時を操る狐面の少女が鬼殺隊で柱を超えたそうですよ 作:たったかたん
投稿遅れてしまいました。
ある程度の流れを細かく考えていたら気づけば一週間過ぎてました申し訳ないです。
奴は明らかに突出している。
姿は見えず、感じることもできず、斬られた感触でさえも分からず、斬られた鬼は痛みも感じることすらない。
数々の呼吸を極めた歴代の柱達が霞んで見えてしまうその存在は、始まりの呼吸の剣士の生まれ変わりのようにさえ感じる。
「奈落よ、貴様の血鬼術は奴に対してどの程度有効か?」
襖や畳の間が上下左右関係なく混ざり合い、重力を無視したかのように無造作に作り上げられた世界で、血塗れの床の上で頭を垂れている白髪を生やした老いた鬼へと問いを投げかける。
「今回の鬼達での戦闘、やはり彼女には質よりも量で攻めた方が有効だと確信します。
わざわざ負けると分かっている上弦を当てる事は愚策でしょう」
西洋の服を着たその鬼は頬が上がるのを堪えきれないようににやけながらそう話す。
単体では最弱であれど、血鬼術は鬼の中でも凶悪で特異な能力を持った鬼だ。
「貴様の血鬼術は使い勝手もそれによる利も良い。
実験とやらは進んでいるか?」
実験という言葉を聞いた瞬間、よくぞ聞いてくれたと言う歓喜の感情が伝わってくる。
鬼の頬が更に上がる。まるで大好きな事に関して聞かれた子供のように、嬉しそうに。
「ここ30年かけて集めた素材は既に満足するほどに。
それに下弦達の体も頂けるとは、これだけ揃えば狐の女も私の血鬼術の前には苦戦するでしょう」
その返事を聞いて自分の頬が上がるのを感じた。
「貴様には期待している。より一層励め」
その後、琵琶の音と共に鬼がいなくなったのを眺めた鬼舞辻は確かな確信を得る。
(奈落の能力があれば、少なくとも奴は私の元へ来れない)
唯一気になる点と言えば、狐面が日の呼吸を使っていないと言う事実。
しかしそれはそれで良い。
蒼い彼岸花が見つかるまで、太陽を克服さえすれば、恐ろしいものなど何一つとして無くなるのだから。
(それまでは、邪魔などさせるものか)
ーーーーー
「炭治郎、雫様に会ったんだね」
まるで小鳥の囀りのような可愛い声が聞こえる場所は蝶屋敷、胡蝶しのぶの屋敷の縁側だ。
怪我を治すために連れてこられ、療養していると見舞いに来てくれた姉弟子の真菰がそう聞いてきた。
真菰は誰がみても可愛いと言うだろう。
真菰は目がパッチリしている事もあり、大人の雰囲気になっても子供のような可愛らしさを持った女性だ。
そしてどうやら蝶屋敷には美人さんが集まるようで、胡蝶しのぶの姉のカナエさんと言う人も恐ろしく綺麗な人だった。
現に善逸が真菰やカナエさんを見た時は「大人の魅力の中に隠しきれない愛おしさがぁ!?いやダメだ!俺には禰豆子ちゃんが!ああでも!カナエさんの大人の魅力もぉ!!」と叫ぶほどだ。
「はい!裁判の時は助けてもらいました!」
そう言うと良かったねと微笑む真菰を見て、一番気になっていた事を聞く事にする。
「…真菰さん、魁の雫様って人は、どんな方なんですか?」
そう聞くと少しも迷わずに真菰は言った。
「雫様はね、柱何人分と言っていいのか分からないくらいとても強いよ。
でもね、それを忘れてしまうくらい優しい人」
「…優しいのは助けてもらいましたし分かるんですけど、そんなに強い人なんですか?」
柱が錆兎さんを基準とするなら、その更に上の強さを想像することができないからこその疑問だ。
「柱全員との手合わせ稽古でも傷を負ったところは見たことないし、入隊して一年くらいで百年余り倒せなかった上弦の鬼を圧倒する程だったみたいだから、今はもっと強いんじゃないかな?」
「え?」
言ってることがぶっ飛び過ぎて思わず聞き返してしまう。
(柱……全員……一年目で上弦?)
