ウルトラギャラクシー〜異世界の救世主〜   作:ふと郎

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ギンガS放送記念!
…というわけでもないです。遅くてすいません。今回もまたセリフだらけですが…

〜前回のあらすじ〜
バリケーンに敗れた憐は、川へ落下した。


episode9 嵐の中で ー中編ー

 

「はあ…これからどうしよう…」

 

  ジャンスターから飛び出したナナは、当てもなく歩き続けていた。どうしよう、と言ったものの、彼女が取れる選択肢は大してない。感情に任せるままの行動であったため、持ち物など腰に携帯しているバトルナイザーと少しの食料だけ。その上自身の宇宙船もジャンスター内に置きっ放しで移動手段も徒歩のみ、と言った具合である。更に悪いことに、今ナナが進んでいるのは見渡す限り緑一色の草原だった。これでは人に会うことすら叶わないだろう。

 

(ほんとにどうしようかな)

 

  もしかしたら憐が来てくれるかも、という考えが浮かぶが、ナナはすぐさま首を振る。

 

(まさか…そんなわけない。だって憐にとってアタシは『他人』だもん…)

 

  そう心の中でつぶやくと同時に、先ほどのことを思い出して悲しくなる。正直ナナは気持ちの整理がついていなかった。悲しみ、困惑、怒り…様々な感情が彼女の心の中で激しく混ざり合う。その中でも特に大きいのは、やはり困惑だろうか。

 

(なんでこうなっちゃったのかなぁ…)

 

  どうして、とナナは思う。自分は彼を心配していただけだったはずだ。それがどうして口論になってしまったのか。気づかない振りをすればよかった?でもあんな状態の憐を放っておけなかった。

 

(てかそもそもなんでアタシがあんなこと言われなきゃなんないの⁉︎ こっちはアンタのことを思ってのものだったのに…!)

 

  自分は間違っていなかったはずだ。仲間を気遣って何が悪い?その自分にあんなことを言うなんてどう考えても憐に非がある。では、彼女の心を埋め尽くすのは自分の気持ちを踏み躙った怒りだろうか。

 

(でも憐、ほんとにアタシのことを『他人』だって思ってたのかな…)

 

  ナナと憐が他人であることなんて百も承知である。彼女自身、自分がなぜあの一言でこんなにも取り乱しているのかが理解できていない。しかし、あの『他人』という言葉に拒絶の意味が含まれていたことはナナにも感じられ、それが堪らなく悲しかった。ならば、ナナを苦しめるのは悲しみの感情なのか。

 

  本人にもわからない心の内だが、ただ一つ言えるのは、今の彼女の表情が憐が守りたかった笑顔とは程遠いものであるということだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

「…ん…うん…?…知らない天井だ…」

 

  憐が目覚めたのは簡素なベットの上だった。辺りを見回すと、ベランダに通じていると思われる大きな窓から差し込む光はオレンジ色であることから、今は夕方であることがわかる。ベッドの他にはタンス、イス、机などが置かれ、一人部屋として使うのには丁度いい大きさの部屋だった。

 憐は寝起きでうまく働かない頭を左右に振り覚醒を促すとともに、現在自分が置かれている状況を考える。

 

「ここは…?というかなんで俺は寝てるんだ?」

 

  ベットの上で頭をひねる憐。その時ドアが開き、女性が入ってきた。

 

「あ、起きた!よかった〜!大丈夫ですか?気分はどうですか?」

 

「特に問題ないですけど…。それよりここは病院…じゃないですよね。というかあなたは…?いや、えーっと…あ!思い出した!あの川で溺れてた子の!」

 

「はい!私はあの子の母の、リーナです。あの時は本当にありがとうございました!」

 

  リーナは勢い良く頭を下げる。そんなリーナに憐は恐縮しつつ疑問に思ったことを聞いてみる。

 

「いやそれはいいんですけど、もしかしてここはリーナさんの家なんですか?てか俺はなんでここに?」

 

「なんでって…覚えて、ないんですか?」

 

「え?」

 

「そうですか…。私もよくわかってるわけじゃないんですが、ええっと、川に落ちたのは覚えていますか?」

 

「川に?…っ!」

 

  その言葉で蘇る記憶。そうだ、自分は襲いかかってきたバリケーンと戦って、負けて川に落ちたんだった。…って負けた?

