時を操る狐面の少女が鬼殺隊で柱を超えたそうですよ   作:たったかたん

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作者「え、明日仕事とか、え?まじ?」

社長「Mazi★」


激戦

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜明けまであと二刻までに縮まった頃、蝶屋敷の南側にあった納屋が強い衝撃と無数の斬撃によって切り刻まれ、ガラガラと音を立てて全壊した。

 

 

「ごほっ!ごほっ!!」

 

 

埃の舞う瓦礫の中からゆらりと立ち上がる影があった。頬に大きく傷のある男、錆兎だ。上弦の壱との戦闘は激しさと規模を増していて、瞬きすら命取りの状態が続いていた中、大きな斬撃を受け流せず刀で受けたものの吹き飛ばされてしまっていたのだ。

 

 

「無事か錆兎!!」

 

 

「……ああ!問題ない!!」

 

 

中庭で上弦から放たれる斬撃を躱しながらそう声をかけてきたのは義勇だった。こちらから中庭を見れば、庭に面していた蝶屋敷の縁側と部屋の部分は飛び交う斬撃によって半壊しているのが見えた。その光景に舌打ちしながらすぐに戦線に加わるために地面を蹴った。

 

 

(くそっ…くそっ!)

 

 

斬撃が飛び交う中庭に戻りながら心の中で錆兎はそう叫んで歯軋りをした。

 

今この戦線は余裕こそはないものの持ち堪えてはいた。ここにいる五人で深傷を負ったものはまだおらず、しかし少しずつかすり傷と瞬きの隙すら与えない熾烈さは、確実に魁稽古よりも早く体力を消耗していた。その中で錆兎は焦っていた。

 

 

(最初しか決定的な場面を作り出せていない!!)

 

 

最初の、まだ人間の面影を多く残していた姿から身体中から刀を生やし、儀式で使う神剣のような形をした長刀を持ち始めてからは一振りで現れる斬撃の数が倍以上になった。その数は義勇の”凪”ですら半分も相殺できないほどで、もはや近づくのは困難と言っていい。

 

 

(何か…わずかにでもこの均衡を崩せれば……!)

 

 

戦線に戻って戦況が変わらないまま半刻ほどすぎた頃、こちらを見る鬼が目を細めた。

 

 

 

「……もう手は出し尽くしたか?先程から私に近づくことすらできていないでは無いか」

 

 

その言葉に全員の顔が険しくなる。皆ここまで攻めきれ無いとは思っていなかったんだろう。

 

 

(もっと心拍数を上げろ!血の巡りを速く!)

 

 

ドクンを耳鳴りがひどくなってくる。自身の限界まで心拍数を意図して上げているせいだろう。

 

 

(まだ足りない。この鬼に届くためには、もっと、もっとだ。まだ上がる!!)

 

 

ドクンとしていた心音がその時、バクンという重い音になるのを感じた。体が熱い。耳鳴りが酷い。でもどうしてだ?体が__

 

 

(体が…軽い?)

 

 

 

その瞬間鬼が先程に見た構えをとった。

 

 

 

(来る!!)

 

 

視界の全てを埋め尽くす程巨大で理不尽な数の斬撃が放たれた。この型にさっきは弾き飛ばされてしまったのだ。

 

 

【水の呼吸 玖ノ型 水流飛沫・乱(すいりゅうしぶき・らん)

 

 

足の回転を止めず速度を維持する為素早い身のこなしを可能とする歩法でわずかな隙間を服を切られながらも鬼に向かって近づいていく。目線を外すことができないから見る事はできないが、他の四人も俺の動きに合わせて突っ込んでいるはずだ。体が不思議と軽い今なら行けると大きく踏み込んで後三歩まで接近した瞬間鬼は刀を大きく横薙ぎに一閃した。

 

 

【月の呼吸 捌ノ型 月龍輪尾(げつりゅうりんび)

 

 

「っ!!」

 

 

ここまで攻め込めたのにまた押されるのかと防御の姿勢を撮ろうとした瞬間、義勇が叫んだ。

 

 

