ウルトラギャラクシー〜異世界の救世主〜   作:ふと郎

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遅くなってすいません!いやほんと忙しくて…
久しぶりなので今までより更に酷い文章かもしれませんが、読んでいただけたら嬉しいです。

あらすじ
ヤプールの企みをなんとか阻止した憐達は、ギンガスパークの輝きを頼りに次の星を目指していた。


第二章 覚悟
episode7 動き出す闇


  水の惑星ワッカ。

 一時はイーヴィルクリスタルによって危機的状況に陥ったものの、憐達の活躍でもとの穏やかな状態に戻っている。本来の姿を取り戻した魚達が水の浄化に努めた結果、今では昔以上の透明度を誇るほどになったその海の波打ち際で、一人の老人と二人の青年が話をしていた。

 

「わざわざ来てもらったのに悪いのぅ」

 

「いえいえ、解決したのならいいんです」

 

「じゃあ、俺達はこれで」

 

  そう言うと同時に二人の青年が光に包まれていき、瞬く間にその姿を巨人に変えた。

 

『『シェア!』』

 

  力強く地面を蹴り、二人の巨人は大空へと舞い上がる。ぐんぐん高度を上げていき、大気圏を抜けた辺りで、二人は先ほどラゴン達と話していた時とは違う怪訝な顔をしながら話し始める。

 

『なあディーズ。さっきの話、本当だと思うか?』

 

 その問いに、ディーズと呼ばれた巨人が若干困惑気味に答える。

 

『ああ、私もにわかには信じられない。しかしだドレイク。彼らがウソをついている様子はなかったし、なにより確かにマイナスエネルギーの痕跡があったんだ』

 

『だがよぉ、魚が怪獣になったっつー通報を受けて飛んで行ったら、「レイオニクスの少女」と「怪獣に変身できる少年」が解決してくれましたなんて話、信じられるか?第一、上になんて報告すりゃあいいんだよ…』

 

  わざわざ本部から3日もかけて来たっていうのに…と嘆くもう一人の巨人___ドレイクを見て、ディーズも思わずため息をつく。

  この二人、ディーズとドレイクは、宇宙警備隊員である。カラータイマーこそ与られていないが、光の国にある宇宙警備隊本部に所属しているだけあってかなりの実力を有している。にも拘らず、2ヶ月ほど前から、本部は一部の隊員(ウルトラ兄弟など)を除きパトロールの際は必ず二人一組で行えとの命令を下した。詳しい説明もないまま、ここへきてさらに今回の不可解な事件である。この宇宙で何か大きな異変が起こっているのは明確だ。

 

『怪獣に変身ねぇ…。ま、結局はありのまま話すしかねえか』

 

『そうだな。この宇宙に危機が迫っているにしても、我々に出来る事は…一刻も早く本部に帰還し、指示を待つことのみだ』

 

  早急に帰還せよ、とのウルトラサインを見つけた二人は一先ず話に区切りをつけ、さらに加速して赤い光球となり、宇宙警備隊本部__M78星雲・光の国を目指す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 ヤプールの一件から6日が過ぎた。憐の体調も無事回復し、一行は新たな星を目指して旅を続けていた。

 

「憐ー、まだー?」

 

「あー、もうすぐだなー」

 

『憐ー、まだー?』

 

「お前は近くの星をリサーチするとかやることあるだろーが。てか今の声どうやって出したんだ?」

 

「兄貴ー、まだすかー?」

 

「放り出すぞ」

 

「俺にだけ当たり強くないすか⁉︎」

 

「めんどくさくなったんだよ!なんなんだ!しつこいわお前ら!」

 

『まあ落ち着け憐。あと一時間ほどで最寄りの惑星に着くぞ』

 

「さっすがジャンナイン!どこかの誰かさんと違って頼りになる!」

 

「くっ、ムカつく…!」

 

『ノリ、というやつだ』

 

「アンタほんとにロボットすか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわー、吹雪いてますねー」

 

「アタシ寒いの苦手…」

 

『氷の惑星・コンルだ。知的生命体の生息は確認されていない』

 

「ギンガスパークの反応もここで間違いなしっと…。しかし俺も好きじゃないなぁ、寒いの」

 

 