  そこまで思い出して、憐は顔から血の気が引いて行くのを感じた。

 

「ヤバイ!リーナさん、街はどうなったんですか!アイツが街に行ったら大変なことに!」

 

「お、落ち着いてください!そんなに動くと体が!」

 

「今すぐ行かな…うぐあっ⁉︎」

 

  リーナの静止を振り切りベットを飛び出そうとした憐の全身を焼けるような痛みが走り、憐は思わず倒れ込む。

 

「だ、大丈夫ですか⁉︎」

 

「ぐっ、それより、街が…!」

 

「街なら大丈夫ですから!」

 

「…え?」

 

「えい!」

 

  それでももがく憐だったが、リーナの言葉で起き上がろうとしていた動きをとめる。それを好機と見たリーナは憐を再びベットの上に押し倒した。

 

「っつ、あの、街が大丈夫って…」

 

「ふぅ、やっと落ち着きましたか。しっかり話すので、とりあえず安静にしてください。あなたは今怪我人なんですよ?」

 

「うぐ、わかりましたよ…。もう落ち着いたので、あの後何があったのか教えていただけますか?」

 

  憐も幾分冷静になって、自分の状況を理解したらしく、おとなしく彼女の話を聞く気になったようだった。実際憐の体はあちこち包帯がまかれ、動かす度に痛むので、リーナの言うことも理解できていた。

 

「あなたが川に落ちたあと、あの怪物は逃げるように空へ昇っていきました。なので、街は台風の影響をうけることもありませんでした」

 

「逃げた…?」

 

  首を傾げる憐が知る由もない話だが、バリケーンは最後にうけたハンドスラッシュのダメージにより台風を維持できなくなり、現在は気流に乗って移動し傷を癒している最中である。

 

「私、しばらく呆然としちゃってたんですけど、助けなきゃいけないことに気づいて川に駆け寄ったんです。そしたら、台風が消えたからか私が呼んでいた救助隊が来てくれて。無事に陸に引きあげることができた、というわけです」

 

「それじゃあ、今までずっと面倒を見てくれていたんですか?」

 

「面倒、といっても見守るぐらいしかできませんでしたが…あいにく病院も半壊状態なので家で看病するしかなくて。憐さん、丸一日寝ていたんですよ?来てくださったお医者様が意識を失っているだけで命に別状はないって言ったから一応は安心しましたが、それでも気が気じゃ無かったんですよ」

 

「それは…ご迷惑をおかけしました」

 

  申し訳なさそうに頭を垂れる憐に、リーナが慌てたように首を振る。

 

「お礼を言うのはこちらの方ですよ!娘も救っていただきましたし、街も救ってもらったんですから。本当に、ありがとうございました!」

 

「こちらこそ、看病してもらっちゃって。ありがとうございました。…あ、そう言えば俺の持ち物ってどこにありますか?」

 

  憐の今の格好は病気で入院者がきているような服だけだった。

 

「あ、今持ってきますね」

 

  そう言って出て行くニーナを見送る憐は考える。

 

(街を救った、か。アイツは一時的に退却したに過ぎないよな…。丸一日寝てたんだから、早くて後二日でバリケーンはやって来るってことか…)

 

  一人になったとたんに、またあの戦いへの恐怖が湧き上がって来る。

 

(今回死ななかったのが奇跡みたいだ。でも次はない。だって…)

 

「あの…」

 

「え?」

 

  内から溢れる恐怖に呑まれそうになっていた憐に、遠慮がちに声がかけられた。リーナさんかな、と顔を上げると、小さな女の子の姿が目に入った。

 

「あの…昨日は助けてくれてありがとうございました!」

 

「君はたしかあの時溺れてた…」

 

