時を操る狐面の少女が鬼殺隊で柱を超えたそうですよ 作:たったかたん
あと卒業生、受験生の方とかも上手く行った行かなかった関係なくお疲れさまでした。
久しぶりに感想欄みてたら七話の感想でいきなり激昂されてもっていうのがあったんですけど、「確かにな」って思ってgoodボタン押しました(←)
これは現実か?
鬼になって四百年余りの経験の中でそう疑うのは初めてだった。
たった一振り。それだけで数百の鬼が肉片を残さずに消えていく。
切り裂く音はなく、衝撃風もなく、あるのは紅く染まった刀が空間を撫でたという事実のみ。
『私達の才覚を凌ぐ者が今この瞬間にも産声をあげている』
ふと昔の、遠い過去の忘れられない記憶が脳裏を霞む。
「…本当に……」
奴と並ぶ化け物だと、そう実感した。
ここに来たのは無惨様の命により琵琶の娘によって運ばれたのだ。無惨様からの命令は動けなくなった大竹雫を殺すか再起不能の深傷を負わす事。
大竹雫という名は、半天狗がやられた頃から聞いていた。無惨様曰く、歴代最強の鬼狩りで間違いがなく、上弦でさえ真正面からの戦闘では手も足も出まいと。
その話を聞いた時は、あの縁壱を越えるのか?と思っていた。
だが目の前の光景を見れば納得せざるをえない。奴は鬼でもなく、人でも無い、奴と同じ化け物なのだと。
山頂を埋め尽くす程いた奈落の鬼達が凄まじい勢いで消えていき、刀を振った回数が十五に達した時、奈落以外の気配がいなくなっていた。
(これほど……までとは…)
一体どれほどの覚悟があればあれほどの刀が振れるのだろうか。一体どれだけ鍛錬を積めばあそこまで洗練された型を出せるのだろうか。
一体どこまで神に愛されればあそこまで化け物になれるのだろうか。
そう思っている間に大竹雫が奈落に止めを入れていた。音もなく、いつの間にか奈落の後ろに立ち刀を納める。
(…姿を捉えることすら出来ないとは……!?)
あまりの速さに驚愕していた時、奈落の体が溶けていくのが見えた。
「…なにを…したのだ」
ぐちゃりと、泥のように溶けて崩れた奈落を見下ろしていた大竹雫は呼吸を乱し膝をついた。それを見て心のどこかでほっとしていた。
(あれほどの事を人が何の代償もなしに出来るわけがない……)
それに無惨様の言うとおり動けなくなったのだ、後は娘を殺すだけでいい。
歩いて近くまで寄っていくと支えにしている刀を握る手が徐々に解けていくのが見えた。もはや力がほぼ入っていないのが分かる。
「…貴様が大竹雫か」
いらない確認だ。娘で間違いはないがそのまま斬りかかるのも気が引けたからだ。
私の声を聞いた娘は唇から血を一筋流しながら顔を上げた。意識が飛ぶすんでのところで唇を噛んで持ち堪えたのが分かる。
「…上弦の……壱」
澄んでいたのだろうと分かる声は掠れ、満身創痍なのは明らかだった。
「…最後の技で体力を使い切り、もう既に立つ力もないか…痣と赫刀を発現させるとは… 一度刀を交えてみたかったが先の戦闘を見る限り私でも相手にはならぬのだろうな……」
正直な、心からの称賛。これから命を奪うと言うのに、刀を交えることもなく弱っている時を狙ったことに対しての、せめてもの情け。
刀を抜き上段に構える。
「…あの方は貴様の死を望まれている…貴様の様に強き者、この世を去るのは何とも嘆かわしいことか……」
できることなら鬼にして刀を交えてみたかったが、無惨様がお許しにはならないだろう。
「さらばだ、……奴に匹敵する者よ…」
型はない、ただの上段からの振り下ろし。
それは確実に娘の体を頭から半分に分ける、それどころか地面さえも縦に割れるほどの斬撃だ。
「……貴様は誰だ」
刀が何者かに受け止められなければ。
「……鬼に語る名など…無い」
「同じく」
振り下ろした刀は赤羽織をつけた男の刀で受け止められ、そしてその後ろで意識を失った大竹雫を抱き上げている紫髪の娘がいつでも動ける体勢で身構えていた。
二人共息は乱れており、童磨の所から全力で来たのだと伺えた。
「まとめて切り捨…!」
そう判断し技を放つ構えをとったその瞬間、刀身の先が灰となって崩れた。
「……日の出か…」
自身のいる鷹帯山の真上は黒い雨雲に覆われているにも関わらず東の空は太陽を完全に隠す程の雲はなく、山頂を切り開いて建てた寺の中庭には障害物もない為陽の光が横切ってきていた。
(…やむを得ぬ)
刀を納め、照らされ始める開けた中庭から影のある木々へと歩いて行く。
上弦の壱、最強といえど鬼は鬼。
薄い日の光でも燃えて灰になってしまうことには変わりはない。現に無惨様からも戻れと言う指示が届いている。
森の中へ入る直前、どこからか琵琶の音が鳴り響き、目の前に華やかな襖が現れる。
