時を操る狐面の少女が鬼殺隊で柱を超えたそうですよ 作:たったかたん
「恋柱はいないんですね」
作者
「…………oh my god」(ありがとうございます)
- 炎柱煉獄杏寿朗 -
その声を聞いたのは、父が炎柱を退いてから三年ほど経った頃だった。
「こんにちは、…槇寿郎さんはおられますか?」
狐面をつけた少女が、ある日父を訪ねてきた。
父から聞いていた。魁という新たな位に就いたという、恐ろしく天賦の才に恵まれた狐面の少女がいるのだと。
だが俺には、同い年に見えるその少女はどこか生気を感じれなくて、とてもじゃないがそうは見えなかった。
父の部屋へと案内してしばらく話した後に聞こえてきたのは、胸が締め付けられるような、裂けるような、悲しい声だった__。
いつかの記憶が蘇っていた。起きた時それが血鬼術である事に心を多少乱されたが、それで終わっていては柱はやっていけない。
乗客に寄っていく肉塊を足を止めずに切り続けてしばらくした時、列車が大きく暴れた。
竈門少年と猪頭少年が鬼の頸を斬ったのだろう。その証拠に鬼の悲鳴のようなものまで響いていた。
「うむ!よくやった!」
言われたことをやり遂げた癸の二人に感心しながら列車が地面に傾いていく所へ飛び出した。
「誰も死なせん!」
炎の呼吸の型を全力で放ち衝撃を出来るだけ和らげた後、二人がいるであろう先頭車両の近くへと足を運ぶと力なく倒れている竈門少年を見つけた。
近くまでくると腹に深傷を負ったと見てわかった。
「全集中の常中ができているようだな!感心感心!」
「煉獄さん…」
竈門少年は出血と痛みで余程体力を消耗しているのかどうやら話しかけるまで俺に気付かなかったようだ。
「常中は柱への第一歩だからな!柱までは1万歩あるかもしれないがな!」
「頑張ります…」
「…腹部から出血している。もっと集中して呼吸の精度を上げるんだ。体の隅々まで神経を行き渡らせろ」
今は止血が最優先だ。致命傷ではないが放っておけば出血が多すぎて回復まで時間がかかるだろう。
それに常中が出来ているのなら止血させる事も可能のはずだ。
「血管がある。破れた血管だ」
竈門少年が俺の思惑を感じ取ったのか意識を集中させていく。だがまだ足りない。息が荒くなっている竈門少年に語りかける。
「もっと集中しろ」
その一言で何かを掴んだ表情ようだ。
「そこだ。止血、出血を止めろ」
出血した場所まで特定はできたが止血までには至らず、どうやら集中し切れていないらしい。苦悶の表情をする竈門少年のおでこに人差し指を押し付けた。
「集中」
「……ぶはっ!はあ、はっ…?」
その一言と同時に苦悶の表情が意味のわからないと言った表情になって俺を見上げた。どうやら止血できたらしい。
「うむ、止血できたな」
竈門少年を見ていると昔の自分を思い出す。呼吸に苦戦していた頃の俺を。
「呼吸を極めれば様々なことができるようになる。なんでもできるわけではないが、昨日の自分より確実に強い自分になれる」
「…はい」
今日の戦いで見たこの少年含め他の二人もきっといい剣士になれる。時間はかかるだろうがこうして生き残れたのだから柱だって夢ではない。
「皆無事だ!怪我人は大勢だが命に別状はない!君ももう無理せず…」
その瞬間、後方の方から強い衝撃音が轟いた。
振り返ると舞った土煙から見えたのは上半身が半裸の筋肉質な鬼だった。顔も含めた身体中に何本ものの痣が線のように走っていて、そしてその両眼には上弦参の文字がハッキリと見えた。
(上弦の参だと?)
そう認識した瞬間、上弦の参は炭治郎に一直線に拳を叩きつけようとした。
(させん!)
