ユーノの罪と罰   作:泡泡

8 / 10
 一部のキャラに対するアンチとも思える言動や、ご都合主義的な何かが含まれますのでお読みになる際はお気を付けください。


番外編その二~②~

 うるさく鳴り響き続ける通信用端末が煩わしくなったので、一応出ることにした。最近話したのは腹黒(クロノ)ぐらいで後は事務レベル。だから分かりきっていた、その相手が昔魔法を教えた元・少女だってことは…。

 

 「あっ、もしもしユーノ君?」

 

 「…何か用?」

 

 親しくもないのにいつも下の名前で呼ばれることに少しの苛立ちを隠さずに問う。

 

 「あのっごめんねぇ、ちゃんと伝えたつもりだったんだけど忙しくて…。お、怒ってるかな?」

 

 腹黒から教えられたのだろうか多分今日の事を伝えようとしていると思われる。が、自分にとって何の感情も湧き上がらなかった。もし親しかったらそれなりの表現の仕方とかあるのかもしれないけど、六課の裏方をやっていて資料出ししても『ありがとう』の一言も無く気付いたら終わっていたとかありえない。

 

 「別に…」

 

 「よ、良かったぁ。じゃあ今日の――」

 

 「あのさー」

 

 「な、何かな?」

 

 当たり前だが、こっちの事情を知らずにずけずけと入り込んでくる彼女にはある意味驚嘆するがそれも今となっては煩わしいの一言だ。ホント嫌になる。

 

 「俺行かないよ。別にと言ったのは何の感情も持っていないということであってあんたから連絡がなかったからそれについて怒っているとか許したとかじゃないんだわ。分かるかな?」

 

 「えっ!?」

 

 息を呑むのが聞こえてくる。そんなに断ったのがショックだったのか。いや、高町の事だからSLB(スターライトブレイカー)を撃ち込んでから話をしようよ的なちょっと、いやかなり可笑しな子だからな…。テスタロッサとか今でも桃色の光線を見ると目に見えてガタガタと震えているし。

 

 「今日の予定聞く前から行けるの前提って何かおかしくないか、常識を考えてみろよ。ったく」

 

 「で、でもユーノ君の仕事だって一段落したんじゃないの?JS事件が終わって」

 

 「無限書庫に休みがあるとでも思っているのか?落ち着きを取り戻しつつあるというだけだ。三徹、四徹は当たり前。ここは局内で一番過労死の多い課でありながら、一番立場の低く見過ごされている場所なんだよ!!そっちはいいよなぁ。終わったらそれで終わりなんだからよぉ!!」

 

 「あ……」

 

 「ホント今日は無理なんだわ。忙しくて高町さんのご期待に沿えなくてどーもすんませんねぇ…。じゃ」

 

 能天気なちゃらんぽらんな元・魔法少女を見ていると無性に腹が立った。無限書庫がないがしろにされ続けていて、やっと立場が向上しつつあるがそれも一部の局員の間でのみ。

 

 魔法を使わないで生活していると体調はほとんど変わらない。が、今まで体に溜まっていた疲労が寝て治るレベルではないらしい。いつかはこうなるであろうと言われてきたことが今起きようとしているだけの事。唯一救いなのは親しいと思える友人がいないことだ。こればっかりは無限書庫に感謝しないといけないかもしれない。JS事件の時も本局が襲撃されたがその時も無限書庫にいた(徹夜してた)から関係なかった。呼ばれて戦闘に参加せよなんて言われなかったし。そもそも戦力だと思われていないからなんだけどな。

 

 昔は多分強固な結界とか張れたんだろうが今ではそんなことをしたら胸の痛みが激しくなるだろうし、SLBの前では何の役にも立たないし…。

 

 「これも、これもいらない…っと」

 

 未練を無くせ…なんて言われたけど未練になるものが無くて困った。質素な部屋には最低限の家具しかない。布団は処分するし、タンスには日数にして数日分の服が入っているだけで汚くなったら洗濯して着るの繰り返し。休みは緊急要請が入るまでひたすら寝ることを繰り返す。

 

 栄養ドリンクだけが入った古臭い冷蔵庫も業者に頼んで捨てる。ぐるりと部屋を見渡して自虐的な言葉を吐き出す。

 

 「俺って生まれてきて何かの役に立ったのか?いや社会の歯車に合わされて必要なくなったら誰かと交換するだけでいいじゃないか。少しでも役に立ったと思わないとな。今しかできないことをやった。それでいいじゃないか、ユーノ・スクライアよ」

 

 明日の夕方に処分業者を呼んで部屋にあるものをきれいにしてもらう。あと清掃業者も頼まないとな、こんなときぐらい退職金を使わないと。

 

 「今頃は六課の連中は楽しんでいるんだろうなぁ」

 

 いそいそとここから出る準備をする。この場に居続けると多分誰かが誘いに来るだろうと予想した。そしてそれは当たることになるのだが、ユーノは知る由もない事だった。

 

