ウルトラギャラクシー〜異世界の救世主〜   作:ふと郎

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episode2 緑が消える!

 翌日。

 あの後、初めての戦闘で思いの外疲労が溜まっていた憐は早々に寝てしまった。

そのため改めて話をしようとナナの部屋に来たのだが、ナナの姿を見て固まっていた。

 

「…え?お前、ナナなのか?」

 

「そうよ?どう、この姿。同じ種族の方が憐も話しやすいってジャンナインが言うから変えて見たんだけど、変じゃないわよね?」

 

 変身怪人ピット星人。一族は皆女性であり、その名の通り変身するのが得意な宇宙人である。

 しかも人間に変身した場合美女・美少女になり、その容姿と高い戦闘能力でウルトラセブンであるモロボシ ダンとウルトラマンマックスであるトウマ カイトからそれぞれウルトラアイとマックススパークを奪えるほどの実力者でもある。

 

 つまり、朝起きたらナナが超絶美少女になっていた。

 

(いやマジか!ぶっちゃけストライクなんだけどいや待て早まるな俺!相手はあのピット星人だぞ?思い出せ、ピット星人の顔を。ほら、胸の高鳴りもおさまってきたよ!大丈夫、これなら直視でき…)

 

「もしかして、変だった…?」

 

「ぐはっ!」

 

 美少女耐性がない憐は内心の動揺を隠しなんとか平静を保とうとしたが、ナナの不安そうな声色と上目遣いに敢え無く撃沈した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 その後やけになった憐が

 

「いやかわいいよ。ズゴクカワイイヨー」

 

 と言ったり、それを聞いたナナに

 

「か、かわっ⁉︎何言ってんのよこの変態!」

 

「ぶべっ⁉︎」

 

 と殴られたりしたが、その話は触れないでおこう。

 

 

 

「あーもう、話を聞いてくれ!俺がここにいるのはお前と話をしたかったからなんだよ!」

 

 気を取り直して本来の目的を伝える憐。

 

「え、話?話ってなんのよ?」

 

「いやだって、いろいろあるだろ?なんで俺が旅してんのかーとか、なんのためにナナは1人で旅してるのかーとかな」

 

「んー、確かに、一緒に行動するんだから互いの目的ぐらいは知っておいてもいいかもね」

 

「だろ?」

 

「てことでまずはアンタからよ」

 

「俺から?まぁ別にいいんだけどよ、俺の目的はこの宇宙を救うことだ!…つっても信じないだろ?」

 

 漠然としすぎて何を言ってるかわからない憐に、ナナは困惑の表情を浮かべる。

 

「んー信じる信じない以前にまず意味わかんないし。そもそも救うってなにからよ。てか本気?」

 

「なにから救うかは俺もよくわからん。ただ本気だ」

 

 そんな調子の憐に、呆れたように言うナナ。

 

「はぁ…まぁ適当に人助けのため、って感じで解釈しとくわ。でもそうするとアンタってお人好しを通り越して「宇宙をまたにかけてボランティア活動をする超暇人」ってことになるわね。アンタなんなの?変態?」

 

「変態じゃねえよ!まぁ理由はほら、いいだろ別に。それより次はナナの番だぞ」

 

「む、話をそらしたわね…。ま、これ以上聞いても無駄だろうからもういいわ」

 

「お、そうか!そうしてもらえると…」

 

「ただし!いつか絶対聞かせてもらうからね!」

 

「お、おう…?(あれ?こいつと一緒にいるのって次の星までじゃなかったか?)」

 

 憐はナナの言葉を若干疑問に思ったが、まぁ深く聞かれないならいいか、と思い直してナナの話を聞く態勢に入る。

 

 

「じゃ、今度こそナナの話、聞かせてくれよ」

 

「いいわよ。アタシの目的はね、お姉ちゃんを探すことなの」

 

「ん?お姉ちゃんを探す?」

 

 ナナの目的に思わず憐は聞き返す。

 

「そう。アタシの一族はね、エレキングっていう怪獣ととても仲がいいの。だから、レイオニクスじゃなくてもエレキングと共に戦うことができる」

 

「じゃあ、別にバトルナイザーは必要なものじゃないのか?」

 

