モブになりたいが、周りがならせてくれません…。 作:カフェ・オーレ
これからは飽き性を治していくために、週一で投稿しようと思います…。
モブになりたい俺
「でさー…」
「わかるわかる…」
あ〜、今日も特に何もない一日が終わったな〜。近くで話している生徒たちの声を聞きながら、教室の机でだらーっと顔を突っ伏している俺、篠ノ之龍実(しののの たつみ)は、そんなことを考えていた。
いや〜しかし、アオハルだの交際は学生唯一の特権といえども、だがそれは、よく考えれば「勝ち組の奴らを指す言葉じゃね?」と思う。うん、リア充爆発すれば良い。
だが、俺には放課後にも疲れるもとい癒やされる?存在がいる。それは…。
ガラッ
「失礼します」
考えていた側から教室の戸が開けられる音がした。来たかな?戸を開けた人の足音がだんだん俺の机がある方に近づいてきて、俺の正面で止まった。一応、顔を上げてみた。
「迎えに来たぞ、兄さん」
「おう。迎えご苦労さん、箒」
見上げた先にあったのは、背に竹刀袋を背負った毎日見ている妹、篠ノ之箒の顔であった。
箒は学園で『学園大和撫子姉妹の妹』と呼ばれている。一年ながらに、剣道部では男子女子関係あらずに次期主将と噂されている。告白も既に十回以上されていたらしいが、刀のごとくにぶった斬り、もとい断っていた。モブとしていたい俺は誇らしいんだが…、兄としての俺としては、悩みどころである。しかしながら…うむ、自己主張している部分も立派である。
「兄さん?何か、卑猥な視線を感じたのだが…」
俺の視線を感じ取ったのか、妹がハイライトを消した冷たい目でこちらを睨んでいた。おおぅ、めっちゃ怖え…。
「何も考えてないって。ほら、行くぞ」
「そ、そんなに急がなくてもいい。…コホン。では早速、剣道場に行くとしよう」
教室を出ていく俺に連れて、箒も後に続いた。俺の教室は三年、箒は一年であるため、教室の階が違うのだが…この妹はスゴスゴと三年の教室に出向いて俺を迎えに来る。…まるで、他の人から俺を取られたくないようだ。
「安心しろ。私はただ、兄さんに近づく輩を退かせるためにいるだけだ」
いや、同じだから。てか、さらっと俺の思考を読むんじゃない。歩きながら思っていると、俺たちの前を遮る生徒がいた。
「あら、奇遇ですねタツくん」
背が高く、黒い長髪でスタイル抜群の美じ「兄さん、鼻の下伸ばすな」ょと思っていたら、我が妹に耳たぶを引っ張られる。イテテテェ!!!
「フフッ、相変わらず仲のいい兄妹ですね」
「そういう貴女は、私と兄さんが一緒にいると必ず邪魔してきますね。姫島先輩」
姫島朱乃。俺の隣のクラスに在席していて、『学園のニ大大和撫子姉妹の姉』または『学園のニ大お姉さま』などの渾名がある女子。実を言うと、彼女とは幼馴染?に当たる関係。小さい頃に、近所の神社の交流会で出会ってから仲良くなった。……ただ、『姉ちゃん』と箒は彼女をライバル視しているが…なんで?
「あらあら、近くで見かけたので声をかけただけですわ。他意はありません」
「どうでしょうか?昼休みになると私より先に、兄さんと昼食を摂っている貴女に言われても、納得がいきませんね」
それは俺も思った。朱乃は何かと俺と一緒にいたがるのだ。まあ、『あの出来事』の恩返しみたいな感じだが、姉ちゃん曰く「あの女に近づきすぎないでね!じゃないとお姉ちゃんが…コロシチャイソウダカラ」とハイライトの無い目で訴えかけられた。滅茶苦茶コワカッタ(震え)。
「朱乃は部活に行くところか?」
「ええ、そちらは…」
「見ての通り、剣道場に行くところだ。俺は部員じゃねぇんだけど、コイツや部員たちが鍛えてくれとせがむ訳でしょうが無く」
「…しょうが無くて悪かったな」
あ、いけね。口が滑って本音言ったら、箒が膨れっ面になってしまった。こうなった時の箒は面倒くさい。こちらが折れないと、話を聞いてくれなくなる。
「ふふっ、ではオカルト研究部に来ますか?リアスも貴方が来るのなら歓迎してくれると思うけど」
リアスとは、朱乃と同じく『学園のニ大お姉さま』のもう一角だ。彼女とは朱乃を通して面識があり、剣道場によく来る『学園のイケメンアイドル』の木場祐人、『学園のマスコット』の塔城小猫ちゃんとも顔見知りだ。
「悪いが今日は無理だな。あ、なら木場君に声をかけてくれ。今日は道場にいるってな」
「…つまり、私より祐人くんをとるのね。ううっ、私とは遊びだったのですね…」
朱乃は、ヨヨヨと手で顔を覆って泣き真似をする。もうこれは、既に何回もしているため日常茶飯事になっているが、俺としては辞めてもらいたい。何故なら、周りの生徒からの視線が痛い。今も現在進行形で女子からは冷たい目で、男子からは嫉妬と殺気の籠もった目で睨まれている。勘弁してくれ…。
「はあ…もう、慣れました。無駄な時間が延びるだけです。行こう兄さん」
「あ、おい!引っ張るなよ!じゃあな、朱乃」
「ふふっ♪あらあら、微笑ましいですわね。……でも、私も負けませんからね、箒ちゃん」
後ろからの視線に気づいていない俺は、箒に引っ張られながら剣道場に向かった。