骸骨指揮官とエンタープライズ   作:nica

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今回の話。本来であれば漫画の四話目になる筈でしたが、私の脳内が暴走しまして三話目にしていきなりオリジナルの内容をぶっこんでおります(汗)
漫画本編のほのぼのにあるまじき展開となっておりますので、読まれる際にはご注意をお願いいたします。Subane様には投稿前に確認してもらっておりますが、いやはや……
ちなみに、名前は描写しておりませんが別の作品よりスペシャルゲストが参戦しています。どうしてそうなったんだろうね、うん(白目)
他作品の存在を出すわけだからクロスオーバータグ付けないかんのやろうけど、あくまでもちょい役みたいな扱いだからどうなんだろうね?必要であれば指摘していただけると助かります。
相変わらずの駄文ではありますが、この話も温かい眼で見てくださいな。
遅筆ではありますが、これからも頑張って書いていきますのでSubane様の作品共々読んでいただければ幸いにございます。


第三話

 とある日のとある海域にて。

「終わりだ!」

 『エンタープライズ』の声と共に彼女の艦載機が発艦し、彼女達の敵を穿ち沈めていく。

「この程度じゃ足りないわ。もっと、もっとだ……!」

「この程度、あの時と比べて全然……」

「ユニコーン……頑張る……!」

「狙って……ポン!」

「お姉さんも本気を出さないといけないわね……」

 それに続くように、仲間達も次々と攻撃をしていく。

 鉄血陣営の重巡洋艦『プリンツ・オイゲン』が前衛を護る為にシールドを展開して敵の攻撃を防ぎ。その両脇から『ラフィー』が敵に魚雷を、重桜陣営の重巡洋艦『愛宕』が砲撃を敵陣に向けて放っていく。

 更にその前衛の彼女達を支援する為に、『ユニコーン』は艦船時代の持ち味を活かして前衛組の応急修理を。ロイヤル陣営の巡洋戦艦『レパルス』は、前衛の彼女達に攻撃を集中させようと密集した敵に狙いを定めて主砲を放った。

 彼女達から放たれた攻撃は吸い込まれる様に敵に当たり次々と沈めていく。そうして暫く戦闘は続いたが、やがて全ての敵を沈める事に成功する。

「ふぅ……もうこれで終わりなのかしら?」

 常に最前線に立ち、艦隊の楯として敵からの攻撃を受け続けていた『プリンツ・オイゲン』はかなりの損傷を受け艤装もボロボロだったが、涼し気な表情を崩さずにそう言葉を放つ。

「見える範囲ではそうだと思うけど…………そっちはどうかしら?」

 油断せずに周囲を警戒しながら『プリンツ・オイゲン』の言葉に返し、艦載機で彼女達の知覚範囲外を偵察している『エンタープライズ』と『ユニコーン』に問い掛ける『愛宕』。

「……うん、大丈夫。周囲に……いないよ」

「…………ああ。こちらも確認した。私達が偵察できる範囲に敵影はないようだ」

 偵察に出していた艦載機からの情報を読み取った二人はそう返し、艦載機を収容する。二人が艦載機を収容し終えれば、少し離れて周囲を警戒していた『ラフィー』と『レパルス』も集まり、

「でも、あの敵は何だったのかしら」

「そうね~。お姉さんもあの敵は初めて見るわね」

 『プリンツ・オイゲン』と『愛宕』が今回接敵した存在に関してそう零す。

「ラフィーも……初めて見た……」

「そうだね~。今まで出撃してたけど、今回の敵は初めて見たやつだね」

 『ラフィー』と『レパルス』も二人に同意してそう返す。そしてその表情はどこか険しかった。

「あの敵、『セイレーン』じゃなかったわよね……」

 どれだけ敵の攻撃を受けようが涼し気な表情を崩さなかった『プリンツ・オイゲン』が、視線を鋭くしてそう呟く。

「そうね。今まで確認された『セイレーン』は全て人型で、あんな姿形をした『セイレーン』はいなかった筈よ」

「まぁ、『セイレーン』に関してはまだ謎が多いから新種の『セイレーン』の可能性も否定できないけどね」

 今回戦った敵。

 それは自分達と同じ『KAN-SEN』でも、ましてや『セイレーン』でもなく『異形』ともいうべき存在だった。

 その存在を言葉で表すのは難しいが敢えて言葉に表すとすれば、漆黒の……巨大な魚、だろうか。当然それが魚などという可愛い存在ではないのは確かである。魚は砲撃などしないし、艦載機を出して空襲なんか仕掛けてこないからだ。

 今回接敵した存在についてを暫く考え込む彼女達。

「……駄目ね。情報が少なすぎて判らないわ」

 頭を降りながら溜息を溢し、『プリンツ・オイゲン』が眉を顰める。

「それは仕方ない事よ。あんな存在がいるなんて私達は聞かされてなかったし、何度も言ってるけど今日初めて見たのだから」

「ま、ここで私達が考えても答えは出ないよ。またあの敵と遭遇しないとも限らないし、今は鎮守府に帰る事を考えよう?」

 漂い始める不穏な空気を振り払うかのように、完全にではないがいつも通りの笑顔を浮かべてそう言う『レパルス』。そんな彼女に視線を向ける『プリンツ・オイゲン』、『愛宕』、『ラフィー』。彼女達は顔を見合わせ、