「わ、私の名前はエリー、です!…お兄さん、もう体は大丈夫なんですか?」

 

「…まぁ大丈夫かな。っと、そういやまだ名前言ってなかったな。俺の名前は…」

 

「憐さん、でしょ?」

 

「あ、あれ?いつ言ったっけ?」

 

  昨日助けてもらった時に、と言うエリーに、そう言えばリーナさんも俺の名前を知ってたな、と思う憐。そこへ、憐の所持品を持ったリーナが現れた。

 

「あ、こらエリー!憐さんはまだ怪我してるのよ?こっちに来なさい!」

 

「あ!ご、ごめんなさい!」

 

「いや、大丈夫だよ」

 

  申し訳なさそうな顔で謝るエリーに、憐から思わず笑みがこぼれる。

 

「うちの子がすいません。それで、これが持ち物です」

 

  そう言って差し出された品を見て、憐の動きが固まる。

 

「…えーっと、これで全部ですか?」

 

「はい…もしかして何か足りませんでしたか?服は干してありますけど…」

 

「いや…」

 

  リーナから手渡されたもの…それはガンパッドだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  夜になった。

  リーナからの夜ご飯の誘いを気分が悪いと言って断った憐は自由に使っていいと言われた部屋のベランダへ出て、星を眺めている。空は雲一つなく、正に台風一過と言えるような様子である。

 

「…なあ、聞いてもらってもいいか」

 

  憐は相変わらず夜空を見上げながら呟く。すると、誰もいないはずの空間から声が聞こえてきた。

 

『ああ』

 

  ベランダの端にあるテーブル、その上に置かれたガンパッドから発せられた声だ。それを聞いて憐は静かに語り出す。

 

「この世界に来て一ヶ月、それは俺にとってすげぇ充実した時間だった。ウルトラマンになれるとか夢みたい、いやむしろ夢だったし、お前らとの旅は楽しいしい。俺のやってることが世界を救うことに繋がってるなんて、普通の高校生だったら絶対できることじゃねえ」

 

  憐はそこで一度言葉を切る。そして次に出てきたのは、一転して激しい口調のものだった。

 

 

「…そう、俺は普通の高校生だった!普通に学校に行って、普通に友達と喋って、普通に家に帰って、普通に家族と過ごす!なにもかもが普通だったんだ!

 それがいきなりガラッと変わった…。怪獣?怖えよ!テレビで見るのとは全然違う、なんで俺がこんな恐ろしいものと戦わなきゃなんねえんだって、戦闘中に思ったことも一度やニ度じゃねぇんだ!ぐっ…つうっ…」

 

 

  激しい叫びに、傷ついた体が悲鳴を上げる。憐は壁にもたれかかると、弱々しい声で続ける。

 

「俺は死ぬのが怖い…あの普通の日常に戻れなくなるのがたまらなく怖いんだ…。そんな時、あの光の巨人と初めて会った場面をいつも思い出すんだよ。あの時、彼の言った『いつでも元の世界に戻れるようにしておく』って言葉を。…はは、勝手だよな。自分で引き受けておいて。ナナの姉さんのことも、この宇宙のことも、全部ほったらかしにして帰りたくなっちまうんだ」

 

『…』

 

「なぁ、ジャンナイン。あの巨人が、本当の俺…こんな弱い俺を知ったら、どう思うのかな…」

 

  訪れる沈黙。星は相変わらず憎たらしいほどに光っていた。その輝きに比べ今の自分のなんとちっぽけなことか。嫌気が差して俯いた憐にジャンナインから告げられた言葉は、彼の予想だにしないものだった。

 

『安心、しただろうな』

 

「あん、しん?」

 

  憐は思わずガンパッドの方を見る。

 

『ああ。と言っても、この安心というのは僕の気持ちでもあるんだがな』

 

「なんで…?お前、普通こんな弱音聞いたら失望するものじゃないのかよ…?」

 

『ふむ、僕は人間じゃないからな。もしかしたらおかしいのかもしれないが…少なくとも、君の今までの戦いへの姿勢が僕の聞いていた人間達のものとは異なっていたから気になっていたのは確かだし、今の君の言葉を聴いて安心したのも確かだ』

