スカリエッティの兄弟   作:ヴィヴィオ

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変わりゆく少女

 

『マスター、起床時刻です』

 

 念のため、ユニゾンして寝ていた状態で目を開ける。そこには士官学校の客室の天井が見えた。残念ながら知らない天井ではない。

 

「ん~~おはよう」

『おはようございます、マスター』

 

 体を起こして伸びをする。今日からは基本的にサポートを入れるつもりなので、表向きはできる限りソフィ・ラントを模倣する。だから、ベッドから出て身体を動かして身体を暖める。今の時刻は早朝4時なので外と部屋はまだ暗いが、エセルドレーダから送られる視界補正で問題無く見える。

 

「何時間寝ていた?」

『1時間ですね』

「充分だね」

 

 今の俺の身体は高性能であり、有り余る魔力を使って老化遅延や疲労回復、リジェネーションなどを常時かけている為、睡眠は30分もいらない。たまにまともに寝るくらいだ。

 

「空のカードリッジを出して」

『イエス、マスター』

 

 大きな箱に入った無数の弾丸が出現した。ひと箱に50ダース入っている。それも弾丸の種類別にだ。弾丸の大きさは様々だし、未来の為への貯金として大量にカードリッジを作っている。

 

「術式を展開。今日入れるのは雷属性」

『術式を展開。全カードリッジにアクセス。充填準備完了しました』

「では、魔力の充填を開始」

『イエス、マスター』

 

 膨大な魔力をカードリッジに収める。これでも俺の魔力はまだまだある。

 

「次にゴルンノヴァへと魔力を送る」

『イエス、マスター。遠隔コントロール完了。ゴルンノヴァの魔力貯蓄率97%……ゴルンノヴァを経由して研究所や惑星に送ります』

「頼む」

 

 人の領域を遥かに超えた魔力を転送してもまだまだ余っている。流石はマステリを遥かに超える存在も選択しただけある。

 

『完了しました。これでしばらく魔力不足は有りません。1日は持つでしょう』

「そう。じゃあ、運動してくる」

『ランニングですね。コースを設定します。重力による負荷はどの程度にしますか?』

「79倍」

『イエス、マスター。重力設定を79倍に設定します。次に痛覚遮断を行います……効果発動』

 

 エセルドレーダの言葉と同時に身体にかかる負荷が有り得ないくらいになる。床に叩きつけられ、身体が潰されたりする。だが、リジェネーションで直ぐに再生され、壊されたりというのが繰り返される。しばらくすると、壊れては再生される身体がより強靭になっていく。

 

『痛覚の遮断を解除します』

 

 痛覚が戻り、痛みが襲ってくるが耐えられるレベルだ。その痛みを我慢しながら起き上がって、歩いていく。魔力を使って戦えないなら身体で戦うのみだ。何時でもユニゾンできる子が居るとは限らないからな。

 

『マスター、頑張ってください!』

「うん……」

 

 エセルドレーダに応援されながら必死で歩き、身体が慣れだすと走っていく。数時間の訓練を行い、シャワーを浴びてご飯を食べる。その後、準備して移動する。重力は減らしてある程度動けるようにしておく。その状態で目的地にまで向かい、到着したら椅子に座る。まだ、時間まで一時間ある。

 

「クロソフィ、寝る」

『イエス、マスター。時間になれば起こします』

 

 目を閉じて回復に務める。身体は相当無理しているからな。

 

 

 

 

 

「この子がそう?」

「ええ、そうです」

「分かった。後はこっちで引き取るから、貴方はもういいわ」

「はっ」

 

 遠くで声が聞こえ、人が近づいてくる。

 

『マスター、クイント・ナカジマです』

 

 目を開けると、目の前にはポニーテールの紫髪の女性。それが俺を覗き込んでいた。

 

「こんにちは」

「こんにちは」

「私はクイント・ナカジマ。これから貴方の上司になるから、よろしくね」

「うん。よろしく。わたしはソフィ・ラント」

「じゃあ、早速移動しようか」

「わかった」

 

 自己紹介した後、転移で移動して家に案内された。

 

「ここが私の家よ」

「何故家?」

「寮に子供を1人で置いておくわけにはいかないからよ。それに今、私の部隊は女性って二人しかいないのよね」

「別に気にしない」

「駄目よ。それより、部屋に行くわよ」

 

 強制的に手を握られて連れていかれる。そして、案内された部屋にはもう1人居た。その人は部屋を掃除していたようだ。

 