「そうね、絶対必要ってわけじゃないわね。ただ、バトルナイサーは持ち運びが楽だし、なによりレイオニクスはバトルナイザーを通して怪獣と絆を深めることができるの」

 

「ほー、バトルナイザー便利だな」

 

「少し話が逸れたわね。で、お姉ちゃんもレイオニクスでね、ものすごく強いわけ。それで一族の中で相手をできる人がいなくなっちゃって。だからお姉ちゃんは強い人を求めて旅に出ちゃったの」

 

「なるほど…それで寂しくなったナナはお姉ちゃんを連れ戻すために旅に出た、と。つまりシスコンか」

 

「だれがシスコンじゃあ!」

 

「あ、ちょっと⁉︎あなただってさっき僕のこと変態呼ばわりしましたよね!だから暴力はやめ」

 

 失敬な憐に制裁を与えたナナは、床に横たわるモノ()を見下ろしながら話を続ける。

 

「はあ…まあでも連れ戻すためってのはあってるわね」

 

「え、やっぱシs」

 

「な・に・か?」

 

「スイマセン」

 

「もう!違うわよ!私が連れ戻そうと思ったのは少し前から何かにエレキングが怯え始めたから。虫の知らせってやつ?なんか嫌な予感がしたのよ。で、旅に出て、戦って、エレキングの傷を癒してたら昨日ああなって今に至る。はい、アタシの話は終わり!」

 

「あ、おい!ちょっと聞きたいんだけど、そのエレキングが怯え始めたのって…」

 

 まだ聞きたいことがあった憐だったが、それはジャンナインの通信がさえぎられる。

 

『レラトニーが近い。2人とも、準備してくれ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 緑の惑星・レラトニー。

 ジャンナインのデータによれば緑溢れる綺麗な星、とのことだったが、近くで見てみると様子が違っていた。

 

「なにこれ…ひどい…」

 

「ああ、どうやらバルキー星人が聞いた噂ってのは本物だったらしいな」

 

 今やレラトニーの半分は土色の大地で覆われ、緑が残っている部分にしても虫食いのような穴があり、見るも無残な姿となってしまっていた。

 

「とにかく、何が起こっているのか調べて見ないとな。ジャンナイン、どこか着陸できそうなところは?」

 

『僕を誰だと思っている。既にリサーチ済みだ』

 

「お、さっすが相棒。仕事早いねー」

 

『だが気をつけろ、憐。リサーチの結果巨大な生命反応が検出された』

 

「おう、注意する」

 

『それと原住民とは諍いのないようにな』

 

「うっせーなー、お前は俺の母ちゃんか!」

 

「ほんと仲良いわね」

 

 こうして2人と1体はレラトニーへ突入した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

「我々の土地に無断で立ち入るとはいい度胸ですね」

 

「あなた方がアレを連れ込んだ張本人なんでしょう?」

 

「いや、だから怪しい者じゃないですって!あー、なんでわかってくれないんだ!」

 

「いや、アタシもアンタの第一印象は超不審人物だったから」

 

 現在、憐とナナ、ジャンスターはこの星の住人であるモネラ星人に囲まれていた。

 というのも、いきなり宇宙船が降りてきて、しかもそこがモネラ星人達の住居に近かったから仕方が無い事なのだが。

 しかしながら、モネラ星人。憐はこのモネラ星人にあまりいい印象をもっていない。

 

(映画で見たモネラ星人まんまじゃん!やべえ、俺若干トラウマなんだよな…。気味悪いし、冷酷で、そのうえ超強い。主にデスフェイサー)

 

 ま、流石にTPCはこの宇宙にないから大丈夫か、と少しでもポジティブに考える憐に、ジャンナインから非情な言葉がかけられる。

 

『僕は前もって忠告していたからな。後は任せたぞ、相棒』

 

「あ、お前どこ行くんだ!ちょっ、俺のサポートはどうしたんだよ!おーい!」

 

 そう言うとジャンナインは憐達をのこして姿をくらましてしまった。

 というか面倒になったから衛星軌道上に逃げた。

 

「ジャンナインひどい!アタシも連れてってよ!」

 

「お前まで裏切るのか⁉︎」

 

 2人でもめていると、モネラ星人の1人が何かに気づく。

 

「あ、あれは!」

 