  ギンガスパークに導かれ、辿り着いたのは極寒の惑星・コンル。恒星の光を氷が反射し白く輝くこの星は、成層圏を抜け、地表がはっきり見えるような高度を飛んでいるにも関わらず、見渡す限り一面銀世界な不毛地帯である。

 

「ねぇ、勘違いとかじゃないの?アタシほんとにイヤなんだけど」

 

「なんだ、そんなに嫌なのか?ならこの宇宙服着ろよ。上は300度、下はー100度まで快適に過ごせる優れものだぞ?重力も3Gまでは何も感じないぞ?」

 

「なんかすごい推してくるわね…。着ないわよ、そんなダサい服」

 

『「ダ、ダサい…」』

 

「ジャンナインにまでダメージが⁉︎」

 

「そ、そんな悲しそうな目で見たって無駄よ!絶対着ないから!」

 

  捨てられた仔犬のような目で見つめる憐の視線になんとか耐えたナナに、ムッチが追い打ちをかける。

 

「本当は兄貴とお揃いの服、着たいんじゃないんすか?」

 

「う、うっさい!そのにやけ顏と胡散臭い敬語が余計ムカつく!あーもう憐!いつまでも拗ねてないでコイツどうにかして!」

 

「うがっ⁉︎」

 

 ナナに蹴られてorzの状態から慌てて立ち上がった憐。あんまりな扱いに文句を言おうとナナに詰め寄ったが、偶然見えた窓の外の光景に思わず驚きの声を上げる。

 

「お前蹴ることねぇだろ!だいたいお前はいつも…なんだあれ⁉︎」

 

『生命反応を確認!すまない、気づけなかった!』

 

  憐とジャンナインの言葉を受け慌ててモニターを見るナナとムッチ。まだ少し距離があるが、遠くからも見えるほど空高く氷が舞い上がり、何かが氷の下から出てこようとしているのがわかる。

 

「まさか、怪獣っすか⁉︎」

 

「ジャンナイン、拡大してくれ!」

 

『了解』

 

  拡大され鮮明になった映像を見ると、煙で細部まではわからないが、大きな顎を持ったシルエットが浮かび上がっていた。

 

「なんだぁ?クワガタっすか?」

 

「あれは…アントラーか?」

 

「名前なんてどうだっていいのよ!で憐、マイナスエネルギーの反応は⁉︎」

 

「え?ああ、そうか」

 

  ナナに言われて取り出したギンガスパークは激しく点滅を繰り返し、あの生物がイーヴィルクリスタルを取り込んでいることを物語っていた。

 

「よっしゃ、ビンゴだ!」

 

「じゃあアレを倒しゃあ今回は終わりっすね!」

 

「おう!じゃ早速…ぬあああっ⁉︎」

 

「ぐほっ!」

 

「きゃああ!」

 

『これは強力な磁力光線…!くっ、機体の制御ができない!』

 

  突如煙の向こうから放たれた虹色の光。それに捉えられたジャンスターは徐々に怪獣の方へ引き寄せられていく。かなりの速度で飛んでいたためいきなり止まった時の衝撃は大きく、スパークドールズの入ったリュックサックをとろうとして屈んでいた憐だけでなく、立っていたナナ達も耐えられず床に倒れ込む。

 

「なんか引っ張られてないすかぁ⁉︎」

 

「磁力だからでしょうが!」

 

『最大出力でも振り切れない!このままではマズイぞ!』

 

  グラグラと上下左右に揺れながら引き寄せられていくジャンスター。やがてなす術なく怪獣と思しきモノのほぼ真上まで来たところでようやく煙が晴れ、その姿が露わになる。昆虫のようなフォルムと大きなアゴが特徴的なその怪獣は、寒冷地に適応しているために体色が青白いことを除けば憐の予想通り、磁力怪獣アントラーだった。

 

「あっそうだ!ジャンキャノンで攻撃すれば!」

 

『こんな不安定な姿勢では当たらないぞ!』

 

「でもこのままじゃ食われちまう!」

 

「…あーもう!いけ、エレキング!」

 

『バトルナイザー・モンスロード!』

 

  絶体絶命かと思われたとき、ナナが腰に携えたバトルナイザーを引き抜き起動させた。召喚されたエレキングはエネルギー体となってバトルナイザーから飛び出しアントラーに直撃、吹き飛ばす。それにより磁力光線から抜け出したジャンスターは全速力で上空へと離脱。獲物をみすみす逃すわけにはいかず、すぐさま起き上がり再び磁力光線を発射しようとしたアントラーの足をもとの姿に戻ったエレキングが尻尾で払い転ばせ、再び阻止した。

