時を操る狐面の少女が鬼殺隊で柱を超えたそうですよ   作:たったかたん

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今までの夢の総まとめ


記憶の断片(参)

 

 

 

 

 

様々な記憶の欠片が糸で縫い合わされていくように繋がり、重なり、明確なものへと変わっていく中で、景色は変わり山の中へと場面は変わる。

 

太い木々が生い茂っている中で、そこに大型犬よりも大きく、二回りは太っている息を荒げた猪が15m先で対面している瞬間であった。

 

『千鶴!だめよ!逃げなさい!!』

 

焦り、泣き、恐れの感情がごちゃ混ぜになったかのような叫び声が後ろから聞こえ、ふと首だけ振り返ると、とても整った顔立ちの女性がそこにいた。

右足を痛めているのか、動きたくても動けない様子で、しかしそれでもこちらへ四つん這いになりながら近づこうとしている。

 

 

(……そうだ、母と山菜をとりに出掛けた帰り道で、猪に追われて、お母さんが動けなくなったんだ)

 

 

その間に前の方から枯れ枝や草木を駆け抜ける音がして前に視線を戻すと、猪が10m程に接近していた。

体を動かそうにも、言葉を発そうとしたその時、何も動かないことに気づく。

 

(……これは、記憶を思い出しているってことですか)

 

猪が加速し、5m前までに接近してきた瞬間、ふと見えるものが全てが変わった。

 

(……透き通っている?)

 

周りの景色は色がなくなり、目の前の猪は骨、内蔵、筋肉といったものが鮮明に目視できるものへとなっていた。

まるで時が止まったかのように動きが鈍くなったその光景に目を奪われていた時、右手に持っていた太めの長い枝を猪の左眼へと一突きする。

 

幼児の体格でありながら一切無駄のないその動き、枝が猪の脳へと突き刺さる瞬間を見れたことに驚きが隠せなかったが、勢いのまま地面へ転がりながら死んだ猪を見た後、ふと目線は背後に振り向くと、そこには顔は恐怖に歪み、化け物を見ている目を向ける母の姿があり、そしてその母の姿も、猪の同様に透き通って見えていた。

 

 

 

 

ふと瞬きすれば場面は変わり、十畳ほどの部屋の中で座っていた。

目の前には30代程の優しい顔をした夢に出て来る男、父だ。あまり健康的ではないのか声は掠れ、年寄りのような声の男は申し訳なさそうに話しかけて来る。

 

 

『千鶴、お前は神童だ。剣術を4歳から教えて数ヶ月で大人と互角以上に渡り合える才能をとても誇らしく思っていたが、これ以上は花咲かせることはできない、許してくれ。

そのかわり、秀でた神童を集めて教育する寺があると知人に聞いたんだ、もう文は送ってある』

 

 

父はそういって部屋から出て行ったが、先程の母との記憶から何かしらの拒絶があったことを想像するのに苦労はしなかった。

この時の千鶴は理解していたのかどうかは分からないが、それでもただまっすぐ、透き通った世界で父が出て行った部屋の戸を見つめ続けていた。

 

 

それから次々と場面は変わり、その寺の子供たちと出会い、そして、寺の主である男へと出会った。

 

『すみません、私の大切だった人の名が千鶴でして、ここでは貴方のことを雫と呼んでもよろしいですか?』

 

優しそうな顔をしたその男は、優しそう顔をいつもして子供達へと接していたが、皆の前に現れるのは決まって日が沈んだ夜であった。

その男には他の人間とは違い、体の中が濁っているように見えていたが、千鶴は気にならなかったようだった。

 

その寺では午前は滝行から座禅、読み書き、午後には武術や剣術など、僧侶から様々な専門の先生を呼び集めた環境が整っていた。平成で言う英才教育のようなものなのだろうか、全てが厳しく指導され、入って1週間でいなくなる子が後を絶たなかった。

 

それでも千鶴は黙々と全てをこなし、気づけば入って半年で最年長として先生達と模擬戦を行うほどになっていた。

 

ふと場面が変わる。どうやら鬼として現れた人間だった時の文子と話ししているらしい。可愛い小鳥のような声で話しかけて来る文子は、一方的に話ししている状況に疑問思ったのか、しかしそれでも楽しそうに首を傾げながらこう言った。