 

「戦いへの、姿勢…」

 

『ああそうだ。僕の知る彼らは、常に悩み苦しみながら戦っている、というものだ。自分の正義、自分の使命、自分の気持ち…それらは必ずしも一致するとは限らない。そんな中、時には弱音を吐き、時には挫けそうになりながらも、彼らは前に進もうと懸命にもがき戦い続ける』

 

 

  僕の仲間から聞いた話だから信用してくれ、と言って笑うジャンナインに、しかし憐は黙っている。

 

『それに比べ、君は常にまっすぐな眼差しで戦い続けていた。その姿勢は頼もしくもあったが…同時に危うくもあった。どんなに勇敢だったとしても、君はまだ若い。恐怖を抑えこみながら戦っているのならいずれ憐の心が壊れてしまうかもしれない…いや、彼は力を振るうことを愉しんでいるのか?…などと思い始めた矢先に、こうして君がちゃんと自分と向き合っていることがわかった』

 

「いやちがう!俺は…向き合ってなんかない。現に、今だって逃げようと…」

 

『それでも、君は逃げずに立ち向かった!昨日だってエリーを、この街を救ったのは他ならぬ君だ』

 

「でも、普通の人ならあんなに躊躇しないですぐに助けに行くはずなんだ…!」

 

  憐の返答に若干呆れつつ、しかしやはり彼は授けられた力(ギンガスパーク)を扱うに相応しい、「心」を持っていると確信して、ジャンナインは話を続ける。

 

『君は自分が普通だった(・・・)と言ったな?でもそれは違う。君は今でも普通だ。死の恐怖に怯えることは普通なんだ。多かれ少なかれ、みな戦うことに恐怖を感じるもの…だからこそ僕は安心した。君が普通なことにな。そしてそんな普通な、それでいて正しい心を持つ君だからこそ、あの巨人は憐を選んだのだと僕は思う』

 

「俺が、普通?」

 

『君の持つその力はたしかに普通じゃない。使い方を間違えば世界に破壊をもたらすことになるだろう。しかし、憐の持つ正義感と、恐怖を感じながらも戦ってきたその勇気。そして、みんなを守りたいという気持ちがあるからこそ、力を制御できているんだ』

 

「…」

 

『君ならできる。胸を張れ、憐』

 

 

「…そっか。俺は間違っていなかったのか…。これでも、よかったんだ…!」

 

  そう呟いた憐は、思い切り立ち上がった。

 

「…よかったー!マジで安心したわ!ふぅー、いやーここんとこずっと悩みっぱなしでさ、負のスパイラルってやつに陥いってたんだよな!恥ずかしかったけど、ほんとジャンナインに打ち明けて良かった!これでダメだとか言われてたら俺完全に死んでたけど!ありがとう、ジャンナイン!」

 

  嬉しそうに語る憐に、ジャンナインも心なしか照れたような声色でかえす。

 

『フン、誇っていいぞ。僕にここまで言わせたのは君だけだ』

 

「ああ、流石にこんだけ言われりゃもう大丈夫だ!正直帰りたい気持ちはあるけど、それはしょうがないって割り切れるし、なんつーの?全部倒せばいいんだろ?じゃあ俺ならいける!って気持ちになれたよ」

 

『すまないな。君に戦えと言っているようなものだが…』

 

「いいんだって、俺がやりたくてやるんだよ!」

 

『そうか…それならよかった。しかし憐。今の話、なぜあの時ナナに言わなかったんだ?』

 

  それを聞いて憐はバツの悪そうな顏で答える。

 

「いや、それはだな…。お前は俺が別の世界から来たって知ってるから受け入れてくれるかも、と思って話せたけどさ。もしナナが俺が異世界人だと知った時に拒絶されたらって思うと怖くてな…」

 

  情けないよな、と小さく笑う憐を、ジャンナインは若干呆れながら見る。

 