 

「な、なんで最初からそうしなかったんすか!」

 

  ムッチの言葉に、ナナは苦々しい顔をする。

 

「エレキングは寒いところが苦手なの!だから極力出したくなかったのに…」

 

「でもナナのおかげで助かった。ありがとな!」

 

「べ、別にアンタのためじゃないんだからね!」

 

「ツンデレっすね」

 

『これがテンプレというものか』

 

「アンタらねぇ…」

 

「ま、まぁまぁ!とりあえず、今はアントラーをどうにかしようぜ!このまま飛び続けるのも危険だし、ジャンナイン!一旦着陸!」

 

『了解だ』

 

 憐の指示で着陸のために高度を下げ始めたジャンスター。地表が見える高度まで降りたとき一同の目に映ったのは、エレキングがアントラーの磁力光線によって引き寄せられている光景だった。

 

「え!ちょっ、なんで⁉︎どうして引き寄せられてるの⁉︎」

 

「理由は知らねえが、あのままじゃヤバイっすよ!」

 

「ムッチ!」

 

 焦るムッチに憐はガンパッドを投げ渡す。

 

「あ、兄貴⁉︎これって…」

 

「ヤバくなったら援護は任せたぜ!」

 

「任せたって、憐はどうする気⁉︎」

 

 ナナの問いに憐はギンガスパークを取り出しながら笑って答える。

 

「どうするかなんて決まってんだろ?ナナもいつも通りの的確な指示、よろしくな!」

 

『ウルトライブ!レッドキング!』

 

  そう言ってレッドキングにライブした憐は、光となってジャンスターから飛び出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

  ジャンスターを逃がしたエレキングは苦戦を強いられていた。苦手な寒冷地での戦いであることに加え、ナナの指示がないため動きにいつものキレがないのだ。

  大顎を開いて突進してくるアントラーに向かってライトニングカッターを放つが、硬い外骨格に阻まれ大したダメージを与えられずに火花を散らして後退させるにとどまる。その攻撃に怒ったアントラーは鳴き声を発しながら磁力光線を発射、避けられなかったエレキングは徐々に引き寄せられていく。苦し紛れにライトニングカッターを撃つが、磁力光線の効力によって霧散してしまい、ダメージを与えることができない。獲物を断ち切ろうと激しく開閉する顎を前に、エレキングは思わず悲鳴をあげた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《おおぉぉぉぉぉらぁぁぁぁあ!!!》

 

  アントラーの大顎が今まさにエレキングの首を捉えようとした瞬間、雄叫びを上げ、遥か上空から頭を下に向けミサイルのように落下してきたレッドキングがアントラーの頭部に直撃。アントラーは悲鳴をあげる間も無く、その硬い外骨格をレッドキングの石頭に凹ませられつつ下敷きにされて氷の中に埋められてしまった。

  助かったことに安堵したのか、はたまた突然降ってきたレッドキングに驚いているのか、呆然と立ち尽くすエレキングを尻目にレッドキングはヨロヨロとふらつきながらアントラーの上から立ち上がる。

 

《うぐあああああああ!ぐうぉぉ…お、おぇ…。あ、頭がいてぇ…!》

 

  やはりいくら頭が硬いと言っても流石に堪えたようで、憐は頭を押さえて痛がっていた。しかし、それも数秒の間。段々と和らいでいく痛みに、レッドキングの頑丈さに若干引きつつも回復した憐はエレキングに向き直って話しかける。

 

《エレキング、遅くなってすまん!寒いの苦手なのに、悪かった》

 

  憐の言葉に我に返ったエレキングは、大丈夫だ、というような声を発してから今だフラついているレッドキングの体を支える。

 

《お、ありがとな!じゃあ、さっさとイーヴィルクリスタルを…うぉあ⁉︎》

 

  エレキングに支えられながらアントラーのイーヴィルクリスタルを回収しようと近づいたレッドキングの足を、気絶したフリをしていたアントラーの顎が捉える。

 

《くっ、離せこの!痛、あああああ!食い込んでる食い込んでる!ヤベ、あ、足もげる!》

 

