メルトリリス
さて、目の前に居るシュテルの実力はかなり高い。魔力量もなのはを遥かに超えているし、練度も相当高い。チートを貰い、鍛えてきた私達とは違うのにこの実力は驚異だ。持ってるデバイスもおかしい。いくらなんでもINNOCENTの奴まで実現しているなんて信じられない。いや、あの服装からしてハーキュリーブレイカーとか撃ってくるのかも知れない。どちらにしろ驚異だ。
「ここで倒した方が良いかな」
「やってみなさい。それが無駄だと貴女は知るでしょう」
「へぇ、面白い」
空中で対峙しる私達は高速で突撃する。だけれど、その前を馬鹿みたいな数の魔法弾が放たれる。だけど、それは私には効かない。無視して突撃する。だけど、これは失敗だった。相手は氷結系だというのを忘れていた。無数の魔法弾を浴びる内に身体が凍りだしたのだ。
「集え、蒼星、全てを凍てつかせて凍結させよ! ルシフェリオン・ブレイカー」
「やばっ!?」
なのはのスターライトブレイカーと同等、それ以上のえぐさを持つ攻撃。ゲームでもチートキャラであり、手の付けられない存在だったシュテルの攻撃。それは動けない私ではどうしようもない。
「だらしないぞ、リリス」
「なんでアンタが……」
私の前に現れてたのは大きな機械兵器。それが、私をかばうように立ちふさがり、ルシフェリオンブレイカーを迎え撃つ。
「ハドロン砲、放て。時間が無い。さっさと解除しろ」
「はいはい、わかってるよ」
凍り付いている身体をドレインして液体に戻し、抜け出す。そして、再構築する。
「では、脱出だ」
「わかった」
転送魔法で一瞬で移動する。ルシフェリオンブレイカーを回避した私達はシュテルの背後へと飛び、シュテルに蹴りを叩きつける。それに対してシュテルは私の蹴りを片手で持ったデバイスで受け止めやがった!
いや、それだけじゃない。蜃気楼のビームサーベルすら素手で受け止めやがった!
「ありえん! 生身でビームサーベルを止めるだと!? 化け物か貴様っ!! 我の計算の上を行ったというのか!?」
「仮面ですか……何者ですか?」
「ふっ、我が名はゼロ!」
「ただの変態仮面だよ」
「成程。では、消えな……」
「甘いぞ小娘!」
「ぐっ!?」
驚いた事に無数のバインドが、それこそ雁字搦めのように強力なバインドが手足に施され、身体を亀甲縛りされたシュテル。シュテルは直ぐに状況を把握して、冷たい蔑む絶対零度の視線を変態仮面に向けた。
「ふっ、そんなそそる目で見るな」
「「変態」」
「貴様はどっちの味方だ!」
「……」
「悩むなっ!! ええい、それよりもしっかりと押さえておけ。すごい勢いでバインドが解析されている」
「ちぇっ。了解」
私はシュテルの背後に周り、その後ろから抱きついて身体を拘束する。その時、たっぷりと痛くしてあげる。
「っ!?」
「ふふ、いい表情……ゾクゾクする」
「貴様の趣味はどうでもいい。それよりも顔を固定しろ」
「はいはい」
「さて、これから私がする質問に全て答えよ」
「嫌です」
「そうか。では、無理矢理身体に聞くとしよう」
「いやらしいことするの?」
屈辱に歪むシュテルの頬っぺたをペロリと舐めながら聞いてあげる。
「命ずる。我が問に偽りなく答えよ!」
ギアス、絶対遵守の力を行使したゼロにシュテルの抵抗が弱まると同時に身体が痙攣してくる。
「ねえ、どうなってるの?」
「わからん。だが……問題ないはず……コイツは転生者ではない。ならばギアスは絶対だ。特に我のギアスは……」
「あれ、大人しくなった」
「聞いたか? では、貴様の主人は誰だ? 何の為に行動している?」
「……」
「ん? さあ、全てを我が前にさらけ出せ!」
「……黙り……なさい……」
「何?」
「ちょっと……?」
「わ、私に、命令して……いいのは……王と……ご主人様だけだっ!!」
爆発的な魔力がシュテルの体内から溢れ出す。それはSSSクラスだ。やばい。何かわからないけど無茶苦茶やばい!
