時を操る狐面の少女が鬼殺隊で柱を超えたそうですよ   作:たったかたん

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目指せ評価オレンジ。目指し搾りたてレモン。










真の目的

 

 

 

 

 

 

胡蝶しのぶが決死の覚悟により戦況を変える一撃を放つ半刻ほど前、木々が密集する森の中、大きな木が太い根本の部分からメキメキと音を立てながら地面に衝撃を響かせた。辺りを見渡せばその木のみならず、随分と広い範囲の木々が同じように倒れており、そこだけ竜巻が発生したのかと疑ってしまうような光景が広がっていた。遠くの高台から見れば禿山のようにそこだけ凹んで見える事だろう。

 

しかしその場に立ち、倒れた木や地面を見れば鋭利な刃物で斬られた木もあれば太く鋭い、忍が使う棒手裏剣に似たもの物が倒れた木や地面、まだ倒されていない木など至る所に突き刺さっていた。異臭がするところもあれば、そこにはなぜか大量の魚が跳ねている。少し知識のある一昔の人間が見れば忍者と妖怪が戦争があったのかと騒ぎ慌てる事だろう。

 

 

「ふー、よし。これであとはお前だけだ、タコ野郎。セコい戦いばっかりしやがって」

 

 

その場所の真ん中で淡い青色の刀身を刀を構えている男、伊藤正之助が立っていた。その目の前には四間(約7m)ほどの所で壺からぐねぐねと伸びている鬼がいた。

 

 

「時間はかかったが、三体一なら負けはない」

 

 

「……二人とも、結構傷を負ってる事忘れてない?」

 

 

正之助の言葉に永峰淳が同調すると呆れ顔の磐田(いわた)雄二が苦笑いしながらそう問いかけた。三人とも戦闘ができなくなるほどの深手は負っていないが金魚妖怪を雄二が、上弦の伍を正之助と淳の二人で相手をし、たった今雄二が最後の金魚妖怪を倒した事でやっと二人に合流できたところである。

 

雄二から見た二人は攻防の切り替えの瞬間、そのわずかな時間を休憩に利用し交代で鬼に当たっていたためまだ体力は残っているようだった。だが重傷とまで言わないが、それでも服が所々血だらけになるほどには傷を負っていた。なんなら隊服の一部は溶けて穴が空いたりしてる。

 

二人による攻撃は言わずとも鬼に届いていた。何度も傷を作り、あと少しというところで金魚妖怪の邪魔が入ってくるしいつの間にか持っていた小さな壺から血鬼術を出すしで、頸を切ることはできていなかったがこれで邪魔者はいなくなった。だがこれでもまだ攻めきれないだろうと正之助と淳は感じていた。

 

 

「三人がかりのくせにセコいとはどの口が言っている。ヒョヒョ、少々手加減をしたやったら調子に乗っているな糞虫」

 

 

「けっ、生臭い血鬼術でアホみたいな数で現れたり壺から魚やら蛸の足で攻撃してきたタコ野郎に言われても挑発にすらならねえ…よ!」

 

 

挑発を流して地面を強く蹴った。

 

 

【水の呼吸 壱ノ型 水面斬り】

 

 

一直線に頸を狙った刃は擦りもせずに空を切る。

 

また速くなりやがったと内心で舌打ちする。正之助と淳との戦闘が始まった頃からこちらも徐々にではあるが刀や地面を蹴る速度を上げ、何度も頸目前まで刀を振るってきた。しかし一段、また一段とこちらが速度を上げると鬼もそれに合わせるように上げてくる。しかし積極的に鬼から攻撃は仕掛けてこず、全て血鬼術による中距離からの攻撃に留まっていた。それに鬼の速さにはまだ対応できる範囲内で、そこに顔を向ければ鬼が直接拳を振りかぶっているのが見えた。

 

 

【水の呼吸 参ノ型 流流舞い】

 

 

その拳を首を傾ける事で紙一重に躱し更に右腕を切り飛ばそうと型を放つがまた空を切る。鬼は離れた壷からにゅるりと体を伸ばしていた。しかし正之助は更に追撃はしない。なぜならその鬼の両脇にその瞬間を狙っていた淳と雄二が刀を振りかざしていたからだ。

 

 

行けると思った瞬間、二人の刀は柔らかい物体を切り裂いた。

 

 

「……お前脱皮すんのかよ、めんどくせえ…」

 

 

近くにあったまだ倒れていない木に向かって呆れ声で正之助はそう呟いた。

 

 

「ヒョヒョ、危ない危ない。危うくやられるところだった」

 

 

嘲笑うように話す鬼は、先ほどの姿とは違っていた。小さな腕は消え、人の太ももほどの太さのある腕と水掻きのある大きな手と鋭い爪、全身には大きな鱗が張り巡らされている。

 

 