「メガーヌ、ただいま」

「その子が言ってた子ね。はじめまして、私はメガーヌ・アルピーノ。よろしくね」

「よろしく……」

「掃除は終わった? 昨日からの突貫作業だったんだけど……」

「問題ないわ。ほら!」

 

 見せられた部屋はピンク色の壁に無数のぬいぐるみが置かれた少女チックな部屋だった。

 

「チェンジで」

「何故に!?」

「いや、私でもこれは嫌よ。13歳なんだから……」

「えー可愛いのに……」

『黒がいいです、黒が』

(それもどうかと思うが……)

『ガーン』

 

 落ち込んだエセルドレーダを放っておいて、取り敢えず壁紙を外しにかかる。クイントがバリバリ破いていくので問題無く処理できた。

 

「うちの子は喜んでくれると思うんだけどねー」

「あんたのとこは生まれたばかりでしょう……」

「可愛い子に育てるんだー」

「はいはい。ところでラントの荷物は?」

「ソフィでいい。荷物はこれだけ」

 

 運動用のジャージとシャツとズボンだけ。

 

「少なっ!?」

「次元漂流者という奴だっけ?」

「そう。記憶もない。だから、施設でこちらの知識を最低限覚えただけ」

「戦い方は覚えているのよね?」

「古代ベルカ式といわれるものなら……」

「成程。私達は近代ベルカ式だから確かにいいね」

 

 好都合だから記憶がない次元漂流者という事にしてある。救助されたのは1年前でその間に知識を貰ったという設定だ。これは公式で認められている。

 

「それじゃあ、買い物ね」

「可愛い服を買わないといけないしね」

「いらない。バリアジャケットで平気」

「駄目よ」

「駄目ね」

「……拒否する」

「「上司命令」」

「……」

 

 二人に強制的に着せ替え人形にされる事が決定した。これは完全トレースした方が楽かもしれない。

 

「ああ、それと私はクイントでいいわよ」

「じゃあ、私もメガーヌでいいからね」

 

 むぎゅっとメガーヌに抱きしめられた。髪の色も似ているから娘みたいに思われているのかも知れない。だが、これは好都合でもある。未来への布石として。

 

「わかった。クイント、メガーヌ、よろしく」

「ええ、よろしく」

「よろしくね。それじゃあ、早速買い物に行きましょう。お金はあるのかな? ないならお姉さんが出してあげるけど?」

「お金はある。支給されている」

 

 面倒なのでカードを渡す。

 

「嘘っ、何この額……」

「どれどれ……うわ、すごっ!! 流石は魔力量がAAAクラスの空戦魔導師候補ね……」

「レアスキルも持ってるからだろうけど、私達よりは少ないけど、この年齢の頃は圧倒的に貰ってるよ」

「でも、この額じゃ問題無い。よし、買い物に行くわよ!」

「ええ」

「お、お手柔らかに……」

 

 それから拉致されて強制買い物イベント、もとい着せ替えイベントが発生した。この時、俺はエセルドレーダに言った事は一つだ。

 

(トレース、オン)

『イエス、マスター』

 

 元が存在しないゲームキャラクターの為に俺の記憶通りになるが、それでも今よりはましだ。マルチタスクの一つをソフィとしての人格として割り当て、隔離する。これにより、少なくとも被害を抑えられる。その間にひたすら技術の開発に入る。

 

「ゴスロリも似合うわね」

「次はこっちからしら……」

 

 結局、買ったのはミク衣装とゴスロリ衣装とアニス衣装だった。基本的にミク衣装になると思う。

 

 

 

 

 ゼスト隊に配属されてから数ヶ月。シューティングアーツもほぼ覚えて、メガーヌとクイントと共まともに戦えるようになった。もちろん、シューティングアーツのみなら確実に負けるが。ちなみにゼスト隊ではマスコット扱いされている。

 

「随分強くなったわね」

「本当に天才っているのね。数ヶ月で追いつかれるとか……やってらんないわ」

「でも、古代ベルカ式は完全に戦闘特化だし仕方無いよ」

「クイント、メガーヌ。お願いがある」

「何?」

「できる事なら叶えてあげるわよ?」

「管理局に居るクロノ・ハラオウンと戦ってみたい。確か年も近いはず」

「誰だっけ?」

「確か空に居る人ね。まあ、聞いてみましょうか。確かに空戦も経験させた方が良いしね」

「ありがとう」

 

