楽しい戦いをイクスの中から眺めているのだが、明らかに問題がある。
「自爆しましたね」
「仕方無いとはいえ、あいつらはコストという事を理解しているのだろうか?」
「してないかと。それよりもやはり連中は無事ですか」
「だろうな。対魔力EXは反則だぞ。物理攻撃で倒すしかないからな」
「なるほど。では、来た時は物理攻撃を中心に戦いましょう」
「そうだな。おっと、突入してきたか」
先の2人の自爆で3割程消し飛んだがまだまだ追加は存在する。今尚彼らに向けて戦力を突入させているが、彼らもジリ貧なのは理解出来ているようで、動きが有った。
「先程、生き残った4人がアースラに乗り込みましたね」
「何をする気だ?」
「分かりませんが、速度を上げて来ましたね」
どうやら時の庭園にアースラごと突撃してくるつもりのようだ。まあ、転移防止用の結界を展開しているからそれしか手段は無いんだが……本当にやるとは驚いた。
「奴等は正気か?」
「そうですか? 古代ベルカでは戦艦は突入用の兵器でしたよ」
「そ、そうなのか」
「はい。聖王も良くゆりかごで特攻してきましたし」
聖王様何してんの!
いや、ゆりかごの防御力は桁違いだけどさ!
流石は古代の戦闘民族だな。
そんな事を考えていると、時の庭園に衝撃が走った。どうやら、本当に突撃してきたようだ。妨害はしていいない。そっちの方が面白いからだ。
「傀儡兵を出します。何人来れるでしょうか?」
「さあな」
だが、俺達は舐めていた。真に恐ろしいのは主人公であると。そして、その主人公はシュテルによって既に覚醒しているという事に。
『フェイトちゃん、方向を教えて』
『うっ、うん。あっちの方角だよ。って、何やってるのなのは?』
『面倒だから一気に抜くの! 集え、星光! スターライトォォォブレイカァァァァァッ!!』
キャスターの姿をしたなのはは聖杯からの支援を受け、急速にチャージを完了させて放った膨大な魔力の砲撃は壁を貫き、こちらに迫ってくる。
「AMFを壁抜きですか……」
「化け物だな。流石管理局の白い悪魔」
そして、開けた穴から飛び出して来る5人。そう、5人だ。
「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンです。君達を広域次元犯罪の容疑で逮捕します! 大人しく投降してください! (何故敬語になってしまうんだ!?)」
追加はクロノだ。その他はなのはとフェイト、メルトリリスにさくらといった所だな。
「無駄だよ、クロノ」
「投降する気は無いみたいだね~」
「もちろん無いですよ」
イクスが玉座に座ったまま返事をする。完全に悪の女帝みたいな感じになっている。
「あの、なんでこんな事をしたんですか?」
なのはがこの後に及んでまだそんな事を聞いてくる。それに何故こんな事をしたなんて簡単だ。
「そうですね。自らを正義と名乗り、裏では悪を行い、自らの手を汚さずに利益だけを掠め取っていく時空管理局を叩き潰す為ですが、何か問題がありますか?」
「「え?」」
「巫山戯けないでくださいっ!! そんな事は有り得ません!」
「有り得ない事など有り得ないそうですよ。少なくともそこの2人は知っている事でしょう。管理局が裏で何をしているか。それによって生み出されたジェイルが何をしようとしているか」
「「っ!?」」
イクスの言葉に絶句する子供達。だが、やはりというか、3人の中でクロノは早めに立ち直った。
「出鱈目です! そんな事、信じません!」
「そうですか。では、どちらでも構いません。信じる信じないはご自由にどうぞ。私達は貴女達がそうであるように私達の信念を持って行動するだけです」
玉座から立ち上がったイクスは虚空から機械が埋め込まれた真紅の魔槍を取り出す。その槍には無数の御札が貼り付けられている。ゲイ・ボルグを魔改造に魔改造を加え、超小型の高出力魔導炉を柄に取り付けられている。丁度聖なるかなに出て来るユーフォリアが装備している悠久の色違いだな。
「くっ!?」
「そうですね。なら、後でお話を聞かせて貰います!」
「うん。お母さんの事も聞きたいから覚悟してください」
「5対1で悪いけど、勝たせてもらうよ」
「綺麗に溶かしてあげるからね」
しかし、普通は不利なんだろうな。転生者じゃないし、イクスは負ける。普通なら。
「構いません。むしろ、王たる私を相手にたった5人とは舐められたものです。炎王家の真の恐ろしさをその身に刻んで差し上げましょう。冥府の炎王、イクスヴェリア。参ります」
イクスが全身から膨大な熱量を発して、亜光速へと突入する。もはやそれは人間の対応できる速度ではない。だが、そんな速度に対応できる存在が相手にも居た。
「甘いのよ!」
メルトリリスだ。メルトリリスの足の鉄製の刺がイクスヴェリアの槍を受け止める。
「ジゼル!」
そして、そのままもう片方の足で攻撃を行うメルトリリス。それに対して柄を利用して弾くイクスヴェリア。そして、手から詠唱無しに炎の砲撃を放つ。
「くっ!? フェイト、なのはは援護っ!! クロノは私達の冷却して! さくらはセイバークラスのクラスカードで前衛!」
「「わかった!」」
「了解!」
「仕方無いな。このままでは燃やされるか」
メルトリリスが直ぐに指示を出して他の者達を活動させる。この間もメルトリリスとイクスヴェリアは激しい攻撃を打ち合っている。お互い体捌きは凄まじいがより凄いのはイクスヴェリアの方だ。古代ベルカの騎士達の動きを五体の完全操作で再現している。その動きに節操は無く、カイザーアーツからエレミアまで幅広く使っている。なのはの砲撃魔法は斬り裂き、フェイトのフォトンランサーは素手で弾き飛ばし、お返しに砲撃魔法の雨を返す。さくらがセイバーのジャンヌになっていなければ既に戦いは決まっていた。
