時を操る狐面の少女が鬼殺隊で柱を超えたそうですよ 作:たったかたん
「沢山の評価ありがとうございま【☆0×2の攻撃!】がはぁ!!!」
「効果は抜群だ!!作者に99952×2のダメージ!!残りHP 2344659!!」
弦を弾く音が鳴り響いた。
華やかな襖が開けられ足を一歩踏み出したその瞬間、無数の殺気を感じ取り柄に手を伸ばした。
開けた視界に、型を放つ間合直前にまで迫って来ていた人間を蹴散らす、もとい殺す為に接近される前に月の呼吸を放った。
【月の呼吸 陸の型
たった一振りで空間に放たれる斬撃は数えるのすら億劫になる程。一つの斬撃さえも簡単に人体を二つにする威力があるし、その斬撃にさえ更に歪で不規則な斬撃が纏わり付く。こちらに迫る鬼殺隊士は五人、十分すぎるほど余りがくる。
「……ほう」
しかしその全員が鬼になってさらに強化された月の呼吸を受けて擦り傷すら負わずに距離をとって刀をこちらに構えてこちらを睨んでいた。その中には一ヶ月前に大竹雫に振り下ろした刀を受け止めた男と女がいた。さらには童磨と戦闘した水の剣士二人もいる。
「……今の私の型を相殺したのはお前だな、赤羽織」
五人の中の一人、顔を知っている男を睨みながらそう問うた。しかし無表情のままの男は答える義理は無いと言わんばかりに無反応を決め込んでいる。ふと周りに目を向け確認すると広い中庭の真ん中に下されたらしい。…あの血鬼術に”下ろす”という表現が正しいかは定かではないが、部屋の中よりは邪魔物もなく視界が開けていて戦いやすいだろう。
そこまで思考を巡らせて再び相対する鬼殺隊を視る。透き通る世界を視る目には、視た人間の骨や筋肉の成熟具合、またはどの関節を動かそうとしているのか息をするように認識することができる。どうやら目の前にいる鬼殺隊はその全員が柱と認定できるほどに鍛えられた身体をしていた。その中でも水の呼吸を使う男二人は全盛期と言って良いほどだった。これほどの戦力と人員を大竹雫の護衛として回せる今の鬼殺隊は、過去の中でも脅威に値すると再認識したところで一人の男に目が止まった。
「……まさか、こんな所で我が末裔に会えるとはな」
「……なんだと?」
その男は”我が末裔”という言葉に顔を険しくして反応した。
「お前…名は、何という」
「……時透無一郎」
一瞬答えるか悩む素振りをしてそう口にした。成る程、どうやら”継国”の名は絶えたらしい。何百年も経っているのだ、仕方ないだろう。
「……わたしが人間の頃の名は、
「!?」
その言葉に無一郎以外の者も驚愕する反応を示した。だが一呼吸の間に全員が落ち着きを取り戻す。
「ふむ…精神力も申し分ないと言う事か」
大方精神を乱す為の虚言とでも思われたのだろう。そう思ったその瞬間、無一郎が地面を強く踏み込むのが見えた。
【霞の呼吸 弐の型
瞬きの間に膝下まで接近し、低く構えた状態から八つの斬撃を目に捉えることの出来ない速さで放たれた。それを軽く後ろに跳ぶことで回避する。体の成熟具合を見ると年は一四あたり、その若さでこれほどとはと内心で敬意を表する。
「…霞か…成る程、なかなか良い」
そう呟いたと同時に両横から刀が空気を切り裂きながら迫っていた。
【水の呼吸 壱ノ型 水面斬り】
右横にいた頬に大きな古傷のある男が頸に向かって放った技を上半身を軽く後ろに反らすことで躱す。その避け方を想定していたのか左横にいた花羽織りの女が正確に追撃を放っていた。
【水の呼吸 弐の型 水車】
正確に頸を狙った刀を反らした上半身を元に戻すことで躱そうとした瞬間、真上に蝶のように舞う女が突の構えをしているのを目視した。
「!」
様子見も兼ねて抜くつもりのなかった刀を抜刀して型を放とうとする。成る程、童磨がたった三人を相手に苦戦した訳だと納得した。
そしてこのままでは自身の抜刀速度を持ってもその前に女の切っ先が届くだろう。
【月の呼吸 伍の型
刀を振らずに多数の斬撃を放つ型だ。もっともこの距離からで放ってもこの者達が深傷を負わず切り抜くのは目に見えているが。
一気に迫っていた四人が退く姿勢を見せると同時に背後から声が聞こえた。
「水の呼吸」
その声に振り返り目を見開く。そこにはさっき月の呼吸をほとんど相殺した技を放った赤羽織が、その時よりも体幹を捻った構えでいた。
おかしい、上弦の壱である私を相手に、瞬きの間に満たない時間をここまで繊細で計算され尽くしているような連携を取れるなど、まるで__
【
(まるで私ほどの実力がある存在と戦闘してきたかのような__)
