ユーノの罪と罰   作:泡泡

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 この場合クロノ


3話:疑惑

 おいおいおい・・・。あいつがそんなことを口にするなんて。これが最初に思った素直な気持ちだった。だってそうだろ、あの気弱なフェレットもどきが、面と向かってなのはの父親に対して辛辣な言葉を投げかけている状況に出くわしているんだから。

 

 事の始まりはなのはが、敵の攻撃を防ぎきれずに墜落したことから始まった。疲れが溜まっていたのだろう、僕はそう結論づけた。一ヶ月の勤務のデータを取り寄せて見てみると、休んでいるのか?と思ってしまうほど休みは取らずに一心不乱に働き続けていた。周りの面々がそれとなく休むように求めてもそれを拒み続けて働いていた。

 

 「にゃはははは。なのはは大丈夫だよ。疲れてきたらちゃんと休みを取るから、ねっ!!」

 

 休みを促す親しい友人たちにいつも同じようなセリフを言っていた。そう言う(クロノ)も何度となく休暇を取るように勧めることもしたしどうしてそれほど働くのかも尋ねてみた。確かその時にはなんて言ったっけ・・・。

 

 「クロノ君優しいね?でも大丈夫だから」

 

 ・・・だっけ。その結果が空から落とされて意識不明の怪我を負っている。この事故は誰のせいでもない。なのはの両親が魔法のない生活をなのはに求めていたことも知っている。だが、多分なのはは魔法を使うことで自分の存在意義を得ていたように思える。それが今回の事故に至ったのだろう。

 

 高町家やユーノそれに同級生(アリサやすずか)ら、ハラオウン家や八神家誰のせいでもないはずだ。誰かのせいにするのは簡単なことかもしれない。その原因を作ったという見せかけだけの矛先があれば、それをよりどころとして何年も想い続けることができるに違いない。それでもそれは真実ではないし、かえって結果が歪でどうしようもできないことになりそうで僕は怖かった。

 

 ユーノが言いたいことはわかる。自分のせいにしてまで高町家を守ったんだな。それがなければ自分たちが魔法に関わらせたせいで、なのはが大怪我をしたと悔やみ続けてしまうことは目に見えているからな。だが矛盾を孕んだ偽りの真実はどこかで破綻し、また誰かが犠牲になることは確定している。その時お前(ユーノ)はどうするんだ?

 

 

 喧嘩別れのようになってしまったが、あれからどうしている?なのはの意識が戻ったんだぞ。フェイトやその他数人がユーノに連絡を取ろうとしているが、誰とも会わないし通信にも出ない。無限書庫にいることは分かっているが、自宅には戻った形跡はなくずっと缶詰状態らしい。

 

 どうして高町家となのはを最初に会わせないか疑問だったが、それは医者の話を聞いて納得した。

 

 「このままだと退院しても元の生活に戻れる可能性は極めて低いと思います」

 

 「えっ?そ、それはどう言う事ですか?」

 

 「高町さんの怪我は思った以上に難しいところまで来ているということです。治療はしましたがそれでも将来、空を飛ぶ事は出来ない・・・いいえ空を飛ぶ可能性はゼロに近いです。これがミッドチルダの医療の限界です。申し訳ありません」

 

 「・・・・・・」

 

 これが現代とミッドチルダの良いところを集めて作り出した、最新の医療現場の限界だとでも言うのか!!