 ユーノは管理局に退職願を出すとそれはすんなり通った。ユーノには役職が付いていないに等しいので、何ら局員の話題に上ることもなくスズメの涙程度の退職金が支払われただけで終わった。

 

 「はぁ~これで無職だね?ハハハ…」

 

 数歩歩いてから振り返ると自分に応対した局員の姿が目に入ったが、ユーノの事は一局員だったとでも言わんばかりにすでに忘れ去られているものと思われる。だがこの時ユーノの事を少しでも知っている局員が対応していたら、これから起きるであろう混乱に対処することができたかもしれない。ただユーノの有能さを知っている局員がごく一部であったことも事実だ。

 

 「さよなら」

 

 ユーノはそのまま病院近くのカプセルホテルに一泊しその足で治療に向かうことにした。意志は固いままだがどこから情報が漏れるか分からないからだ。端末に残っていたメール等を消去し、そして初期化をかける。これで端末を誰が使っていたかなんて専門的な調査をしなければ分からないであろう。

 

 「明日も早い…、さあ寝るか」

 

 カプセルホテルのどこにでもある素材で出来たベッドなのにユーノが使っていたものより幾分良いものを使っているらしく、よく眠れそうだった。ホント数えるぐらいしかない安眠を経験できた。

 

 寝続けることが出来たというわけでもない。というのは深夜過ぎ元住んでいたところの大家から連絡があったからだ。どこから知ったか知らないが不法侵入してきた大馬鹿が三人ほどいたらしい。彼女らは酒に酔った勢いでユーノが住んでいた部屋に押し入ろうとした。いくら呼んでも鍵が開かない事にやきもきした桃色悪魔(高町なのは)がドアを壊し、土足で部屋に入り込み置いて行ったテーブルを壊したというのだ。 

 

 「はぁ…そうでしたか」

 

 大家曰く管理局の質も落ちたことを嘆いていたようだ。

 

 「初犯である事と酒に酔っていたこともあって厳重注意だけで終わってしまったよ…」

 

 「そうですか。でもやったのがあの三人だったって言うことも軽すぎる罰の理由になりそうですね。僕にとってはどうでもいいですが…」

 

 「ああ、少しばかり多い修理代を渡されたよ。多分そこには口止めも含まれているんだろう。住みにくい時代になったもんだ。何かを言いたそうだが、ユーノは気にしなくてもいいさ。新天地でも頑張るんだろ?」

 

 ヒュッと息を飲んだのが聞こえたのか、自分が言いたいことを遮って先に言ってくれた。ホント感謝しかない。

 

 「ええ、ありがとうございます。遠い地から大家さんの健康を祈ってますよ。それでは…」

 

 まだ感謝したいことなど言いたいことはあるが、夜も更けつつある中で間延びするような事にはしたくないしユーノにとって最後の夜となるわけだからほどよいところで通信を切ることにした。それから眠い目を擦りつつ本当に全ての履歴等を消しユーノという存在を無くすための仕事をした。

 

 そして夜が明けると朝一番で病院へ行き処置を行なうことにした。それ自体は痛みの伴わない危険度も低いものだが、副作用となる記憶障害がでる割合が高めなため記憶を失っても自分の責任で行なった事をサインし、処置室へと入って行った。

 

 ユーノの処置はうまく行ったものの危惧されていたように部分的な記憶障害が起こった。自分の名前などは覚えているが、生まれてからスクライアの集落で育った事をおぼろげに覚えジュエルシード事件や闇の書事件、J・S事件についてはほとんど思い出すこともなかった。医師に勧められた文章にして残すこともしなかった為きれいさっぱり失われていた。

 

 

 そして、数日後――…。

 

 

 「うん、大丈夫なようだね?」

 

 主治医の嬉しそうな声が診察室に響く。一通りの診察をした後、言われた言葉だが彼自身も嬉しそうに顔をほころばす。

 

 「あとは…名前だね?前の名前は使いたくないと君が言っていたし、術後にもう一度尋ねた時も意思は変わらないようだったから適当なのを選んでおいたよ。まぁ変な名前でも無いし君もすぐに気に入ると思うよ。…じゃあこれで言いたいことは全部言ったけど君は何か聞きたいことある?」

 

 「…いいえ特には」

 

 少し考えてから首を振る。面倒な事は主治医が全部やってくれたようだし、自分の身に何が起きて元の名前を使いたくないかなんて言うのも簡単に理解したつもりだった。

 

 「そう?分かった。入院費などはもう貰っているから今日中に退院してくれればいいよ。じゃっお疲れさん」

 

 何か思い出しそうになったが、大したことでないと結論付けて病院を後にした。これからどこに行くかはまだ決まっていなかったが、入院中に見た旅番組で良さそうな世界があったのでそこに行くことにした。文化レベルはミッドチルダの少し下ぐらい、魔法がほとんど知られていない世界だったので決めたわけだった。

 

 だがそこに滞在出来たのは数日ぐらいだった。それにミッドチルダとその世界を結ぶポータルがある空港でも問題を起こした管理局員がいて精神的苦痛を味わった。




 
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