《炎の呼吸 弐ノ型 昇り炎天》
炭治郎の頭までわずかな所に迫っていた左拳を真正面から肘まで縦に切り裂くと軽い身のこなしで距離を取った。
口角を上げてこちらを見ながら切り裂いた腕が普通の鬼ならありえない速度でくっつく。
「いい刀だ」
(再生が速い…この圧迫感と凄まじい鬼気、これが上弦)
それにこの鬼は弱っている竈門少年から狙った。その時点で既にこの鬼には嫌悪感を抱いていた。
「…なぜ手負いの者から狙うのか理解ができない」
そう聞けば当たり前だろうと言わんばかりに答える。
「話の邪魔になると思った、俺とお前の」
「君と俺がなんの話をする?初対面だが俺は既に君の事が嫌いだ」
「そうか、俺も弱い人間が大嫌いだ。弱者を見ると虫唾が走る」
虫唾が走るという鬼に対して心の中で合わないはずだと納得した。弱い者に対しての見方が真逆だからだ。
「俺と君とでは物ごとの価値基準が違うようだ」
「そうか、では素晴らしい提案をしよう。お前も鬼にならないか?」
「ならない」
鬼からの素晴らしい提案など碌な物でないことなど簡単に想像できたが、案の定だと即答する。
「見れば解るお前の強さ、柱だな?その闘気練り上げられている。至高の領域まであと僅かと言っていい」
「俺は炎柱煉獄杏寿朗だ」
「俺は猗窩座。杏寿朗、お前がなぜ至高の領域に踏み入れないのか教えてやろう」
そう言うと俺を指差し目を見開いて言い放った。
「人間だからだ、老いるからだ、死ぬからだ。鬼になろう杏寿朗、そうすれば百年でも二百年でも鍛錬し続けられる、強くなれる。あの狐の女を超えるのだって夢ではない」
狐の女という言葉に、無意識に眉がピクッと反応した感触があった。
どうやらこの鬼とは根本的に合わないらしい。
「老いることも死ぬことも、人間という儚い生き物の美しさだ。
老いるからこそ、死ぬからこそ、たまらく愛おしく尊いのだ。
強さというのもは肉体に対してのみ使う言葉ではない。
この少年は弱くない、侮辱するな。お前の口から、あの方を語ることは許さない」
鬼ならば、死に対しての恐怖も無くなるだろう。
鬼ならば、老いることもなく何百年という月日を歩み続けれるのだろう。
鬼ならば、強くなり続けることもできるのだろう。
だが、それは鬼に人間だった時の感情がほとんどない状態でいるからだ。血肉に飢える日々を過ごし、深傷を負ったとしてもあっという間に塞がる。そんな日々を数日と過ごせば人の生き方の美しさも、その儚さもわからなくなる。
『鬼は哀しい生き物です。どこかの誰かの親で、子供で、平凡な日々を過ごしてきたはずなのに気が付けば血肉に飢える毎日。
昔は違いましたが、今の私が言う「人を救う」には、彼等のことも含んでいるんですよ、杏寿朗』
柱になったばかりの、魁稽古の後に雫様と語った記憶。
『私は鬼殺隊のみんなも、普通の生活を過ごす人も、鬼にされた人も、みんなを救いたい。贅沢だと言われてもそうしたいんです』
(あれほど、追い詰められていたのに、鬼を恨んでいるはずなのに、それをも救うというのか)
狐面を外して話す夕陽に照らされたその横顔から目が離せなくて、俺は心の底から大竹雫という女性の生き方も、外見も、内面も、全てが美しいと思った。
その女性が俺をここまで戦えるようにしてくれたのだ。
鬼になど、なるはずがない。
「何度でも言おう、君と俺とでは価値基準が違う。俺は如何なる理由があろうとも鬼にはならない」
「それは___狐の女を超えられると言ってもか?」
「そうだ」
そう答えると武術の構えか、掌をこちらへ向けると大きく股を開いて体勢を低く構えた。その足元には氷の結晶のような紋様が浮かび上がる。
《術式展開 破壊殺・羅針》
「鬼にならないなら殺す」
《一ノ型 不知火》
その一言で煉獄と猗窩座は同時に地面を蹴り、刀と拳がぶつかった瞬間、爆発したような音が鳴り響いた。
「今まで殺した柱達に炎はいなかったな!そして俺の誘いに頷く者もいなかった!何故だろうな?同じく武の道を極める者として理解しかねる!選ばれた者しか鬼にはなれないというのに!」
瞬きにも満たない一瞬の最初の攻防から距離を取った猗窩座が空中を舞いながら構えを崩さずに語りかけてくる。
「素晴らしき才能の持つ者が醜く衰えていく。俺は辛い、耐えられない、死んでくれ杏寿朗!若く強いまま!」
《破壊殺・空式》
《肆ノ型 盛炎のうねり》
空中で鋭い拳がこちらに向かって放たれた。
何かが来ていると直感でそこに向かって広範囲を切り裂く型を放つと刀に音と衝撃が伝わってくる。
(虚空を拳で打つと攻撃がこちらまで来る。一瞬にも満たない速度。このまま距離を取って戦われると頸を斬るのは厄介だ)
猗窩座が離れたところに着地した瞬間、地面を強く蹴った。
(ならば近くづくまで!!)
