スカリエッティの兄弟   作:ヴィヴィオ

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無印編
第一話 魔法少女リリカルシュテるん


 

 リンディ・ハラオウン

 

 

 

 

 新暦65年春、発掘されたジュエルシードが本局への輸送中に何者かによって襲撃された。近くに居た私達アースラは現場に急行している。

 

「エイミィさん、現場までどれくらいしか?」

「後1日くらいですね」

「そう。クロノ、ジュエルシードに付いて教えてくれるかしら?」

「はい。碧眼の瞳を思わせる色と形状をした宝石で、それぞれシリアルナンバーが振られています。一つ一つが強大な魔力の結晶体で、全部で21個ある事が判明しています。それ以外の事はまだわかっていません」

「ロストロギア指定されたって事はかなり危険ね。急いで救助して探さないといけないわね」

「救助は別の艦にお願いするのもありですねー……っ!? 背後に高エネルギー反応っ!! それも多数!!」

「第一種戦闘配備! 魔法障壁展開!! 対ショック体勢をとって!」

「ダメ、間に合わない!」

「くっ!!」

 

 いきなりの砲撃。なんとか魔法障壁で着弾を防いでいく。

 

「魔法障壁を維持したまま急速回頭!」

「了解! それと敵も次元航行艦です!」

「全砲門開け! こちらも反撃するんだ!」

 

 クロノの指示でアースラからも砲撃が始まる。私も攻撃魔法の準備をする。

 

「エイミィさん、こっちにも魔力供給を回して。私が守ります。その間に攻撃をお願いします」

「わかりました艦長!」

 

 防御を全面に展開し、無数の魔法弾を打ち合う。

 

「被弾箇所多数! って、なによこのエネルギー反応!!」

「どうした!!」

「敵艦とアースラの間に高エネルギー反応!! きます!!」

 

 直ぐに視界が真っ白に染まり、私達は何も見えなくなった。

 

 

 

 

 

 リンディ

 

 

 

 

 視界が晴れ、戦っていた艦は存在しなくなった。

 

「エイミィさん、索敵は?」

「反応なし。ロストしました」

「そう。じゃあ、修理して任務に戻りましょう」

「了解しました! 一応、増援を呼んでおきましょう」

 

 私達は報告だけして本来の任務に戻る。

 

 

 

 

 

 シュテル

 

 

 

 

 この1年間で準備は完了しました。これからの事はご主人様の命令待ちですね。なので、今日はシノンと一緒に温泉に入っています。

 

「やっぱり温泉はいいですね」

「これは気持ちいい」

 

 洗いっこを終えて、今はゆっくりと一緒にお風呂に入っています。湯船に浮かべた桶には湯が入っていて、そこにヘカテーが気持ち良さそうに入っています。まったりしていると、扉が開いて新しい人が入ってきました。平日なので老人の方々が殆どなのですが、やって来たのは小さな少女です。少女は湯で身体を流した後、入ってきて私達の横に座りました。

 

「フェレットが探し物を無くしました。今夜開始です」

「了解」

 

 横に来たのはイクスです。どうやら報告を持ってきてくれたようですね。それから、情報交換をした後、別れます。その日の夜、夢を見ました。それは人が獣に襲われている光景でした。

 

『僕の声を聞いて、力を貸して……魔法の力を……』

「魔法の力を貸して欲しいと……別に問題は有りませんね」

 

 目覚めた私は身なりを整えた後、隣で丸まって寝ているシノンを起こします。

 

「シノン、朝ですよ」

「ん……眠い……」

「朝ご飯はどうしますか?」

「いらない……昼まで……寝る……」

「まあ、今日は夜からですから構いませんか……では、私は少し所要を済ましてきます」

「……ん、いってらっしゃい……」

 

 シノンを置いて、部屋の外に出て軽く身体を動かしてから温泉に入り、食堂へ向かいます。

 

「おはようございます」

「おはようございます。すいません、今日はお昼まで寝るそうなので、起きた後にしてください」

「分かりました。では、シュテル様の分だけですね」

「はい。よろしくお願いいたします」

「畏まりました」

 

 綺麗な旅館の朝食が運ばれてくる。今日は8品でしたが、どれも美味しいです。朝食を食べた後は部屋に戻り、寝ているシノンの布団を直した後、改めて私服に着替えてでます。(私服はシュテル・ザ・デストラクター[友だちと一緒])

 

 

 

 拠点にしている温泉旅館から出た私は広域サーチを発動させました。すると直ぐ近くで引っかかった物がありました。なので、私は近くにある小川を遡って行きます。そして、ジュエルシードのNo.XVIIを見つけました。

 

「さて、これをどうしましょうか……」

 

 色々と細工をしておいた方が面白そうでしょうか?