「そう、ね。ここで考えても仕方ないか」

「確かに、またいつ現れるか分からないものね」

「……ん。弾薬も……そろそろ」

 一先ずの結論を出して頷き合う。

「エンタープライズ、指揮官との話は終わったのかしら?」

 四人の会話に混じらず、通信機で指揮官とやりとりをしていた『エンタープライズ』に『愛宕』が問い掛ける。『エンタープライズ』は『愛宕』にちらりと視線を向け、二言三言通信機で指揮官と言葉を交わすと、

「今終わったところだ」

 通信機をしまい『愛宕』向き直る。念の為にと彼女を護衛していた『ユニコーン』に目配せすると彼女も頷く。『ユニコーン』の頭を優しく撫で、自身を見つめてくる四人の視線を受け止めた『エンタープライズ』は軽く咳払いをし、

「指揮官からの指示だが、私達はこれより鎮守府に帰還する。想定外の接敵があった為に弾薬の消費が激しいが、警戒を怠らないように」

『了解!』

 艦隊旗艦の指示に一糸乱れず返す仲間達に頷き、

「プリンツ、殿は貴女に任せる。損傷が一番激しい貴女を酷使するのは申し訳ないと分かっているのだが……」

「この程度どうってことないわ。あんた達は心配せず前だけを見てなさい。もしまたあの敵が現れたとしても、この私がいる限りあんた達に奴等の弾幕(たま)は通らせないわ」

 申し訳なさそうな表情で『プリンツ・オイゲン』に艦隊の楯になるよう頼む『エンタープライズ』。そんな彼女に対して、『プリンツ・オイゲン』は不敵な笑みで答える。

 自身はボロボロで満身創痍と言ってもいい状態。仲間も皆大小違えど損傷を受け、索敵範囲に敵がいないとはいえいつ接敵するかも定かではない状況なのにだ。

 傲慢とも、自信過剰とも取れる『プリンツ・オイゲン』の言葉に、『エンタープライズ』達は頼もしいと言わんばかりの笑みを浮かべる。何故ならば『エンタープライズ』達は知っているからだ。『プリンツ・オイゲン』の言葉が慢心でも自信過剰からきているのでもなく、事実その通りであると。

 『プリンツ・オイゲン』。彼女もまた『エンタープライズ』と同じく、かつての大戦を終戦まで生き延びし鉄血陣営の英傑なのだ。

「まったく、頼もしい限りだ。なら……」

 笑顔から一転。『エンタープライズ』は表情を戦闘中のそれに切り替えて仲間達を見つめ、

「全艦、これより最大船速でこの海域を離脱する。誰一人欠ける事なく鎮守府に帰還するぞ」

『了解!』

 彼女達はこの海域より離脱する。

 己が帰るべき、いるべき鎮守府に戻る為に。

 

 

 

 

 無事に自分達の鎮守府に帰還した『エンタープライズ』達。

 あの後再び謎の敵性存在に襲われた彼女達だが、『プリンツ・オイゲン』の言葉通りに彼女以外に損害はなかった。敵の攻撃を味方の代わりに全て受け止めた『プリンツ・オイゲン』は大破状態に追い込まれ、立っているのも儘らない状態だったが不敵な表情は一切崩さなかった。

 流石に『愛宕』に肩を借りての帰還となった『プリンツ・オイゲン』だが、彼女がいなければ被害はもっと酷くなっていたであろう。鎮守府に着いた『エンタープライズ』達は、渋る『プリンツ・オイゲン』を工廠にいた『明石』に任せ、旗艦である『エンタープライズ』は指揮官に報告へ。残りは寮舎の自分の部屋へと戻っていった。

 艦隊の皆と別れ、一人執務室へと向かう『エンタープライズ』。頭の中で今回報告すべき内容を纏めつつ早足で向かう。

(しかし、今回会敵したあの存在は何だったのだろうか。『セイレーン』とも、我々『KAN-SEN』ともまったく違うあの存在は……)

 脳裏に浮かぶのは今回遭遇した敵性存在の事。今まで遭遇した事は一切なく、指揮官からもそのような存在がいる事は聞かされていなかった。

 不気味な咆哮を上げながら『エンタープライズ』達を襲い、彼女達の攻撃が効いているのか効いていないのか判らない素振りで突撃を繰り返してきた。『プリンツ・オイゲン』がいなければ、全員無事でこの鎮守府に帰還す事は叶わなかったであろう場面が何度もあった。

(情報がない以上考えても仕方ないのだが…………嫌な予感がする。この予感が杞憂であればいいのだが……)