「ふふふ……穢されました……穢されたこの身体はもう……いらない……」
「待て、貴様何を言っている!? 我の質問に……」
「諦めなさい! どういう手段かわからないけど破られたのよ! それより、未来予知のギアスを使いなさい!」
「むっ!? やばいっ、逃げるぞリリス!」
「え? 何が起こんの!!」
「時間が無い!」
私は蜃気楼に捕まれて全力で逃がされる。ゼロもいっしょだ。
「わかんないけど、フェイトを回収しないと!」
「ちぃっ!!」
急いで方向転換し、下に速度をあげる。そして、背後には更に膨れ上がる膨大な魔力。
「ルシフェリオン、全リミッター解除。ハイパーボリア・ゼロドライブ起動。全機能をオーバードライブ」
『委細承知』
その声と共に放たれる魔力の波により世界が変わった。氷柱がそこかしこにできて、気温がどんどん下がっていく。シュテルが居た所には真っ白な塊が存在し、それがどんどん膨れ上がっていく。触れた物を消滅させていく事から、シュテルの言葉は正しいと思える。
「ちょっと、まさか……」
「負の無限熱量を宿した絶対零度。間違い無い。奴のバックにはエセルドレーダを持った転生者が居る!」
「なんつーもん持たしてんのよ。コントロール無視の自爆用!?」
「有効的な判断だ。転生者はシュテルを自分の物にしたくて破壊など出来る限りせんだろうよ。そこにこれだ。くれてやるくらいなら跡形もなく消し飛ばす。実に合理的な判断だ」
「ちょっと?」
「それに考えてみろ。奴はつまり、切り離すか複製した物をシュテルに搭載した。それはつまりそれだけの技術力があるという事だ。実にすばらしい! 敵ながらあっぱれである」
「ああ、この馬鹿!! フェイト、撤退するよ!」
私達がフェイトの元に到着した時には既に背後に破滅が近づいている。
「逃がすとでも思っているのですか……」
背後を飛び越えて飛来する剣を避ける。だが、その軌道はフェイトに直撃コースだった。
「ひっ!?」
「ちっ、この馬鹿共がっ!!」
駄目かと思った瞬間、ルークもどきがフェイトを抱きしめて飛び退った。だが、剣は自動追尾してくる。しかも、カードリッジをロードしながら。
「ああ、もう、くそっ!! やってやる!! ローレライの鍵を寄越せ!」
『了解! 頑張って』
「おう! おい、フェイトはさっさと帰れ」
「で、でも……」
「これが欲しいんだろう。くれてやるからここは俺に任せて帰れ」
「あ、ジュエルシード……」
両手を剣に構えたルークもどきは集中する。
「ちょっ、アンタまで何考えてんのよ!」
「貴様は馬鹿か! 超振動でどうこうできるレベルではないぞ!!」
「てめえら、いい加減にしろよ。俺を舐めるんじゃねえぇええええええええええええええええっ!!」
ルークもどきから放たれたそれは確かにシュテルのルシフェリオンドライバーとハイパーボリア・ゼロドライブと拮抗しだした。お互い、消滅を司るイレイザー系の能力。ローレライの剣による増幅だ。だが、直ぐにシュテル側の出力が上がって拮抗は崩れていく。
「無理だっ、出力が違いすぎる!!」
「1本のローレライの鍵では不可能だ!」
「なら1本じゃなければいいんだよ!! ローレライ、99本追加!! 絶対に周りに被害を出さねえぞ! 結界じゃこいつは持たない!!」
「「なっ!?」」
『はいはい』
召喚されたローレライの鍵は剣の丘のようにルークもどきの周りに突き刺さり、大量の第七音素を増幅していく。これによってまた拮抗しだす。
「おい、今の間に転送準備が整った。フェイトを連れて撤退する。だが……」
「ええ、そうね。今なら……ルークもどきも殺れる」
「だ、駄目だよ! あの人は私達を庇って……」
「ごめんね、フェイト。生かして置いた方が厄介になるんだよ!」
駆け抜け、心臓を貫いて一気に転送。これで離脱する。それでいい。この世界がどうなろうと、別に構わない。いざとなれば切り札もある。
「駄目、そんなの絶対に駄目! 令呪を持って命ずる! この場から即座に私とこの仮面の人を連れて撤退して!!」
身体が瞬時に重くなる。でも、逆らえる。だけど、一歩移動するだけでそれは止まった。
「私に従って!!」
いや、連続使用された令呪により、身体が勝手に方向転換してフェイトの元まで戻る。
「ふむ。これは仕方無いな。この場は引こうではないか。何、彼はいずれ私達の仲間となるだろう」
「……ちっ、仕方無いわね。今日はフェイトを助けてくれた事に免じて引いてあげる」
「おいおい、好き勝手いいやがって……てめえらの後始末をしてやってるんだぞ」
「うむ。ご苦労だ。この礼はいずれしよう。さらばらだ」
「あ、ありがとうございました……」
「今度は決着をつける」
私達は転送でその場から撤退する。しかし、たかがジュエルシード1個でなんでこんな事になったのか……精神支配系は対策取られてるのか。でも、対策が自爆って何よ?
