モブになりたいが、周りがならせてくれません…。   作:カフェ・オーレ

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 ギ、ギリギリセーフ…か?


友達!出来たァァァ!!!

 

 千冬さんにみっちりしごかれ、慌てて境内を戻した俺は全力疾走していた。クソっ、少しばっかり出るのが遅れた!その時…。

 

バサッ

 

「って、何だコレ!?前が見えない!兎に角走り続け(ガスッ!)痛えェェェ!!??」

 

 走ってたら目の前がいきなり真っ暗に!さらに顔面に痛みが奔る!恐らく、目の前に標識でもあったんだろうな。…ノォォ…なんだ、このありふれた不幸は。俺は某不幸少年じゃねぇんだぞ…!

 

「ブハァ!…なんだこれ?只の布…じゃねぇな。なんか金色の刺繍がされてるし、…ああ、結婚式とかで見るヴェール、ベール?だったか(トントン)ん?」

 

 唐突に肩を叩かれたから、叩かれた方を見ると金髪の美少女が困り顔で立っていた。彼女の視線は俺が持っているヴェールへと向けられていた。コレって、もしかしなくても…?

 

「あ〜、…コレ、君のか?」

「ッ!(コクコク)」

 

 合っていたのか、彼女は首を数回縦に振った。このまま渡すのも忍びないので、少しばかりベールについている埃を払ってから渡した。

 

「ァ―…」

「あ〜、ちょい待ってな」

 

 彼女から声をかけられなかった事を察するに日本語多分、言っても解らないと思ってストップと手で制し俺は手持ちカバンの中から線無しイヤホンを耳につけた。あとは設定を全国翻訳に変更して…。

 

「よし、これでわかるか?」

「!わ、私の言葉がわかるんですか!?」

 

 おお、良かった。どうやらちゃんと機能したみたい。実はこの翻訳イヤホン、姉ちゃんが面白半分……まあ、姉ちゃんが開発するのはいつも気分次第なんだが。前に旅行(箒は部活の一週間合宿で居ない)に行った時、相手の外人の言葉がわからなくて「翻訳面倒くさいにゃぁぁ!!」と手持ちの荷物でこのイヤホンを作ってた。ホント…天災の頭は、どうなっているだろうか?

 

「えっと…?」

「あ、スマン、紹介が遅れた。俺は篠ノ之龍実。職業は学生をしている。宜しく」

 

 なんか、どっかズレた自己紹介だが、この際気にしないでおく。……ホントは気にしてます、はい。

 で、ヴェールを被り直したシスターさんはアーシア・アルジェントというらしい。なるほど、マジモンのシスターだったのか。あと、先日に兵藤後輩にも会ったとか。だが…いくら、この町でシスターが珍しいからってジロジロ見るのは失礼だぞ、後輩よ。

 

 お互いに挨拶した後、立ち話もなんなので近くのファミレスに行くことにした。学園?一日サボったところで単位は取っているため大丈夫大丈夫!……その代わり、箒からのお説教は確定だが。

 

「わぁ〜!こんなに素敵な時間を過ごせるなんて、教会では出来ませんでした。ありがとうございます、タツミさん」

「なんてことないさ。そういえば、アルジェントさんはこの町に赴任してきたんだったな。シスターって滅多に教会から離れないって噂だが、何でだ?」

「…実は―」

 

 暗い表情から、聞いてはマズいと思って無理しないでと声を掛けるがアルジェントさんはゆっくり話してくれた。

 

 ―彼女がこの町に来たのは、教会を追放されたから。

 

 

 孤児の彼女には生ける生物を癒す、秘めた力を持つ神器『女神の微笑み』が宿っていた。教会はその力を宿していることから彼女を聖女として讃えた。

 ある日、彼女がいつも通りに祈りを捧げようと外に出たら瀕死の悪魔を見つけ、すぐに神器で手当した。

 

 だがそれが誰かに見られていたのか、その噂が教会中に広がり、とうとう教会を追放されてしまった…。

 

 

 

 …なんというか、アレだな。教会アホだ。そりゃ、生ける生物なら何でも治せるのなら、死んでない悪魔だって治せるだろうが。

 

 

「きっと、祈りが足りなかったんです。私が未熟者だから」

「…まあ、軽々しく慰める話じゃないけどな。じゃあ、聞くぞ?アーシアはその行為を後悔したか?」

 

 その言葉に、彼女は周りの目も気にしないで立ち上がった。

 

 

「後悔なんてしていません!あれは私がしたいと思ったからしたんです!だから―」

「わ、わかった!だから落ち着け。な?」

 

 アルジェントさんは自分がいきなり叫んだのに気づいたのか、周りに頭を下げながらゆっくり座った。

 

「す、すみません。声を荒げてしまって…」

「いや、俺もいじわるな質問して悪かった。なら、それでいいと俺は思う」

「え?」

「アルジェントさんは、自分の信念に従ってその悪魔を治したんだ。ならそれで良いじゃないか、うん。少なくとも、俺はそう思うぞ」

 

 俺が頷くと、何故か彼女はポロポロと涙を流し始めた。俺は何か不快なことを言ったかと慌てたが、彼女は首を振る。

 

「違うんです。ずっと、このことを責められてきたので…この行為を褒められたことが無いから、嬉しいんです」

 

 …そうか、確かにその行為を間違いだと感じた奴らからしたら、アルジェントさん以外は皆責めるだろうな。

 

 よし、なら…。

 

 俺は思い切った行動をする。

 

「アルジェントさん、俺の友達になってくれないか?」

「え…?」

「いきなりで悪いな。でも、味方は多い方が良いしさ」

「わ、私とお友達になってくれるんですか?」

「ああ、といっても俺も友達少なくて。ハハハ…」

 

 すると、苦笑する俺の右手を両手で握った。

 

「わ、私で良ければ、お友達になって下さい!」

「…ああ、よろしく。アルジェントさん」

 

 

 

 今日、俺はアルジェントさんと友達になった。

 

 

 

 

 

 





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