この作品は作者の独自の考えが含まれています。この話にはヴィヴィオに辛辣な物言いが含まれています。お気を付けください。
見られている…そう思うようになったのは空港についてからすぐのことだった。最初は自分の延長線上に誰かがいて偶然自分がその視界に入っただけ、と思っていたので後ろを振り向いても誰もいない。何度か座る位置を変えてもその不気味な視線はとどまることを知らなかった。空港には長時間いないから少し我慢すればいいと思い、床を凝視する。
「すみません、ユーノ・スクライア先生ですよね?」
「………」
横から女性の声が聞こえてきたが自分ではないと思い、近くにいる誰かを呼んでいるものと考えてそのまま放置していた。幾度か聞かれたがその声に聞き覚えはないし、はっきり言って煩わしかったので顔をそちらのほうへ向けた。オレンジ色の髪の毛が特徴的で、少し目つきが鋭い女性とまでいかない少女がやっと見たと言わんばかりの表情を浮かべていた。
「ユーノ・スクライア先生ですね?お話したいことがあります」
「……誰かと間違えていませんか?俺はその
「えっ?」
呆気に取られたポカンとした表情になった。それからすぐに顔を引き締めた。
「私はティアナ・ランスター執務官です。旅券もしくは免許証など自分の身元を明らかにできるものをお持ちでしょうか?」
ぶっきらぼうに伝えてくる。こんなのが執務官でいいのだろうかと思いながら、さっさと済ませてもらいたいので旅券と免許証の両方を出し見せる。と、怪訝な表情を浮かべ失礼なことを言ってきた。
「偽造?」
「はっ?おいおい、俺の何かを知らないで偽造とはこれいかなものかねぇ。あんたホントに執務官か?それに何の罪かも知らされないで旅券の提示と決めつけはいかんでしょ…」
呆れたように息を吐く。自身を見る冷たい目に気付いたのかその執務官らしき女性があたふたとし始めた。
「し、失礼致しました。私は無限書庫で働いている司書長を探しており、その対象と思わしき人物を発見したので声をかけたわけですが…名前が違っていたものですから」
「…へぇそんなにその人と俺が似てるって?見せてもらっても構わないか?」
「どうぞ、これです」
ちょっと躊躇った後、写真を見せてくれる。ん、写真?と思って日付を確認すると今から十年ほど前に取った廃れているタイプの写真だった。
「これって古いですよね?人物を探しているんだったら最近のって無いんすか?」
最初に会ったときよりも、この執務官に対する信頼度が幾分下がったかもしれない。最近の人物像を見て探しているんだったらだが、そこに写っている対象人物はあどけなさを残した男子だからだ。
「やはりそう思われますか?私もそのように進言したのですが、聞き入れてくれませんでした。まぁその原因を作った三人は、昨晩のうちに厳重注意による一時的謹慎に至っているのですが…」
聞いてしまいたい言葉もあったがこの執務官も疑問に思っていることならその事についてそれ以上なぜなのかと問い尋ねることも出来るが、しないほうが良いだろうと思い軽く流すことにする」
「対象が幼い子供であれば納得できたのでしょうが、年齢が離れすぎていますよね?どう考えたってその写真を提供した人の落ち度といえるのではないでしょうか?それに名前も違っていますし、もうすぐポータルを使う時間になりますので失礼してもよろしいでしょうか?」
うんうんと頷きながら考えている執務官を視界にとらえながら、もう少しで転位の為の時間が来そうなことを伝える。
「あぁ、そうでしたね。私としても無実の人をこのまま引き留めることも変ですね。ホントどうしたんでしょうか…。今回の件に関してこれ以上何かに巻き込まれたとしても、私ティアナ・ランスターがあなたがその人物ではない事を証明することをここに宣言しますね。今謹慎処分を受けている上司たちもあなたを拘束しようとするでしょうから…」
最初に見た時より少し疲れた表情を浮かべながら宣言してくれた。でも…。
「ティアナさんがこう言ってくれても、多分と言うか確実に巻き込まれようなきがしますよ…。何もなく終わってほしいものですが」
執務官と別れてポータルを使う列に並ぶ。今までのやり取りを見た人たちからも何事かと詳細を話してほしい人にはそれなりの詳細を告げるが、無限書庫で働いているユーノ・スクライアととても似ているらしく本人ではないのかと尋ねてくる人までいた。そう言った連中には、証明書を見せて別人であることを伝えるとすんなりとではないものの引き下がってくれた。
どんだけそのユーノって奴と似てるんだよ。多分、これから数度巻き込まれるだろうな…と思いつつ列に並び続けた。そして…。
「ユーノパパっ!!」
元気な幼女の声が聞こえてくる。数度同じ声が聞こえてきて、段々と近づいてきた。名前を呼ぶ声は先ほど執務官に間違われた名前なので合っているか間違っているかは別として自分を呼んでいるのは分かった。ホントめんどくさい。
「ちっ…」
「パパァ…」
横まで来て服の袖を掴み上目づかいで見つめる幼女。だが、見覚えがあるわけでも昔の女に孕ませたこともないので、この子供は知らない子だ。
「離せ、俺はそのユーノとやらではないんだからな」
「あっ」
掴む力が一瞬緩んだすきを狙い、サッと腕を振るう。どれだけ力を入れていたのだろうか、少し袖がのびていた。少女の潤む目に、少しばかりの罪悪感を感じるかと言えばそうでもなかったりする。だってユーノとやらに間違われることに数回遭遇した結果かもしれない。
「うぅぅ……」
側で半泣きしている少女を置き去りに今度こそポータルの列に並ぶ。少しの間は少女の潤む目と状況を知らないやつからの冷たい眼差しを受けていたものの、知らない連中には一連の状況を知っている人からの少しばかりのおせっかいのおかげで、それ以上絡まれることもなく地球に降りることが出来た。