 そうですね、利用させて貰いましょう。

 

「ルシフェリオン」

『委細承知』

 

 細工を行った後はルシフェリオンに仕舞って別の所へと向かいます。次はバスを使って海鳴市の中心へと向かいます。その後は海鳴臨海公園に行って、ここでもジュエルシードを見つけました。元からある程度の位置はわかっているのですから、簡単ですね。

 

「さて、残りは海の中ですね。マリアージュ、そちらはどうですか?」

 

 私が声をかけると海の中から触手が何本か出てきて、6個のジュエルシードを渡して来る。それらを受け取って細工を施す。

 

「ご苦労様でした。帰っても大丈夫ですよ」

 

 海面の下に存在した巨大な影が急速に消えていきます。これで私が所持しているのは8個です。

 

「今日はこれぐらいにして昨日のアレを探しましょうか……その前にご飯ですね。ふむ、アレにしましょう」

 

 海鳴臨海公園の一部にあるクレープ屋さんでクレープを購入し、食べながら街を移動していきます。

 

「む、不味いですね……」

 

 前方からやって来る存在の情報が入って来て直ぐに道を変えます。何故なら、見覚えのある金髪の少年がやって来ました。確か、名前は獅子王ギル。ご主人様から見せられた転生者と呼ばれる存在ですね。今は手出しする理由も有りませんからこのままスルーします。この街には私達、ブラックロッジの配下であるカラス達が無数に存在して見張っています。ですので情報が直ぐに入ってきます。それなりの数の存在が確認されている為、私は彼らを避けるようにして歩きながら探索しないといけません。非常に時間はかかりますが、仕方ありません。

 何度も遠回りをしてしまったため、夢で見た林に着いた頃には夕方近くになっていました。

 

『助けて……!』

「こちらですね」

 

 声の方向へと移動していきます。すると次第に声が大きくなっていきます。

 

『助けて!!』

 

 声の場所までたどり着くと、そこには首に赤い宝石をしたフェレットが横たわって居ました。するとフェレットは安心したのか、気絶してしまいました。私はそのフェレットを抱き上げて首元の赤い宝石を見ます。

 

『ま、マスター……』

「やってしまいました……ここは可及的速やかに撤退を……」

 

 私はフェレットを地面に戻そうかと思いましたが、動物愛護精神からこのまま放置するのも悩んでしまいます。命令なら構わないのですが、今は個人的な事ですし……どうしますか……悩みます。

 

「はぁはぁ、多分こっち……あっ」

 

 私は背後から聞こえた声に立ち上がって振り向きます。そこに居たのは……私に似た少女でした。

 

「……」

「……」

 

 私と彼女は見つめ合ったまましばらく機能停止してしまいました。その間に3人の少女と2人の少年がやって来てしまいました。

 

「「なのは(ちゃん)?」」

「「「嘘……なんで……」」」

 

 ご主人様、王よ、私はとんでもないミスをしたかも知れません。いえ、確実にしました。さて、ここからどうするべきか考えないといけませんね。なのは、すずか、アリサはデータから知っています。他の3人は転生者ですね。1人目が女の子で金色の長い髪の毛をストレートにして、左右で少しだけ別けて黒いリボンでツインテールにしている子です。男の子の1人目が青い短い髪の毛を逆毛にして後ろ髪を縛っています。瞳は赤く身体つきは鍛えているようです。もう1人の少年も鍛えているようです。こちらは長い赤毛に緑の瞳で偉そうです。

 

「あ、あのっ」

「んんっ……」

「はい。とりあえず、この街に住んでいる方ですか?」

「えっと、その……」

「そうだけど、アンタはなんなのよ、なのはの親戚か何か?」

「いえ、こちらに私の親戚は居ません。それよりも動物病院はこの近くに有りませんか? 放っておいたらこのフェレットは死んでしまいます。私には治療する事は出来ませんから……それとも、貴方達はできますか?」

「できないわよ!」

「私も無理だよ」

「お、俺も……」

「なのはも……」

「では、動物愛護の精神によりできる限り早く動物病院に連れて行かなければなりません」

「そ、そうよね……ちょっと待ってて。直ぐに調べさせるから」

 

 そう言って、直ぐに携帯を取り出して連絡しだしました。

 

「しゅ、シュテルだよね?」

「なんでシュテルがこんな所に居るんだよ……」

「ASどころか、無印だって始まったばかりだってのに!」

「? 確かに私はシュテルですが、貴方達の事を私は知りません。誰ですか?」

 

 ここは小首を傾げながら知らないふりをしておきましょう。私の事を転生者と見るか、それともイレギュラーと見るか、どちらでも構いません。こうなればご主人様や後で来る王やレヴィの為に演じきるのみです。

