時を操る狐面の少女が鬼殺隊で柱を超えたそうですよ   作:たったかたん

19 / 38

遅くなってすみません…頭の中でキャラ達の会話が全く想像できなくて全然進んでないです…。

とりあえず一話なんとか書けたので載せます。


記憶の断片(壱)

- 記憶の断片(壱) -

 

 

 

暗闇と静寂に包まれた寺の中、部屋の真ん中に蝋燭の火が辛うじて周りを認識できるほどの光を放ってくれていた。

ガタガタと揺れる襖は穴だらけで、そこから風が部屋の中を通り過ぎていく。

 

薄暗い部屋の中、西洋の服を着た男の老人、奈落は胡座で座りながら隙間風に揺れる蝋燭の火を眺めながら鬼舞辻無惨の言葉を思い出していた。

 

 

『奴を殺せたのなら、貴様を新たな上弦として迎え入れよう』

 

 

口端を吊り上げ、頬が何重ものシワを作りながらその老人は笑い、掠れた低い声で呟いた。

 

 

「こんな形で会えるとはな、大竹雫」

 

 

その時隙間風がひゅうと音を立てて強くなる。

蝋燭の火が小さくなり、瞬きの間の暗闇が部屋を包み込んだ中、奈落は掠れた声で呟いた。

 

 

「是非とも私の力で…君を殺してやろう」

 

 

僅かな残り火で再び部屋を照らしはじめた蝋燭の前には、奈落の姿はなかった。

 

 

 

ーーーー

 

 

 

風が枝葉を揺らし、木々の隙間を通り過ぎていく音が鳴り響く中、雫は駆けていた。

報告にあった山の名は鷹帯山、柱や雫の速さならば二刻程度で着ける距離であった。

 

 

(あの山を超えた先ですね)

 

 

崖などの障害をものともせず、ひたすら最短距離で向かっていると、一気に木々がなくなり、視野が広がる。

目の前に緩やかな傾斜で広がる鷹帯山を視認した時、風で流れてくる空気が明らかに淀んでいく事に気づく。

 

 

「これは…鬼の気配?」

 

 

これまで斬ってきた鬼、十二鬼月といったものから感じる気配とは変わったような気配を感じ表情を険しくさせつつ、鷹帯山へと入山する。

 

鷹帯山の中は案の定空気が重く、この山に鬼の存在がいることを確信すると、風が吹く中で血の匂いが充満している場所に辿り着いた。

 

 

(……ここでやられたんですね)

 

 

そこには引き裂かれた隊服、投げ捨てられた日輪刀、明らかに死んでいる量であろう血溜まりが辺り一帯に所々残されていた。

 

雫は引き裂かれた隊服の一部を拾い、握り締める。

 

 

「……必ず、私があなた達の犠牲を無駄にはしない」

 

 

そう言い残し、懐へ仕舞うと更に気配が濃く、空気が淀んでいる山の奥へと進んでいく。

すると大勢の小さな笑い声が耳に届き、足を止めた。

 

暗闇の中、目の前の木々の隙間を覆い尽くすように白い着物を着た子供達が数えきれない程立っていた。

 

 

「………」

 

 

雫は何も言わず、静かに柄を握りゆっくりと抜刀する。

その間にも周りからはクスクスと子供の笑い声が響いている中、一瞬風の流れが止まった。

 

 

それと同時に周りの子供達が人間には出せない速さで飛びかかってくる。

それはまるでしけた海の波のように、壁を作り出すように圧倒的な数であった。

 

雫はその光景を目の当たりにしても焦りはなく、すぅと息を吸った。

 

 

《水の呼吸 改 流流・打ち潮》

 

 

その瞬間、全方向から飛びかかっていた子供達は頸は勿論、手足や胴が全て細かく切り分けられて地面へと落ちていく。

 

 

「……頸を斬っても死なないと言っても、ここまで斬られればしばらくは動けないでしょう?」

 

 

以前の遭遇で流の雫で仕留めたものの、今回はあまりに数が多いため、細かく切り分けて戦闘に参加できるまで再生する時間を稼ぐ戦法を事前に考えていた。

 

 

 

ぐちゃりぐちゃりと再生する子供達の体はやはりゆっくりで時間がかかっていた。

その事を確認しつつ、開けた森の奥へと駆けていく。

その間にも黒い目をした子供達や異形の鬼などが休む間もなく襲いかかってくるが、勢いを殺さずに斬り刻んでは更に進んでいく。

 

 

(……この子供鬼…血鬼術を使ってこない?)