 その言葉で異変に気づいたモネラ星人達は一目散に逃げていき、何が起こっているのかわからない憐とナナは、最初に異変に気づいたモネラ星人が見ていた方向を見る。

 するとそこには。

 

 異様な存在感を放つ銀色のでかい塊が浮いていた。

 

「「ぎゃああああああ!化け物ぉぉぉ!」」

 

 その物体のあまりの不気味さに憐とナナは思わず悲鳴を上げながら逃げ出す。

 

「な、なんなのよアレ!見たことないわ!てか、触手イヤァァァァ!」

 

「くそっ、ジャンナインの言ってた巨大な生命反応ってのはこのことだったのか⁉︎なんか見覚えあるけど、とりあえず逃げるぞ!」

 

 そう言いながらガンパッドをガンモードに変化させた憐は謎の物体に向かってレーザーを放つ。

 しかし。

 

「ね、ねぇ。なんか大きくなってない?」

 

「こ、こりゃ本格的にやべぇかもな…」

 

 謎の物体はレーザーを受けても怯むどころか、むしろ大きくなっていく。

 その様子を冷や汗を垂らしながら見つめる2人。

 しばらくすると謎の物体は地面に着陸し、さらに大きくなっていく。

 そこで、あることにナナが気づいた。

 

「木が、枯れていってる…?」

 

 その言葉を聞いた憐が注意深く見てみると、ナナの言葉通り謎の物体が大きくなるにつれて木々が、というか自然がなくなっていく。

 

「たぶん、アレがこの星で起こっていることの元凶よね…」

 

 何もできないのが悔しそうなナナに、憐は気の利いたことなど言う余裕は無く。

 

「とにかく、今は撤退だ…!」

 

「…うん」

 

 現状打つ手がない2人は消えていく緑に背を向けて走り出すしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

「はぁはぁ…ふぅ。ここまでくれば大丈夫でしょ。え、大丈夫よね?ここの人達もいるし」

 

 現在、逃げ切った憐とナナはモネラ星人達が大勢避難している洞窟のような場所にいた。

 

「我々はどうやら勘違いをしていたようですね。すみませんでした」

 

 憐が普通に追われていたことで疑いが晴れたのだろう、モネラ星人が謝罪してきた。

 

「あ、いや、俺達が突然やってきたのが悪いんで、そんな謝んないでください」

 

「それで、結局アイツはなんなんですか?」

 

 ナナの疑問に、モネラ星人は答える。

 

「…アレはほんの二週間前に突然やって来ました。奴らはものすごいスピードで成長し、この星を食い荒らしていきます。我々も反撃を試みましたが全てのエネルギーは吸収され、そのうえ長時間触れていると生命エネルギーすらも奪われ死に至るため誰も近寄れません。これが我々が現在把握している奴の情報です」

 

 そのモネラ星人の話を聞いて、憐は完全にその正体を思い出した。

 

「あいつは、たぶんバルンガだ」

 

「バルンガ?」

 

 ナナが憐に聞き返し、モネラ星人も興味がありそうにこちらの話を待っている。

 

「風船怪獣バルンガ。どんなものでもエネルギーとして吸収して、風船のように膨らんでいく怪獣だ」

 

「なにそれ…そんなのどうしようもないじゃない!」

 

「いや、手はないわけじゃない。ただ、結構なかけになりそうだけどな。その前に、あんたらに一つ聞きたい。どんな攻撃をしたんだ?」

 

 憐の問いに、モネラ星人は怪訝そうな顔で答える。

 

「我々の持つ生物兵器での攻撃と、レーザー攻撃。この二つです。我々にも奥の手がありますが、この星を壊してしまうため試していません」

 

「その生物兵器とやらはバルンガに噛みついたりは?」

 

「する前に触手からの電撃でやられて吸収されてしまいました」

 

 その言葉を聞いて、憐は不敵に笑う。

 

「試してない、と…。よし、なら俺に考えがある」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

「ほんとに大丈夫なんでしょうね」

 

「いや、そう言われるとちょっと、な?」

 

「まったく、な?じゃないわよ…こっちは囮をやらされるんだから。そこんとこわかってる?」

 