 

「え? そ、それは……」

「待てよ、誰かの特典って事も……」

「そ、それならあり得る。くそ、それなら俺もそっちにしておけば……」

 

 少年の2人はお互いを見た後、私を欲望の激った瞳で見詰めて笑ったり、気安く撫でようとしてくる。これは凄く気持ち悪いので直ぐに飛び退ります。しかし、これは思っていたのと全然違います。ご主人様は俺の女とか嫁とかいうくせにキス以外はしてきませんし、それ以上の事はイクスとエセルドレーダにしかしていません。聞いたら、13歳になるまではダメだそうです。その後は私達しだいだそうですが……欲望に見られないのははっきり言って女のプライドを傷つけられます。そう思っていたのですが……これは気持ち悪いですね。殺したくなるくらいに。

 

「「(寝取れば問題無いじゃないかっ!)」」

 

 確か、ナデポやニコポといった精神支配系を選択している奴が居る可能性があるのでしたね。私には効きませんが、データを取っておきましょう。

 

(ルシフェリオン、ナデポ、ニコポ対策を起動すると同時にデータ収集を開始してください)

『問題なし。既に開始している』

(流石です)

『精神攻撃を検知、一部に侵入された。バックアップと齟齬を確認。強制回復。カウンタープログラムの使用許可を申請』

(構いません。やりなさい)

『委細承知』

「ぐぅぁあぁぁぁぁぁっ!?」

 

 急に笑顔を向けていた気持ち悪い少年が苦しみだしました。ですが、誰も気にしていません。少し哀れですね。

 

「わかったよ。車も手配したからこっちに来て」

「分かりました」

「ほら、なのはもすずかもさくらも来なさい!」

「うにゃ!? ボクも! 別にいいけどさ!」

「ほら、なのはちゃん」

「う、うん……」

 

 私達は急いで林から抜け出して、車に乗り込みます。その時残りの少年も来ようとしていましたが、アリサが蹴り出しました。

 

「おい、何しやがる!」

「人数オーバーよ! じゃあね! 出しなさい!」

「ちょ、待っ!!」

 

 直ぐに車は発進して、動物病院へと向かいました。

 

 

 

 動物病院に到着して、しばらく待っていると診察が終了しました。

 

「怪我はそんなに深くないけど、随分衰弱しているみたいね。ずっと一人ぼっちだったんじゃないかな……」

「「「院長先生、ありがとうございます」」」

「ありがとうございます」

「あの、この子ってフェレットなんですか?」

「フェレットなのかな? ちょっと変わった種類みたいだけど……それにこの首輪についているのは宝石なのかな?」

 

 先生が宝石を触ろうとした所で、フェレットが起きてきました。

 

「起きた」

「わぁ~」

 

 起きたフェレットは顔をキョロキョロさせた後、次第に私となのは、さくらの間を行ったり来たりします。そして、なのはが指を差し出すと、舐めた後に倒れました。

 

「まだ体力が回復していないから、明日までこちらで面倒見るわね。よかったら明日もまた様子を見に来てくれるかな?」

「「「はーい」」」

「分かりました」

 

 それから、時間が不味いそうなので、外に出ました。

 

「あ、あの、また会えますか?」

「そうですね、明日はここにこの時間くらいに訪れる事にしましょう」

「分かりました!」

「約束だからね」

「絶対だからね」

「うにゃーまた明日だよ!」

 

 4人を見送った後、私はこの動物病院に結界を張っておきます。それから少しすると念話が飛んできました。

 

『……あ、あの……』

『さっきのフェレットですか』

『や、やっぱり魔導師の方ですよね!』

『はい。こちらは嘱託魔導師のシュテル・スタークスです』

『管理局の!? よ、良かった……実はジュエルシードという物がこの街に散蒔かれてしまって……』

 

 それから、私はフェレットの言葉を聞きながら近くのお店で食事を取ります。こちらに付いて来ているサーチャーも何個かありますので、大人しくパスタを食べています。

 

『事情は理解しました。ですが、こちらもジュエルシードにかかりきりになる訳には行きません。私も別件でこちらにやってきていますので……』

『そんなっ!? ジュエルシードは凄く危険な物なんですよ!』

『こちらもかなり危険な物を追っています。第一級捜索指定遺失物、闇の書がこの近くにある事が判明しています』

『っ!?』

『ですが、そちらも大変な事もわかっています。ですので、できる限りは協力をしましょう』

 

 このオムライスはトロトロのふわふわで美味しいですね。

 

