高町なのは
レヴィちゃんにシュテルが休暇を取って旅に出た事を聞いた。それからダンジョン管理部で素材を換金して貰う。私達は未成年なので口座に振り込まれるの。月に一定額しか使用できなくて、お母さん達と一緒じゃないと大きい買い物はできません。
「今日の売り上げは35万円か。それなりにはなったわね」
「にゃはは、それなりって額じゃないよ」
「A級とか倒してたら仕方ないよ」
アリサちゃんにさくらちゃんがツッコミを入れて、すずかちゃんが教えてくれる。実際にこのクラスのを倒すと十数万円になる。もう口座のお金がおかしい事になってるよ。
「あっ、今日はお母さんのお手伝いをしないといけなかったんだったっ!?」
「お、怒られる! 超特急で戻らないといけないよ!」
「大変そうね」
慌てる私とさくらちゃんにアリサちゃんは他人事みたいに言ってくれる。他人事だけど。
「急いで戻った方がいいよね。飛行申請しておいたから飛んでも大丈夫だよ」
管理部で事務手続きをしていてくれたフェイトちゃんが飛行手続きまでしてくれたみたい。今は一定レベルの探索者なら空を自由に飛ぶ事ができるので申請をしないといけない法律ができたの。空を飛ぶ事はCから上の飛行系モンスターを100匹くらい倒したら飛べるようになるのでお手軽だよね。
「ありがとうフェイトちゃん、愛してる!」
「ボクもー」
「はうっ」
2人でお礼(?)を言って外に飛び出して空を飛ぶ。
「またねー」
「また明日~」
「はいはい」
「ばいばい」
全速力で空を駆け抜ける。当然、さくらちゃんと競争になる。飛行ルートは飛行機とかと合わないように決まっているので安心。それでもコントロールに失敗して突入してくる時があるらしいけど、その場合は救助を手伝うように義務化されている。空を飛べる探索者ならそれぐらいは普通にできるしね。
「よーし、全速力だよ!」
「負けないよ!」
時速数百キロを出して家に到着する。限界を開けて中に入ると凄くいい匂いがしてくる。
「「ただいま!」」
「あら、お帰りなさい。遅かったわね」
「ごめんなさい。さくらちゃんにも伝え忘れてたの」
「あらあら」
リビングから聞こえてくる声に私は靴を脱いでいく。
「なのは……お客さんみたいだよ」
「本当だ。私達と同じくらいの子かな?」
小さな知らない靴がある。
「お母さん、誰か来てるの?」
リビングに入ると信じられない子がお母さんと一緒に料理をしていた。
「そうなのよ。お母さん、街であってなのはと間違えちゃったわ。本当に良く似ているんだもの」
「そうですね」
「一瞬、実は知らない間にもう一人なのはの双子を産んでいたのかと思っちゃったわ」
「シュテル!?」
「なんでここに!?」
「なのはの事を知っていたから連れてきてみたの」
お母さんナイス! さくらちゃんは凄くなる警戒している。無理もないよね。敵だったんだから。
「どうしたの?」
『そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ。私達ブラックロッジは地球連邦と司法取引を行い、時空管理局に対する同盟契約を結びました。つまり、敵ではありません』
『いやいや』
『それでいいの!? 思いっきり地球を破壊しようとしてたよね!』
『何を言っているのかわかりませんが、そもそも私達は事前に管理局の事を地球連邦の方々にリークし、起こる事件の事を伝えておりました。それには私達の主であるレオンハルト様とそのご兄弟であるジェイル様の事も伝えた所、心良く承諾していただきました』
『絶対に技術供与とかしてるよね!』
『もちろんです。そもそも管理局が司法も立法も行政も行っているから駄目なのです。日本みたいに三権分立にすればよいものを……』
せ、政治の話になりだしたー! なのはにはわかりません!
「見つめ合ってどうしたのかしら?」
「いえ、何でもありません。それよりもケーキはこれでいいのですか?」
「ええ、上手よ。なのはより上手ね」
「うぐっ」
「にゃははは、なのはは食べるの専門だしねー」
「さくらちゃんだってそうでしょ!」
「いや、ボクは和菓子を作れるし?」
「裏切り者~~~!」
「練習すればなのはも直ぐにできますよ」
「ほ、本当……?」
「ええ」
うう、シュテルが優しい。むぐっ。さくらちゃんに桜餅を口に突っ込まれた。餡の甘さも控えめで美味しい。
『とりあえず、敵じゃなくなったって事でオッケー?』
『そうです。なのはもいいですか? 敵対したいならそれはそれで構いません。残念ですが……』
『そんな事ないよ!』
『良かったです。主に無理を言って許可を貰った甲斐がありました。こちらの事情をお教えしましょう』
シュテルはやっぱりいい子なんだね。レオンハルトさんもお姉ちゃんに化けてた時はすごく優しかったし……心根はいい人なんだね。管理局が悪いだけで!
『とりあえず、仲良くしよう。管理局が悪い組織だってわかったし』
『うん。一緒に闘おう』
『ええ』
でも、シュテルってレオンハルトさんの事すごく好きなんだね。レオンハルトさんの事ばかり言ってるし。他の子は割合としては少ない。
「なのは、最後の仕上げです。手伝ってください」
「任せて!」
シュテルと一緒に生クリームをケーキに塗って、飾りを乗せればケーキが完成する。
「うん、凄い才能ね。うちの味を完璧に再現しているわね」
「料理は得意です。それと少しまってくださいね」
シュテルがニードルを持って目を光らせたように見えた。するとすごい速さでホールケーキの上に可愛らしい猫の絵が書かれていく。それが終わればホールの端に乗せたクリームの塊まで猫にしてしまった。
「す、すごいわ! これは芸術よ!」
「こ、こんなの食べられないよ!」
「シュテル……」
「横にも書きましょう」
仲睦まじい猫の家族が横にも描かれていく。これ、もう人間技じゃないよ!
「さて、完成です。食べましょうか」
「勿体無いよ!」
「そうだよ!」
「そうね……ねえ、シュテルちゃんはこれから暇?」
「暇ではありません。日本での滞在先を探さねばなりませんから。一人ですが、温泉旅館にする予定ではありますが……」
そっか、シュテルって今は休暇でこっちに来ているだけなんだね。
「あら、じゃあ大丈夫ね。ここに泊まっていけばいいわ。温泉はないのだけど」
「「え?」」
「家のお手伝いをしてくれるだけでいいから。なのはと似ている貴方を放っておけないわ」
「ですが……」
「大丈夫。士郎さん達も私が説得しますから」
シュテルがこっちを見てくる。私、なのはの選択は決まっている。
「色々教えて欲しいから泊まって!」
「部屋はいっぱい空いてるから大丈夫だよ」
私は抱きついて、さくらちゃんも警戒を解いてなのはと一緒に抱きついた。逃がさないよ、シュテル。
「ではお世話になりましょうか」
「「「やった」」」
妹ができたみたいで嬉しいな。え? なのはが妹だろって? そこはさくらちゃんとも決まっていない戦いがあるように、譲れない一線なの。