 あの後、憐の考えは概ね好評だったが、一つだけ問題が生じた。

 モネラ星人によると、バルンガは現在分裂しており、それが各地に散らばっていると言うのだ。

 作戦を実行するにはバルンガをひと塊りに戻さなければならない。そのため、バルンガのエネルギーを好む習性を利用して、ナナのエレキングを使って囮をしてもらおうということになった。

 

「俺やモネラ星人達が遠いところの奴は追い立ててくっからさ。あ、あと危なくなったら逃げろよ!」

 

「え、守ってくれないの…?」

 

 ナナの上目遣いにたじろぐ憐。

 

「ぶっ!おま、それは卑怯だぞ!言われなくても元々そのつもりだったから!」

 

「ほんと…?」

 

「あ、ああ!呼ばれればたとえ宇宙の果てだろうが助けに駆けつけてやるぜ!」

 

「フフッ、なにそれ大げさすぎ!てか、アンタってほんとに上目遣い?ってやつに弱いのね。チョロすぎじゃない?」

 

「ま、まさか演技だったのか…?あー俺は傷ついた。うわーもういい。もう行くわ。ほれ、これで連絡するなりなんなりしろよ。はい、作戦開始!」

 

『カモン!ジャンナイン!』

 

 そう言ってナナに通信機を投げ渡した憐は、ジャンスターに乗って飛び立っていった。

 

 

 

 

 

 

「あっちゃー、弄りすぎたか。でも拗ねたりしちゃって、意外と可愛いところもあるじゃん。…さて、アタシもやりますか!」

 

『バトルナイザー・モンスロード!』

 

 憐を見送ったナナも、行動を開始すべくエレキングを召喚する。

 

「エレキング、頼むわよ!」

 

 ナナの言葉にエレキングは一声鳴いて応じると、用意してあったモネラ星人の円盤に放電を開始、円盤に帯電させ始める。

 すると、どこに隠れていたのか、ワラワラと集まり群がってくるバルンガ。その様子はゴキブリのようである。

 

(うううう、もう嫌ぁ!)

 

 

 

 

 

 

 ナナがSAN値を削りながら待つこと10分。ある程度集まってきたバルンガは、円盤を核として次第に一つになり始める。

 

「ん、そろそろいいわね…エレキング、お疲れ様。戻って!」

 

 既に40メートルぐらいには大きくなったバルンガ。あとは集まったバルンガ自身のエネルギーの大きさに勝手にバルンガが集まってくる、という話だったので、見るからに疲弊しているエレキングを戻すナナ。

 

「それにしてもきもいわね…。特になにあの触手」

 

 さてー、ちょっとアイツに連絡してみるかーと通信機を取り出しながらバルンガに目を向けると。

 ものすごいスピードでこちらに向かってきていた。

 

「え、なんでよ⁉︎こっちくんじゃないわよ!」

 

 もはや大きさは50メートルは超え、かなりの威圧感がある。そしてぐんぐん迫ってくる。

 思わず通信機を落としてしまったが、構わず走り出す。

 

「で、でもどこに行けば大丈夫なんだろ…あっ!」

 

 焦りから足元が不注意になっていたナナは木の根に足を引っ掛けてこけてしまう。

 そこに容赦無く近づき、動きの止まった餌を吸収しようと触手を伸ばしてくるバルンガ。

 あまりの恐怖に動けないナナは、思わず叫んだ。

 

 たすけて、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 時は少々遡る。

 

 ナナと別れた憐は、レラトニーの裏側を目指していた。

 少しでも早くバルンガを一つにするために、遠いものはモネラ星人達と手分けしてナナのところに誘導するためである。

 

「はー、マジなんなのあいつ!人が折角心配してやったってのに!」

 

『まぁそう拗ねるな憐。僕には彼女は喜んでいたように見えたが?』

 

「別に拗ねてねーよ!つか、喜んでたのは俺の反応を見て楽しんでたからだろ!」

 

『確かに、そういう捉え方もあるか。…!バルンガを発見』

 

「お、きたな。じゃあちゃっちゃっとすませるか!」

 

『ジャンキャノン!』

 

 憐は素早くガンモードに変形させトリガーを引き、ジャンキャノンで攻撃。バルンガの誘導を開始する。

 憐の思惑通り、バルンガはエネルギーを与えてくれるジャンスターをかなりのスピードで追ってくる。

 