その瞬間、最初に見た型よりも刀を振るう速さが段違いの技が此方に向かって放たれた。
______
時透無一郎
行けるとそう心で叫んだ。上弦の壱を相手にこれほどうまく追い詰めることができたのは柱達全員で雫様を相手にする魁稽古の賜物と言って良い。自分が最初に放った霞の型と錆兎さんと真菰さんが放った型にこの鬼の動きは全てが最小限の動きで全ての攻撃を最適解の躱し方をしていた。その動きは皮肉にも雫様にそっくりだった。
最初こそ恐ろしい数の斬撃を放つ攻撃と最強の鬼の鬼気に押され、末裔だのなんなので心を乱されたが、次の考えで落ち着いた。
(この鬼は雫様ほどでは無い)
柱全員の技を刀をほぼほぼ抜く事なく躱し切ることもよくあるのだ。四人目の胡蝶さんの攻撃で刀を抜こうとしているのを見てそう確信した。それと同時に五人目の冨岡さんの新しい型が放たれようとしていた。先日少し見せてもらう機会があったが、一年前にすでに会得していたと言う拾壱ノ型凪の守りの型とは違って全面攻めの型、凪よりも数段上の剣速で放たれるその技は柱達でも不可避と評された。姿勢の崩れた鬼には防ぎきれない。そう思った瞬間、目の前が斬撃で埋め尽くされた。
「ぐっ!?」
恐ろしい数の月の形をした斬撃を直撃する物のみに絞って体の至る所に擦り傷を負いながらも刀で受けきった。斬撃に押され地面に線を作りながら止まり鬼へと視線を向ける。
「…成る程、大竹雫はやはり厄介な存在だ。だがあれとはまた違う、最強を見せてやろう」
舞った土埃から月に照らされて見えたのは、体から無数の刀を生やした上弦の壱だった。
_____
あの人を知ったのは、怪我から復帰して柱まで後一歩まで来た頃だった。お館様が連れてきた一人の女性。
「お久しぶりです。今日からあなたを指南をさせていただきます」
その人は僕を勧誘する為に何度か会ったことがあるそうだが、もちろんそのことは覚えてなくて、僕にとっては初対面だった。
名前は大竹雫と教えてくれたその人は今まで僕に刀を教えてきた誰よりも剣技が洗練されてて、怪我から復帰したばかりの時以来初めて相手に僕の刀が全く届かなかった。これが柱なのかと思っていた。しばらく毎日の様に稽古をつけてくれる日々が続いた。
だが柱就任の時、雫様はお館様の隣にいた。その事が気になって何故なのかと聞いたら、あの人は魁という柱よりも最上位に位置する位を頂いているのだとこの時初めて知った。
柱になってから魁稽古というものにも参加する様になったが、そこで初めて自分の実力に近い人達のさまざまな剣技を目の当たりにして、しかもそれを何人も相手に全くの無傷で立ち回るあの人がどれだけ遠い存在なのかを教えられた。
僕は刀を握ってからすぐに柱就任したという事で経験不足を補うために他の人よりも指南してくれることがあったが、最後だと言われた個人稽古で、地面に仰向けで倒れている汗だくの僕の近くに腰を下ろすと、少しだけ寂しそうな声で話しかけてきた。
「柱になったのなら、人の上に立っている自覚と覚悟が必要です。自分の刀で何百という命が救え、自分の考え一つでこれからの鬼殺隊が変わってしまうかもしれないという事を自覚しなければなりません。
立場と武の強さだけではありません。自分に関わる事全てをちゃんと見て、向き合ってください。分からないなら、知らないのなら一から調べて知識を得てからもう一度向き合いなさい、考えなさい。
……この言葉は、私を魁として育ててくれた方が伝えてくれた言葉です。次の魁があると言うのなら、きっとそれは無一郎になるでしょう。だからこの言葉は忘れないで下さいね」
なにを言っているのかと思ったが、どうやら僕が他の柱達よりも稽古をつけてくれるのは魁の継子候補という理由だと言う事は分かった。だけど、僕は”次の魁”と言う言葉に引っ掛かりを覚えた。次があるものとはとてもじゃないが思えなかった。僕がどれだけ経験を積んで鍛錬しようが、鬼殺隊最強となったとしても、それは"柱"の域の範疇だろう。だけどその心の声は口に出す事なく、二つ返事で会話を終えてしまった。
その日からしばらくした後、あの人は日本中を歩きにいった。どうやら僕と会う以前から一度の任務で一ヶ月帰ってこないのは当たり前で、何をしてるのかと柱の皆に聞いても鬼舞辻無惨を探していると言う答えしか貰えなかった。
たまたま話す機会があったお館様に尋ねたら、どうやら育手の所にも話しに行っては、最終選別に送る基準を上げたり、修行内容の見直しなどをしているのだと言っていた。
