時を操る狐面の少女が鬼殺隊で柱を超えたそうですよ   作:たったかたん

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※風の呼吸が出ます。
ジャンプ読んでなくてまだ知らない、ネタバレは嫌という方はUターン推奨します


誤字報告してくれた方、ありがとうございます。勢いでパパート書いたのといつもウトウトしながら手直ししてるので全く気づかないところばかりで恥ずかしかったです。ドブがあったら頭から突っ込みたいです。



今回は主人公ボコボコ回(そろそろ雫怪我しろよっていう作者の我儘)




産屋敷輝哉の企み

 

 

鎹鴉に産屋敷邸に向かえという指示を受け、2日半かけてついた場所は藤の花を家紋にした屋敷だった。

 

(産屋敷じゃないの?)

 

そう思っていたが、どうやらここ一月以上任務に追われた疲れをとってから向かえとの事だったらしいく、藤の屋敷とやらに一日だけ休息をとることにした。

 

自分を部屋に案内してくれる人になぜ鬼殺隊の隊士を無償で休ませてくれるんですか?と聞くと、昔鬼殺隊に先祖が助けてもらった恩を返しているとの事だったので、良い人たちなんだなぁと心の中で呟いた。

 

半月ぶりに暖かい敷布団で休息をとった次の日、隠の方が訪ねてきた、どうやら産屋敷邸の道は極秘になっているみたいでおんぶされながら向かうらしい。

 

ちなみに目隠しと耳栓もするとこの事でお面を外す事になったんだけど、相手が自分の顔を見るとやはり少し固まってよそよそしく対応が変わるのは、何故なのかと疑問に思いつつおぶられて移動していくのだった。

 

 

 

--------

 

 

 

目隠しと耳栓を外し、お面が返され周りをぐるっと見てみると綺麗な日本庭園が広がっていた

 

(綺麗な庭…)

 

どこを見ても手が行き届いている木々や池などを見てそう心で呟いていると屋敷から声がした。

 

「こんにちは」

 

ん?どなた?そう思い振り返ると髪を肩上まで伸ばした、整った顔の優しそうな同い年ほどの少年が立っていた。

 

「……こんにちは…失礼ですが、どちらさまですか?」

 

 

少年は優しい声色でああ、すまないねと言葉を挟むと、自己紹介をしてくれた。

 

 

「私は産屋敷耀哉。鬼殺隊を作った一族の末裔で、一族の長になるね」

 

(…ん?鬼殺隊を作った一族の末裔?)

 

ということは

 

「もしかして、鬼殺隊の1番上の方、ですか?」

 

「そうなるね」

 

恐る恐る聞くと優しい声でそう答えた

 

うっそー、こんな同い年くらいの男の子が?そんなことあるんですかぁ?なんて心で思いながら片膝をついて姿勢を低くする。

 

「これは失礼しました……と言うことは私を呼んだのは産屋敷様ですか?」

 

「そう、雫とは少し前から話をしてみたいと思っていてね」

 

 

あ、名前、と言うより話?なんの?そう思っていると

 

 

「君には初任務で下弦の陸を倒した実力を少しだけ確認させてもらったんだ。任務、多いと思わなかったかい?」

 

あ、と心で呟いたと思ったら声に出てたらしい。産屋敷が微笑むのを見てお面の中で顔が赤くなる

 

「…確かにこうも連続で来るものなのかと疑問に思っていましたが、私の実力を確かめるためだったんですね」

 

「ああ、それと雫に聞きたいことがあるんだけど、倒した鬼の数は今どのくらいかな?」

 

任務を指示する側で知らないものか?そう疑問に思いつつ答える

 

「……たしか、任務以外に出くわした鬼も合わせると、30くらいでしょうか…?」

 

「雫は、柱になれる条件を知ってるかい?」

 

「すみません、柱自体は存じてますが、そこまでは」

 

「階級が甲であること、鬼を五十体討ち取ること、十二鬼月を討ち取ること、例外として、柱からの推薦がある場合もある」

 

「……何故その話を私に?」

 

なにか、風向きがおかしい、そんな変な予感がする。

 

「君に柱にならないか、そう言う話をしたくて今日は呼んだんだ」

 

なんてこったパンナコッ、じゃない、意味不明すぎて一瞬前世のリアクションが出かけたわ、ていうか私が柱?ないない、まだ入って一月と数日の新人がなれるものじゃないはずだ。

 

それに、私は条件を満たしていない

 

「あの」

 

「何かな?」

 

「私、入ってまだ一月たったばかりの新人ですし、十二鬼月を一体倒しましたがまぐれかもしれませんし、それに甲でもないですし…」

 

入って一月で柱とは、前世の世界で言えば強豪校の何かの部活に新入部員が入って一月で一軍レギュラー上がったというのと同じだろうか、実力組織とは言え、急にそんな話しされると怖い。それとも前世の価値観が残っている自分がおかしいのだろうか?