「鬱陶しいのよ!! 行くわよ、行くわよ行くわよ行くわよ――!」
目にも留まらぬ速さで高速の乱舞を叩き込むが、イクスヴェリアはそれを冷静に槍で対処していく。そして、乱打が終わった時には自分からわざと吹き飛ばされて、地面をに着くと同時に槍で床を叩いて魔法を発動させる。
「炎獄よ、自ら動き王の敵を撃て。カイザーフェニックス」
魔法陣から生まれるのは膨大な熱量を持った灼熱の巨大な鳥。その姿は正にフェニックスやクトゥグアといった所だ。その炎に込められた熱量は8000℃を軽く超える。普通の人間なら近づくだけで不味い状況になる。
「悠久なる凍土、凍てつく棺のうちにて永遠の眠りを与えよ! 凍てつけ! エターナルコフィン!」
「くっ、弁財天五弦琵琶(サラスヴァティー・メルトアウト)!!」
クロノとメルトリリスが魔法と宝具を発動してどうにか止める。この時点でSランク魔法であるエターナルコフィンを使えるのは驚きだが、クロノだけならばいくらSランクとはいえ簡単に蒸発したが、メルトリリスの宝具も合わさって高出力のカイザーフェニックスを莫大な水蒸気を出しながら止める事に成功した。だが、それはイクスヴェリアを一瞬でも見逃す事になる。その隙を逃す程、イクスヴェリアは甘くない。故にイクスヴェリアは放つ。
「刺し穿つ神魔の槍(ガン・グニール)」
放たれた槍はメルトリリスの心臓を貫き、そのまま次の対象へと飛来してクロノの片腕を貫く。そして、それだけではまだ止まらない。事象を改変してさくらへとルートを変更。瞬時に襲いかかる。
「くっ!?」
さくらはなんとか弾く。続いてフェイトへと向かう。今度のそれは心臓への直通コースだ。
「マスターも同時に殺してあげますよ」
「駄目っ!!」
なのはがフェイトを押し倒し、なのはの片耳が吹き飛ぶ。
「まだまだです」
そして、再度狙いをフェイトを狙うガングニール。これはイクスヴェリアの完全操作とゲイ・ボルグの心臓を貫くという事象を改変する力。それを可能にする搭載された小型の高出力魔力炉から送られる大量の魔力量が可能にした概念兵装だ。故に止まらない。
「させるかぁあああああああああああああああああぁぁぁっっ!!!!!」
メルトリリスが心臓を貫かれたというのにフェイトの前に躍り出てガングニールをその身で受け止める。
「……侵食……」
メルトウイルスによってガングニールの機械部分が乗っ取られた。だが、イクスヴェリアの完全操作が無い限り問題は無い。何処にでも侵入してウイルスをバラ撒き吸収する最強のメルトウイルス。だが、それゆえに対策もある。
「がはっ!? くっ、やっぱりカウンタープログラム……」
「当然ですね」
「リリス、リリス! しっかりして!」
フェイトがメルトリリスに抱きついてその身体を支える。
「ふぇ、フェイト……ごめん、流石にもう無理ね。だからごめんね」
「な、なにを言って……」
「クロノ、全員を連れて撤退しなさい。こいつらの相手は私がするわ」
「馬鹿な、1人でできる訳がないだろ!」
「いいからこのままじゃ全滅よ! もう時間も無いのよ! 切り札を使うのにあんたらは邪魔なの!!」
「ま、まってリリス、嫌だよ! リリスが残るなら私も……」
メルトリリスがフェイトに拳を入れて気絶させた。そして、フェイトの甲の皮だけを引きちぎって、自分の髪の毛で止血してからさくらに渡す。
「さくら、2人を頼んだからね」
「うん……クラスカード、キャスター。破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)」
「むっ、結界の無力化がされましたか」
「転送!!」
メルトリリスを残して撤退した彼女達。
「それでどうする気ですか、サーヴァント」
「簡単よ。令呪を使うのよ!」
フェイトから引きちぎった令呪を使い、どろどろになっていくメルトリリスは液体になって周りを埋め尽くす津波とかす。
「ふむ。それで私を倒せるとでも……」
いや、どうやら狙いは違うようだ。時の庭園を埋め尽くしていくメルトリリスの液体は時の庭園を粉々に砕いていく。更には魔導炉の暴走まで引き起こす。
『マスター、そちらは危険です。撤退してください』
「だそうです。どうやら今回は私達の負けですね。それで、どうでしたか? この演目は」
「まあまあ楽しめたからいいかな。それに転生者のデータは取れた。一番厄介なメルトリリスを殺せたのならよしとする」
「そうですね。メルトウイルス……ディアーチェ達が奪われますからね。私達は炎を身にまとっていれば問題は無いですが」
『こちらの技術があっちに回るのは不味いですからね』
「レオン、下の配下は引かせますか?」
「必要ない。このまま継続させておけ。増援は無しでな」
『撤退の時間稼ぎは必要ですよ。それと新しい玩具も手に入れましたのでこれから楽しみましょう』
「そうだな」
俺達は粉々になって崩壊していく時の庭園に一つ呟いて帰還する。
「「バルス」」
そして、キーワードを入れられた時の庭園はメルトリリスの予想よりも早く崩壊し、破片が地球へと降り注いでいく。そんな中、アースラはなんとか脱出を完了していた。ジャンヌの巨龍に甘噛みされた状態でだが。
イクスヴェリアが弱い?
そんな事ないよ!
サイキョーだよ!
三王家が弱い訳ないよ。1000年以上生きているのは伊達ではありません。