そちらへ足を一歩踏み入れ、殺気を飛ばしている二人へと振り返ると、先まで立っていた所は太陽に照らされていた。
「……その娘、殺さずとも後数年しか生きられまい。……せいぜい足掻くことだ、柱よ」
弦を弾く音とともに空間が歪んだ世界へと歩き出す。
閉じていく襖の向こうから、木々の葉へ雫の落ちる音が響くのを聞きながら、そう呟いた。
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窓から日差しが優しく室内を照らし、冬には珍しく暖かい日となったためかどこからか飛んできた小鳥の鳴き声が耳に届く部屋の中に、引戸を開ける音が響いた。
「あら、おはようございます冨岡さん、お見舞いに来てたんですね」
「……ああ」
入ってきたのは胡蝶しのぶだった。
軽く挨拶を交わすと優しい手つきで花瓶の古くなった花を取り、新しい水に入れ替えて新しい花を飾りつける。
この部屋の中にある物は胡蝶しのぶがこまめに管理し掃除もしているらしい。
その姿をみて流石だと思っていると一通り終えたのか、壁側に置いてあった椅子を自分の近くまで持ってきてすとんと座った。
「……明後日でもう一ヶ月…先代の柱達もこんな気持ちだったんでしょうか」
「……ああ」
「……雫様は本当にお綺麗なお顔ですね」
「…………そうだな」
目の前の寝床にはまるで人形のような顔で小さく息をしながら大竹雫が眠っていた。
いつもの笑顔を隠して心配そうに見つめながらしのぶはそう呟いた。
血鬼術による不死身の鬼の大群、上弦の弍との交戦、上弦の壱との接触。
鬼殺隊にとってあまりにも、あまりにも濃厚な夜となったあの日から一ヶ月もの月日が過ぎようとしていた。
圧倒的な数の鬼達と上弦の鬼がいたにも関わらず死者十二名、重軽傷者五十名という今までの鬼殺隊であれば信じられないほどに軽微な被害で済んだといっていい内容だった。
山の麓では不死身の鬼達と増援に駆けつけた隊士との乱戦が起こり、無傷で切り抜けた者は一人もおらず、三分の一の隊士は今後の鬼殺に影響の出るほどの怪我を負うこととなった。
しかし夜明け近くになってから全ての鬼達が山の中に引いていった為被害は軽微にとどまった。
柱組も上弦の弍との戦闘は辺り一面の木々がなくなる程の激戦。善戦したが三人とも鬼殺の継続には影響は無いとはいえ、全治数ヶ月の深傷を負った。
そして一人で山を覆い尽くす程の何千という鬼達を相手にしながら山頂まで辿り着いた魁、大竹雫はかすり傷等の軽傷ではあるものの意識不明となっていた。
(上弦の壱との遭遇に俺と胡蝶が間に合わなかったらと思うだけでも…いや、考えたくもない)
そう思っていると扉から腹から出ていると分かる声が室内に入ってきた。
「失礼する。む、胡蝶と冨岡も来てたのか」
その人物は炎柱、煉獄杏寿郎だった。
部屋へ入ってくる姿を見て胡蝶しのぶが体の向きを煉獄の方へ向けて話しかけた。
「おはようございます煉獄さん。今日が任務の出発日だったのでは?」
「うむ!その前に雫様の見舞いをとな!」
「…そうですか、今日も綺麗な寝顔で寝ています」
雫の顔を見た瞬間、さっきまでのハキハキとした勢いはどこかに隠れ、表情も目を細めて真剣な表情になる。
「……そうだな。……一目顔を見れたことだし俺は行く。もし目が覚めたら連絡は頼んだぞ」
「もちろんです」
その会話を最後に煉獄は出発していった。
静かになった部屋の中で口を開いたのは胡蝶だった。
「……煉獄さんの任務に炭治郎君達を推薦しました。鍛錬を見ていましたがあの子達はこれからが楽しみです」
推薦とは珍しいと思ったが、こうして見舞いに来るたび庭の方から鍛錬している声が聞こえてきていた。
きっと胡蝶から見ても伸び代が大きくあったんだろう。
「…全集中・常中はすでに会得していた。大丈夫だろう」
「煉獄さんもいますしね」
今の鬼は全体的に活発になっている。任務の数も前と比較すれば三割ほど増えた。
それは大竹雫が長期的に動けないこの時期を見計らっての事なのかどうかは不明だが、しかしそれでも数年前から鬼側は大人しくなっていると言われていたのだから、この忙しさが元々のものなのだろう。
いかに『魁・大竹雫』という存在が大きな抑止力になっていたのかを実感させられる。
(前回の昏睡は二ヶ月で目覚めたと言うが……「こうも長く感じるものなのか」
「私も一日一日が待ち遠しいです…早く目覚めて欲しいですから。雫様の稽古を受けた隊士達含め皆そう思ってるんじゃないでしょうか」
そうだなと肯定する言葉を返しながら、義勇は雫と最後に会話した日のことを思い出していた。