 アントラーの顎をはずそうと尻尾を頭に叩きつけるが、最後の力を振り絞っているのかアントラーは頑として離さない。そんな時、ナナからエレキングへ指示が入る。

 

「エレキング、待たせたわね!今までよく頑張ってくれたわ!今からジャンスターとの同時攻撃でアントラーを吹っ飛ばすから、タイミング合わせるわよ!」

 

「はずさねえっすよ…!」

 

『頭部の凹みを狙え!』

 

《こんのおぉぉぉ!暴れんじゃねぇ!》

 

  ナナ達の意図を汲み取った憐はアントラーを動けないように残りの足で踏みつける。

 

「エレキング、ライトニングカッター!」

 

「そこだぁ!」

 

『ジャンキャノン!』

 

 そこへジャンキャノンとライトニングカッターの同時攻撃が炸裂。アントラーは堪らずレッドキングの足を離す。

 

《逃がさねえ、うぉらああ!…よし、いくぞエレキング!》

 

  すかさずアントラーを掴んで空中へ放り投げた憐はエレキングとタイミングを合わせて回転し、落ちてきたアントラーに尻尾を、挟み込むように打ちつける。怒涛の連続攻撃により立つのが精一杯なアントラーに、2体はお互いの長い首を鞭のようにしならせてアントラーの胴へトドメとばかりに叩き込んだ。

 

《ナイス!息ピッタリだったな!》

 

 その言葉に嬉しそうな声を出すエレキング。

 

《いやー、しかし身体中が痛い…。それに寒すぎて、ぶわっくしょんッ!》

 

 大地を揺るがすような盛大なくしゃみをかます憐。もしかしたらどこかで雪崩が起こっているかもしれない。震えるレッドキングを、エレキングがそっと抱きしめる。

 

《ん?温めてくれるのか?あ、なんか暖かくなってきた…》

 

「おいこら!なにエレキングとイチャついてんのよ⁉︎」

 

「なんか怪獣が抱き合ってる画ってシュールっすね…」

 

  そこに近くに着陸したジャンスターから降りてきたナナとムッチがやって来る。

 

 《別にイチャついてないだろ⁉︎…ん?もしかしてエレキングってメス?》

 

「だから言ってんの!」

 

「怪獣に嫉妬はちょっと…」

 

「う、うっさい!嫉妬なんてしてない!エレキング、戻れ!」

 

 残念そうな声をあげて消えるエレキング。

 

《お、おーい、ナナ?「なにかしらぁ?」うっ、あ〜、さて、イーヴィルクリスタルを砕くか〜》

 

  なぜナナがキレているのか気になるところだが、これ以上ナナの怒りの炎を燃え上がらせないために憐は迅速にアントラーの方へ向かう。

 

 

《お、今回のはちょっとデカイな。よっし、オラァ!っと。…あれ?小さくなんねぇ》

 

「確かに、おかしいわね。なんだか震えてるみたいだし…」

 

「小さくなんないとおかしいんすか?」

 

  憐はアントラーから出てきた1mほどの正八面体の黒い結晶を砕く。しかし、体色が茶色になったことを除けば大した変化は見られず、また今まで暴走していた生物は元の姿に戻った後は何事もなかったのに対してアントラーは僅かに震えているだけでかなり衰弱している様子だった。

 

「今までは元の大きさに戻ってたんだけど…!まさか、コレが元の大きさなの⁉︎」

 

『その怪獣の体温はどんどん下がっている…。色が変わったことを踏まえて考えると、今回のイーヴィルクリスタルの影響は異常な適応能力。つまり、この生物は元は寒さに弱いと考えられる』

 

 ガンパットから伝えられたジャンナインの推測をきいて、三人に衝撃が走る。

 

「それってつまり、アントラーはこの星の生物じゃねぇってことすか⁉︎」

 

「じゃあ誰かが連れてきた、とか?」

 

《だとすると、その連れてきた奴ってのはイーヴィルクリスタルの力を制御してアントラーに寒さへの耐性を付けた…のか?でもなんでだ?なんでわざわざこの星に磁力を操るアントラーを?それじゃまるで》

 

『僕達を狙っている、としか考えられないな』

 

「ね、狙う⁉︎ヤプールすか⁉︎」

 

