時を操る狐面の少女が鬼殺隊で柱を超えたそうですよ   作:たったかたん

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胡蝶カナエを胡蝶カナヲと書いていた事が恥ずかしすぎてもうなにが言いたいかっていうと報告してくれて本当にありがとうございます…



原作合流回


原作合流編
柱合裁判


 

深夜、月明かりが雲に隠れて一寸先は闇になっている山の中、雫は昼に鴉から受け取った鱗滝の手紙の内容を思い出していた。

 

 

【魁大竹雫殿

 

鬼になった妹を連れた竈門炭治郎という子が義勇と錆兎の案内で儂のところに弟子入りし、今回の最終選別を合格して鬼殺隊となった。

 

修業の約一年半、妹は人を食ってはおらず昏睡状態にあったが目覚めた後炭治郎とともに行動している。

儂が出会った時目の前にあった人肉にも食らいつかず我慢していた為、強靭な理性があると思われる。

 

魁として多忙なのは重々承知しているが、炭治郎が鬼の妹を連れた事実はいつか気づかれ、柱合裁判にかけられる事になるはずだ。

 

もし、炭治郎と会うことがあれば少しでいい、助けてやってほしい】

 

 

「…鱗滝さんがそこまで言うのなら、その妹さんは他の鬼とは何か違うということですね」

 

信じられない話ではあるが、元柱である鱗滝さんがそこまで言うのは説得力があったし、信頼出来る。

 

 

魁になって九年目を迎えたが、仕事内容は多忙を極め、柱達の実力が安定して来たのもあって魁稽古などの仕事が無くなった代わりに、単独で上弦の鬼と鬼舞辻の情報を求めて日本の端から端へと長期的な出張任務をする中、今回は四国地方を探索しているところだった。

 

 

そして今登っている山は十二鬼月がいるかもしれないとの情報が入った為、訪れた次第だった。

 

(もし十二鬼月だったら上弦の肆以来になりますね)

 

そう思っていると、鬼の気配が急に周りを囲むように現れた。まるでそこの空間から出て来たかのように。

 

 

(…!?…なにが!)

 

 

その瞬間、四方八方から気配が急接近してくるのを回避しながら《瞬き》で頸を斬ると、まるで上弦の肆を思い出させるかのように頸を再生させる鬼達の姿が月明かりで照らされるのが見える。

 

 

「へへへ、本当に見えない、感じない。でも、怖くない。お前を殺せばあの方から血を貰える!!」

 

「儂の獲物だ!儂が先に殺す!」

 

鬼達がそう言い放つのを聞き流しつつ、雫は上弦の肆以来になる臨戦態勢に入る。

 

目の前にいる鬼は四体、その全てが単純に頸を斬っても死なない鬼達だ。

 

(明らかに私を意識した血鬼術。わざわざ集めたのか?長期戦狙いか、情報を集めるためか…。あの方というのは鬼舞辻?)

 

しかし鬼達が様々な血鬼術を使って来た。

 

一体は瘴気のような物を操り、一体は炎を操り、一体は土を操り、一体は硫酸のような液体を操った。

 

 

「!!」

 

 

雫は狐面の中で目を見開いて驚いた。

頸を斬って死なない様な血鬼術を持った鬼を集めたのだと思っていたからだ。

 

 

(頸を斬って死なないのは、裏で別の血鬼術が働いている?)

 

 

瘴気を吸えば肺がやられ、そこに気を取られれば様々な方向から血鬼術が飛んでくるが、それを最小限の動きで躱しながら何度も頸を刎ねる。

 

 

(動きがなぜか鈍い、水の呼吸のみで対応できる強さで良かった。でもこのまま朝までやるのも時間をかけすぎですし)

 

 

そこで選択肢の中に《弐ノ段 流ノ雫》が有力になって来る。この技であれば再生する肉片自体が欠片も残らないからだ。

 

(体力は有り余ってますし、今なら使っても十分余裕があるはず)

 

そう考えながら纏まって攻めて来た瞬間、《瞬き》で鬼達を見下ろせる上へと跳躍すると、そのまま技を放つ。

 