 

『雫ちゃんはなんで喋らないの?きっと可愛い声だから私聞きたいなぁ』

 

その一言でふと気付かされる。今までの記憶の中で、千鶴は一切声を発していない。

 

(なんで、私が事故から目覚めた時声は出たから喋れるはずなのに)

 

その疑問は、ある存在が教えてくれる事になる。

 

 

 

-----

 

 

 

 

女の子と話した記憶の後、寺の中にある一つの大部屋の中で千鶴は座っていた。

個人指導で模擬戦をする予定だった先生達が緊急の話し合いか何かで集まる事になったからだ。

 

何か今までの記憶の中で雰囲気に違和感がある事を感じていたその時、目の前の戸が勢いよく開かれる。

外は日がだいぶ傾いているのだろうか、太陽が直接顔を照らし、思わず目を細めると男が日を遮りこちらへと近づいて来る。

それは呼吸を乱し汗をかいた父であった。

 

『千鶴!…っ、千鶴、無事でよかった…本当に、俺たちが間違ってた…。

俺たちのことは許せないかもしれないが、一緒にこの寺から出てくれ、外にお母さんも待ってる!』

 

 

千鶴の肩を掴み、涙を流しながらそう言うと、右手を握り。外へと走り出した。

 

外へ出るといつも子供達で賑わっていた庭や寺に気配一つ感じない事に疑問を抱きながら寺の外の森の中へ駆けていくと、奥から母が涙を流しながら駆け寄ってきた。

 

 

『あぁ、千鶴、ごめん、ごめんねっ、私があの時貴方を怖がらなければこんな事には…っ』

 

 

『早く行くぞ富美子、早く行かなければ後一刻で日が暮れる、その前に山の向こうの町に行かなければ。千鶴と話すのはその後だ』

 

『はい、分かってます…茂雄さん。千鶴、後少しだけ、我慢してね?』

 

2人に手を引かれ、獣道を駆ける。千鶴の足幅も考慮して細かく走りながらこちらへ顔を向けてはごめんと2人とも似たような謝罪の言葉を投げかけて来る。

 

(なぜ2人とも謝るんですか、一体あの寺がなんだと言うのです?)

 

そう疑問を抱いていたその時、父が状況を理解してないと思ったのか息を切らしながら千鶴に話しかけて来る。

 

『千鶴、あの寺に集められた子供達は、誰一人として帰ってきていない、…不審に思って行動しようとした家族も、連続して失踪してる、あの寺は、なにかおかしいんだ』

 

『私が…私があの時貴方を、信じないといけなかったのに、こんな事になったのは、私の所為ですっ…』

 

 

その話をしている頃には日が山に隠れ、ほぼ薄暗い山道を駆けていると、近くに町の明かりが見下ろせるところまで来ていた。

 

後少しだと、父がそう言ったその時、その声は聞こえて来た。

 

 

『ただの人間がここまで逃げ出すとは、面白い。少しは楽しませてくれたお礼に喰わずに生き埋めで殺してやる』

 

 

あの優しい声の男の声がした方向に視線が向くと、そこには凶悪な笑顔に顔を歪ませた男が山の斜面に腕を叩きつける瞬間だった。

 

 

地面が、山が動いたその時、ふと両親に視線が動くと、そこには恐怖でいっぱいの表情をした2人が何かを伝えようとしていたが、その刹那、叫び声をかき消すほどの轟音を立てながら山が崩れた。

 

今まで夢の中で気付くことがなかったが、千鶴は2人を引っ張り助けようとしていた。

しかしもちろんのこと幼児の体格では動きで翻弄できたとしても、力のみで大人を動かすことなどできるはずがなかった。

 

浮遊感が体を襲う。

 

世界が乱れる中、両親の顔をはっきりと捉える。

土砂と崖下へと落ちていく父は千鶴を全力で投げたせいか体制を崩しながらも涙をながしながらこちらを見ていて、そのすぐ横で母は涙を流しながら、轟音の中何か言葉を発していた。

きっと他の人間なら欠片も理解することができなかったその呟きも、千鶴の耳には確実に届いていた。

 

 

『あなたは生きて、千鶴』

 

 

その瞬間、強い衝撃と泡に包まれ周りの音がなくなった。

 

 

 

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暗い、何もないその世界の中で、千鶴は目を覚ました。

 

ふと体を確かめるが、そこには傷一つとして無い。

 

 

(ここは、どこです?)