「足を止めるな錆兎!!俺が開く!!」

 

 

「!?」

 

 

【水の呼吸 拾壱ノ型 凪】

 

 

斬撃を全て消すのではなく、一点に絞り放たれた凪は自分の目の前に迫っていた斬撃を吹き飛ばした。その光景を見て背筋にぞわりと鳥肌が走った。直感で分かる。この時を逃せば次は無いのだと。

 

 

まるで時間がゆっくりになったような錯覚に襲われる。体が更に熱くなった気もする。

 

 

自分も目の前の全ても鈍間に感じる世界で開けた隙間に向かって足を一歩踏み出す。

 

 

 

 

鬼と真正面に目が合う。わずかな焦りの見える表情で次の型を放とうとしている。

 

柄を握る手が痛みを感じるほどに強く握りしめた。ここを逃すわけにはいかないと型を放つ姿勢を取ろうとした瞬間、鬼の左横から無一郎が自力で躱し切って接近していた。

 

 

(無一郎…!)

 

 

無一郎に顔にいつの間にか大きな痣が広がっているのが見えたその時、鬼の目が無一郎を捉えていた。

 

 

 

 

 

罠だ。

 

 

 

頸を確実に斬れる力のある男にのみわざと斬撃の弾幕を薄くして誘い出されたのだと分かった。

 

 

駄目だ。このままでは俺か無一郎のどちらかは死ぬ。そうすれば均衡も崩れる。

 

 

放つ型もわずかに間に合わない。無一郎も気付いているようだったがもう、遅い。鬼の型が放たれるその瞬間___

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっ!?」

 

 

 

 

 

 

(!!)

 

 

 

 

 

 

上弦の胸を突きのみに特化した刀が貫通した__

 

 

 

 

 

_____

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

斬撃を躱しながらしのぶは自身に対して激昂していた。

 

 

(”まただ”、また何も役に立てずに終わる!!)

 

 

誰にも負けないくらい血反吐を吐いて鍛錬して来た。自分の体格を生かす術を手に入れるために誰よりも武器や薬学を学んだ。それは全て姉のカナエの時のような失態を、後悔をしたくない一心でここまで強くなれたのに。やっと雫様の重荷をわずかでも背負うことができるほど強くなれたと思っていたのに。

 

自分の毒は先の鷹帯山でも上弦の弐に対して動きを止める以外効果がなかった。有限の毒は少量ずつといっても尽きればただの突きでしかなくなる為長期戦には圧倒的に不向きであることを再確認した鷹帯山以降、毒を更に強力にするために配合を研究し直して今日に備えていた。

 

だが結果はどうだ。私は最初の攻防で数撃当てたくらいで、しかもその後は刃をかすめる事もなくただただ地面と空中を行き来して斬撃を躱すだけ。毒の効果は大きかった。当てた上弦の壱の腕や足が壊死してしまうほどに効果はあったが、警戒と技の威力が桁違いに激しくなり近づく事すらできない。

 

 

(頸を切れない分、速さに特化した私がこの状況を変えなければいけないのに……!)

 

 

馬鹿でかい刀を振り回す腕のどちらかに一撃でも入れば状況は変わる。それをすれば私は確実に死ぬだろうが、後の四人は私の犠牲を無駄にはしない。

 

そう思考を巡らせ覚悟を決めた瞬間、鋭い声が踏み込む足を止めた。

 

 

「駄目だよしのぶちゃん、誰もしのぶちゃんの死なんて望んでない」

 

 

ふと目を向けると真菰が横目でこちらを見ながら言っていた。その言葉に目を見開く。でもどうするの?この状況で犠牲なしなど甘いことを考えている場合ではない。そう目で訴えると一瞬鋭い眼光をしていた表情が柔らかくなって元の可愛らしい顔を覗かせた。

 

 

「大丈夫。絶対に私たちが切り開くから、しのぶちゃんに傷一つ負わさせずにあの鬼に一撃を入れられる距離に連れていくから」

 

 

その言葉に力んでいた心の中が柔らかくなったような、そんな錯覚を覚えた。

 

 

