ユーノの罪と罰   作:泡泡

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 この話はアリサ、すずかに対する扱いが低くなってます。


番外編その二~④~

 

 体感的に数秒だったと思うが、目をつぶって目を開けた時にはすでに見えてくるものは何もかもが違っていた。今までは魔法の影響もあって近未来的なミッドチルダだったが、今いる場所である地球は魔法が無い世界なのだ。

 

 「ほぉ~」

 

 あたりを見渡して感嘆の声が漏れるのも無理はなかった。自然に囲まれている森の中に出てきたからだ。すぐそばには日本語とミッドチルダ語で書かれた立て看板がある。『この先数百メートル、街』とある。近くには別荘が数件建っているようだが自分には何の関係も無いものなのでその立て看板に従って歩くことにする。

 

 「……」

 

 遠くから若い女性の声が聞こえてくる。周りに誰もいないので自分を呼んでいるとは思うが、呼んでいる名前が『ユーノ』なので自分ではないと考えそのまま歩く。切羽詰まった声が連続して聞こえてくるが、その全てが『ユーノ』から始まるのでその全ての声を無視して歩く。だって自分はユーノって言う人じゃないしね…。

 

 「無視すんなーっ」

 

 耳元で聞こえた怒声とともに自身の体がいきなり前のめりに倒れた。一瞬のことで息が出来ずに受け身もとることが出来ず、顔面を強打することになった。…息が出来ない。

 

 「……ッッ」

 

 強打した時に血が流れてきているのだろうか、口の中も鉄の味がする。目の中に砂が入ったのか、かすむ目の先には息を切らしながらこちらを恐ろしい眼差しを浮かべる金髪の女性?のようなものが見えた。…ホント厄日だわ。――と思いながら意識を失った。

 

 

 意識が戻ると鼻にツンと消毒液の匂いが漂ってくる。この匂いは最近ずっと嗅いだ匂い、病院のようだ。横には警察の人が佇んでいた。

 

 「大丈夫ですか?医者が言うには後遺症等残らないそうですが…」

 

 「ええ、とても痛いです。あの、加害者の人は?」

 

 「支離滅裂な事を言い立てていたので一応警察署には行ってもらってます。が、あなたの知り合いであり声をかけても無視をしたので多少過激なスキンシップをしたと言い張っているのですが事実でしょうか?」

 

 と言ってその警察官は懐から一枚の写真を見せてくる。その写真に写っているのが加害者の女性だろうか、全然見たことがない。

 

 「いいえ、見たことも知り合いでもないです。ここには初めて来たんですからね」

 

 「あぁ、そうだと思いましたよ。ミッドチルダからの移転者というのは最近多いんですよ。それで専門の部署も造られるほどでして…。これはあなたにはあまり関係がありませんでしたね。トラブルも多いですから、何かあればこの名刺をどうぞ」

 

 うぅむ、ミッドチルダが知られているのか。森の中にポータルがある時点でそう予想もできたであろう。

 

 「それでどうします?」

 

 「えっ?」

 

 少し考えに夢中になっていたのでその警察官から聞かれたことが理解できなかった。

 

 「この加害者、アリサ・バニングスと言うのですが。あなたの知り合いでないなら被害届を出しますか?と言うことなんです」

 

 「あぁ。どうせ俺の事を誰かと見間違えているんですよね?『ええ、そのようです』だったら被害届を出しちゃってください。今日一日だけでどれだけ間違われているか想像できますか?」

 

 「多々あったということですか?」

 

 警察官のまさかと言わんばかりの表情を浮かべた後、自分が頷いたことに驚きを隠せなかったようだ。

 

 「はぁ~ご愁傷様です。ともかく被害届を出すことにしますが、気の強そうな女性でしたので逆恨みなどにお気を付けください。では本官はこれで…」

 

 ビシッと敬礼をし、病室を後にした。病院には大事を取って数日いていいことになった。勿論入院費等はあの金髪の女に請求した。

 

 

 

 ――そしてその夜。とても不思議な体験をした。

 

 真夜中頃、閉めたはずの窓からほんの少し風が入ってくることに気付いた。眠気が覚めたし、風はまだ初夏と言うこともあり冷たかったのでベッドから身を起こして窓のほうへ歩こうとして気付いた。いつの間にか見慣れない女性が立っていた。紫色の髪の毛を風に揺らしながらこの世のものとは思えない雰囲気を持っていた。

 

 「あんた、誰?」

 

 「……」

 

 目が赤くな…った?でもそれだけだ。何かに囚われるような感じにはならなかった。ただ単純にあれ、赤くなったぐらいにしか思わなかった。そして彼女は喋り出す。

 