「それはわからないけど、まずはアントラーをなんとかしよう。このままじゃ危ない」

 

 ライブアウトした憐はナナとムッチを連れてアントラーの方へ行こうとした。がそれをジャンナインが止める。

 

『南西から熱反応⁉︎マズイ、戻れ憐!攻撃だ!』

 

  その声と同時に空に無数の赤い点が現れる。

 

「あの数は無理だぞ⁉︎」

 

「くっ、間に合わねぇ!」

 

「え、エレキ、きゃああああ!」

 

『憐!ナナ!ムッチ!おい、大丈夫か⁉︎』

 

 ジャンナインの叫びも虚しく、無数の火球が上空から3人へ降り注いだ。

 

 

『くっ、返事をしろ!』

 

「あれ?大丈夫だ」

 

『…なに?え、ほんとに無事なのか⁉︎』

 

「あ、ああ。大丈夫っすね」

 

  流石にダメか、と思いつつ呼びかけたのに思いがけず何でもないような返事が返ってきたので若干固まるジャンナイン。当の本人達も不思議に思っていると、辺りを覆っていた煙が晴れてきた。

 

「あ、アントラー⁉︎」

 

「まさかアタシ達を庇ってくれたの?」

 

  そこには憐達に守るように覆いかぶさっているアントラーの姿があった。しかし、元より衰弱していたアントラーは今の攻撃で完全に力尽き、崩れるように後ろに倒れた。

 

「馬鹿野郎!おめぇなんてことを!」

 

「ちょっとムッチ⁉︎」

 

「なに守ってんだ!てめぇが死にそうなのに命を捨てるようなことしてんじゃねぇよ!」

 

「お前…」

 

 ムッチの言葉に、しかしアントラーは弱々しく唸るだけだった。

 

「…決めたぜ。俺はお前を絶対に故郷へ届ける。文句なら後でいくらでも聞いてやる。だから、今はその命、俺に預けろぉ!」

 

  ムッチがバトルナイザーを掲げる。それを見て、アントラーはムッチの思いに応えるように最後の力を振り絞って雄叫びをあげる。するとアントラーは光となってムッチのバトルナイザーに収まった。

 

「…ふぅ。あ、ハハハ。なんか恥ずかしいところ見せちゃったっすね」

 

  そう照れながら笑うムッチを、憐とナナは駆け寄って揉みくちゃにする。

 

「お前めちゃくちゃかっこいいじゃん!」

 

「少し見直しちゃったわよ!」

 

「うわっ、ちょっ、勘弁してくれっす!」

 

 

  しばらくじゃれあっていた3人だったが、ジャンナインからの通信で気を引き締める。

 

『憐、そろそろさっき攻撃をしてきたやつが来るぞ』

 

「そうみたいだな。その上ギンガスパークがめちゃくちゃ光ってるからイーヴィルクリスタル付きだ。しかも今までで一番でかい、な」

 

『憐。すまないが、僕は先の磁力の影響で戦闘形態に変形できない』

 

「アタシのエレキングも消耗が激しいから憐一人で戦うことになっちゃうけど…」

 

  不安そうに俯いたナナの肩を、憐は軽く叩く。

 

「心配すんな。ウルトラマンの力があれば大丈夫だ!」

 

「その通りっすね!俺は戦えないけど、応援してます!」

 

「…信じてるから。必ず、帰ってきてね」

 

「おう!」

 

  会話が終わった瞬間、図ったかのようなタイミングで吹雪を割って闇からの刺客が姿を現す。

  宇宙海獣レイキュバス。その甲殻類のような外見の中でも特に目を引くのは右腕の巨大なハサミだが、今回の個体で一番異様なのはまるで埋め込まれたかのように背中から1/4ほどピラミッド形で突き出しているイーヴィルクリスタルだろう。

 

『あのイーヴィルクリスタル…。出ている部分から計算すると全長20mほどあると思われる』

 

 

(イーヴィルクリスタルはあの黒い巨人の力の欠片。これは、奴が目覚めたと考えるのが妥当か…)

 

  あの時ビジョンの中で黒い巨人に見つめられた際に感じた恐怖が体を蝕もうとするが、憐はギンガスパークを強く握りしめ気持ちを奮い立たせる。

 

「やってやる!どんなに強かろうと、俺は負けねえ!」

 