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朝が昼に近づいた時間帯、太陽が照らす物の影がそれ相応の大きさまでに縮まった頃、一人屋敷の中庭で水の呼吸の素振りを行なっていると後ろから声をかけられた。
「おはよう義勇」
「……おはようございます」
二ヶ月ぶりに顔を合わしたその人は大竹雫だった。
いつもこの人は自分の屋敷を留守にしていて、必ずと言って良いほど日本のどこかを歩いてるから、この屋敷に来たのはもう半年も前になるはずだ。
何用だろうかと素振りをやめて向き合った。
「真菰はいますか?以前約束していた稽古をしようかと思って来たんですが」
「……真菰は先程炭治郎の見舞いへ蝶屋敷に」
そういえば以前の魁稽古の時にそんな約束していたなと思いつつそう返事をすると、すれ違いになりましたねと呟いてありがとうと言うと門に向かって歩き始めた。
真菰が嬉しそうに喜ぶ姿が容易に想像できる。
魁稽古は数人を相手にしていてもその全員の動きの欠点から改善点を瞬時に見抜き、丁寧に指導する。
たった一度の稽古でも数ヶ月の鍛錬に匹敵するほどに動きが良くなる事は知る人ぞ知るもので、そのため長期任務中でも雫様に少しだけでも見てもらいたいと会いに行く隊士がいる程だ。
「……俺にも」
「…?」
「俺にも、一対一で稽古をつけてくれませんか」
いつからか、僅かに現れた焦りは徐々に俺の刀を振る腕を重くしていた。
錆兎が柱になった時は嬉しかった。兄弟のように仲が良い錆兎の実力が認められたのは自分としても嬉しかった。
数年前に新しい型を作った俺と錆兎の実力はそれほど離れてはいない。それでも手合わせすればその小さな差は決定的なものとなって俺と錆兎の間に立ち塞がっていた。
どんな鍛錬をすれば錆兎のような型が出来るのか。どんな鍛錬をすれば錆兎のように動けるのか。
どんな鍛錬をすれば、錆兎を超えられるのか。
『義勇の刀は静かに見せかけて、とても真っ直ぐ。ふふ、私はとても好きですよ』
そう考えながら刀を振っていた毎日の中、この人は稽古が終わった後そう言ってくれた。
歴代でも並ぶ人はいないと言われるほどに呼吸を極めた人が言ったその言葉は、胸の中にあった重い物を溶かしてくれた。
その次の日から刀が軽く感じた。そのおかげで俺の新しい型の完成度は高まったと言って良い。
俺はこの人にその型をまだ見せていなかった。自分が納得できるまで見せるつもりがなかったからだ。
完成した《凪》を見せたかった。その思いから言葉が思わず出てしまっていたのだろう。
「……今日は真菰で無理ですけど、次は義勇の番ですね」
やはり今日は無理かと、そう思っていた時ある一言を最後に残して去っていった。
「……新しい型、とても楽しみにしてますよ義勇」
その言葉に目を見開いた。
それは俺が決心するまで待ってくれていたとわかる言葉だったからだ。
きっと自分の実力で悩んでいたことも見抜いてあの言葉もかけてくれたのだろう。
大竹雫という女性は、年下なのにとても大人びいている。まるで母親ほど離れてる人と会話しているような、いつもそんな気分になる。
膝に乗せていた拳に力が入る。
(…いつか、必ず、俺は貴方に並んで戦える剣士に…「もっと強く…もっと…」
「………」
小鳥の鳴き声が鮮明に聞こえるほど静まりかえった部屋の中で雫の顔を見つめながら呟いた義勇の言葉に、胡蝶は言葉を発さない。
それは義勇が強く決心している表情と声色をしているのもあったが、その言葉には胡蝶自身も全く同じことを思っていたからだ。
(冨岡さん…皆さんもきっと同じ想いです)
静かに、荒々しく、皆それぞれがこの先に向けて決心を固めていく_。
次回「鬼になれ!杏寿朗!」「断る!!」
痣や縁壱などについての回想などは漫画の方で知ってしまったので追加しました。
一話更新するとランキングに一瞬載ってすぐ消えていくんですけど、なんでかなぁと一話から読み直したら最初のパパって感じの手抜き感と後半になるにつれての内容の濃さが全然違くてそりゃそうだわって思いました。手直ししようか悩んでおります。特に嫉妬の話が不人気っぽいですよね、そこは何もしませんけど。
前半と後半で作風を変えたりしています。原作合流編あたりからの作風に統一しようかと思います。
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統一した方が良い
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別に気にしない
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前半のようなほのぼの要素も欲しい