『わ、分かりました……でも、どうすればいいんでしょう……』

『簡単です。あの場に私以外に居た2人、貴方も見ていたでしょう。彼女達……私に似ている子に協力を求めなさい。彼女は素質があります。最初は私が付き合ってあげます。その間にある程度鍛えてあげますよ。もちろん、説得は貴方にお任せしますが……』

『わ、分かりました。確かに第一級捜索指定遺失物に指定されている闇の書も危険ですしね。その、もしもの時は……』

『ええ、私にできる全力で貴方達に答えましょう』

『ありがとうございます!』

 

 そう、私に出来る全力でですが。

 

『それと、闇の書の事は誰にも秘密です。いいですね? まだ確定した事ではないので』

『分かりました。混乱を招かない為ですね』

『ええ。それに管理局の一部には闇の書を処理する為にこの星ごと消滅させようとする者達も居ますから』

『そんなっ!?』

『事実です。いいですか、くれぐれも情報漏洩をしないように。もしもした場合は重い刑罰に罰せられる……かも知れません』

『はい! 分かりました! それでは失礼します!』

 

 これでこちらは問題有りませんね。さてと、あちらはどうでしょうか?

 

『シノン、そっちはどうですか?』

『目標地点を狙える狙撃ポイントに待機中。あっ、この翠屋で買ったサンドイッチ、美味しい』

『何故そこに行ってるんですか!』

『なのはや転生者と鉢合わせしたシュテルに言われたくない』

『うっ……』

『まあ、大丈夫。誰にも見つかっていない。サーチャーも私は見つけられない。隠蔽した私を魔法技術で見つける事は不可能』

『まあ、そうですね。それで、今夜ですが、誰から狙いますか?』

『それだけど、イクスが欲しいのがあるっていうから、それを持ってる奴からかな』

『そうですか。私はどうしましょうか?』

『ああ、それは簡単。レオンからの通達だけど、予定通りに行きすぎるのはつまらないって』

 

 つまり、私の失敗は許してくれたと思っていいのでしょうか?

 

『これは劇なんだから配役のアドリブは構わないだって』

『では、私はこのまま彼らに協力して行きましょう』

『味方だと信じていた人が実は敵だったってのは結構あるよね』

『王道ですね。つまり、あれですか……私はなのはに向かってここを通りたければ師を超えていけとか、私がオリジナルに取って代わるとか言えばいいんですね』

『……ダメでしょ。勝っちゃう。それだと負けフラグが折れる』

『難しいですね……そもそも負ける気なんて有りませんけどね。経験が違います、経験が。もちろん、積み重ねて研磨してきた技量もですけど』

 

 こちらは数年を多重に積み重ねて来ているんです。オリジナルなどに負けてやる気など有りません。

 

『シュテル、グラスが凍ってる』

『失礼しました。さて、そろそろこちらも動きます。そちらは任せました』

『私はただ標的を撃ち殺すだけ。でも、任された。家族の為に張り切るのは当然だから』

『そうですね。では、私も張り切ってオリジナルを育ててあげますか……』

『そして首を絞める事になると……』

『シノンっ!!』

『目標が接近。念話を終了する。じゃあ、後で』

 

 念話が一方的に切られました。こうなるとシノンにこちらから繋げる事は出来ません。それほどシノンを見つけるのは魔法では困難です。逆に言えば機械でなら問題無いのですけどね。どちらにしろ、今は連絡する必要も有りません。

 店を出て、裏路地に入ってサーチャーを叩き潰します。その後バリアジャケットを身に纏います。サーチャーに変身シーンなど与えません。見ていいのは家族だけです。

 

「シュテル・スタークス。これより嘱託魔導師……いえ、ブラックロッジとして任務を開始します」

 

 空へと駆け上がり、動物病院へと目指す。直ぐにジュエルシードの反応が現れました。それと同時に高町なのはの反応もあります。ですので、私は広域封鎖結界を発動します。高町なのはをサーチャーで現場の近くへと誘導します。

 

「さて、貴方の相手はまだしばらくかかるそうです。少し大人しくしてもらいましょう」

『クロスバインド』

「グギャァアアアアアアアアァァァッ!!!」

 

 病院の前に居た思念体を拘束し、私は病院からフェレットを連れ出します。

 

「す、凄い……」

「とりあえず、なのはが来るまで待ちます。そうですね、ゲームでいうチュートリアルを行ってあげましょう」

「お、お願いします……」

 

 しかし、敵に塩を送るなんて……なんて悪役らしいのでしょうか。面白いです。そうですね、なのは達と戦う前には回復してやろうとか言って、回復してあげましょう。ええ、それがいいです。きっとレヴィも喜びますね。王であるディアーチェは頭を抱えそうですが。どちらにしろ、楽しみです。

 

 

 

 

 

 

 

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