時を操る狐面の少女が鬼殺隊で柱を超えたそうですよ   作:たったかたん

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報告

 

 

「大竹雫という子の実力を君の目で見極めてほしいんだ」

 

 

大竹雫。

その名を知ったのはお館様に呼び出され、その人物の見極めをお願いされた時だった。

お館様はいつもの優しい声でそう言ったが、初めて聞く名前であまり話しが見えて来ず、疑問が浮かぶ。

 

 

「…その隊士はそれほど重要な人物なのでしょうか?」

 

少しの間微笑むと詳細を話してくれた。

 

「彼女は今回の最終選別から少し目立っていたんだけど、初任務で下弦の陸を討ち取った、これまでにない逸材なんだ」

 

「……狐面の隊士が討ち取ったという話は聞いておりました。ですが、初任務で、となりますと…」

 

話は変わってくる。初任務で十二鬼月を討ち取る実力を持つとなれば、鬼殺隊にとってその隊士の重要度は極めて高いからだ。

 

「もしかしたらなにかのまぐれかもしれないと思ってね、ここ最近は単体での任務に当てたんだ。

僕の鴉も遠目で見てもらっていたんだけど、いつも報告には鬼の頸がいつの間にか斬られていて、下弦の陸の時も含めて未だに怪我もしてないみたいでね」

 

「それは……」

 

異常、その一言に尽きる話だった

 

どのような者でも鬼殺隊に入って最初の頃は多様な血鬼術に苦戦を強いられ、怪我は避けては通れない。

なんなら一年目は一番生き残る者が少ない。その事は鬼殺隊になったものは皆知っている。

 

「だから、風柱である君の目で確かめて欲しいんだ、彼女の本物の実力を」

 

ここまでの話を聞いて、疑問に思うことはなくなった。

 

 

「必ずやその者の実力、この風柱大谷誠が確かめてまいります」

 

 

 

 

 

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その者と会うことになる町へと四日かけてつくと、甘味処で座っている水色の雫模様の羽織を付けた狐面の少女が見え、話しかけることにした。

 

素性は隠し、階級は下であることにしていい先輩を演じた。しかし特別強者の気配は無く、いたって普通の11の少女という雰囲気を持った雫に少し戸惑いつつも、影で見極めるため、いない鬼の話をして二手に分かれるよう話を進めた。

 

夜になり、雫が町中の広場を歩いているのを建物の上から観察していると地面に急に現れた黒い丸が彼女の背後へと近づいているのが見えた。

 

極力気配を消した黒い丸は血鬼術であると気づき、まずいと思わず飛び出そうとした瞬間、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……は?」

 

意味がわからなかった。血鬼術が彼女に伸びる瞬間までそこに居たのに、瞬きもしてない自分の視界の片隅に立っていたからだ。

 

「あの子は今…なにをしたんだ」

 

そう呟くと同時に戦闘が始まる。

 

疑問に思う気持ちを抑えて見極めるために意識を集中する。

 

水の呼吸を使った流れるような戦闘は鬼殺隊になったばかりとは思えない洗練された素晴らしいものだと言って間違いがなかった。

頭の回転も良く、頸の場所が不明の鬼に対して決して不利になることもない戦闘は続いていく。

 

鬼の本体を捉えた雫の攻撃で姿を現し、追い詰められた鬼は彼女の周りに数十に及ぶ針の攻撃で完全包囲までしてみせた。

 

おそらく柱であっても回避か牽制の一手になるであろうその攻撃を、彼女は最初に見せた急に現れるように見える速さで鬼の背後へと現れた。

 

(やはり追えない)

 

速さでは柱の中でも自信がある自分の目に追えない彼女の速さはありえない、その一言に尽きた。しかしさらに驚愕させられた事が目の前で起こった。

 

(……頸が、落ちた…?)

