鬱々とした展開です。もしもユーノが無限書庫に勤めていなかった場合どのように道を踏み外すのか・・・。バッドエンド直行な話となっております。
※一部の人物が壊れてます。一部の人物が優しいです
・・・僕は無力だ。この世界に無理矢理付き合わせておきながら、僕は大怪我をしたなのはになんの力にもなっていない。だから高町さんが僕に言った言葉は当然だとしか言えない。
「お前のせいでなのはは怪我をしたんだ。どうしてくれる?お前が責任とってくれるのか!!」
「やめて、士郎さん。ユーノ君に責任なんてないのよ!!」
なのはが大怪我をして病院に緊急搬送されて、高町家はヒートアップしていた。高町家の男性陣は僕に責任があると言い、女性陣は僕には何の責任もないと真っ向から相反することを言っていた。それでも僕に全責任があるのは確実なことだった。
「僕は・・・無力です・・・・・・」
「・・・一つだけてめぇでもやれることあんじゃねぇーの?」
「・・・・・・?」
ユーノの呟きを聞いた士郎ははぁはぁと感情を高ぶらせたまま告げる。
「てめぇの命くれよ」
「っ!!そ、それは・・・・・・」
「あーあっ。そっかそっか・・・。無力ですなんていいながら、結局は自分の命すら惜しいんじゃねぇのか?おい、うちの娘がどうなってもいいってのかっ!!このエロフェレットがっっ!!」
辛辣な言葉はユーノの心を
「(そっか。僕の命・・・かぁ)」
自分がいることで高町家の人たちやそれ以外の人たちの感情を、悪い方向へ向かせていることに気づいていたのでその場を後にして病院の屋上へ行く。
「僕にあるのはただ魔力もちってだけ。それ以外のコネやツテがあるわけでもない。クロノとも友人というだけでそれ以上の親友っていうわけでもない。それにここにいるのは、スクライア一族から絶縁されたからふらふらと旅を続けていただけのこと。うん、僕にはなのはに残すものなんてほかにあるわけがない」
「ユーノ君?」
「あぁシャマルさん。どうしてここに?」
後ろから自分の名前を呼ぶ声が聞こえたので振り返ると、なのはの治療をしていたはずのシャマルが立っていた。
「集中治療室になのはさんが入りましたのでその報告と・・・。ユーノ君の禍々しい感情に釣られまして・・・」
「そうですか・・・。あの、シャマルさん聞いてもいいですか?」
「ええ、どうぞ」
「魔力持ちの人のリンカーコアを他の魔力持ちの人に移植することは可能ですか?」
「っ!?」
「そう・・・例えば怪我をして魔法を使えなくなった人に、健康な魔力持ちの人から移植してリンカーコアを活性化するなんてことは?」
「そう、ですね。結論から言いますとそれは可能です。それでもそれは常軌を逸していると言う理由で疎遠されています。手術自体は難しいものではありません。それでも健康な人から取り出すのでその取り出された人はもう普通の人に戻りますし、副作用が付きまとうかもしれません」
「・・・・・・」
「まさかユーノさん。士郎さんの言われたこと間に受けて責任取ろうなんて思ってませんよね?」
「・・・はい、考えてますよ。僕には残すものなんて他に無いですから・・・。ただ魔力持っててそれでいてなのはをこの世界に放り込んだ、いわば悪の元凶ですから・・・」
「そんな言い方はしないでください!!」
自分の命すら軽く見ているようなユーノに、強い口調を持ってシャマルは否定する。闇の書事件では
「はは、いいんですよ。シャマルさん、あなたに言っておきたいことがあります。他に解決策がなくて何万人もの人が犠牲になるっていう時に、一人の人の少しの犠牲でその何万人もの人たちが助かるとしたら・・・あなたはどうしますか?」
「ひどいです。それは問題の取り違いではないですか?」
「そうですね。それでも一人の人と数万の人・・・あなたはどちらを選びますか?僕の結論は出ています。それでもそれなりの準備がありますので一週間後にまた連絡を入れますね?」
「・・・」
屋上にシャマルを残して階段で下へと下がる。屋上に残されたシャマルからすすり泣く声が聞こえてきていたがユーノはそれに触れることなく立ち去っていった。
「ありがたいな。こんな疫病神でも涙を流してくれるのか・・・。いや、それでも僕は前に進まなければならない。少しでも嫌われるような僕を演じ切らないと・・・」
彼は今までの温厚な自分を捨て、非情さと無表情、冷酷な自分を演じることでユーノ自身が消えてもそれを当然と感じさせようとしていた。