(いや、今更ナナがその程度(住む宇宙)の違いで憐から離れるとは思わないが…。なかなか難しいものだな。なるほど、ムッチの言うとおりこの二人の関係を観察することは心の勉強になる)

 

『まあいいか。今は直近の問題を片付けることにしよう』

 

  その言葉に憐の表情が真剣なものへと変わる。

 

「バリケーンだろ?」

 

『ああ。というかどうするつもりだ?ギンガスパークは川で失くしてしまったんだろう?』

 

  憐はその言葉にうっと声を詰まらせるが、なにを思ったのか即座に明るい顔になる。

 

「んー、でもなんか今の俺ならいける気がするんだよな」

 

  そう言って目の前に手を突き出す憐。

 

『はぁ…いけるとはなんだ。まったく、その自信はどこから…⁉︎』

 

 

  直後、眩い光と共に憐の手の中にギンガスパークが現れた。

 

「な?」

 

『…理解不能だ』

 

「なんせお前の相棒だからな」

 

  やれやれと言った風なジャンナインに笑う憐。その顔は一日前のものとは別人で、彼の身体を蝕んでいた暗い気持ちは最早どこにもない。彼の心は、夜空に光る星々のように輝いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

「お腹すいた…」

 

  一人でそう呟くのはナナ。携帯食料は底を尽き、ジャンスターを飛び出してから2回目の夜を迎えていた。

  実を言うと彼女は通信機を持っているのでジャンスターに連絡を入れれば万事解決なのだが、まだ気持ちの整理がついてないナナは憐と顔を合わせたくはなかった。

 

「アタシはどうしたいんだろう…」

 

 

「おーい!」

 

 と、そんな時。上空から声が聞こえた。上を見上げるナナ。

 

「あれはアタシの宇宙船⁉︎」

 

  見れば、自分の宇宙船が徐々に高度を下げてきていた。

 

(も、もしかして憐⁉︎や、やだ!まってまだ心の準備が!…どうするのアタシ。許す?許さない?いや、アイツはアタシにあんな酷いことをしたのよ!…でも迎えに来てくれたんなら、謝ったなら、許さないわけでもないか、な?いやでも)

 

  ナナが頭を抱えて考えていると、着陸した宇宙船のドアがあく。ま、まあそんなにアタシと旅をしたいっていうなら…と思いながら振り返った先には。

 

「れ…」

 

「ナナちゃーん!迎えに来たっすブボホォッ⁉︎」

 

「お前かァ!」

 

  理不尽っす…と呟きながらナナに蹴り飛ばされたムッチの姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「酷いっすよ…」

 

「あはは…ごめんごめん」

 

  一先ず食事を終えたナナに、ムッチが話しかける。

 

「はぁ…ところで、これからどうすんすか?」

 

「どう…って?」

 

「とぼけないでくれっす。これからも兄貴と旅を続けるのか、このままこの宇宙船で一人で行くのかってことっすよ」

 

  その言葉にナナは苦しそうな表情になる。

 

「アンタは?どうすんの?」

 

「俺はもちろん、兄貴について行くっす」

 

  あれ?もしかして俺と二人で行きたいんすか?と言ってくるアホを床に沈めつつ、ナナは口を開く。

 

「正直、アタシわかんないのよ。なんでこうなっちゃったか。アタシはまだ憐と一緒にいたいわ。でも、憐はアタシのこと嫌いみたいだし…」

 

  辛そうに言うナナを見て、思わずムッチは吹き出していた。

 

「ブフッ」

 

「な!なに笑ってんのよ!人が真剣に悩んでるのに!」

 

「プクッ、いやだって!どんだけ兄貴のこと好きなんすか!ククッ、アハハハハ!」

 

「は、はぁ⁉︎今の話を聞いてどうしたらそうなんのよ!アイツのことをす、好きとか!そんなことあるわけないじゃない!」

 

  恥ずかしそうにプルプル震えながら拳を握るナナに脅威を感じたムッチは急に真面目な顔になって話し始める。

 

「んんっ!あのっすねぇ、俺が自分から二日近く空飛び回ってナナちゃんを探すと思ってるんすか?」

 