(……これは雫様のお説教をくらってしまうところでしたね)

 

 

少しだけ深呼吸をした。

 

 

「……分かった。貴方たちに合わせて必ず私が一撃を入れる!お願い!」

 

 

「うん、任せて」

 

 

そうやりとりした瞬間、鬼が大きく構えをとった。

 

 

【月の呼吸 拾肆ノ型 兇変・天満繊月(きょうへん・てんまんせんげつ)

 

 

またあの大技が来る。視界の隅で錆兎さんを先頭にして四人が四方から一気に突っ込み始めた。視界を埋め尽くす歪な月の形をした斬撃を皮一枚切られながら四人は一歩、また一歩と踏み込んでいく。

 

 

 

 

失敗は許されない。

 

 

 

 

心拍数を上げろ。

 

 

 

 

ドクンドクンという心拍音が大きくなっていく。

 

 

 

 

 

まだ、もっと血の巡りを速く__疾く!!

 

 

 

 

 

 

耳に聞こえる音がバクンという心拍音に支配され、耳鳴りのように感じる。もしかしたら小さなこの体で行うとなんらかの影響があるかもしれない。もうすでに体温が普通なら行動できないほどに熱くなっているのを感じるが、なぜだろう、不思議と体が軽く感じる。特に首元が熱く感じた。

 

 

目線の位置を地面から足の甲の高さまで極限に低くする。攻撃を避けていては最速の突きは出せない。肺が痛くなるまで息を大きく吸い込んだ。

 

 

 

 

(必ず!食らわせる_!!)

 

 

 

 

ドンという踏み込みは地面をしのぶの足よりも二回り大きく抉りながら、音を立て続けに鳴り響かせた。

 

 

(百足のように地面を這って、躱す!)

 

 

斬撃が髪を留めていた蝶の髪飾りを掠めて吹き飛ばす。しかし足は止めず、真菰を追い越した瞬間斬撃がわずかに薄くなっている空間で鬼の姿を目視する。そこには顔中に痣のある無一郎と古傷の部分に水の飛沫のような痣がある錆兎が鬼を挟んでいた。一瞬追い詰めているように見えたその光景だったが鬼に焦りがないことに気づいた。

 

 

二人を誘い出す罠だと分かった。瞬きに満たない時間で鬼が技を放とうとしていた。二人と違って三歩ほど距離がある。普通なら間に合わないだろう。

 

 

 

(させ、ない!!)

 

 

 

 

だがこの踏み込みならあと一歩で届く。これを失敗させたらなんて考えない。

 

 

ただこの鬼に刀を突き刺す事だけを考えろ__!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「やああぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 

 

 

大きく地面が抉れるほどに強く、足に力を入れて全ての音を置き去りにした。

 

 

 

 

 

 

【蟲の呼吸 蜈蚣ノ舞(ごこうのまい) 百足蛇腹(ひゃくそくじゃばら)

 

 

 

 

 

 

それは初めて黒死牟の認識外から意表をついた一撃となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____

 

 

 

 

 

 

 

 

「お久しぶりですね、雫」

 

 

「お久しぶりです、誠さん」

 

 

そう言葉を交わして縁側へと足を進めようとした。しかしその行動は誠の手で静止される。なぜかと言う目線を向けると、正座から立ち上がった誠が縁側の沓脱石(くつぬぎいし)に揃えてあった下駄を履いてこちらに歩いてきた。誠の着ている着物はよく休日に着ていた茶と紺の縦縞の着物だ。それでさえも懐かしく感じる。

こちらへと距離を縮めていき、手を伸ばせば届くところまで来て足を止めた。

 

 

()()()()()()()()()()……どうやら、僕の死を初めに雫には苦労をさせたようですね」

 

涙が溢れそうになるのをぐっと下に顔を向けて堪えた。その言葉に力なく首を横に振る。自分には泣く資格が無いと思っているから。

 

 

「……私は、皆さんを、…守れなかった」

 

 