「それで、その姿何?もしかして最終的には魚になるの?海なら東に十里先だよ?」

 

 

「いや、そこは考えるだけ無駄…だろう雄二」

 

 

その姿に淳、雄二の二人もゲンナリした表情をしている。

 

 

特に雄二。

 

 

「ふん、追い詰められているのが自分達ということに気づかない愚かな糞虫共が何をほざこうと無駄なこと」

 

「へー」

 

「この姿を見せるのはお前達で三度目だ」

 

「意外と見せてるね」

 

「黙れ。この私が本気を出して生きられたものはいない」

 

「ここ陸地だけど鰓呼吸大丈夫?」

 

「口を閉じてろ馬鹿餓鬼!!」

 

 

返事をしてるのは全て雄二である。

 

 

「この透き通るような鱗は金剛石よりも尚硬い、それがさらに強力になった。あの方から血を頂いてすぐに私が壺の中で練りあげたこの完全なる美しき姿に平伏すがいい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんとか言えこの糞虫共!!」

 

 

 

 

 

あまりにも静かになりすぎて風で揺れる木の葉が視界に映らなければ時間が止まったような感覚に襲われていただろう。

 

 

「いや、お前が黙れって言ったんだろ」

 

「正之助の言う通りだ」

 

「え?感想欲しかったの?意外と欲しがりなんだね最近の魚って」

 

「……雄二、素で毒舌やめろ。あと俺がタコ野郎って言ってるんだから合わせろよ」

 

「いや正之助さん、あれどう見ても魚ですよ絶対。変な髪の毛で頸隠れてますけど絶対鰓ありますって」

 

「だからそれ考えるだけ無駄だろお前ら…」

 

 

三人のやりとりを見ていた鬼の体が小刻みに震えだす。

 

 

「……ヒョヒョヒョ。人の神経を逆撫でしおって…なら糞虫共に良いことを一つ教えてやろう」

 

 

明らかに怒気が混じったその話し声に三人は刀を構える。

 

 

「…良いことだと?」

 

 

「もう()()()()は十分だろうだからな。殺す前に教えておいてやる」

 

 

こういう時、反応は大体二つに分かれる。ほんとにヤバいもので背筋に冷や汗が流れるようなものと、鼻で笑ってしまうようなどうでも良いものだ。しかし今まで数々の鬼を相手にしてきた三人は直感で感じていた。これはやばい方だ。

 

 

 

「私が仰せつかったのは、お前達の足止め。そして大竹雫は()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「「「!?」」」

 

 

 

 

その発言の刹那、正之助の目に写ったのは目と鼻に先に迫っていた鬼の姿と拳だった。先程より比べ物にならない速さにしまったと思った瞬間、体に強い横の衝撃が走り視界が霞んだ。

 

 

目を開けると遠くで鬼の周りに地面が何か沸騰しているような音とともに魚に埋め尽くされたところが見えた。

 

 

そして自分が雄二と淳に蹴られたのだと分かった。

 

 

「何ぼーっとしてるんですか正之助さん、早く蝶屋敷へ向かってください。ここは俺と淳さんで相手します」

 

 

「あぁ、心配ご無用だ正之助。あと一刻もしないうちに応援が駆けつける。今はそれよりも雫様の元へ急げ」

 

 

 

「……っ!!すまない!ここは任せるぞ!!」

 

 

刀を構えた二人の背中にそう声をかけ蝶屋敷に向かって地面を蹴った。

二人で倒しきれなかった上弦がさらに速くなったのだ。淳が"俺達が倒す"ではなく"応援が来るから安心しろ"と言った理由はすぐに理解した。

 

 

(早く蝶屋敷にいる者達に伝えなければ!この鬼が言っていることが嘘ではないのであれば()()()()にあと一体上弦が入り込んでいる!!)

 

 

背筋に冷や汗どころか全身が一瞬固まって頭の中が真っ白になってしまった。雫様を鬼にするわけにはいかない。それは大前提でもちろんのことだが、正之助の脳裏にはもう一つの嫌な考えが巡っていた。

 

 

あの大竹雫が鬼になってしまえば鬼殺隊は()()()()()()()()()()()()。戦闘で随分と蝶屋敷と離れてしまった、鬼を共闘させない為の策がここでまさかの足枷となり焦る気持ちに拍車をかける。

 

 

 

 

「ヒョヒョ、どれだけ足掻こうがもう手遅れだ。大人しくここで殺されれば良いものを」

 

 

 

「うるさいぞ魚、お前はここで俺たちが倒す」

 

「それに本気出してないのが自分だけだと思っているの?おめでたい頭してるね。魚は魚らしく捌いてあげるよ」

 

 

 

 

 

「……糞虫が」

 

 

 

 

森からズドンと衝撃音が響き渡る。屋敷組がこの事実を知るまであと__

 

 

 

 

 

 

 

 