「こいつら意外と速いな。この分だとすぐ終わりそうだな」

 

『ああ、もう作戦ポイントが見えてくる頃だ』

 

「いよっし、ぼちぼち準備を…」

 

『どうした憐』

 

 突然動きが止まったことを不思議に思ったジャンナインの問いに、憐は焦った様子で答える。

 

「今、ナナの声が聞こえたんだ。俺、行ってくる!」

 

『おい憐!まだバルンガは集まりきれてないぞ!』

 

『ウルトライブ!キングクラブ!』

 

 そのまま憐はジャンナインの制止も聞かず、ナナのところへ光となって飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

《おい、ナナ!大丈夫か⁉︎ケガは⁉︎》

 

 ナナに迫るバルンガを尻尾の一撃で吹き飛ばした憐は、ナナに駆け寄る。当然キングクラブにライブした状態で、だが。

 

「…うん、大丈夫。ありが…気持ち悪!」

 

《き、気持ち悪い⁉︎ってお前、よく見たら顔に涙の跡が…》

 

「う、うるさい!とにかくその顔で近づいてこないで!ほら、さっさとバルンガ倒してきなさい!」

 

 自分のことを心配してくれて嬉しいけど、顔がキングクラブで気持ち悪くて、しかも涙の跡を見られて恥ずかしくて、でもやっぱり顔が気持ち悪くて無理ー!と顔を真っ赤にさせたり真っ青にさせたり忙しいナナ。

 それをずっと見ているのも面白い気もするが、あまり見ていると後で自分の身が危ないことに気づいた憐は、バルンガ殲滅に向けて動きだす。

しかし。

 

《はいはいわかりましたよ。ジャンナイン、バルンガ集まった?》

 

『ああ、君達がグダグダしている間に全て合体した。ついでに言うなら憐、今君の真後ろにいるぞ』

 

《グダグダとは失敬な!って、ん?真後ろ?》

 

 バルンガは今まさに憐に襲いかかる瞬間だった。

 いきなり現れた上質な餌に喜んでいるのか、はたまた食事の邪魔をされたことに怒っているのか。どちらかわからないがとりあえず触手の動きがワサワサと活発になっている。しかもバチバチと帯電している。

 

《ちょまっ》

 

 もちろんバルンガに言葉が通じるわけもなく、無情にも触手から電撃が放たれる。

 

《ぐわぁぁぁ…あ?そんなに痛くない?すげーなキングクラブ!流石甲殻類!》

 

 しかし、電撃はキングクラブの強固な外骨格を破ることはなく、あまり痛くなかった。

 

《よし、今のうちにナナは撤退だ!ジャンナイン、よろしく!》

 

『了解』

 

「いい?ヘマすんじゃないわよ、憐!」

 

《任せろ。…お前はいつまでもしつこいわ!》

 

 ナナを乗せたジャンスターが離れるのを見届けた憐は、いい加減うっとおしくなってきた電撃を払うついでに再び尻尾でバルンガを吹き飛ばす。

 

《さて、作戦の仕上げだ。頼むから成功してくれよ。いくぜ!》

 

 そう言うとキングクラブは眉間から炎を噴き出し始めた。

 当然バルンガは吸収するが、憐も考えなしにやっているわけではない。もちろんただ炎を出してみたかっただけでもない。

 

(よし、やっぱり止まってる!)

 

 憐はモネラ星人の話と自分の経験から、バルンガはエネルギー吸収中は動けないのでは?という仮説を立てていた。

 そしてそれは見事的中。火炎放射中はバルンガは微動だにしない。まぁ体長はどんどん大きくなっているが、憐の作戦にさして影響はない。

 

《さぁ、これで終わりだ!》

 

 そう言って憐は火炎放射を浴びせながらバルンガに接近すると、口の大鋏でバルンガの体表を噛み切った。

 直後、切り口からエネルギーが噴水のように勢いよく噴き出す。

 その光景を見た憐は、ほっとしながら呟いた。

 

《ふぅ。一件落着っと》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 バルンガから噴き出したエネルギーは一旦空に上がりレラトニー全体を覆い尽くした後、一斉に地表に降り注いだ。

 それにより、レラトニーの失われた緑は蘇り、バルンガに吸収されたと思われた生き物も皆無事戻ってきたのだった。

 では、全て吐き出したバルンガはどうなったかというと。

 