 

 これから葬式ですか?と僕たちとすれ違った人がいれば、そう聞かれること間違いなしと思える状態にまで至ったが無理のない雰囲気だった。

 

 「(こう言う時にユーノの助けが必要かも知れないな)」

 

 彼が自責の念に駆られているのは分かっていたが、それでも彼が働いている無限書庫に何かヒントがあればそれに越したことはない。そう思って何度かいや、何十回になるだろうか出るまで鳴らし続けた。ようやく出た時のユーノの顔は憔悴しきっていて、最初見たときユーノ本人か?と疑いをかけそうになった。

 

 『はい、あぁ煩わしいコールが続くと思ったら腹黒執務官殿か・・・。何の用事だ?もしかしてまた(・・)資料の追加請求か?』

 

 「すまないな、そうじゃないんだ。君にも伝えておこうかと思ってね。フェイトからなのはが目を覚ましたことは聞いているな」

 

 『・・・で?』

 

 「・・・はぁー。もう空を飛ぶことができないかもしれないんだ。その事を伝えようと思っていたんだが」

 

 『それは・・・初耳だ』

 

 「お前は来る気がないのか?なのはにとってお前は最良の薬になる存在だろうに」

 

 『なにそれ?意味が分からないんだが?もっとはっきり言ってくれ』

 

 通信越しに聞こえてくるユーノの声は疲弊しているのか力が出ず、弱々しい声が聞こえてきていたがそれでもなのはの元に来る気はなさそうに思えた。

 

 「っ、だから気がついたと言ったろ!!それでも君は突っぱねるのか?」

 

 『それはフェイトから聞いた。それに僕は君から請求された資料をあと一時間で仕上げなきゃならんのだが?』

 

 「ああ分かっているさ。それも大事だってことぐらい。それを請求したのは僕自身だからな。だがそれと同じぐらいなのはの事は大事じゃないのか?」

 

 『・・・僕はなのはに償わなければならない。それだけは言っておくよ。』

 

 「はぁ?お前何を言っている?償わなければならん?何をわけのわからん事を。とにかくそっちに行くからな!!」

 

 『それには及ばんよ。じゃあクロノ、さようなら・・・』

 

 「ちっ、切られたか。あのフェレットもどきは何を考えている?っとフェイトか、なのはとの会話はもういいのか?」

 

 ブツっと一方的に通信を切られた。そこでやっと背後に誰かがいる気配を察知した。どうやらフェイトのようだ。少し話を聞かれたかもしれない。イライラする感情を無理やり押さえつけてフェイトには優しい声を出し威圧する事なく話しかけた。・・・話しかけること出来た、よな?

 

 「うん、お医者さんが来てもう安静にしたほうがいいですよーって言ってたから切り上げてこっちに来たんだ。・・・もしかしてユーノと話していたの?」

 

 フェイトが僕の声を聞いてビクッとしたり、一歩後ずさったりしていないことから優しい声を出すことに成功したようだ。ふぅ、ユーノのやつ何考えているんだ?

 

 「ああ、あのフェレットもどきと少し話していてな。資料を集めるのが大事だとか、償いがどうとかイマイチ意味不明な事を伝えるだけ伝えて通信切られたんだ」

 

 あっ、少しビビらせちゃったかな?涙目になってる・・・。ど、どうしよう・・・。

 

 「そ、そっか・・・。きっとユーノも忙しかったし、なによりもなのはのお父さんにものすごい剣幕で言われたことを気にしているんだよ」

 

 フェイトは優しいな。って言ったらまた逃げられちゃうかな。いやいや少しでも優しい兄を体現しないとな・・・。よしっ!!

 

 「・・・ふん、そうだといいな。フェイトはこれから試験に向けてか?頑張るんだぞ」

 

 ぶっきらぼうな言い方になってしまったものの、フェイトの髪の毛を撫でる。撫でたつもりだったが、力が入りすぎて整っていた髪型を少し崩してしまった。あちゃー・・・。

 

 「もう、それは髪が乱れるからイヤって言ってるでしょ!!」

 

 そう言いながらフェイトの顔色を見ると、頬を赤く染めながら上目遣いにこちらを見ていた。僕がもう少し狼だったら襲っていたかもしれないな・・・。はっ、イカンイカン。

 

 こんな日常が続くと思っていた。もう少しユーノに気遣っていればよかったのに。彼が働いていたところが管理局内でも異例の職場であることに、もう少し目を留めていればこんなことにならなかったかもしれない。 

 

 

 ――全ては遅かったが・・・。

 

 