『ウルトラーイブ!ウルトラマンティガ!』

 

  ティガにウルトライブして光の球体となった憐は、そのままの状態でレイキュバスの方へと飛んでいく。

 

「さ、俺たちはジャンスターへ。ここにいたら兄貴の邪魔になっちまう」

 

 そう言って走っていくムッチ。

 

「憐…いや、アタシがこんな気持ちじゃダメよね!」

 

  そう言って首を振ったナナは、ムッチの後を追ってジャンスターへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

『テェア!」

 

  レイキュバスの前へ降り立ったティガは構えを取りながら相手の動きを観察する。

 

(レイキュバスも俺を観察してる…?この感じ、やっぱりこいつは暴走してるんじゃない。誰かに、いやあの巨人に操られているんだ)

 

  ティガが戦える時間には限りがある。憐は考えるのは後にし、攻撃を仕掛けるためレイキュバスへと走っていく。しかしティガが動いた瞬間レイキュバスの目が赤から青へと変わり、冷凍ガスを吹き出してきた。

 

『ンッ⁉︎フグッ、デェアアアア!』

 

  ソレをもろにくらったティガの体がたちまち凍りつき、動きが鈍くなる。そこを狙って赤い目に変わったレイキュバスが火球を連射。除けられないティガはそれも全て被弾してしまい、火花を散らしながら後ろへ吹き飛ばされてしまった。

 

(くっ、火球なら走りながらでも避けられるから油断してた!ちょっと既にダメージがシャレにならんレベルだし、どうにか…うぐっ⁉︎)

 

  冷凍ガスと火球のダメージはかなりのもので、ティガはしばらく立ち上がれずにいた。しかし敵は憐を殺しにきているのだ。その隙を見逃すわけがない。その見た目からは想像もできないほど素早い動きで倒れているティガのすぐそばまで来たレイキュバスは、その脇腹をハサミで殴りつけ追い打ちをかける。ティガはその攻撃をくらいはしたが、勢いを利用して転がり、レイキュバスから離れることに成功した。

 

『ハッ!』

 

  そのまま起き上がりつつ3発連続でハンドスラッシュを放つ。そしてそれを受けて怯んだ隙にレイキュバスの懐へ滑り込んだ。

 

『フン!テェヤ!』

 

  スライディングの格好から起き上がりつつ顎を蹴り上げて後退させ、飛び出した目を掴んで動きを押さえた後、背中へ回り込んでイーヴィルクリスタルへ連続チョップを叩き込む。弱点なのか、レイキュバスは苦しげな声を上げてすぐにティガを振り払い、再び距離をとって間髪入れずにいくつか火球を放つ。

  しかし着弾したのはティガではなくどれも地面だった。不思議に思う憐だったが、すぐに動きを止めたことを後悔した。

 

(ぐふっ⁉︎がはっごほっ、な、タックル⁉︎まさか、氷を溶かして滑って来たのか⁉︎)

 

  タックルの衝撃を吹き飛ばされつつ空中で宙返りすることによってなんとか流したティガ。しかし、着地して立ち上がった瞬間に合わせてレイキュバスが巨大なハサミを鈍器のように振るっていた。

  左下からの抉り取るようなアッパー。ソレを防ぐ間もなくまともに食らい、しかし痛みを堪え吹き飛ばされる寸前で踏ん張って留まり、ティガはハサミを脇と腕を使ってしっかりと抱き込んだ。

 

『グッ!ハァァァァァ…チャア!』

 

  そのままレイキュバスを持ち上げ、思い切り投げ飛ばす。いくら硬いと言えども落下の衝撃はしっかりと肉体に届いたようで、ダメージによって動けないレイキュバス。

 

『フッ⁉︎ヂュアアアアア!』

 

  そこへ追撃を仕掛けりために駆け寄ろうとしたティガの肩を、突如現れた黒い触手が貫く。肩から血飛沫のように勢い良く吹き出していく光の粒子。そのダメージの深刻さを表すようにカラータイマーが点滅を開始した。

 

(ぐあぁぁぁぁぁ!ぐっ、なん…だ、この、触手⁉︎か、体にいろんな感情をごちゃ混ぜにした、ぐぁっ、胸糞悪ぃモンを流し込まれてるみたいだ…がっ!一体、どこから…!)