 

「まさかバルンガがコケだったなんてね…」

 

「まあ、確かに誰も想像出来なかっただろうな(これもマイナスエネルギーの影響、か…)」

 

 本来の姿であるコケに戻っていた。

 謎の宇宙生物か⁉︎と構えていた憐達にしてみれば正直なところ拍子抜けだったが、これもマイナスエネルギーによる怪現象の一つとすれば納得のいくものだろう。

 ちなみにナナはバルンガから零れ落ちた石ころを記念に拾っていた。

 しばらくコケを眺めていた二人だったが、ナナが思い出したように憐に問いかけた。

 

「そういえばさ。アンタ、あの時なんで助けに来てくれたの?通信も出来なかったのに…」

 

「あー、それはだな。聞こえた気がしたんだよ。お前のたすけて、って声がな」

 

『僕のセンサーには反応がなかったが、憐がいきなり飛び出していったな。あの時は流石に頭がおかしくなったのかと思ったよ』

 

「お前なんてこと言うんだ!えーっとなあ、いいか、俺とナナは心で繋がってるんだ(適当)!それに約束したしな。どこへでも助けにいくって(作戦中は)」

 

『心か…』

 

「ああ、心だ」

 

 そんな二人の会話をきいて顔を真っ赤にしている人物が一人。

 

「ア、アンタ、よくそんな台詞をペラペラと!は、恥ずかしくないの⁉︎」

 

「いや、そんな嬉しそうな顔で怒鳴られても怖くないんだが…」

 

「助けに来てくれてう、嬉しいだなんて思ってるわけないに決まってるじゃない!」

 

「誰もそこまで言ってないんだけどな…」

 

「あぁー!忘れろ!脳細胞ごと消せ!」

 

「おい!やめろ!そんなもので殴…げふっ」

 

『これが青春というものか。勉強になる』

 

 そんな中、突如コケが光だす。

 

「うわっ、コケからなんか出てくるぞ!」

 

『これは…マイナスエネルギー反応!』

 

「えぇ!今倒したじゃない!」

 

 穏やかな雰囲気から一変、緊迫した空気になるが、意外にもコケから出てきたのは小さな黒い結晶だった。

 

『その結晶からはかなり高濃度のマイナスエネルギーが感知されている。憐、十分注意しろ』

 

「じゃあ、今回の事件はこのカタマリが原因ってことなの?」

 

「たぶんそうだろうな。しっかしこんな小さなヤツが…うお⁉︎」

 

 ジャンナインに注意されたにも関わらず不注意にも黒い結晶に触れた憐の脳裏に、突然ある映像が浮かび上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ___白銀の輝きを放つ光の巨人と、暗黒の波動を身に纏った黒い巨人が激しくぶつかり合う。

 

「これは…?」

 

 両者の力は拮抗しているように見えるが、度重なる激突の末、遂に黒い巨人が吹き飛ばされる。

 その一瞬の隙をつき、光の巨人が光線を放つ。

 

「よし、いけ!」

 

 知らず知らずの内に見入っていた憐は思わずガッツポーズをしていた。

 しかし光線が当たる直前、黒い巨人の瞳が確かに憐を捉えた___

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ん!憐!憐ってば!」

 

「ぐっ…ん…?ナナ、か…?」

 

「はあー、もう!心配させてんじゃないわよ!いきなり倒れるからびっくりしたじゃない!」

 

『さっきのナナの慌てぶりは面白かったな。相棒にも見せてやりたかった』

 

「アンタはまた余計なことを…!そもそもね…」

 

 ナナとジャンナインの漫才も、今の憐の耳には入ってこない。それほどまでに、先ほどの映像が衝撃的だったからだ。

 

(今のは、もちろん俺をこの世界に送ったウルトラマンとこの世界の異変の元凶である闇の巨人だろうな。…でも、だとしたら、あの巨人はマジでヤバイ。視線を向けられた時に感じた身体中を這うようなあの悪寒…。ちくしょう、夢に出てきそうだぜ…)

 

 憐はこれまでの人生で体験したことのなかった強大な「殺気」と、体が壊れそうなほどの「恐怖」に体の震えが止まらなかった。

 実際のところ、憐はこの旅を心の底では軽く考えていたのだ。アストロモンスにしても、バルンガにしても、レイオニクスバトルであるということや、対抗策があったことからさほど苦労しなかったこともその考えを大きくする要因であった。