《時の呼吸 弐ノ段 流ノ雫》

 

時の流れが鈍間な世界で青紫色の水を纏った刀を高速で振るった斬撃は一滴の雫となって鬼達の真ん中に波紋を作ると、その刹那肉片も残さず地面をえぐる様に鬼達を消滅させる。

 

もしここから再生すると言っても、この鬼達の再生速度なら朝になるまで肉体として機能するまでにはならないはずだ。

 

その後反動で咳をしながらも追加の鬼が現れる気配もない事を確認し、鬼達がいた場所に陽が当たる様周りの木を斬ってトドメが刺せる様にした。

 

(急に現れた鬼、頸を斬っても死なず、まるで何かに操られている様な動き。)

 

明確な自分自身に対しての組織的襲撃。様々な考察をしながらも、鴉に簡単な報告と残りの探索場所が終わり次第帰還することを産屋敷へ伝えさせる。

 

「…今回の襲撃、鬼舞辻以外に裏で糸を引く鬼がいたのであれば、もしかしたら厄介な血鬼術かもしれませんね」

 

そう呟く頃には、東の山から太陽が覗き始めていた。

 

これは炭治郎が柱合裁判にかけられる一ヶ月前の話。

 

 

 

 

----

 

 

 

 

身体中から様々な痛みが襲ってくる中、炭治郎は駆けていた。

 

目が覚めると柱という階級の人達に囲まれ、必死に事情を説明しているところに急に現れた不死川という人物が禰豆子が入っている箱に日輪刀を突き刺したからだ。

 

「俺の妹を傷つける奴は柱だろうが何だろうが許さない!」

 

腕を縛られて無謀だとわかっていても妹を刺されたという怒りで身体中の痛みを押さえつけながら、明らかに強者の匂いがする不死川に頭から突っ込んでいく。

 

「ハハハハ!そうかい良かったなァ」

 

不死川が躊躇なく日輪刀を振るってきた時、兄弟子の錆兎が叫んだ。

 

「やめろ!もうすぐお館様がくる!」

 

その瞬間気を取られたのかただの頭突きになってした攻撃をぎりぎりで躱したその隙に禰豆子がいる箱を奪い取るとこちらを睨む不死川に向かって大声で言い放った。

 

「善良な鬼と悪い鬼の区別もつかないなら、柱なんてやめてしまえ!」

 

「てめェ、ぶっ殺す!」

 

その瞬間屋敷の方から子供の声が聞こえた。

 

「お館様のお成りです」

 

ふとそちらを見ると顔の上半分があざだらけのようになっている男性が立っていた。

 

「よく来たね、私の可愛い剣士たち」

 

その男性は目が見えていないのか手を子供達に支えながら歩いてくる。

 

「お早う皆、今日はとてもいい天気だね。空は蒼いのかな?顔ぶれが変わらずに半年に一度の柱合会議を迎えられたこと、嬉しく思うよ」

 

 

(傷、いや病気か?この人がお館様?)

 

そう考えて見ていると頭を地面へ叩きつけられる。

 

全く反応できなかったとすぐに抵抗しようとした瞬間、柱全員が膝をついている光景が見えると、知性があるのかすら疑わしかった不死川が理性のある言葉で挨拶を述べた。

 

「お館様におかれましても、ご壮健でなりよりです。益々のご多幸を切にお祈り申し上げます」

 

「ありがとう実弥」

 

不死川が挨拶を述べた後、いかにも納得いかないという雰囲気を醸し出しながら自分と禰豆子の説明を求めるとお館様と言われた男性が容認し、みんなにも認めてもらいたいというと、様々な柱達から反対の意見が上がる。

 

柱全員の意見を聞いた後、まるでわかっていたかのような表情をすると、子供に手紙を読ませ始めた。

 

元柱である鱗滝さんからの手紙であることを言い、一部抜粋して読み始めたものは驚きの内容だった。

 

 

 

 

【炭治郎が鬼の妹とともにあることをどうか御許しください。

 

禰豆子は強靭な精神力で人としての理性を保っています。

 

