時を操る狐面の少女が鬼殺隊で柱を超えたそうですよ 作:たったかたん
また短いです!次長くなります!!
俺は、自分達の世代が特別なのだと思っていた。
しかしそれほどたいそうなものでは無いと言い、笑うあいつの横顔は気味が悪かったのは三百年以上もたった今でも昨日のことのように思い出せる。何も心配は要らないと言っていたが、俺は心配など端からしていなかった。才覚を持ち、呼吸を極め、鬼をたやすく屠れるほどの強さを持ち、痣を発現させる人間は今の俺たちだけだと慢心し、そう信じていた。
だが今のこいつらはどうだ。
あの方から更に血を頂き、以前の血鬼術が小さく感じてしまう程に威力も速さも規模も一回り強くなった。しかしこいつらはそんな俺を二度にわたって後一歩というところまで追い詰めて見せた。精密に計算された連携、技と技のぶつかりもなく、動きにも一切の迷いもしない連携速度は異常、まさに阿吽の呼吸と言っていい。もし以前の血をもらっていない状態の自分であれば既に頸を切られてもおかしく無かった。
なぜ、これほどまでに鍛えられた剣士が多数存在し、そしてなぜ、痣者がここまで少ないのか疑問でしか無かった。あの大竹雫は頬に円盤状の痣がある事は鷹帯山で見ているが、そのほかの剣士には全くというほどにいない。今目の前に相対している六人の中で俺の血鬼術の最大火力を掻い潜るために感覚が研ぎ澄まされたのか三人に痣が発現した。元々発現前からこいつらの実力は俺達の代の痣者の強さと並んでいた。しかし痣はなくただただ純粋に自分の太刀筋や動きをキメの細かい砥石で徐々に磨かれた刃ように鋭く、一切の無駄のない至高の領域に片足を入れている状態だと言ってもいい。しかし俺の中ではそれはまだ些細な問題でしかない。この者達に一番最初に思った疑問は、”なぜ大竹雫との差に絶望していないのか”。
あれほどの化け物じみた存在をなぜ気味悪く思わないで付いていけるのか。
おかしいだろうと、満身創痍の状態でありながら紙一重の斬撃を躱していく六人組の姿を衝撃で舞っている土埃の隙間から目視しながらそう思った。
数百の鬼を消し飛ばす技、”速い”という表現が合っているのかすら怪しい素早さ。あんなものを見てしまえばひと昔の人間なら妖怪の類いを疑うのは目に見えている。しかしこの者達は大竹雫の異常を受け入れている。もしかすれば奴の存在が鬼に対して絶対的だからこそ守ろうとしているだけだと思ったが、既に放っておけば出血過多で死もあり得るほどの重傷を受けた今もなお、折れない。ただ損得だけでいる人間がする目をしていない。これは大切なものを守ろうとしている者の目だ。
先ほどの俺の血鬼術をまともに食らったのだ。四肢は無事でも朝まで放っとけば命に関わる深傷。動きも一段と落ち、避けるので精一杯と見える。そのままでも勝手に技を受けて死ぬだろうが、これ以上長続きさせても時間の無駄だ。屋敷の方でした戦闘音は妓太郎が上手くやったのだろう。あいつは今の鬼の中で唯一頸を弱点としない、問題はないだろう。それに先ほどから報告に来ている鎹烏を殺すことで鬼殺隊の増援が今どうなっているのか、なぜ来ないのかこの者達には情報を一切与えていない。
……これほど時間が経ってもこないところを見れば、童磨達の妨害は上手くいっているようだ。なら、こちらも仕上げにかからねばなるまい。
目の前で重なる三人を見ながらそう心で呟いた。
【月の呼吸 玖ノ型
「……ぐっ!!」
「っ義勇!!」
「冨岡さん!!」
豪と、上から複雑かつ強力な斬撃が五人に降り注いだ。威力も規模も、この屋敷の中庭を埋め尽くすほどの斬撃が放たれる。すかさず赤羽織の剣士が【凪】で打ち消そうとするが、もはや手遅れであった。その赤羽織の剣士も、打ち消さなかった斬撃からその剣士を救おうとした古傷の男と、無一郎も更に傷を負った。特に赤羽織の傷は既に呼吸で止血するには限界のある物だった。無理に動けば臓物が出てくるだろう。