 予定通り、クロノと戦える。その後、リンディ、エイミィと接触。それと並行して別の手段で確保する。

 

 

 お願いから一ヶ月後、問題無くクロノとの模擬戦が決まった。なので、私は本局へ移動して模擬戦の会場に居る。お供はクイントだけだ。

 

「いやー助かったよ。クロスケの相手をできる子ってあんまり居ないんだよね」

「こちらこそ無理を言ってごめんね」

 

 向こうはネコがセコンドについている。保護者の会話は置いておいて、俺はクロノを見つめる。

 

「空戦の経験はないんだったね」

「ない。だから、陸戦、空戦、両方の3本勝負」

「わかった。だけど、女だからって手加減しないからな」

「平気。むしろ、手加減したら直ぐに終わる」

「面白い、その口が本物か見せて貰おうか」

 

 俺とクロノはお互いに対峙して構えを取る。

 

「二人共用意がいいみたいだね、始め!」

「行くぞ!」

 

 クロノは即座に下がりながら魔法弾を放とうとしてくる。それに対してこちらは単純だ。

 

「行く。カラミティ」

 

 自身に大量の魔力を纏わせて爆発的な速度で突撃する。放たれる魔法弾は全て身に纏った膨大な魔力で形成さられた攻勢障壁によって消される。

 

「クロスケ、避けろ!!」

「っ!? 速っ!!」

 

 瞬時に接近して突き飛ばす。だが、さすがというか、障壁を展開して後ろに飛んでうまいこと防いでいる。だから次を放つ。

 

「逃がさない!」

 

 ライオンの顔に形作られた魔力がクロノに襲いかかる。そう、獅子戦吼を放った。

 

「くっ!?」

 

 吹き飛ばされ、獅子戦吼に襲われたクロノが落ちてくる。

 

「双月、双竜脚、鷹爪襲撃、霊子障断、三散!」

 

 落ちてきた所に三日月を描くサマーソルトを二回繰り出し、さらに空中に上げて自身も飛んで素早く二回蹴り、上下に蹴り上げて、落ちていく所に光を纏い高速で移動してクロノの下に追いつき、叩き上げて壁を利用して乱打を決める。最後に三連続で殴りあげ、自分もジャンプして頭の髪の毛を掴んで床に叩きつける。

 

「がはっ!?」

「す、ストップ!! 死ぬ、死んじゃうから!」

 

 メガーヌの声で頭を地面に叩きつける事をやめて蹴りを頭部に入れて吹き飛ばす。この時、掴んでいたクロノの髪の毛がちぎれた。そのまま手をポケットに入れてクロノの様子を見る。完全に伸びている。出血もかなりあり、体が壁にめり込んでいる。

 

「ソフィ、やり過ぎ! 私達が相手じゃないんだからね!」

「……忘れてた」

『ここまで弱かったとは……いえ、マスターが強いのですね』

「おーい、クロスケ、生きてるかー?」

 

 生きてはいるだろうけど、これはかなりまずそうだ。仕方無い、再生術を使ってやるか。

 

「何してるの?」

「治す」

 

 詠唱を行い、レイズソウルを発動する。すると急激にクロノの傷が治ってくる。これで死ぬ事もなくなった。

 

「これはクロノの負けだから、残りは後日って事になるかな?」

「それなら、アースラに行きたい。いい?」

「ん~こっちは別に大丈夫ね。確かに訓練期間はともかく実力は充分だし、空で空戦を勉強した方がいいわね。そっちは任せて。元から早くしろってせっつかれてたし」

「わかった」

「それと部屋はそのままにしておくから、何時でも帰ってきなさい」

「わかった」

 

 これでアースラのクルー情報も手に入る。

 それから、クロノと一緒に2年ほど一緒に居てアースラもしっかりと調べてから本拠地に帰還した。既にドクターは戦闘機人の作成に入ったとの連絡もあったし、こちらも本格的に動く。こちらの手駒は色々あるが、先ずはシノンとイクスヴェリア、ディアーチェ、シュテル、レヴィ達だ。俺とエセルドレーダは本来の姿で出る気はない。ディアーチェ、シュテル、レヴィは嘱託魔導師として登録させた。細工は流流仕上げを御覧じろってところか?

 まあ、楽しみに見ているといいさ、転生者共。

 

 

 

 

 

 

 

 

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