 何とも言えない感情に襲われたのはそれから数日の事だった。いつものようにアースラでの仕事に就いていた時だった。なにか大事な物を失ったかのような・・・そんな雰囲気に襲われた。

 

 「・・・?」

 

 だが、そのように思ったのは時間にして一分程度。すぐに忘れてしまいそうになりながらも慌てた様子のエイミィを見てただ事ではないと感じ取った。

 

 「はぁはぁはぁ・・・。ク、クロノ君!!」

 

 「どうしたエイミィ?」

 

 息も絶えだえになりながらも走ってきたエイミィに、不審がりながらも尋ねてみる。 

 

 「クロノ君!!・・・あ、あれ?今、私何をクロノ君に伝えようと思ったんだっけ・・・。クロノ君わかる?」

 

 「はぁー僕が聞きたいぐらいだよ。どうして全力疾走してきたんだ?それは分かるか?」

 

 まずは状況を整理させようとして、エイミィに聞く。

 

 「え、えっと・・・。資料の整理をしていたら、大事な何かを忘れたような気がして。でも、その感情が何から来ているのか分からなかったから・・・とりあえずクロノ君のところに来たら何とかなるかなぁーって思って・・・」

 

 いつもどおりのエイミィに安心しながらもクロノ自身気になったことを聞く。

 

 「エイミィがそう思ったのは今からどのくらい前だ?正確じゃなくても構わない」

 

 そう言うと、首をかしげ数秒考えたあと答える。

 

 「そうねぇ、クロノ君のところにくる前だから数分前よ。今まで覚えていたのにぽっかり穴が空いたように空白ができたように思えたの。言ってること抽象的で何かごめん・・・」

 

 言いながらも自分でうまく説明できない事にしゅんとなるエイミィだったが、クロノにもその感情がなにか分からないにしても、同意できるところがあるのでフォローする。

 

 「大丈夫さ。僕もエイミィが来る少し前に同じような感情に襲われたからな。何か自分の中で存在していた大事なものを、何か失った気がするが何を失ったか分からないんだ」

 

 「・・・!!クロノ君もなんだ」

 

 それからしばらくの間他のクルーも交えて話し合いをしてみたが、何かを失ったように思えているクルーとそのような感情に襲われていないクルーの関係がわからなかった。

 

 もう少し考えてみると、それは二つの事件に関係しているクルーと最近入ったばかりで二つの事件の内容を知らないクルーの違いがあることにクロノは気付かなかった。

 

 そしてこの時の感情が自分たちだけではなくフェイトやアリサ、すずかやはやてらも感じ取ったことであることに驚いて捜査が行なわれた。

 

 「エイミィこれが周囲で聞かれた魔法によるかもしれない記憶操作だ。デバイスも借りてきたからその形跡がないか調べてもらえるか?」

 

 「いいよ。任せて」

 

 「調べるのにどのくらいかかる?」

 

 「んーそうね。私たちの記憶が曖昧だからデバイス中心に調べるしかないかな。だから一日ぐらいで結果は分かるよ」

 

 「わかった、頼む」

 

 話し合いの最中もエイミィが調査の手を休めることはなかった。この分だと本当に一日ぐらいで結果が出そうだ。

 

 この日の夕方、結果が出た。“魔法による記憶操作の兆候無し”となった。この事を関係者全員に伝えたところ、納得はいかないにしてもほっとした様子を見せた。この件に関しては一応の終わりをみせた。

 

 

 ふと気づくと自分で資料を集めることができない案件に遭遇していた。それで最近管理局内で名を挙げつつある無限書庫を頼ることにした。無限書庫を管理しているのはフェイトと同じぐらいの年齢のユーノ・スクライアと言う少年らしい。

 

 『ユーノ・スクライア司書長ですか?僕はクロノ・ハラオウンと言います』

 

 数コールの後、投影されたディスプレイに青年とは言い切れない少年の姿が映った。彼がユーノ司書長だろう。

 

 『・・・はい、なんでしょうか?』

 

