしげるほどの回復を見せリハビリもやや体を痛くするぐらいで我慢できる範囲に収まっていた。それでも何かを代償にしなければ、ここまで軽減されることはない。その代償はユーノが支払っている。

 

 

 

 『ユーノ・スクライア司書長ですか?僕はクロノ・ハラオウンと言います』

 

 『・・・はい、なんでしょうか?』

 

 無限書庫で働いていると通信が入り、ユーノ自身にとって馴染み深い人物の顔が面前に現れるがユーノに対してクロノが何か反応することはない。

 

 『折り入って相談したいことがありまして・・・』

 

 『もしかして資料の相談でしょうか?』

 

 『ええ、これ・・・なんですが。どのくらいで纏まりますか?』

 

 投影型ディスプレイがもうひと枠出来て必要な資料の一覧が現れる。ユーノはざっと眺めてから相手に伝える。

 

 『ふんふん・・・。ええっと、このぐらいなら一週間から二週間の間に揃えることができそうですよ。どのくらいにしますか?』

 

 『・・・本当に?っとすまない、放けてしまったようだ。では十日後に揃えてはもらえないだろうか?』

 

 『ええ、大丈夫ですよ。では十日後に連絡を入れますね?』

 

 『お願いします。・・・ふむ、ちょっと構わないだろうか?』

 

 『ん?どうかしましたか』

 

 怪訝な顔が空中に浮いているディスプレイに映る。

 

 『ユーノ司書長と会ったのはこの通信で初めてなのだろうか・・・』

 

 『っ・・・・・・』

 

 『君とこうして通信ではあるがどことなくデジャヴ的な何かを感じられずにはいられないのだ』

 

 薄々クロノは気づいているのか。まだ確信に至ることはなくても、内奥の感情がそれとなく伝えているのだろうか・・・。ユーノがクロノのその感情の正体について伝えることはないにしても。 

 

 

 『それはないと思います。僕もこの仕事上とても沢山の人達と会うことがありますが、クロノ執務官と会うことはこれが最初ですよ・・・』

 

 『そうか、それはすまないことをした。それでは十日後に・・・』

 

 『ええ・・・』

 

 

 おかしい。それが司書長と会話して思ったことだった。記憶から何かが抜け落ちたかのような。いや、あるべきところに穴が空いているかのような虚しさ、空虚を感じていた。

 

 「どったの、クロノ君?」

 

 「あ、あぁエイミィか。今通信していたユーノ司書長についてなんだが、どこかで会ったことはないだろうか?もしくは見覚えがないだろうか・・・」

 

 「ユーノ司書長って・・・。あぁ無限書庫の管理に着任したクロノ君ぐらいの男の子ね?・・・うーん、そう言われるとそうかもしれないしそうじゃないかもしれないし・・・」

 

 

 「エイミィ、ちょっと頼まれてくれるか?今まで僕たちが関わった事件について彼の影がちらついていないかどうか・・・」

 

 「オッケー。報酬はなのはちゃんのところのシュークリームひと箱(12個)ね!!」

 

 「おっおい。多すぎないか?・・・ってもう行っちゃったか」

 

 ・・・僕の考えが杞憂で終わることを願うよ。ユーノ・スクライア、君の存在が何故僕の心を揺さぶるんだ?

 

 

 数週間後に結果がエイミィから知らされた。結果は知らないそうだ。

 

 「私も過去のデータを確認してみてけれどもユーノ・スクライア司書長の影も形も無かったわよ。やっぱりクロノ君の勘違いじゃないかしら・・・。デバイスに納められている記録に一部おかしな点もあったけど、それに関しても改竄された経歴なんて無かったし。うん、この件はこれで終わりでいい?」

 

 「そうか、それなら仕方がないな。エイミィありがとう。このお礼はちゃんとするよ」

 

 「分かってるじゃないの。シュークリームね!!」

 

 

 やはり僕の勘違いだったのだろうか。それでも拭いきれない感情だけは今もくすぶり続けていた。だからどうした?ユーノ・スクライアを尋問でもすればいいのか?と思うがそれも間違っている。何かの嫌疑がかけられているならともかく・・・。

 

 ・・・だがあの通信の時、微表情ではあったが一度だけ曇った表情を浮かべていた。あれは確か・・・そう、僕がどこかで会ったことありませんでしたか?と尋ねた時のことだった。やはり・・・いや、まだ材料が足りない。疑いをかけてそれが間違いだったら申し訳ない。それなら友好を築き、それとなく近づいていけばいつかは司書長のことが分かるかもしれないな。よし、そうしよう。 




 何を今更感が半端なく漂う作品になりそう。
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