シュテルを使い捨てにするとか、エセルドレーダ……ナコト写本の主は正気なの?
「アレが気になっているようだな。その答えはおそらく簡単だ。シュテルを使い捨てにする事が可能なのは二通り存在する」
「一つは死んでも構わないという事よね?」
「そうだ。もう一つは我らも保険を入れているように、シュテルが死なない事だ」
「でも、それはありえない」
「忘れていないか? シュテルがどのような存在かという事を……」
「ああ、成程……えげつないわね」
「全くだ」
考えついた可能性。それは人としてかなり間違っている。だが、戦略的に見たらそれは確かに効果的だ。シュテル・スタークス。もしそうなら、転生者並に厄介で、やばい奴になる。
焔琉空
あーあ、貧乏くじを引いちまった。まあ、フェイトを死なす訳にも行かねえし、外の連中に迷惑かけるのもなんだか嫌だしな。俺はハーレムを作りたいんであって、殺し合いは嫌だし、無理矢理ってのも嫌だからな。
『ヒットポイントとテクニカルポイントが危ないわね。グミ系統もかなり使っているし……エリクサーも使いましょうか』
「まあ、一日で補充されるからいいけどよ」
『コントロールに集中しなさいよ。次元振動を起こす出力を出してるんだからね!』
「わかってるよ」
『少しミスっただけで、地球も何もかも消し飛ぶわ。やったじゃない。世界の運命は琉空の手の中よ』
「嫌だな。全く、劣化してると思うが、厄介だな……」
『全力だして消し飛ばすと、それはそれで問題だからね。それよりも、あのシュテルって子だけど……データが取れたわ』
「どんな感じだ?」
『あの子はリンカーコアの他に超高性能な魔導炉を体内に所有しているわ。この異常な魔力量はそのせいね』
「戦闘機人か……? いや、微妙に違うな。戦闘機人は魔力以外のエネルギーだからな」
『似たような感じかしら。どちらにしろ、非常に高度な技術で戦闘用にチューニングされているようね』
「そうか。しかし、なのはと同じ顔で、結構気に入っていた子を自分の手で殺すのは嫌だな……」
『それだけど、貴方なら彼女を使い捨てにする?』
「絶対にしねえな」
『高度な技術を持っていて、彼女を複製できるとしたら?』
「それでもしない。だって、記憶とかは別物だろう?」
『その記憶も直前に転送されていたら?』
「おい、まさか……」
『話してくれたプロジェクトフェイト。あれが本当の意味で完成していたらどうかしら? 完全なクローンを作り出す事が出来たら?』
「そんなのは不可能だろう。ましてや、生身で……そうか、そういう事か!」
『そう、あの子の身体は一部が戦闘機人と同じ機械で出来ている。おそらく、蘇ってくるわ。というか、そうじゃないといくらなんでもあんな簡単に自爆するかしら? これはまるで……』
「まるで……待てよ、今のシュテルの立ち位置からして……やられた!! くそっ、連中の目的はアレだ! 確証はねえが、多分そうなる!」
『そうでしょうね。始まるのは本当の戦い。そうなると……』
「おい、ちょっと待て、まずくないか?」
『あっ、遅かったようよ』
「こんにちは……いらない事を知った人の横にニコニコ這いよる混沌です」
『いらないことを知らなければもう少し長生きできたのにね。さようなら』
「ちぃぃぃっ!!」
『ええっ!!』
一か八かの超振動による共鳴を起こしてこちらも爆発を起こす。うまいこと行けば逃げられる。そうじゃないとここで終わりだな。