想像ができずどう言うことだろうと更に謎が謎を呼んで混乱していると真菰が微笑む。
「味方になってくれて良かったね、炭治郎」
炭治郎は深く考える事をやめることにする。
だが雫様と言う人は会議の時、あまり匂いを感じなかった。
もちろん人としての匂いはあったが、強さと言った匂いが無臭と言っていいほどに無かったのだ。
しかし、ただ実力のないものと同じかといえばそうではなく、山で綺麗に磨かれた水の透き通るような匂いがしており、でもその中にもかすかに
(あれは……)
ふと似たような雰囲気を持っていた父親の記憶が蘇る。
(でも、それとはまた違う…)
その時、廊下の奥から聞き覚えのある声が聞こえた。
「ここにいましたか真菰」
噂をすればなんとやら。
振り返るとそこには、狐面を被った大竹雫が立っていた。
すると自分のことを今認識したかのようなそぶりを見せながら雫は自分にも挨拶をしてくる。
「こんにちは炭治郎。元気そうで何よりです」
縁側に出していた足を上げ、慌てて姿勢を正して頭を下げる。
「は、はい!会議の時はありがとうございました!」
「気にしないでいいですよ。私がそうしたのは鱗滝さんや錆兎達があなたに命をかけるほどのものがあると教えてくれたからです」
その言葉を聞いて、炭治郎は雫から溢れ出るほどの信頼する匂いを感じた。
(…この人は、心の底から鱗滝さん達を信じて全く疑っていない)
見も知らぬ鬼を連れた自分に対して命をかけるなど、側からみれば愚かで何を考えているのかとなるだろうに。
そんなことを想像すると自分の兄妹を信じてくれる人達に、感謝しても感謝しきれない。
きっとこれは一生かけても返しきれない恩になるだろう。
「…ありがとうございます」
話に区切りがついたところに先に名を呼ばれていた真菰が雫に話しかけた。
「雫様私になにか御用ですか?」
「ああ、少し前に約束していた稽古をしようかと思ってね」
そう言うと今思い出したような顔をした瞬間、可愛いぱっちりとした目が輝き、微笑んだ。
「雫様が殆ど屋敷にいないほど忙しかったのですっかり忘れていました。雫様と稽古なんて一年ぶりだから嬉しいです」
「では、私の屋敷でやりますか?」
その言葉を聞いた真菰はこちらをチラッとみてある提案をした。
「……でしたら、ここの…蝶屋敷の中庭でお願いします」
それは機能回復訓練を始める前日の出来事だった。
ーーーー
夜。
炭治郎は屋根の上で1人座禅を組んでいた。
(よし、かなり体力が戻ってきた。
そして以前よりも走れるし、肺も強くなってきたぞ、いい感じだ、焦るな。)
全集中・常中を会得するため日々日課になってきている瞑想。
(はやく、強くならなければ。でも焦ったらダメだ。
才能なんてものは俺にはない。少しずつ、それでいて急げ)
集中する中、炭治郎はあの日のことを思い出す。
雫の強者としての片鱗を目の当たりにしたあの日のことを。
蝶屋敷の中庭では稽古用の真剣が弾き合う音が鳴り響いていた。
「すごい…」
少し離れれば聞き取れないほど小さな声で、炭治郎は呟いた。
先程雫が真菰を訪れてきて、真菰の計らいで稽古を目の前でしてくれることになったからだ。
そして目の前に繰り広げられる稽古は、自分が知っている稽古とは次元が違っていた。
「腕をあげましたね真菰。型の練度が更に一段上がってるように見えます」
「ありがとうございます。でもそれを余裕を持って受ける雫様も雫様ですけどね」
この会話をしている間にも型が両者合わせて少なくとも五つは繰り出されていた。
真菰は動きが恐ろしく素早く、ほぼ目で追えない。
その速さは鋭い水の型を一度息をするまでの間に三つの型を連続で繰り出す事ができるほどで、最早何の型を使ったのかすら認識するのにもギリギリついていくのがやっとだった。
修行している時、大岩で苦しんでいた時にたまたま鱗滝さんに会いにきていた真菰に呼吸の詳しい事や手合わせ稽古をつけてもらっていたからこそ、錆兎とはまた違った強さ、鱗滝さん曰く柱になってもおかしくない実力と言うものを知っていた。
(でも、雫様のは…あれは一体どうやって)
一番気になっていた雫の実力。
それは柱に匹敵すると言われた真菰の怒涛の攻めを、まるで強い雨風が吹き荒れている中、雫の周りだけ凪のように静謐で、川を流れる水のように最小限の動きのみで捌ききっており、もはやその動きはゆっくりにすら感じるほどだった。
(雫様は、斬っても叩いても何もなかったかのように戻り、どんな隙間をも色々な形になって通り抜けていく…まるで水そのもののようだ…)
『水はどんな形にもなれる。升に入れば四角、瓶に入れば丸く。時には岩すら砕いてどこまでも流れていく』
ふと鱗滝さんから聞いた水の話を思い出す。
(聞いていた言葉の意味を、今目の前で教えられてる気分だ…)
真菰と雫様との手合わせ稽古でありながらも、同じ水の呼吸を習得した炭治郎にとっては、みとり稽古をさせてもらっている形になっていた。
「雫様の水の呼吸凄かったでしょ?炭治郎」
「え?」
ふと気がつくと目の前に額に汗をかき、息を少し乱した真菰が立っていた。
どうやらあまりにも綺麗な水の呼吸を目の当たりにして見入ってしまっていたらしい。
「はい…凄すぎて何がどうなってるのか分からなかったですけど」
素直にそう答えると微笑んだ真菰は夜に任務があると言って別れを告げると歩いて庭を去っていき、自分と雫の2人きりになったその時、透き通る声で名を呼ばれる。
