時を操る狐面の少女が鬼殺隊で柱を超えたそうですよ   作:たったかたん

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短めです


激闘の末

 

猗窩座は楽しむと同時に焦っていた。

 

 

(……っ!これが奴らが話していた事か!)

 

 

 

狐の女、大竹雫を後一歩まで追い詰めたあの夜の次の日に無惨様は上弦を召集した。動けなくなっている大竹雫を仕留めるための()()()()についての話し合いだった。

最初は大竹雫を仕留め損なった黒死牟と柱を一人も屠れなかった童磨が無惨様からなにか仕置きが下るだろうと思っていたが、それはなかった。

 

あの無惨様がさぞ仕方ないというように、なんなら柱の戦力が分かっただけでも良いと言っていたのだ。

 

なぜ責め立てないのかと、一瞬だが脳裏に過ってしまい無惨様に睨まれる事となったが、それは良くある事で別に良かった。

 

問題はその後、その二人がわざわざ俺に忠告しに来たのだ。

童磨からは、今までの柱とは一線を違えている、たとえ一人でもきっと遊ぶ余裕は無かったかもしれないと。黒死牟からは、日の出までに猶予があったとしても大竹雫の首は斬れなかっただろうと。

 

 

(…軟弱どもが)

 

 

その時は心の底から軽蔑したと同時に、あの二人がそこまで言うほど柱が強くなっているのかと期待した。

 

結果、杏寿朗は想像以上だった。

 

俺の血鬼術は相手の闘気が強ければ強いほど羅針の反応が強くなり、どんな攻撃にでも感知し対応する。現に杏寿朗の闘気は今まであった人間の中で一番強い反応を示していた。

最初は様子見もあったが途中からその考えは全くなくなった。俺の破壊殺・羅針の感知速度を僅かに上回る速さで刀を振り続けているからだ。

 

序盤こそ楽しくて鬼にして戦い続けたいと心から思ったが、時間が経つにつれてその考えはなくなった。

なにが今までの柱達と大きく違うのかと言えば、刀を振るう力や速さと言ったもの全てが全くと言っていいほどに衰えないのだ。

今までの人間ならとうに限界を迎えているはずの時間を過ぎても、こいつは人間なのかと一瞬疑ったほどに体力の限界を感じさせない戦いをしていた。

 

しかしたとえ拮抗した戦いを繰り広げようとも、それはお互いが同じ条件であるが故に成立するものだ。杏寿朗は人間で俺は鬼。

俺に傷を作り続けても放っとけば瞬きの間に完治する。しかし少しずつではあるが浅くない傷を負っている杏寿朗はもう少しで体力ではなく肉体に限界が訪れる。

 

結局俺には勝てない。

 

だから言ってやったのだ。あの女の元にいるよりは鬼になった方が良いと。しかし俺の言葉で奴は激昂した。俺の言葉を真っ向から否定するその言葉に、俺は悲しくなった。

 

 

(残念だ、本当に)

 

 

せっかくここまでの好敵手を見つけたのに、殺さないといけないなんてなんとも悲しい事だと心の底から思った。だが構えに入った杏寿朗を見てその考えは吹き飛んだ。

 

元々強かった闘気が更に跳ね上がり、体中の細胞がこの人間を脅威と認めたのだ。

 

「……素晴らしい闘気だ、その気迫と精神力、一部の隙もない構え…」

 

(素晴らしい、素晴らしいぞ杏寿朗、お前と戦い続ければ俺は必ず至高の領域に到達できる…!)

 

「やはり鬼になれ!俺と永遠に戦い続けよう!!」

 

 

《破壊殺・滅式》

 

《玖ノ型 煉獄》

 

 

拳と刀がぶつかったその瞬間、頸に熱い一つの線が走った感触があった。

 

 

 

 

 

_____

 

 

 

 

 

 

 

大竹雫を無惨様の記憶で見た時、細胞から神経と言ったものがその人間を嫌悪した。

 

不愉快だ、奴の存在が。許せなかった、奴の強さが。

 

あの女を前にすれば俺は弱者なのだと思わされるからだ。

 

 

俺は弱者が嫌いだ。弱者には虫酸が走る、反吐が出る。その存在と俺を同格に見られる存在が人間にいるのが耐えられない。

 

 

拳を放った瞬間、頸に熱い物が通り過ぎた。頸を斬られたのだと自覚するには時間はかからなかった。だが杏寿朗にも俺の拳が確実に届いた手応えがあった。相打ちだ。

 

 

(まだだ、まだやれる。俺はまだ強くならなければならない。誰よりも強く__)

 

 

『…狛治さん』

 

 

天と地が逆さまになる。

 

 

(誰だ、俺に話しかける奴は)

 

 