 

回避するだけならまだ速いなと片付ける事ができた。しかしあの状況で回避しながら頸を斬るとなると、難易度がさらに何段階も跳ね上がる。

いつ斬られたのかさえ分からないその攻撃を最後に鬼の体が塵となって消えていくのを見ながら、大竹雫の重要性を伝える為、どう説明しようかと考えながら雫と合流するためにその場から移動した。

 

 

 

 

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丸石が敷き詰められた日本庭園に大谷誠は片膝をついて伏していた。

 

「風柱大谷誠、ただいま戻りました」

 

「ご苦労だったね。柱として忙しい君にわざわざこのような任務をお願いしてしまって、すまない」

 

「いえ、今回の任務は鬼殺隊にとって重要な一件であると認識しております故、お気遣い無用です」

 

「ありがとう、そう言ってもらえると助かるよ」

 

それでと間を置く。

 

「彼女…君の目から大竹雫はどんな子だったのかな?」

 

誠は少し考えつつ発言する。

 

「……率直に言わせてもらいますと、技の練度、判断力といったものは柱と肩を並べる半歩手前といったところでしょうか」

 

それを聞いた少年はそうかと頷こうとすると、しかしと言葉が入る

 

「僕の目でも追うことができない速さは、柱をもはるかに凌駕しています」

 

少年はその言葉に少し驚きつつも、嬉しそうに微笑みが溢れる

 

「……君がそういうのなら、そうなのだろうね。

こうして新たな花が咲き始めるというのは、喜ばしいことだ。

報告ありがとう誠、雷の呼吸がない現柱の中で速さでは右に出る者のいない君の発言はとても大きい。感謝するよ」

 

「ありがたきお言葉、お館様のお望みならばいつでもお任せください。…では次の任務が入ってますので失礼します」

 

 

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そう言った帰り道、誠は考える。

 

もし、大竹雫と手合わせしたら…。

 

どう想像しても、最初の一手で自分が負けるところに行き着く。

 

更に、もし、殺し合いだとするのであれば。

 

自分の首が気づかぬうちに斬られている想像が容易にできてしまう。

 

「……大竹雫…君は一体」

 

その呟きは風に吹かれて消えていった。

 

 

 

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「…誠でさえも捉えることができない速さ…」

 

それは鬼殺隊にとって、あまりにも大きい出来事だった。

柱という鬼殺隊最強の9人を集めた実力は伊達じゃない。

 

しかし今の話を柱から聞けば、重要度は計り知れない。

 

「そろそろ潮時だね」

 

そう呟くと鎹鴉に指示を伝えて飛ばし、お館様と呼ばれた少年はゆっくりとした足取りで屋敷の中へと戻るのだった。

 

 

 

 

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大谷さんとの合同任務を終えた四日後、別の任務を片付けた雫は休息を取るために近くの町へと向かっていた。

 

(眠い、実戦で経験値を稼ごうと思って時の呼吸で頸を斬ることにしてるけど、やっぱり疲れる…)

 

使い慣れていない時の呼吸に早く順応するために自分に課した課題、とどめは必ず時の呼吸でする事。

その跳ね返りが一月経ってもきついままに弱音を心でつぶやいていた。

 

朝日が昇り、まぶしいなぁと口で呟きながら山を下っていると自分の鎹鴉が叫び始めた。

 

「オオタケシズク!オオタケシズク!シキュウウブヤシキテイニムカエ!ウブヤシキテイニムカエ!」

 

「……産屋敷邸?」

 

どこだそれはと思っていると鴉が付いて来いと言わんばかりに飛び立つ。

 

(鎹鴉が言うということは、鬼殺隊関係だろうか)

 

そう思いながら眠い身体に鞭を打って鴉の後を追い走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雫が産屋敷と対面するまで、あと3日

 




実は自分の地方がある災害で停電やら物資がないやら畑は池になってるわで仕事先でも家でも掃除や復旧作業の日々で、お風呂、入りたいなぁって思ってます。

皆さんも自然災害には気をつけて

前半と後半で作風を変えたりしています。原作合流編あたりからの作風に統一しようかと思います。

  • 統一した方が良い
  • 別に気にしない
  • 前半のようなほのぼの要素も欲しい

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