「いや、アンタはそんなことせずに放っときゃいいんすよー、とか言ってそうだわ」

 

  そのあんまりな返答にムッチは内心うわ、俺の信頼度低すぎ?と思いつつ話を続ける。

 

「兄貴っすよ。心の整理が着いたら謝りに行くから、それまでナナをよろしく、って言われたんす」

 

「憐が…」

 

  憐的にはまさかナナにばらされるとは露ほども思っていないだろうが、ムッチは下手に隠してても話が進まないだろうと思い喋った。

 

「兄貴はナナちゃんのことを滅茶苦茶心配してたっすよ?嫌いなわけないじゃないっすか」

 

「でも、他人だって…」

 

「あのなぁ、兄貴にだって人に言えないことの一つや二つあるに決まってんでしょ?プライベートってやつっすよ。ま、たしかに今回の兄貴の言い方が悪かったってのはわかるんすけどね」

 

  やれやれ、と言った風にムッチは話を続けてる。

 

「誰でも勢いで余計なことまで、思ってもないことまで言っちまうってのはあるもんだ。…ちょっと喋りすぎたかな。ま、後は兄貴から聞いてくれっす」

 

  ムッチの言葉に、ナナはまだ納得できない顔をしている。

 

「でも、アタシは憐の悩みを知りたいの。少しでも楽にして上げたいのよ!」

 

「だから、それは本人に言えって!そーゆー踏み込んだ話が聴きたいんなら、恋人にでもなっちまえば手っ取り早いんじゃねーんすか?」

 

  瞬間、ナナの顔がノーバのように真っ赤になった。

 

「こ、こここ、恋人ぉ⁉︎」

 

「てか恥ずかしくないんすか?『アタシは憐の全てを知りたいの〜!』なんて言っちゃって」

 

「そ、そんなこと言ってないでしょ⁉︎耳腐ってんじゃないの⁉︎」

 

「同じようなもんすよ」

 

「2度と笑えないようにしてやる!」

 

  限界まで人を馬鹿にしたようなニヤニヤ顏を殴ろうと追い回すナナ。それをよけつつムッチは小声で通信を入れる。

 

「こちらムッチ。ナナちゃんは機嫌を治した模様」

 

『こちらジャンナイン。憐もたった今立ち直った。これなら二人を合わせても大丈夫だろう』

 

「了解」

 

  通信を切ると、ムッチは今だ追い回してくるナナに声をかけようとして、前方におかしな影を見つけた。

 

「あれは…」

 

「くらえ!」

 

  ナナの拳を瞬間移動で避けたムッチは急いで宇宙船を起動させると上昇を開始する。

 

「ナナちゃん、あれ!」

 

「よけんじゃ…え⁉︎」

 

  二人が見たのは巨大なクラゲだった。それはものすごい速さで宇宙船を追い抜くと、そのまま一直線に走り去って行く。

 

「追うわよ!」

 

「あんな速いの追いつけないっすよ⁉︎」

 

「いいから!どっかで止まるかもしれないでしょ!あれ絶対イーヴィルクリスタルだし!」

 

「りょ、了解っす!」

 

  たしか兄貴一人で倒すって言ってたよな。これ怒られるかな…いやノリノリのナナを邪魔すれば痛い目にあうのは確実。立ち直ったんなら兄貴はもう大丈夫だと信じよう。

  ムッチの葛藤を他所に宇宙船は全速力でバリケーンを追跡し始めた。

 

 

 




まさかの戦闘なし回。じ、次回はありますから!ガッツリと!
正直忙しさよりもジャンナインや憐のセリフが思いつかなかったのがアレでした。あまり上手く言いたいことを表現できていませんが、これが今の僕の限界です。
次回はほんとに戦闘ありです!決着つけます!
よろしくお願いします!
それにしてもギンガS、最高だった…!
〜次回予告〜
ついにバリケーンとの決着をつける時!
そしてナナに謝ることはできるのか!
次回「嵐の中でー後編ー」お楽しみに!
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