 

 

既に五百は超えたであろう襲いかかってきた相手は斬ってきたが、黒い目をした子供は血鬼術を使ってきていなかった。

 

 

(……なにか制限があるのか?)

 

 

戦闘が始まって半刻過ぎた辺りで、山の中腹へと進んでいた時、赤い麻の花模様の着物を着た十歳程の少女がこちら見て立っているのを視認した。

 

 

 

着物が他とは違うことに少しだけ疑問に感じつつ刀を振り下ろした瞬間、その少女は綺麗な笑顔でこう言った。

 

 

「大きくなったのね、雫ちゃん」

 

 

「!?」

 

 

その刹那、瞬きの時間、雫は振り下ろした刃を止めてしまった。

名前を言われた事に、聞き覚えのある声だと感じてしまった事に、目を見開いて驚き、思わず体が固まってしまう。

 

 

(私の、名前?)

 

 

もちろんその隙を相手が逃すはずもなかった。

 

刀が止まった瞬間、少女はその笑顔を貼り付けたまま指を尖らせた右手を雫の顔へと突き出していた。

 

 

「っ!」

 

 

その攻撃は避けずとも頬を掠める程度の物だったが爪の先が黒ずんでいるのを確認し、毒の可能性を考えて辛うじて躱す。

 

その爪は狐面の右頬に一筋の傷をつけた。

 

不安定な体勢を立て直すと少女を斬らずに雫は距離を取る。

 

 

「やっぱり雫ちゃんだよね?匂いでわかるもん。いつぶりかな?十何年ぶりじゃない?」

 

 

久しぶりにあった友達との会話をしているかのように、その少女は華やかな笑顔で楽しそうに話しかけてくる。

 

頭の奥が熱くなり、頭痛が頭の中を駆け巡る。

あまりの痛さに左手で刀を構えながら右手で頭を押さえる。

嫌な汗が身体中から出てくるのを感じつつ、問いかけた。

 

 

「……誰ですか?私は貴方のこと知りません」

 

 

そう言うと少女はキョトンとした顔になると焦るように話し始めた。

 

 

「え?いやいや、ほら私、少しの間だけ一緒に暮らしてた土屋文子、覚えてない?」

 

 

 

「…しらな…」

 

 

その瞬間、頭の中にさまざまな場面が溢れてくる。

その中に目の前と同じ少女が笑いかけてくる光景が鮮明に蘇る。

 

 

『雫ちゃんはなんで喋らないの?きっと可愛い声だから私聞きたいなぁ』

 

 

(……これは、なに?)

 

 

次に溢れてくる場面は、夢に出てくる女性が優しい笑顔で話しかけてくる。

 

 

『千鶴は凄いねぇ、年上の人を簡単に倒しちゃうなんて。きっと神様に愛された子なんだわ』

 

 

(まただ、また私のことを千鶴と…)

 

 

更に場面は変わり、白髪の老人が掠れた優しい声で話しかけてくる。

 

 

『すみません、私の大切だった人の名が千鶴でして、ここでは貴方のことを雫と呼んでもよろしいですか?』

 

 

(そうだ、私はあの時、あの人に…あの人って誰?)

 

 

その瞬間、右から頭の横に迫ってくる爪に気づいた。

 

 

「ぐっ!?」

 

 

ギリギリで刀で受けるが頭痛が酷過ぎて思い通りに動けない。

 

 

「どうしたの雫ちゃんボーッとしちゃって、動きが鈍くなっちゃったよ?」

 

 

(この子、さっきから致命傷にならない攻撃を…!)

 

 

更に詰めての爪の攻撃は確実に右腕を狙っていた。

躱そうとしたその瞬間、脳内を直接殴られたような頭痛が走り、体が一瞬硬直してしまう。

 

技を放とうにも息が荒すぎて空気を取り込めない。

 

 

(…一か八かっ!)

 

 

爪が腕に触れる瞬間、辛うじて瞬きを発動させる。

 

 

《時の呼吸 ニノ段 流の雫》

 

 

これ以上この子供との戦闘は危険過ぎると判断し、至近距離から最小限度の流の雫で消しとばした。

 

 

「…ぶはっ!ごほっ!…はぁ、はぁ、はぁ」

 

 

再生する様子もない少女を眺めながら呼吸を整えて考える。

あの記憶はきっと事故前の記憶で間違いない、しかしなぜここまで思い出せば思い出すほど頭が痛くなるのかが分からなかった。

 

 

(……前へ進みましょう)

 

 

ここで考えていても時間の無駄だと判断し、幾分重くなった体を持ち上げて森の奥へと足を進めて間もなく、森にかすれた声が響いた。

 

 