ユーノは一週間の間ほとんどの人との会話を避け、身の回りの整理を行ない続けていた。たまにシャマルからは思いとどまるようにとの連絡が来ていたが、それを全て払い除け自分の決意をシャマルにだけ伝えていた。
~回想~
「本当にいいんですか?」
「ええ、最初から決めていたことですから・・・」
「あなたはこれと決めたら突き進むタイプですね?」
「はは、一族のみんなからもそう言われたことが多々ありました」
「その・・・スクライア一族には伝えないんですか?」
「ええ、僕とは縁が切れていますから伝える必要すらないんです。だからシャマルさんもそんな悲しそうな表情を浮かべないでください」
「私、そんな顔してましたか。医者失格かもしれませんね。こんなに感情を表に出していたらそれが長所にも短所にもなりますのに・・・」
うつむき加減にそのように言う。この一週間の間に一番話したのはシャマルだと言っても可笑しくないぐらいだった。他の人らは余りにも変わってしまったユーノを敬遠して遠ざかっているのに、それでも話しかけてくるシャマルに対して、ユーノが弱みを握っているのだと勝手に想像していた。それはシャマルにとって悲しいことでユーノにとっては予想通りと言える。
「今日で一週間たちましたがユーノ君の結論が変化したなんてことは・・・なさそうですね。分かりました、この同意書にサインを・・・。こことここですね。えぇありがとうございます。では高町家の皆さんに説明してきますので戻ってくるまでここでお待ちください」
「シャマルさん、ありがとう」
「・・・本当だったらお礼を言わないといけないのは、こちらなんですよ。それをユーノ君たってのお願いともあってすべてを秘匿して実行するんですから・・・」
そう言うと二人だけで話していた部屋からシャマルだけが外に出ていった。この部屋は防音結界が極秘に展開されていたので、誰に気づかれることもなく会話することができた。それに病院内でもここは一番端に存在し、ありとあらゆる甲乙付けがたし噂が飛び交う部屋となっていたので好き好んで来る人もいなかった。ここまでするのはこれからユーノと言う存在が消えるかもしれないからであって、もう心配する人などいないとわかっていて、それでも誰かにすがりたくなるのをユーノが拒むためでもあった。
~回想終~
ユーノが手術室に運ばれてからなのはも隣接する手術室に運ばれた。シャマルが家族に伝えた手術内容は、リンカーコアの移植ではなくリンカーコアの壊れているところを人工のコアに移し替えると言うポピュラーな手術内容を当たり障りなく説明した。そのことに誰もおかしいと感じることなく説明を終えた。その場にもユーノがいないことなど誰も気にしていなかった。
手術内容はこうだ。まずユーノからリンカーコア摘出し、それをなのはの傷ついたリンカーコアと合わせる・・・それだけだ。だが主に副作用が摘出した人だけに現れるためこの術法があまり広がっていないのも事実だ。
ユーノはそのことを高町家には伝えないようにとシャマルに告げ、副作用はないのかと聞かれたとき『無い』と答えている。嘘は言っておらずただ隠しているだけ・・・シャマルさんには何の罪もない、バレたら全て僕が背負いますとまで言われて首を縦に振るしかできなかった。
表向き、手術は成功した。なのはの失われたリンカーコアは正常に動き出し、それに伴い大怪我により動かなかなくなっていた四肢は有り余るほどの魔力の補助もあり、術後に起こる少しの痛みとリハビリを受けるだけでほぼ完璧に治ることが分かった。
裏ではユーノが副作用に苦しんでいた。今まで体を動かすことが苦手だったユーノは補助魔法で自身の身を軽くして動いていたがそれすらできない状況に至る。数歩歩いただけで極度の筋肉痛に襲われるのは耐えることができたが、もう一つの副作用による影響がユーノの心を打ち砕いた。それは暗い表情のシャマルがさきほどの部屋に訪れた時に分かったことだった。
「えっ、もう一度言ってください。僕がどうしましたか?」
「リンカーコアの摘出によりユーノ・スクライアと言う存在が消える可能性が出てきました。その確率はほぼ100%。この世界からの消滅を意味しています。これは何度もシュミレーションした結果です。この結論を変えることは今から取り掛かってもどうにもなる問題でも無いです。・・・ごめんなさい」