誰なのか分からない。分からないが、でもその声が大切だったことは知っている。

 

土煙の僅かな隙間から、東の山から太陽が覗き始めているのが見えた。頸を斬られた。たとえ再生できても太陽には勝てない。そう考えている間にもどんどんと顔と体が崩れていく。

 

 

(俺はまだ強くならればならない。俺はまだ強く___)

 

 

『生まれ変われ、少年』

 

 

いつか聞いた太い声が聞こえた気がした。

 

 

 

ああ、思い出した、思い出してしまった。俺が人間だった時の記憶を。なに一つ約束を守れなかった人生を。

 

家族を失った世界で生きたかったわけでもないのにただただ無意味に師範の素流を血に染めて何百年も生きた。

 

(親父…師範………恋雪)

 

まったく……守るものなど何もないのに無意味な殺戮を何百年も繰り返した俺の方がよっぽど__。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ、なんて無様で、惨めで、滑稽な話だ___……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____

 

 

 

 

 

 

ここはどこだと辺りを見渡す。

先ほど頸を斬らんと渾身の一撃を叩き込んだはずだが。

 

 

(暗い……俺は死んだのか)

 

 

すると暗闇であった目の前が一気に明るく広がった。その光景は、母上が俺に何故自分が他の人よりも強く生まれたのかと問われた時の記憶だ。

 

その問いに俺は素直に分からないと答え、そして母上はその答えを弱者を守るためだと言った。

 

 

『生まれついて人よりも多くの才に恵まれた者は、その力を世のため人のために使わねばなりません。天から賜りし力で人を傷つけること私腹を肥やすことは許されません』

 

(ああ、すまない母上)

 

 

『強く優しい子の母になれて私は幸せでした。あとは頼みます』

 

 

(申し訳ない母上、どうやら俺は死んでしまったようだ)

 

そう言うと記憶の中であるはずの母上が俺と目があった。

 

 

『…まだですよ杏寿朗。貴方にはまだこちらへ来ることは許しません。貴方の気持ちを、覚悟を継ぐ者たちへ繋ぎなさい』

 

 

(ああ、しかし俺は継子がいない。それにもう…)

 

 

…っ!……っ!!

 

 

(なんだ、誰かが遠くで叫んでいるのか?)

 

 

…ごくさん!煉獄さん!!

 

 

その言葉が自分を呼んでいるのだとわかった瞬間、体がふわりと浮かび上がる。

これは?と驚いていると再びこちらを見上げた母上と目があった。

 

『責務を果たしてきなさい、杏寿朗』

 

その瞬間、目の前の景色が霧のように霞んで見えなくなり再び暗闇に包まれた。そして暗くなった視界がぼやけ、どんどんと色を認識しはじめたその目の前にはこちらを覗き込んで涙を流す竈門少年と猪頭少年の姿があった。

目は開いたが身体は地面に縛り付けられたのかというように重く動かせなかった。

 

 

「……竈門…少年、猪頭少年」

 

 

「煉獄さん…っ!よかった……良かったぁ…」

 

 

俺が二人を呼ぶと切羽詰まった表情から安堵の表情へと変わった。全身が痛い、特に左腕と左目からは激痛が走っている。どうやら最後の攻防でやられたようだった。

 

「…猗窩座は?」

 

「…煉獄さんが放った型で頸を切り落とせました。でもその攻防で煉獄さんの左腕と左目が……」

 

「構わない。それで乗客の命が、お前達後輩の命が守れたのなら、柱であるなら誰だって後悔はしないだろう」

 

上弦の、しかも参を単独で倒せたのだ。左腕と左目など安いものだと思う。

ふと右目を動かせば太陽が完全に山から姿を現しているのを見て目を細めた。

 

雫様が悲しむことになるだろうが、それでも少なくとも死ぬよりはだいぶマシだ。起きるまでには元気な姿を見せなければなと、太陽が昇る空を眺めながらそう心に決めた。

 

 

戦いが終わったことに安堵し、少しばかり睡眠を取ろうとした瞬間、鎹烏の言葉で睡魔が吹き飛ぶどころか全身の血が逆流したような感覚に襲われた。後から来た我妻と合流した三人も悲鳴に近い驚きの声を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カァー!カァー!チョウヤシキシュウゲキ!シュウゲキィー!ヒガイジンダイノモヨウ!ジンダイノモヨウー!」

 

 

 

 





次回「蝶屋敷壊滅」



あぁ、爆弾を投下してしまった……次回から最終章に入ります……うっ…どうか最後までかける力を…オラに力を……

前半と後半で作風を変えたりしています。原作合流編あたりからの作風に統一しようかと思います。

  • 統一した方が良い
  • 別に気にしない
  • 前半のようなほのぼの要素も欲しい
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