「ようこそ魁…大竹雫」

 

 

声を聞いた瞬間、一段警戒心を高める。

その声に違和感を感じ、眉を顰めながら動揺と疲れを見せないよう落ち着いた声で話しかける。

 

 

「……貴方が元凶ですね?隠れてないで出てきたらどうですか」

 

 

掠れた声はその言葉を鼻で笑う。

 

 

「今前に出たらその瞬間、私の頸は斬られるのだろう?」

 

 

「貴方は一体なんの血鬼術なんですか?頸を切っても死なない鬼を作り出すなんて、とても稀有な能力ですよね」

 

 

そう言うと嬉しそうに笑う声が聞こえた。

 

 

「そう!素晴らしいでしょう?この能力は私が研究してきた成果です」

 

 

その言い方はまるで、研究したからこそ今の能力を手に入れたように聞こえる発言だった。

 

 

「……そう聞くと最初はそこまで強い能力ではなかったように聞こえますね」

 

 

そう問うと声の感情に波が見え始める。

 

 

「いいや…いいや!私のこの力は素晴らしいものだったんだ!

しかし、この力は人間の私が使うには、重すぎた、不可能だった。だから私は…鬼へとなった」

 

 

掠れた声が山に響く中、その発言に疑問を抱く。

 

 

(…人間の時から既に、この力を持っていた?)

 

 

この鬼ももしかしたら鬼舞辻無惨のように何かしらの事情で特異な存在になったのだろうかと疑問を抱くも、掠れた声は静かに話し続ける。

 

 

「大竹雫、私は君に感謝したい。あの方は鬼が群れることを嫌う、君の存在がなければ私は今頃殺されていた。だから…だから感謝として……君を殺してあげよう」

 

 

その声とともに森の暗闇から今まで再生していたであろう白い子供達、それと混ざって新たに強い気配を持った鬼が4人迫ってくる。

最初よりも多く、強力な鬼が様々な血鬼術を放ってくる中、焦らず刀を下手に構える。

 

タイミングもわざとずらしながらの集中攻撃は逃げ道がない状況を作り出していたが、そこで一つの疑惑に確信を持った。

 

相手が自分を攻撃する際、体の急所をわざと外して攻撃しているのだと。

 

 

(…なにかしらの形で私の能力に気づいたのか)

 

 

それも当然だ、最初にやっていた時の呼吸縛りも、鬼舞辻の血が濃ゆい下弦陸、上弦の肆、以前の鬼の群れとの戦闘で情報は十分持っているのだろうからだ。

 

 

「まぁ、分かったところで意味はないですけど」

 

 

すぅと浅く息を吸い、止める。

 

 

《時の呼吸 三ノ段 水鞠》

 

鈍間な時の中で雫波紋突きよりも二段三段上の高速な突きを数千に渡って全方向へ放った。

 

速い突きで刀身に纏っていた青紫の水が雫となって鞠のように綺麗な丸を形作りながら全方向へ放たれる。

時が戻り、隙間なく囲っていた子供と鬼の体がその水鞠に触れた瞬間、殆どの敵が僅かな肉片を残して消しとんだ。

 

 

「数が多ければいいって話ではないですよ」

 

 

刀を何千と振る流ノ雫とは違い、水鞠は高速突きを何千と放ち、攻撃範囲が狭くなる代わりに体力の消耗が半分以下に抑えられるものだ。

攻撃範囲が狭くなる分、突く威力や速さは振るよりも一段上になる。

 

 

地面へと落ちた肉片が再生を始めるのを見つつ、頭痛が響く中声の気配を追って森の奥へと駆けた。

 

 

 

ーーーー

 

 

 

雫が山の中腹辺りで水鞠を放っていた頃、赤帯山へ入山した直後から襲いかかる子供たちの襲撃をものともせずに突き進む五人の姿があった。

 

 

 

「さっきから斬った奴らが後ろで数増やしながら追ってきてるぞ、気を緩めるな」

 

 

「うん、了解」

 

 

「雫様はどこまで行かれたのでしょう…本当に速いですよねぇ」

 

 

「………」

 

 

「あの方のことだ、もう十二鬼月を追い詰めててもおかしくねぇ」

 

 

 

彼らが雫と合流するまであと一刻。

 

 

 

夜が明けるまで、あと二刻。

 




途中で寝落ちして一話まるまる取り消しボタンで消去すると言う大惨事がありました。泣

前半と後半で作風を変えたりしています。原作合流編あたりからの作風に統一しようかと思います。

  • 統一した方が良い
  • 別に気にしない
  • 前半のようなほのぼの要素も欲しい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。