そしてこの戦況を維持できていたのもこの男三人が鬼殺隊の中でも上位に位置する実力者であったがゆえ、その三人が動けなくなってしまえばもはや勝負はついたも同然だ。
「……終わりだ」
【月の呼吸 捌ノ型
斬撃を受けてまともに動けずに片膝をついている三人にとどめと技を放った。
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まだだ。まだ何か突破口があるはずだと真菰は心の中でそう自分に言い聞かせていた。
一気に形勢が逆転してしまった後に始まった上弦の壱の斬撃は、雨のようにさえ感じるほどの濃密さがあった。まだ本気でなかったのかとそう思ったが、それは自分自身の動きが鈍くなっているせいだと気づくのにそう時間はかからなかった。しかしこうやってまだ避けれているのは義勇、錆兎、無一郎の三人が攻撃の七割を引き受けてくれているからだ。ふと視線を横に向ければ、大量の汗を流しながら自分と同じようにギリギリで躱している正之助としのぶの姿が見えた。正之助は既に上弦の伍からの連戦で既に体力が限界だし、しのぶと自分も小さい体ゆえに他の人よりも出血による消耗が激しく、もし接近できたとしても頸を切ったりする力があるかと言われれば、怪しい。
もちろん心はまだ折れておらず、倒すことを最優先にしているが先の一瞬で均衡が崩れた。現実的に考えて倒す事はほぼ不可能だ。今の私たちにできるのは、増援が来るまで持ち堪えることだけ。しかしその増援もいつまで経っても来る気配が無く、何かしらの連絡を持ってきた鎹烏も先ほどから鬼の斬撃によって斬り落とされている。
満身創痍の自分達と、いつ来るかわからない増援、とどめに雫様側に現れた鬼の存在。戦況は、絶望的だった。
しかし絶望はまだ終わらない。
【月の呼吸 玖ノ型
真上から降り注ぐように複雑な斬撃が襲ってきたが、まだこちら側は避けられた。問題は、錆兎達の三人であった。
「っ!!」
先にも言った通り、攻撃の七割はあの三人が引き受けてくれていた。しかも今の攻撃は三人が交差するその瞬間を狙った物だった。最初の攻防でもよくあった場面だった。上弦の壱は先読みのように避けきることが難しい瞬間を狙って技を放ってくるのだ。しかし今の私たちにはその攻撃は十分すぎるほどに命を刈り取れる物であった。避けようにも近くに味方という障害物、鈍くなった自分達の体では、それは躱せるものでは無かった。
咄嗟に義勇が【凪】を放ち相殺にかかるが、その技にも以前のようなキレはなかった。
当然の如く複数の斬撃が義勇の体を切り刻んだ。その義勇を庇おうとした錆兎と無一郎も同様に。
片膝をつく三人に向かって鬼は更に長刀を振り上げる。
【月の呼吸 捌ノ型
三人を確実に仕留める一つの巨大な斬撃が放たれた。
体が動いたのは無意識だった。
まだここまでの速さで動けたのかと驚くほどに瞬きの間も無い瞬間に三人の目の前に飛び出して、三人に振り返った。
自分を見る三人と目があった。三人の顔には驚愕、絶望、怒り。様々な感情が蠢いていた。
錆兎が驚愕した表情で、こちらへと手を伸ばした。
傷を抑えた義勇が絶望した顔で自分を見ていた。
無一郎が何をしているのかという怒りの表情で、こちらへと手を伸ばしていた。
しかしその手は届く距離にあらず、空を切った。
最後くらい、私らしく笑顔でいようと、そう思った。
「……ごめんね?」
次回、主人公話。
なぜ起きれたのか、雫の体はどうなっているのかの話になります。
前半と後半で作風を変えたりしています。原作合流編あたりからの作風に統一しようかと思います。
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統一した方が良い
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別に気にしない
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前半のようなほのぼの要素も欲しい