堪えているのに両頬に水の筋を作りながらポタポタと、足元の茶色の土の色に焦げ茶色の小さな点を増やしていく。脳裏には昨日のように思い出せる五年前の記憶が鮮明に蘇っていた。

 

 

 

 

 

 

__約五年前、誠が死んでから立て続けに柱達が上弦に遭遇すると言う明らかに鬼側が意図して柱達を潰しにかかってきていた。そしてそのほとんどに間に合わず、カナエさん以外の柱達は自分の腕の中で事きれた。その時の声と顔が、腕と服にこびり付いた血の光景が脳裏に焼き付いて離れなくなった。寝ればその夢ばかりを見て、悪い時には柱達からなぜ救ってくれなかったんだと罵倒される夢もあった。そんな時にも崖から落とされる夢はお構いなしに流れてくる。

 

気がおかしくなりそうだった。もうあの時には自分は自分でなくなりかけていたのだろう。夜も寝れず、仲の良い人とも顔を合わしたくなくて何ヶ月も凛さんのいる魁屋敷に戻らない日々を過ごした。狐面をつけてるお陰で目の隈はバレずに済んでいたけどボロが出るのも時間の問題だと思っていた。けれど、魁稽古であった新人の子達が日々日々実力を伸ばし、私を師のように慕ってくれるようになってその時にやっと、私は”魁”なんだと言うことを思い出した、いや自覚したと言ったほうがいいのかもしれない。

 

その頃に誠さんに言われた上に立つ者として言葉の意味もやっと理解できた。

 

 

「……私にもまた守りたいものが、失いたくないものが出来てしまった」

 

 

壊したくないこの日常がまた崩れてしまいそうで、時間があれば毎日のように時の呼吸を極めた。時の呼吸の常中で空気の取り込みを最小限にする事で”瞬き”を意識を集中することもなく瞬時に発動させることができるようになった。瞬きの時間が八秒にまで限界が伸びて”流の雫”から”水鞠”が派生して、さらに生み出してはいけないような型までも作ってしまった。終型として”死ノ段 時雨”と名付けた。

あの時は鬼舞辻無惨に対しての憎しみに囚われていたんだと思う。

 

それでも日々毎日笑いかけてくれる凛さんや後輩達に救われて前を向き始めれた時に因縁の鬼、奈落と会ってしまった。自分が転生する前の大竹千鶴の過去を全て思い出してしまった私には、心の奥底から溢れ出る憎しみを抑えきれずに感情のまま後先考えず技を放ってしまった。”時雨”を使わなければ後一回”流の雫”を放てたかもしれない。しかしそれは結果論でしかない。もう私は死んでしまったのだから。

 

 

 

 

 

「__それに私は、魁として、鬼舞辻無惨を倒す…責任も果たせず、死んでしまいました。皆さんと約束したのに…」

 

 

 

嗚咽を抑えながらすみませんと誠に謝ると、ふふっと微笑んだ。

 

 

「雫はよくやりました。柱のみんなも悔いてはしていませんでしたよ」

 

 

優しい声でそう言われてまた涙が溢れそうになった瞬間、それにと言葉を続けた。

 

 

「雫と会いたいと言ってる子がいるんです」

 

 

「……え?」

 

 

そう言った誠がふと右横に顔を向けそれにつられて顔を向けると、驚きのあまり目を見開いた。そこには見覚えのある子が無表情でこちらを見つめていた。涙でわずかに焦点があっていないがそれでも分かる。

 

 

(…まさか)

 

 

腰まで伸びているサラサラとした癖のない黒髪、感情のない表情でいれば一瞬人形と間違われてしまいそうになる程整った顔、白く透き通った肌。知っている、知っているとも。だってその顔は__

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……千鶴、さん?」

 

 

 

 

 

 

 

__私の顔なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回「玉壺」



雫に柱達の攻撃がかすりもしないのは”瞬き”が完成して切り替えが容易になったからだったんですねぇ……チートバンザイ

前半と後半で作風を変えたりしています。原作合流編あたりからの作風に統一しようかと思います。

  • 統一した方が良い
  • 別に気にしない
  • 前半のようなほのぼの要素も欲しい
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