飢餓状態であっても人を食わず、そのまま二年以上の歳月が経過致しました。

 

俄かには信じ難い状況ですが紛れもない事実です。

 

もしも禰豆子が人に襲いかかった場合は竈門炭治郎及び、鱗滝錆兎、冨岡義勇、鱗滝左近次が腹を切ってお詫び致します】

 

 

自分と禰豆子の為に、自分を鬼と戦えるまでに強くしてくれた鱗滝さん。そして鬼になった禰豆子を殺さずに鬼殺隊という道標を示してくれた兄弟子達が命をかけていると言う事実に、思わず涙が溢れる。

 

しばしの間を置いた後不死川と炎柱が口を開く。

 

「…切腹するからなんだと言うのか、死にたいなら勝手に死に腐れよ。なんの保証にもなりません」

 

「不死川の言う通りです!人を喰い殺せば取り返しがつかない!殺された人は戻らない!」

 

 

また振り出しに戻るのかと思ったその瞬間、透き通った声が耳に届く。

 

 

 

 

「なら、私の命もかけましょう」

 

 

 

「「「「!!?」」」」

 

 

 

たった一言。それだけで柱達から動揺の匂いが強くなる。

 

そこにいた全員が一斉に声をしたところを見ると、雫羽織をつけた狐面の女性が立っていた。

 

そこは自分の所からさほど離れてもいないのに、いつの間に来たのかすらわからないことに驚きが隠せない。

 

(あの狐面、鱗滝さんのものに似ている?柱の人か?でもこの人、今自分の命もかけるって…)

 

「遠出の任務からわざわざ急いで来てくれてありがとう雫。元気そうで何よりだ」

 

「それはどうも。元気そうで何よりはこちらの台詞ですけどね、産屋敷様」

 

 

女性とお館様が簡単な挨拶をして終わると焦った声が響いた。

 

「雫様!それはあまりにも無謀です!」

 

今まで中立的な立場にいた胡蝶しのぶが焦りながらそう叫んでいた。

 

雫様と言われた女性は静かに話し始める。

 

「およそ一ヶ月前、炭治郎と禰豆子の事を鱗滝さんから聞いていました。そして私は容認していた。ならば、責任を取るのは必然ですよ、しのぶ」

 

「雫様、貴方は代わりがきかない。そう簡単に命をかけてもらっては困る」

 

そういうと不死川が焦った表情しながらそう話すと雫様は提案をした。

 

「なら、禰豆子が人を食わないと証明ができればいいのかな?」

 

その瞬間、狐面の女性が自分の目の前に立っていた。

 

「!?」

 

瞬きもしていないのに気づけば立っていた。動いた空気の乱れも音もしない事に驚きを隠せない。

 

(な、何もわからなかった。何をしたんだ)

 

すると優しい声で妹さんを少し預かりますねというと箱を持って屋敷の方へと上がり、自身の腕を切ったかと思うと禰豆子の箱を優しく開け放つ。

 

自分でも禰豆子は人を喰わないと言ってきているが、今は刀で刺され、目の前に血が流れる人肉があるこの状況は非常に不安になっていた。

 

それは柱達も同様に、心配や動揺と言った匂いが入り乱れているのを感じつつ、冷や汗をかきながら眺めていると、ゆっくりと出てきた禰豆子は息を荒げながら血が出た腕の凝視はしたものの、我慢してみせた。

 

 

「……これで証明は出来たかな?不死川?」

 

 

そう話しかけられた不死川は信じられないという顔をしながらしばらくした後、静かにわかりましたと返事をした。

 

その後、お館様が雫が来た事だし、いいかなと言うともう一つの重大な事実を告げた。

 

「炭治郎と禰豆子を容認している理由は、鬼舞辻無惨と遭遇しているからだよ」

 

その瞬間柱達から驚きの声と追及の声が上がるが、お館様が人差し指を口に当てるとすぐに静まり返る。

 

「鬼舞辻はね、炭治郎に向けて追手を放っているんだよ。その理由は単なる口封じかもしれないが、私は初めて鬼舞辻が見せた尻尾を掴んで離したくない。恐らく禰豆子にも鬼舞辻にとって予想外の何かが起きているんだと思うんだ」

 

それにと言葉を挟んで続けた。

 

「もし潜伏場所が分かれば、柱の皆と雫が必ず鬼舞辻を倒す」

 

最初反対をする匂いに包まれていた柱達からその名が出た瞬間、納得する匂いがし始める感じ、雫という人が柱達よりも立場が上なのではと思い始める。

 

(雫様と言う人は、それほどの人物ということなのか?)