それはお館様がお願いしたのかと思ったら、もともと鬼舞辻無惨や上弦を探す任務の筈が空いた時間を利用しては近くにいた育手に寄っているのだそうだ。
その時最後にした稽古で話した言葉を思い出した。
『柱になったのなら、人の上に立っている自覚と覚悟が必要です。自分の刀で何百という命が救え、自分の考え一つでこれからの鬼殺隊が変わってしまうかもしれないという事を自覚しなければなりません』
ああ、この人は常に自分が何をすれば人をできるだけ救えるのか考えているのだとこの時はっきりと分かった。だけど柱を続けていくうちにはっきりした事がある。
あの人は自分のことを何も考えていないんだ。
ただでさえ疲労の溜まる長期任務を終えてきても自分の休暇を潰しては誰かに稽古をつけるし、上級隊士になる見込みが有りそうな者達をお館様と話し合って次の魁稽古の人を決めていくし、夜寝てるのかと思えば二、三時間寝てから代理がいるはずの自分の警邏地区に向かうし。魁屋敷にいる使用人の凛さんが教えてくれたから色々分かった。自分に関わる事全てを見るのなら、自分を大切にしないそれはどうなんだと言いたくなった。
……もう少し自分自身がどれだけの人に大切にされ、想われているのか自覚して欲しいと思っていた矢先、鷹帯山で意識不明の状態で帰還した。
初めて見た雫様の顔は一瞬息を忘れるほどに美しく、
僕は雫様が嫌いだ。
「鬼舞辻無惨が寝ている雫を放っていくとは思えない。…嫌な予感がするんだ…勘だけれど、雫のことを守ってやってくれないか」
後で少し悲鳴嶼さんが教えてくれたが、産屋敷家の勘は幾度となく当たってきていて、鬼殺隊の危機も救ってきたのだと。だから今回の勘も十中八九当たる。その言葉を聞いて黙っているはずがなかった。
「雫様には指一本触れさせない…!」
身体から無数に生やした刀と、巨大化し長刀と化した手に持つ気味の悪い刀を構えた上弦の壱を睨みながら、自分を奮い立たせる為に僕はそう叫んだ。
_____
音が聞こえた。パチンという軽い音。その音が聞こえた方へ顔を向けるが、そこは真っ暗闇しかない。
だが間隔を開けながら断続的にその音は鳴り続けてて、自然と足がそちらに向かった。辺りは真っ暗闇で向かう場所も目的もないのだから、それは些細な寄り道、暇つぶしでしかなかった。随分と長い時間この暗闇の中で歩き回っていたから、久しぶりの音がとても新鮮に感じ取れた。
大分進んだと感じた頃に、小さな光が微かであるが目に届いた。更に足を進めればその音と光はどんどんと大きくなり、パチンという音が大きく鳴り響いた瞬間、小さな光が自分を包み込んだ。
「……ここは」
どこかで見た様な、そんな気がする中庭に気が付けば立っていた。でも体の感覚はふわふわしてて実体感はない。いつかの夢のような、それに近い雰囲気だろうか。そんな事を考えていると、またパチンと音が聞こえた。でもそれは響く様にではなく、すぐに空気の中で消えてしまう様な音で、ようやくこの音の正体が分かった。
音がした真後ろに振り向くと、そこには大きな屋敷の縁側で、一人将棋をしている男性が一人いた。真剣な眼差しで架空の自分を相手にひたすら打つ姿は、やはり絵になるなと心の中で呟くと、男性の駒を打つ手が止まり、こちらを見た。
(ああ、やっぱり)
特に不思議な事はない。だって私は死んだのだから、先に亡くなった人に会ったりするだろう。考えている間に、こちらと目があった男性は正座の体の向きをこちらへ向けると、優しく微笑んでこう言った。
「お久しぶりですね、雫」
「お久しぶりです、誠さん」
とても懐かしい低めの声が、心地よく感じた。
次回「夢」
冨岡さんの新しい型は凪ではなくて時化でした…。名前的にこの作品にピッタリな言葉だったのでいつだそうかヤキモキしてました…いろんな意味で許して。。
時化:強風などの悪天候で海面が荒れる事。『凪』とは対義語です。
後初めて買ったMacBookで書きました。編集が間に合わなかったのはその為です、頑張りましたが変に感じたらすみません…。
前半と後半で作風を変えたりしています。原作合流編あたりからの作風に統一しようかと思います。
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統一した方が良い
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別に気にしない
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前半のようなほのぼの要素も欲しい