 

  痛みに悶えつつも触手の出処を探す憐。見れば、レイキュバスの背中にある巨大なイーヴィルクリスタルから無数の触手が飛び出していた。

 

『ウグッ…デュア!ウゥゥゥン…ハッ!』

 

  それが一斉に襲いかかってくる。ティガは肩に刺さっている触手をチョップで切断すると、スカイタイプにチェンジ。空中へと逃れた。

  複雑な軌道を描きながら迫る触手を素早く躱しながら、憐は打開策を考える。

 

(弱点は間違いなくあの背中のイーヴィルクリスタルだ。アレを叩くために、まずこの触手の動きを止める!)

 

『デュア!』

 

  一気に加速し触手を振り切った瞬間、ティガは振り向いて青色の光線「ティガフリーザー」を横薙ぎに発射し、全ての触手を凍らせた。

 

『ハァァァァァ…ハアッ!チャアアアア!』

 

  触手の動きが止まり、無防備となったレイキュバスの背中へスカイタイプの必殺技「ランバルト光弾」を放つ。そしてティガはすぐさまそれを追うようにキックの体勢をとり急降下していく。

  射線上にある触手を切り裂きながら正確に突き進むランバルト光弾は、イーヴィルクリスタルへ矢のように刺さり、ヒビを入れる。それを更に打ち込むようにティガの急降下キックが決まり、ランバルト光弾がイーヴィルクリスタルを貫通。レイキュバスを地面に縫い付けた。

 

(残り時間も少ない、このままトドメを…⁉︎)

 

  そのままトドメを刺すためにマルチタイプに戻ったティガを、ヒビ割れたイーヴィルクリスタルから突然吹き出した黒い靄が覆う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  暗雲に包まれ、空を走る紫電以外一切の光が存在しない何処かの星。この惑星の黒い大地は、ある一点を除いて地平線の彼方まで延々と平坦なものであった。その例外である一点、巨大なクレーターの中心に、黒い巨人が肩から下を埋めた状態で眠りについている。

  ソレを見た憐は、突然眼前に広がったこの不気味なビジョンに驚くより先に安堵していた。「よかった、まだ目覚めていなかったのか」、と。

  しかし直後、黒い巨人の頭部が動き、光の灯っていない瞳でこちらをしっかりと見据えると、地獄の底から響いてくるような恐ろしい声でこう呟いた。

 

『忌々しいその光…ここで、消す』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(確かにこの攻撃は1番効くぜ…)

 

  気づけば視界はまた黒い靄に覆われており、憐は自分がまだ戦いの最中であることを思い出した。

 

(現に体が戦うこと、というか黒い巨人(お前)と同じ力を感じるこの靄から全力で逃げようとしてる)

 

  纏わり付く靄により、息ができなくなるような錯覚に陥る。

 

《でもな》

 

  しかし、それでもティガの目から光が消えることはなかった。

 

《俺はそう簡単に生きることを諦めたりしない!》

『ンーーーー…!ハアアアアッ!』

 

  全身を巡るエネルギーが一点に集められ、カラータイマーから強烈な光が放たれる。その光は靄を吹き飛ばすだけにはとどまらず、直進しレイキュバスを包み込んだ。するとイーヴィルクリスタルは粉々に砕け散って霧散し、レイキュバスがいた場所には小さなヤドカリがチョコチョコと歩いているのみとなった。それを見届けたからなのか、単に時間切れなのか。ティガの体が光に包まれ、次第に人間の大きさに収束していく。

 

 

「…これはまた、ナナに叱られるパターンだなぁ…」

 

 ライブアウトした憐は立っていられずに雪の中へ倒れこむ。全身の痛みで身動きが取れない憐は苦笑いを浮かべながらそう呟き、近くに着陸したジャンスターから猛ダッシュで駆け寄ってくる2人の仲間へ目を向けた。




今回、始めて1万字超えたけど、ただダラダラ書いていただけな気がしてならない…。この話は少し端折ったところがあるので、時間ができたら加筆します。
もうすぐGWだからそこで次話を更新できたらいいなぁ。
あ、引き続きリクエストは募集中です!
では!

〜次回予告〜
何やら悩みを抱える憐。
そんな中辿り着いた惑星・トルネイで起こる怪事件を、果たして解決することができるのだろうか?
次回「嵐の中で」、お楽しみに!

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