 『ユーノ・スクライア。君が遭遇した彼女を許しなさい。いますぐ被害届を取り下げるのよ。そしてこの事は忘れるの。いいこと?』

 

 「…プッ」

 

 笑いが堪えきれなかった。許しなさいとか忘れるようにってどこの厨二病か?と想像したらおかしくなってしまった。

 

 「なっ!!効いていないの?」

 

 彼女はとても驚いていた。本当に、心底自分がやったことは100%成功するとでも思っていたのかわからないが。

 

 「あのさ、昼間の女とあんたとは会ったことない。それで十分じゃないか?それをまた掘り返して忘れなさいって。そのほうが印象深く残るんじゃね?」

 

 ボリボリと頭をかきながら茫然と突っ立ってる女に問いかける。安眠を妨害されたのも含めて違和感だけが残り、口調が荒々しいものになる。

 

 「それに何のつもりかは知らないが、人の思考を操ろうなんざ、普通の人じゃできないことだな?裏か、それ以上の存在かな?まぁ別にどっちでもいいんだが。さっさと出て行ってくれないか?」

 

 「どぅ…して……」

 

 小声で何かを呟きながら手の親指の爪を噛んでいる姿はホラーさ抜群だった。と、そこへ女が持っているスマホが振動する。ハッと我に返った女はすぐさま連絡を取ってきた相手と話し出す。と言うか夜中に侵入した対象がいる前でよく連絡しようと思うな。

 

 「もっもしもし!!駄目だったぁ。うんうん、えっ、違うの?分かった、聞いてみる」

 

 会話が進むにつれ段々と声のトーンが落ちていく紫色の女。

 

 「あなたはユーノ・スクライアさんじゃないんですか?」

 

 「またか…うぜぇ。どんだけ似てるんだよ…」

 

 少しばかり予想していた名前がまた(・・)出てきたことに驚きを感じず、そして苛立ちばかりが募る一方だった。

 

 「また…ですか?申し訳ありません。アリサちゃん…昼間の子がとても憤慨した様子でユーノに無視された、あと被害届出されたと言うものですから」

 

 「あのさ、文句なりなんなり言うんだったら俺じゃなくて警察じゃないのか?言ったところで俺が被害届を撤回することなんざないからな!!」

 

 疲れも溜まっているし、夜中に変なことで起こされたことも相まってちょっと辛辣な言い方になる。正面に立つ女は落ち込んだようにしょんぼりとする。

 

 「だが、あんたは揉み消そうとした。これはどうにもならんだろうなぁ。加害者もどうかしてる女だったし、あんたも頭のネジが数本弾け飛んでいるんじゃないか?」

  

 疲れも溜まっているし、夜中に変なことで起こされたことも相まってちょっと辛辣な言い方になる。正面に立つ女は落ち込んだようにしょんぼりとする。

 

 見てくれだけは良さげな女だが、少し接してみるとその残念具合が多々見え隠れしていた。俺は平穏を望んでいるだけなのに、この世界と言うのはままならないものなんだなと改めて実感させられていた。

 

 「さっさと帰れ。そしてこの件に関わった全員に伝えろ。俺は一切事を荒立てるつもりはなかった、あんたらが荒立てたんだ…と。まぁあんたが暗示をかけようとしたとかは別にいいからさっさと帰れ」

 

 大切な事なので二度言ったつもりはないが、目の前の女がノロノロと帰ろうとするのが嫌だっただけだ。病室を後にする前にキッとこちらに視線をよこしたが、それを鼻であしざまに笑ったらシュンとした様子で病室を出て行った。

 

 「なんか…どっと疲れたな。寝よ寝よ」

 

 その夜はごたごたがあったとはいえそのまま寝ることが出来た。この世界に来て初めて良いことだった。だがすぐにその考えを変える必要があることに気付かされた。高町なんとかとか言う女の家族が病院に突入してきたわけだ。その事に関して詳しく言うつもりはないが、とても疲れるハメになったのは事実だ。

 

 簡単に言うと、家族突入→警察阻止しようと努める→それ突破→一応病室変更→損害なく公務執行妨害で家族全員逮捕と言う流れだ。はたから見るとコメディみたく笑えたかもしれないがそれに巻き込まれた身としてはもうやめてくれと一言言いたい。

 

 これがきっかけでこの世界で暮らそうとすることをやめ、入院する原因を作った女や自称吸血鬼と逮捕された家族から多めの慰謝料をもらってここを後にすることにした。

 

 その後ポータルを二度三度以上点々と移動することを繰り返し、ようやく平和を手にすることが出来た彼だった。





 最後駆け足に近いですが、この主人公は一応ハッピーエンドと言うことで。次話からは本編を上げようと思います。まぁ作者の自己満足でできているので意見等は返信します。
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