「炭治郎、ちゃんと見ましたか?」
「は、はい!」
声がした所に視線を移すと、息の乱れが一切ない刀を納めた雫が立っていた。
「今の手合わせ稽古は、炭治郎へのみとり稽古でもあります。頭の中で何度も思い出して焼き付けてください」
「…ありがとうございます」
まるでいつかの父親と似たような台詞を語りかけた雫をみて、一つ、どうしても聞きたいことがあった。
「一つ、聞いてもいいですか?」
「なにかな?」
「……どうして雫様は、そこまで強くなれたのですか?」
真菰から聞いた過去の雫の話でも、信じられないほどの強さを誇っていたことは分かる。だがただの修行でここまでの頂に届くものなのだろうか。そんな率直な疑問を投げかける。
「……少しだけ、私の昔話に付き合ってもらえますか?」
何かを懐かしむような、悲しむような雰囲気と匂いを纏って、雫はそう答えた。
雫は縁側に座ると、思い出すように夕暮れを眺めながら話してくれた。
5歳以前の記憶がないのだと、その時に両親が死んだ事故も原因が鬼である可能性が高く、救ってくれた病院でも鬼に皆殺しにされ、その後救ってくれた鱗滝さんの元で修行をして鬼殺隊に入ったのだと。
(この人は、鬼殺隊に入る以前に二度も幸せを壊されて、生きてきたのか)
きっと記憶を取り戻すことがあれば、壊された知らなかった日常を思い出すことになる。
それは、きっと想像以上に辛い事だろう。
「今の私がいるのは、産屋敷様と鱗滝さん、先代の柱達のおかげです。私の存在と実力を認めてくれて、厳しく稽古をつけてくれました。
それがなければ私は魁であれど、もう少し弱かったと思います」
まるで自分の実力がそこまで凄いと思っていないような言葉でそう話すと、ふと雰囲気が変わる。
「君にはこれから、いくつもの試練が待ち構えているはずです。
強さというものは、どれだけ強くても足りない。
妹を、人を、仲間を、今を守りたいのなら、もっと強くなりなさい。
現実と言うものは、いつだって卑劣で、残酷で、それでも幸せに溢れているものですから」
(……とても優しい匂いと、滲み出るような悲しい匂い)
圧倒的な実力を持ち合わせていながらも手が届かず守ってやれなかった仲間や日常を失ってきた魁としての大竹雫と、辛い過去を持った1人の人間としての大竹雫としての言葉だと理解した炭治郎は胸の奥が熱くなるのを感じた。
(もっと、もっと強くなるんだ。
強くなって禰豆子も、善逸や伊之助も守れるように強く…)
雫との話が終わる事には日は沈みきっていて、空には三日月の月が輝いていた。
ーーーー
「……し、…もし…、もしもーし」
「はい!?」
随分と集中していたのだろう。すぐ近くで話しかけられていることに気づかず、驚いて顔を向けると吐息が感じられる距離に胡蝶しのぶの顔が迫っていた。
「頑張ってますね。お友達二人はどこかに行ってしまったのに」
そう話すしのぶにドキドキしてると少し離れた所にちょこんと座ったしのぶは1人で寂しくないかと聞いてくる。
「いえ!できるようになったらやり方教えてあげられるので!」
「……君は心が綺麗ですね」
「…………」
「…………」
微笑みながらそう言ったしのぶにどう話しかけようかと考えて少し間が空いた後、気になっていた事を思い出す。
「………あの、どうして俺たちをここへ連れて来てくれたんですか?」
「禰豆子さんの存在は公認となりましたし、君達は怪我も酷かったですしね」
なるほど、そう思うとそれからとしのぶの方から語り始めた。
「君には私と姉の夢を話しておこうと思って」
「夢?」
「そう、鬼と仲良くなる夢です。きっと君ならできますから」
その時、しのぶから怒りとわずかに悲しむ匂いが溢れ出る。
「怒っているんですか?」
その言葉にしのぶは微笑みをなくして驚いた表情をする。
「なんだか、怒ってる匂いがしていて…」
そう話すと、しばらく沈黙したしのぶはゆっくりと語り始める。
「そう…そうですね、私はふとした時はいつも怒ってるかも知れない。
鬼に両親を殺され、ねえさんが上弦との戦闘で大怪我を負って一命を取り留めたあの日から、私の中には鬼に対しての呆れと怒りが蓄積され続け、膨らんでいく」
「……姉って、皆を診てくれてるカナエさんですよね?隊士だったんですか?」
「元花柱ですよ」
「え!?」
胡蝶カナエ。
ここへ入院する事になった時にふわふわとした空気を纏っていて、とても優しい匂いを持った胡蝶しのぶの姉だと看護師の子達から聞いていた。
それに禰豆子に対しても気にかけてくれて、度々箱から起きた禰豆子とお喋りをしてくれている。
とてもおおらかで匂いも鍛えている剣士のような匂いはしない人だった。
(てっきりもとから医者をしてる人だと思ってた…)
「……姉も君のように鬼を哀れむような、優しい剣士でした」
しのぶは語り始める。
胡蝶姉妹の過去に何があったのかを。
前半と後半で作風を変えたりしています。原作合流編あたりからの作風に統一しようかと思います。
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統一した方が良い
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別に気にしない
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前半のようなほのぼの要素も欲しい