「ど、どうしてシャマルさんが謝るの?この手術に関して全てのことは任せたつもりだし、どうなるかなんて副作用が生じると言われた段階で想定していた。・・・でもまぁ、この事は予想した斜め上を行っているけど、シャマルさんを責めることは毛頭ないよ」
じわりとシャマルの目に涙らしき物体が現れ、ユーノは慌てて言葉を出す。少し驚いたが自分の体がどのような結果になろうがあまり関係のないこと。ユーノにとっての最大関心事・・・それは。
「ねぇ、僕のことよりなのはだよ。なのはのほうは順調だったのかい?」
「ぐすっ・・・。ええ、うまくいきました。あとは本人が腐らずにリハビリをやってさえくれれば入院以前ぐらいほぼ完璧に治ります」
「そっか、良かった。ねぇ、僕が消えるまでどのくらい?」
「はっきりとしたことは言えません。ですがそれほど遠くない内にユーノ・スクライアと言う人物は消えてなくなります。理由の一つとしては、リンカーコアを摘出したことによる現象と推測できます。・・・つまり今までコアが存在していましたが、今はコアの残骸のみが存在している状態なので自身を保ち続けるのが難しくなった・・・と考えられます。これが今の医療の限界ですね」
肩を震わせながら涙を堪えきれずに泣いているシャマルを見ていると、何も言うことなくただ泣き止むのを待つしか出来なかった。
「・・・シャマル?泣かないでください。前にも言いましたがシャマルに全てを託しています。それに感謝しているんですよ」
「えっ?」
ユーノは自分の胸に右手を当て真正面からシャマルの顔を見て言う。
「こんな僕でもなのはの力になれたんですよ。これほど嬉しいことなんて今までありませんでしたから・・・。一族から追放されて、当てもなく彷徨いフリーの魔導師として危険度の低い遺跡を探索しては日々の糧を得ている状況でした。そんな中、僕の不注意で一人の普通の女の子を魔法の道へ導いてしまい挙句の果てには大怪我させてしまう結果ですよ!!」
「怪我をしたのはあなたのせいじゃ・・・」
「ええ、なのはの体調管理が良くなかったと言えばそれだけで済むかもしれませんが、魔法と言うものに出会わせてしまったのは僕が望んだからですよ。その場にいたなのはに『力を貸してください』なんて言わなければ今も普通に暮らしていたかもしれません。それだけは理解しているつもりですから」
「・・・・・・(彼って歪んでいるわね)」
「僕はもう少ししたら消えるんですよね?だったらユーノ・スクライアと言う存在を消すためにこの病院から退院します。もうリンカーコアがちょくちょく痛む以外はどこも悪くないので・・・。あと兆候ってあります?」
「そんなに急がなくてもいいのでは?」
「ここにいるだけで辛いんですよ。どうか最後の願いだと思って聞き入れてくれません?」
「・・・・・・分かりました。そうですね・・・考えられる兆候としては今までにない激痛と手足から消えていくと思います。それ以外は・・・あなたのような患者さんがおられないということもあって何が起こると言うのを断定出来ないんです」
「それだけで十分です。では退院します。あぁそれと彼女らの関係者には僕は勝手に退院していった、後のことはわからない・・・とでも伝えておいてください。良く言う必要はありませんので・・・」
「分かり・・・ました。さようなら」
ここで一時
~数年後~
八神はやては自分の部隊を造り守護騎士らもそれに加わる。今でも数ヶ月に一度の割合でシャマルの元に連絡が入るが、最近はとても辛そうなことが文面から理解できる。
『最近、節々が痛みます。元気です』
『右手が数分消えて元に戻ります。元気です』
『もうシャマルの手を煩わせなくてもいいかもしれません。元気です』
『・・・これが最後かな?はやてが部隊造ったそうですね。おめでとうございます。遠い地から応援していると伝えてください。さようなら・・・』
この文面が届いたのははやてが部隊を造ってその前準備に追われていた時だった。シャマルは自分の
今までユーノからの連絡は一方的で所在も不明だったが、最後の連絡に使った場所は簡単に見つかった。それは最後の連絡ゆえに、シャマルに伝えたかったのかもしれない。ユーノがいたと思われる半分廃墟と化した建物は偶然か必然かは定かではないが、はやてが造った機動六課がよく見える立地にあった。
不幸か幸いかは分からないが、今でもユーノは元気でやっていると思われて皆の心の中で生き続けているのかもしれない。
異論は多々あると思いますが、これっきりですのでスルーしてもらえるとありがたいかなーって。