猗窩座と刀の間合いまで接近して型を連続で放ち、右腕を斬り飛ばした。
「……っ素晴らしい!!」
だがさすが上弦と言えるほどの早さで腕を生やすとこちらの速さに適応して的確に刀を拳で弾いてくる。
「間違いなく俺が戦ってきた柱の中で、お前が最強だ!!」
その攻防で更に猗窩座の笑顔が凶悪に染まっていく。
「鬼になれ!杏寿朗!!」
「断る!!」
激化する攻防の中、真後ろで動く気配を感じとり僅かな隙に振り返ると炭治郎が立ち上がろうとするのが見えてとっさに叫んだ。
「動くな!動いたら致命傷になるぞ!待機命令!!」
その声でこちらを見て固まる少年を見てそれでいいと心の中で呟く。
「俺だけを見ろ杏寿朗!!弱者に構うな!!」
《血鬼術 破壊殺・乱式》
《伍ノ型 炎虎》
杏寿朗に向かって一瞬で数十にも及ぶ放たれた拳を虎のように見える斬撃を放って相殺し、更に猗窩座の体に無数の切り傷を負わせて吹き飛ばす。
それから何十、何百と打ち合いをすると強く弾き着地した所で猗窩座は武術の構えを解いた。
その瞬間にも何十と切り刻まれた傷は見る見るうちに無くなっていく。
(…これが上弦か)
戦況は確かにこちらが押している。だが自分も身体には軽くはない無数の傷が出来ていた。攻撃がいくら一方的でも傷が治ると治らないでは時間が経つにつれて形勢は変わってくる。魁稽古のおかげで体力は余りあるが、このままでは負傷によって動けなくなっていくのは目に見えていた。
(実力はこちらが上だが、猗窩座の動きがこちらについてくるようになってきている。この状態が続けば俺が先に死ぬ)
後数回の攻防が生死を分けるだろうと考えていると猗窩座が静かにこちらを見た。
「………杏寿朗、お前は確かに強い。ここまで押されたのは初めてだ。だがお前もわかっているだろう、このままではお前は俺には勝てないし、たとえこのまま生き残ったとしてもあの狐の女に並ぶ事もなく死んでいくのだと。
何千という鬼を消滅させて、上弦の鬼を一方的に斬り続けることができる人間など、人ではない、鬼よりもよっぽどの化け物だ。アレには他の人間が並ぶ事など出来ない。
アレはこの世にいてはいけないモノだ。なぜ奴を恐れない?理解ができない強さは恐怖でしかないはずだ、杏寿朗」
そこまで聞いた杏寿朗は、思わず刀を握る拳を更に握りしめる。
(何を言っているのだ、こいつは)
雫様の事を『化け物』だと言うのはまだわかる。柱全員を相手に無傷で立ち回り反撃までするなど人がしていい領域を超えているからだ。しかしそれはあくまでも褒め言葉としての『化け物』だ。
「…お前が」
「……?」
「お前のような悪鬼が!あの方の何を知っていると言うのだ!!」
だが『この世にいてはいけないモノ』、『理解ができない強さは恐怖でしかない』と言う言葉に怒りが抑えられなかった。
「恐怖だと?そんなものあるわけないだろう。柱、いや鬼殺隊の全員があの方の刀を振る姿を見て恐るなど全くない。
あの方は魁だ。誰よりも戦場で先頭に立ち、この血に染まった鬼との戦場を明るく照らす唯一の光だ」
話していくうちに猗窩座の目が鋭くなっていくが、杏寿朗の口は止まらなかった。
「あの方の背中を見た全員が思うのだ。『この人がいれば決して負けることはない、大丈夫だ』と。鬼殺隊とあの方を支える為に俺たち柱はいるのだと確信しているのだ。
何度でも言うぞ猗窩座、お前の口からあの方を語ることは許さない。お前はここで終わらせる」
「……それは残念だ杏寿朗、お前をここで殺さないといけなくなるなんてな!!」
「俺は俺の責務を全うする!!ここにいるものは誰も死なせない!!お前はここで倒す!!」
《炎の呼吸 奥義》
広範囲の攻撃範囲と根こそぎえぐり斬るこの型は炎の呼吸であまりの威力の高さから奥義として唯一分けられている型だ。
体をひねり闘気を極限まで高める構えをする。
「……素晴らしい闘気だ、その気迫と精神力、一部の隙もない構え、……やはり鬼になれ!俺と永遠に戦い続けよう!!」
《術式展開》
猗窩座は大気を震わせていると錯覚するほどの闘気の高まりを肌で感じてか笑顔をより凶悪に深めると両方の拳を深く引き、先程よりも力を込めている構えをした。
その瞬間、捻った力を解放すると同時に抉れる程に強く地面を蹴った。
《玖ノ型 煉獄》
《破壊殺 滅式》
二人の激突は列車が脱線した音にも負けず劣らずの轟音が鳴り響いた。
その場所が土煙に包まれる中、炭治郎と伊之助は見てしまった。
「………っ!!」
舞っている土煙の中から左手が空へと吹き飛んでいくのを__。
今更こそこそ話
無惨が奈落にがっかりした理由は奈落自体が太陽を克服してくれると期待していたのに自分に似た血鬼術に進化しただけにとどまったから。
前半と後半で作風を変えたりしています。原作合流編あたりからの作風に統一しようかと思います。
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統一した方が良い
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別に気にしない
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前半のようなほのぼの要素も欲しい