 

 

周りを見渡したそう時、聞き覚えのある声が話しかけて来た。

 

 

『やあ、大竹千鶴、はじめまして、そしてようこそ、気まぐれの世界へ』

 

 

声がした方向をみると、白く光る人の姿をしたモノがそこに立っていた。

 

『あぁ、簡単に言うと僕は神様で、君はさっきので死にかけだ、お父さんの努力も虚しくね』

 

真面目そうに見えて、それでもヘラヘラとした態度で声をかけてくる神とやらを見つめていると思い出したような素振りを見せる。

 

『あ、喋らないんだったね?面白いね君、他のものに対して興味が全くないから喋る手間を省くなんてさ。

でも心配要らないよ、君の考えてることなんて神である僕には息をするように簡単なことなんだからさ』

 

 

まるでペテン師のような言葉で話す神を、雫は記憶の中では明るくお調子者の雰囲気と違和感を覚えていると、声の調子が変わる。

 

 

『君はこの世界ではどの人間と比べても才があってね、君に注目してたんだよ。だからこんな形で死んじゃうなんてつまらないと思ってね、ここに呼んだのさ。

 

それで、君はどうしたいんだい?あの男を殺したいかい?でも申し訳ない事に君の魂が元の体に戻ったところで君の身体は助からない。だからどうかな?もう1人の魂と一緒に入って生き返るって言うのは?

 

体はどうなるのか?

君の体の主導権を持つのはもう1人の子だけれど、それ以外の能力の土台になるのが君の役目だ。残念だけど君の生命力じゃあ回復しきれないからね。え?僕の力で?それはつまらない、僕好みの展開じゃないんだ。

 

 

因みに君と人生を一緒に歩む子は君と違って才能がなくて辛い人生を送った後事故で死んじゃったかわいそうな子だよ、仲良くしてね?

 

本当はここまでいい条件で生き返させる事はないんだからね?2人でせいぜい僕を楽しませてよ!』

 

 

 

その瞬間、浮遊感に襲われると視線が変わり、そして白い人の姿をした存在が明るい声で話しかけて来る。

 

 

『僕のことは気まぐれの神とでも呼んでくれるといいよ!うん、そうだなぁ、ほんの少しだけ時間が操れる力をあげよう!』

 

 

 

 

 

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自分の口が勝手に動いて言葉を発していた。

 

 

 

普段の自分が話す言葉ではなかった。

 

 

 

今自分の口で喋ったのは私の魂と一緒にいる大竹千鶴だと、確信せざる終えなかった。

 

 

(この世界はいつだって卑劣で、残酷で、それでも幸せに溢れているものだと分かっていたはずなのに)

 

体の中で様々な感情が激流となって駆け巡り、今まで妨げになっていた頭の中をすっきりとさせてくれる。

 

 

(……この鬼を殺したいんですね、千鶴さん)

 

 

父の姿をした鬼を見る世界は、赤く染まり、しかし上弦の肆の時と違って感情を抑えるつもりはなく、深く息を吸い込んだ。

 

周りに十二鬼月程の気配が集まっているのを感じるが、それは関係ない。

 

ただ、目の前の鬼を殺すためだけに、今は刀を握ろう。

 

 

「貴方の敵は、私の敵です、千鶴さん」

 

 

鬼殺隊最強の刀が暴れだす直前の姿は、煉獄槇寿朗が喩えた殺意の塊という物が爆発する瞬間であった。

 





多分この展開は好き嫌いが分かれるかもしれないと思いつつの更新。

自分は社会人一年目で、仕事が年末忙しくなる事を知らず、活動コメントでこれからやります的な雰囲気を出しておきながらここまで遅くなってしまった事本当に申し訳ない。

まとまったこの年末休みに進めたいです、眠いです、おやすみなさい。

前半と後半で作風を変えたりしています。原作合流編あたりからの作風に統一しようかと思います。

  • 統一した方が良い
  • 別に気にしない
  • 前半のようなほのぼの要素も欲しい
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