 脳裏を過る嫌な予感を振り払うように頭を振る『エンタープライズ』。

 そうして色々と考えつつ歩き続けていたらいつの間にか執務室の前に着いていたようだ。『エンタープライズ』は自身を落ち着ける様に軽く一呼吸してからノックをする。

「……ん、入れ」

「失礼する」

 少し間があってから指揮官の入室を許可する声が聞こえ、『エンタープライズ』は執務室へと入る。

 入室すると指揮官は執務中だったらしく、左手に持った書類を読みながら右手で何らかの報告書を書いているようだった。

 『エンタープライズ』は指揮官の前まで来ると敬礼をする。

「指揮官。エンタープライズ以下第一艦隊、只今帰還した」

 指揮官はその声に顔を上げて返礼をし、

「ご苦労。詳しい被害報告は交渉にいる明石とヴェスタルから聞いている。全員帰還してくれて何よりだ」

「ああ。プリンツのおかげで全員帰還する事ができた。彼女がいなければ被害はもっと大きかっただろう。お礼は彼女に言ってくれ」

「それは当然だ。だが、彼女だけの力ではお前達全員という訳にはいかなかっただろう。お前達全員が力を合わせたからこその結果だ」

 指揮官からの労いの言葉に、小さく笑みを浮かべる『エンタープライズ』。しかしすぐ表情を引き締める。

「指揮官、出撃時の詳細な報告だが……」

「ああ、あの時は時間がなかったからな。報告を頼む」

 指揮官も表情を険しくし、『エンタープライズ』の報告に耳を傾ける。彼女から語られる内容に指揮官の表情はどんどん険しさを増していき、

「『KAN-SEN』でも、『セイレーン』でもない謎の存在か……」

 重い溜息と共にそう溢す指揮官。その言葉に『エンタープライズ』は不安そうに彼に問いかける。

「……やはり、指揮官も知らない存在なのか?」

「そうだな。同期の奴等も知らないし、『司令部』からもそんな存在の事は聞かされていない」

「そう、か……」

「まぁ、それも今日以前の話だ。ひょっとしたら、今頃『司令部』がその存在に気付いているかもしれない」

 可能性は低いだろうがと、内心で呟く指揮官。

 いくら『司令部』に優秀な人材がいたとしても、恐らくは彼女達が初めて会敵したであろう存在をすぐに察知できるとは思えない。情報網がどれだけ広くとも、この広大な海域から小さな異物を見つけるようなものなのだから。しかしこうでも言わなければ、執務室を覆う重い空気を払拭できない。

 指揮官のその言葉に、『エンタープライズ』は微かに安堵の吐息を漏らし、

「だといいが……」

 まだ表情は優れていないがそう溢す。

 いつもの凛とした表情と違い、どこか憂いを含んだ儚い表情の『エンタープライズ』に、指揮官の心臓――心臓? ――がトクンと跳ねる。

 その事に内心戸惑うがそれを表には出さず、

「まぁ、私達のやれる事は限られている。どんな些細な事でも『司令部』への報告を怠らず、やれる事をやっていくしかない」

「そう、だな……」

 自身に言い聞かせるようにそう言う。

「一先ずはお前も休め。気を張り詰めすぎてもいい事なんてないからな」

「……そうさせてもらうとしよう」

 指揮官のその言葉にそう答え、『エンタープライズ』は退出していく。

 彼女が退出したのを見届けた指揮官は背凭れに背を預け、

「『司令部』も把握していない謎の敵性存在、か……。これが吉兆の前触れでなければいいんだが……」

 険しい表情で天井を見つめそう呟く指揮官。

 その言葉が切っ掛けだという訳でもないだろうが、今まで晴れていた空に暗雲が立ち込め始める。まるで、彼の言葉が真実であるかのように……

 尚、その数週間後。とある鎮守府が何者かの襲撃を受けて壊滅的な被害を受けた。鎮守府とその周辺施設。及び近隣住宅は惨たらしく破壊されていたが、指揮官含め軍人関係者、『KAN-SEN』達。一般市民の姿は其処にはなく。残されたのは破壊の爪痕だけ。

 それから更に数週間程かかってその事が近隣鎮守府により発覚され、『司令部』へと知らされる事となる。

 『司令部』は調査の為にその海域に調査員を送り情報を収集するも、成果は上がらず。調査員達は途方に暮れながらも調査をし続けた。

 その数日後。襲撃を受けた鎮守府所属と思われし『KAN-SEN』を、元鎮守府より数キロ離れた海域で発見。彼女は意識がなく、いつ沈んでもおかしくない状態で海面に浮かんでいた所を調査員達により発見された。

 調査員達はその事を『司令部』に連絡。『司令部』の指示により、彼女は最寄りの鎮守府に緊急搬送される。

 彼女を最寄りの鎮守府に搬送した調査員達は、彼女が漂っていた海域に戻りその周辺の調査を開始。何日にも及ぶ調査の結果、そこから更に数十キロ離れていた所に無人の孤島がある事が判明。その島で調査員が見たものは、襲撃された鎮守府の指揮官及び軍人関係者。指揮官の部下である何人かの『KAN-SEN』達。いずれも重傷で、このまま発見されていなければ数日もしない内に帰らぬ身となっていただろう事は明白。

 彼等もすぐさま近隣の鎮守府や治療施設がある場所へ搬送され、早急に治療が施される事となる。

 一体、かの鎮守府は何者に襲撃されたのか。

 詳細は彼等の回復を待ってからとなるだろう……

 


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