 しかし、ここにきて憐は始めて本物の恐怖、怪獣、いや、「死」への恐怖を体感した。

 

 

「ちょっと憐。ほんとに大丈夫?顔色悪いわよ?」

 

「あ、ああ。心配すんな。俺は大丈夫だから。それよりさ、この結晶どうすっか?」

 

「…うん、そうね。どうしたものかしらね」

 

 憐の態度に不安を感じながらも、まずは目の前の問題を片付けることにしたナナ。しかし、その問題もジャンナインの一言で解決することになる。

 

『…憐、ギンガスパークを見てみろ』

 

「ギンガスパーク?」

 

 憐がその指示に従ってギンガスパークを出してみると、突然ギンガスパークが光り輝き、黒い結晶を取り込んだ。

 

「取り込んじゃってだいじょぶなの⁉︎壊れねぇのか⁉︎」

 

『大丈夫だ。それでギンガスパークはその黒い結晶のマイナスエネルギーを記憶した。次の黒い結晶…そうだな、「イーヴィルクリスタル」とでもしておこうか。これからはギンガスパークが次のイーヴィルクリスタルに導いてくれるだろう』

 

「じゃあ次からはクリスタル壊していいんだな。…よし、もうこの話は終わりだ。モネラ星人にバルンガのこと話しにいこうぜ!」

 

「…憐」

 

『…』

 

 話を逸らした後も何か言いたそうだったナナが口を開く前に話を終わらせた憐。

 そんな憐の後ろ姿に、ナナは話しかけることが出来ない。

 自分を頼ってくれない憐に、ナナは淋しさを覚えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

「よかったな、ナナ。宇宙船直してもらえて」

 

「でも、ほんとによかったの?解決したのは憐じゃない」

 

「お前だって囮やってくれたじゃん。それに俺はお礼なんていらねぇしな」

 

 バルンガ事件を見事解決した憐に、モネラ星人達は是非ともお礼がしたいと言ってきた。

 そのため、憐はナナの宇宙船を直してもらうことにしたのだった。

 

「まあなんにせよ、ここでお別れだな。短い間だったけど楽しかったよ、ナナ。寂しいけど、達者で…」

 

 そこまで言った時、憐は目の前のナナがあり得ないものを見るような目でこちらを見ていることに気づいた。

 

「え?な、なんだよその目は」

 

「あり得ない!サイテー!憐、アンタ女の子を一人で旅させる気?」

 

「いや、だってお前俺と会う前も一人だったじゃん」

 

「ええーい、うるさい!アンタだってアタシがいないのは寂しいんでしょ!」

 

 ナナの鬼気迫る勢いに、タジタジになる憐。

 

「あ、ああ、確かに寂しいk」

 

「だったら!アタシ、憐と一緒に旅を続けてあげてもいいわよ?」

 

「なんだ、ナナも寂しいのか」

 

「さ、寂しいわけないでしょ!アタシはね、憐が一人だと心配なだけよ。アンタ色々自分一人で抱え込むでしょ?さっきだって結局アタシを頼ってくれなかったし」

 

「ぐっ…」

 

「で、どうなの?」

 

『憐。ナナは君から誘ってくるのを待ってるようだ』

 

「ジャ、ジャンナイン⁉︎」

 

「あ、なんだそゆこと。じゃあ、ナナ。これからもよろしく」

 

「え?あ、えっとこちらこそ。くっ、なんか納得いかない…」

 

「これがツンデレか…」

 

「うっさい!調子乗りすぎ!」

 

「だから暴力はやめ」

 

 先ほどまでのシリアスな雰囲気など微塵も感じさせないこの三人組の旅は、まだ始まったばかりである。




感想、評価などお願いします。
あと、怪獣・宇宙人のリクエストも受け付けております。
それでは!



〜次回予告〜
ギンガスパークに導かれ、一行がやってきたのは水の惑星・ワッカ。
バカンス気分の憐達に襲いかかる黒い影。
そして憐に戦いを挑む謎のレイオニクスの正体とは!
次回「汚い奴ら」お楽しみに!
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