 『折り入って相談したいことがありまして・・・』

 

 『もしかして資料の相談でしょうか?』

 

 『ええ、これ・・・なんですが。どのくらいで纏まりますか?』

 

 資料の概要を司書長に伝えるために電子データの形をとって見せる。ふむふむと頷きながら必要な項目に目を通す様子に、言い方は悪いが少年が親の真似事をしているように思えてクスッと笑いをもらした。

 

 『ふんふん・・・。ええっと、このぐらいなら一週間から二週間の間に揃えることができそうですよ。どのくらいにしますか?』

 

 ・・・はい?僕がどうやっても集まらなかった資料だぞ。さすがは無限書庫。

 

 『・・・本当に?っとすまない、放けてしまったようだ。では十日後に揃えてはもらえないだろうか?』

 

 『ええ、大丈夫ですよ。では十日後に連絡を入れますね?』

 

 この流れで行くと事務的な事を伝えたらそれで終わりのような気がして、聞きたいことを尋ねることにした。

 

 『お願いします。・・・ふむ、ちょっと構わないだろうか?』

 

 『ん?どうかしましたか』

 

 司書長の顔がにこやかなものから少し強ばった表情を浮かべる。こちらは執務官という職業柄何かを尋問されるとでも思ったのかもしれない。

 

 『ユーノ司書長と会ったのはこの通信で初めてなのだろうか・・・』

 

 『っ・・・・・・』

 

 そう言った時の司書長の顔がクシャっと崩れたことに気になったが、敢えてそれには触れずに言いたいことを言い切ろうと思った。

 

 『君とこうして通信ではあるがどことなくデジャヴ的な何かを感じられずにはいられないのだ』

 

 さあ、君は何を言ってくれるだろうか。それが自分の納得できるものでは無いにしても。

 

 『それはないと思います。僕もこの仕事上とても沢山の人達と会うことがありますが、クロノ執務官と会うことはこれが最初ですよ・・・』

 

 やっぱり。だがそれでも君が顔を歪めたことは説明が付かない。やはり何か隠しているのか?まぁそれに関しては追々調べればいいさ。

 

 『そうか、それはすまないことをした。それでは十日後に・・・』

 

 『ええ・・・』

 

 ユーノ司書長との通信はそれで終わった。それでも何かが引っかかる。ウームと唸っていると後ろから声をかけられた。

 

 「どったの、クロノ君?」

 

 「あ、あぁエイミィか。今通信していたユーノ司書長についてなんだが、どこかで会ったことはないだろうか?もしくは見覚えがないだろうか・・・」

 

 「ユーノ司書長って・・・。あぁ無限書庫の管理に着任したクロノ君ぐらいの男の子ね?・・・うーん、そう言われるとそうかもしれないしそうじゃないかもしれないし・・・」

 

 エイミィも記憶のどこかで会っているのかもしれない。この偶然がただの偶然であって欲しいと願いながらエイミィに調査を依頼する。

 

 「エイミィ、ちょっと頼まれてくれるか?今まで僕たちが関わった事件について彼の影がちらついていないかどうか・・・」

 

 「オッケー。報酬はなのはちゃんのところのシュークリームひと箱ね!!」

 

 部屋から捨て台詞のように言いつつ出ていくエイミィ。もう無駄と思いつつもその背中に伝える。

 

 「おっおい。多すぎないか?・・・ってもう行っちゃったか」

 

 最近怒涛の如く生じてきた変化。その変化の渦中にユーノ・スクライアがいるとは思えないが、それでも彼の存在があるような気がしてならなかった。彼が働いているのはまだ未開発のエリアの多い無限書庫。無限書庫で働くときには家族構成や趣味・嗜好などありとあらゆる事柄が調べられ、それにパスした管理局員だけが働くことができているとはいえ何かが引っかかっていた。

 

 




 呼び方に違和感がある方は感想欄にてお伝えください。あとはなのはの話を書いた後StSへと移動します
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