 

そう驚きが隠せないでいると、お館様から名を呼ばれる。

 

 

「炭治郎、それでもまだ禰豆子の事を快く思わない者もいるだろう」

 

 

はっとしながら不死川に掴まれていた頭を必死に剥がして姿勢を整え頭を垂れると、フワフワするような声で自分と禰豆子が鬼殺隊として役に立てることを証明するために十二鬼月を倒しておいでと言ってきた。

 

 

「俺と、俺と禰豆子が必ず!悲しみを断ち切る刃を振るう!」

 

 

そう叫ぶと、満足したように小さく頷くき、続けてこう言った。

 

 

「鬼殺隊の柱達は当然抜きん出た才能がある。血を吐くような鍛錬で自らを叩き上げ、死線をくぐり、十二鬼月も倒している。だから柱は優遇され、尊敬されるんだ。

そして炭治郎、君と禰豆子には鬼殺隊最上位の魁、雫の命がかかることになった。

これは炭治郎が思うよりも重大な事だと自覚してほしい」

 

 

「…は、はい」

 

 

自分が苦戦した十二鬼月を倒している強さと言うのは、先の戦闘で錆兎を見て実感している。

 

その錆兎がいる柱よりも上の魁と言う強さが想像できないと思いつつも、蝶屋敷という所に治療の為連れて行かれるのであった。

 

 

 

 

ーーーー

 

 

 

(命をかけました。多分少し手助けどころではないかもしれません鱗滝さん…)

 

炭治郎が連れて行かれ、何か叫んでいるのが聞こえなくなった頃、そう思いながらも腕の傷を呼吸で簡単に止血しながら、雫はもはや定位置になった産屋敷の左手側に離れて座ると話を切り出した。

 

「会議の前に、報告があります。産屋敷様」

 

「何かな?」

 

「既に報告はしてある今任務で回った四国にての鬼の群れとの遭遇、あれは私を意識した組織的な襲撃でした。

元を辿れば鬼舞辻無惨だというのは確かだと思うのですが、もしかしたら鬼を強さを代償に頸を斬っても死なない様にする血鬼術を持った鬼がいる可能性があります」

 

 

今回の戦闘を頭の片隅で思い出せば、その疑惑は確信に迫ってくる。

 

(あれは私に対しての実験的な戦闘と見て間違いない)

 

その報告に対して産屋敷は少し間を置くと微笑みながら口を開いた。

 

 

「…詳細な報告と考察、ありがとう。鬼舞辻無惨は君のことを相当な脅威だと判断したみたいだね」

 

でも心配はいらないと言うと、こちらを見上げている柱達の方に顔を向ける。

 

「雫の稽古もあって現柱の実力は柱2人分の実力を全員が持っていると言っていいほどに強くなった。必ず、私の代でこの憎しみと悲しみの輪廻を断ち切ることができると、信じている」

 

その言葉で嬉しそうだが一層真面目な顔になった柱達を精神だけ中年になった雫は微笑ましく感じながら、そうですねと返事をすると、ここ数年顔ぶれが変わらない柱合会議を始めるのだった。

 

 

 




ちなみに錆兎の継子として義勇と真菰がいます。


原作合流したので宣言通り今まで載せた話を一旦見直します。内容が少しだけ変わる物もあれば新しく追加されたりする話もあるかもしれませんので、いつになるかわかりませんが、更新はお待ち下さい。



前半と後半で作風を変えたりしています。原作合流編あたりからの作風に統一しようかと思います。

  • 統一した方が良い
  • 別に気にしない
  • 前半のようなほのぼの要素も欲しい

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