_______

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鉄と鉄が鋭くぶつかり合う音が部屋の中に響き、肌で感じるその衝撃波のような物は戦闘の激しさを感じさせ、背筋をヒヤリとさせる。

屋敷で中庭から一番離れた部屋の中で息を殺して朝が来るか、皆が鬼を倒してくれるかを待ち続ける一人の人物、胡蝶カナエが一つの扉に向かいあって正座をしていた。強力な鬼が近くにいる時特有の圧迫感が充満しカナエの表情を険しくさせる。

 

 

どんな手を使ったかは分からないが、鬼側は蝶屋敷の場所を見つけだした。もうこの屋敷には居られない。

それに鬼が藤の香が焚かれた屋敷に入り込みこれほどの戦闘を繰り広げている。それは純粋に藤の香り程度ではどうもすることができない強さがある鬼、上弦だろう。

 

あの時の、自分に剣士として致命傷を負わせたあの鬼よりも圧迫感を感じる。きっとしのぶ達が戦っているのは上弦の壱なのかもしれないと思考を巡らせる。今日から無一郎と錆兎の柱二人が護衛として来たその日にこれだ。もし二人が今日来てなければと思うとゾッとする。

 

数年も経験してこなかった緊張感で手汗は止まらないし、喉が乾く。不安が心を支配しそうになるのを息を整えて落ち着かせる。もししのぶ達がやられる事があれば最後の砦は自分だと言い聞かせて。

 

すうっと深く息を吸い、吐き出す。一度でも戦闘で刀を振るえば日常生活としても使えなくなってしまう両腕、それがどうした。この命はあの時既に一度死んでいるようなものだ。

 

 

右後ろに振り返れば生命活動に必要最低限の小さな呼吸で眠っている雫がいた。月明かりで照らされ、神秘的にすら感じるその寝顔を見て覚悟を決める。

本来なら明日明朝にここから雫を移動させる予定だった。元からもしもの事態に備えて甲隊士を五人常駐させていたが、場所がバレて来ると分かったのであればここにわざわざその目的を置いておく必要はない。どこかの藤屋敷に匿うつもりだったが、来ると分かったその日に現れるとは、鬼側の行動が早過ぎる。それほど雫を警戒していると言うことだろう。

 

唯一良かったと安堵できることはここで働いてくれていた子達は明日の準備と挨拶も兼ねて先に藤屋敷に行っていた。もしもこの場にいたとしたら上弦の鬼気と緊張感で気絶していたかもしれない。そうなれば自分には守りきれなくなる。

 

 

柱を退いてから、刀を振ることは出来ていない。だが呼吸の常中は途切れさせたことはないし、筋力を衰えさせない方法は刀を振るわなくてもいくらでもあるのだ。

ふと窓の外に見えた月。その傾き具合からすれば朝日が昇るのはあと()()と言ったところだろうか。

 

 

 

「私の命に変えても、貴方は死なせない」

 

 

 

しのぶが悲しむ事になるだろうが、しのぶには鬼に関わらない幸せな人生を歩んでほしい。そのためにこの子は絶対必要だ、決して死なせるわけにはいかない。

 

 

あと何度型を放てば腕が動かなくなるのかなんてどうでも良い。何があっても朝まで決して倒れたりしない、ただそれだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

__ぎしりという音が鼓膜を揺らした。

 

 

 

 

 

 

ドクンと自身の心臓が大きく跳ねる。心で覚悟を決めたと言っても、体は怯えていた。

 

 

 

五人と上弦の壱の戦闘はまだ続いている。そしてこの屋敷で動ける者は自分一人だけ。

 

 

 

ゆっくりと左横に置いてあった日輪刀を手に取り立ち上がる。

 

 

 

重そうな足音と軋み音は徐々に近づいてくる。

 

 

 

鞘から約五年ぶりとなる桃色に染まった刀身を引き抜き、構えた。

 

 

 

__あぁ、しっくりくる。やはり私は、こちら側の人間(人を守る側)だと深く息を吸いながらそう思った。

 

 

 

足音が扉の前で止まった。ガリっと戸に指がかけられる。

 

 

 

戸が徐々に開いていく。願わくば、鬼殺隊の誰かであって欲しいと内心で呟いたが、嫌な予感は当たるのが鬼殺隊の常識だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かわいそうになぁ、どんなに強くても人間だからこんなことになるんだよなぁ。これからあの方のもとに連れてってやるからそこのお前は要らないんだよなぁ」

 

 

 

 

 

「……この子に、手は出させません」

 

 

 

 

上弦の陸の文字を目に持つ上半身半裸の痩せた鬼がそこには立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回「________。」



前半と後半で作風を変えたりしています。原作合流編あたりからの作風に統一しようかと思います。

  • 統一した方が良い
  • 別に気にしない
  • 前半のようなほのぼの要素も欲しい
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