 

「ああ、そのことなら問題はないよ」

 

「?」

 

「君には風柱の推薦があるんだ」

 

「…え?」

 

(あれ、私そんな人の推薦貰ってるの??)

 

風柱?そんな人に会った覚えもないし、どんな人なのかすら知らない。

 

「で、ですが、私の実力は私が一番存じています。その風柱様の推薦があったとしても、私は心構えと実力共に柱にはふさわしくありません」

 

「そうか、どうしても駄目かい?」

 

「私からは、そうとしか言えません」

 

この雰囲気は柱にならずにすみそうなやつだ、そう思った瞬間

 

「……だそうだよ、誠」

 

「……んえ?」

 

聞き覚えのある名が産屋敷から出てきた。

 

 

--------

 

 

さっきから話を襖の裏側で聞いていれば、あまりに低すぎる自己評価に苦笑いが溢れる。

 

あの洗練された剣技、雫の成長速度であればあと一月もせずに柱に並ぶ。その柱でさえも優に超える素早さという恐ろしい武器を持っている。それ程の才能がありながら何故こうも自信がないのか不思議でならない。

 

(ほんと、何言ってるんだろうかあの子は)

 

そう心で呟くと名を呼ばれる。

どうやらこの為にお呼びされたらしい

 

「お館様は、賢いが狡いですね」

 

そう呟きながら襖を開けると、まだ見たことのない狐の面の中でぽかんとしているであろうこちらを見て固まっている雫の姿が見えた。

 

 

 

「風柱大谷誠、入ります」

 

 

 

--------

 

 

(え?なんの展開これ?)

 

目の前にいるのは、先日合同任務で一緒になった優しい先輩、大谷誠だった。

 

(風柱?そう言ったよね?先日あった時は庚って言ってたよね?あれ?どういうことだろう?)

 

そう混乱していると産屋敷が面白そうに微笑むと「最後の見極めは誠がしてくれたんだよ」と言った

 

自分が分かってるはずなのに理解しようとしない事実を言い放たれて、なんだよそれと心の中でツッコミを入れる

 

「すみません、素性を隠していたのは君に心置きなく鬼を相手してもらう為でして、決して騙そうとしたつもりではなかったんですよ?」

 

混乱していると誠がそう言ってきた。

 

「す、すみません。つまり、最後の見極めとして産屋敷様が大谷さんをこちらに送って、大谷さんは実力を見極めたいから柱であることを隠していたと言うことです?」

 

「そういうことですね」

 

なんのドッキリだと思った。しかし柱にならないかというものはいまだに継続らしく、混乱する心を落ち着けて、すぐ否定に入ることにした。

 

「お、大谷さんが風柱であることは理解しました。その見極めを先日の任務でしていたという事も。ですが、自分はやはり、柱などにはなれません」

 

そういうと産屋敷から爆弾が落とされる

 

「なら、誠と手合わせしてくれないかい?雫の実力を見たくなったんだ」

 

誠もいいかい?そう聞くと大谷さんはもちろんですと答える。

 

いや、私は?私良くないけど……。

 

 

(神さま、夢ならさまして…)

 

 

手合わせの準備をする大谷誠は隠の人から木刀を受け取ると一つをこちらへと投げ渡す。

 

「そんなに緊張せずとも、君なら大丈夫だろう?」

 

(何が大丈夫ですか?なにが?え?急にドッキリさせられてその後柱と手合わせとかなんの罰ゲームですか?)

 

そう心で叫びつつ、抑えながら冷静な声で「実力を見たいだけなんですね?」と聞くと「そうだね」と答えたので心の中で馬鹿野郎と叫んでいると、庭に降りた大谷さんが話しかけてくる。

 

 

「あの時、鬼の攻撃を避けた動き、頸を刎ねた動き、あの実力を今ここで見せてください」

 

 

(………時の呼吸を、使えってことですか…)

 

 

それは、わたしにとって侮辱された気分になるのに充分な言葉だった。

 

時の呼吸を極めてる途中を見られて柱になれと言われるのは、料理を炒めた所を見られて完成すらしてないのに「上手だね、シェフになろうよ!(裏声)」と言われてるくらいイラっとくる。転生特典という自分自身の実力ではない貰い物なのだ。

 

そもそも時の呼吸を使えば手合わせなんて事にすらならない。相手の首に木刀を添えて終わりだ。

 

 

(でも、それだと…)

 

 

それだと実力として明確に捉えられ、ただのチートで認められる偽物の実力者の完成だ。

かといってボロボロになって負けても時の呼吸を見られた以上、手を抜いたと確実にばれる。

 

(…どうしましょう)

 

そう考えていた瞬間、構えていた大谷さんが先に仕掛けてきていた。

 

《風の呼吸 壱ノ型 塵旋風・削ぎ》

 

地面をえぐりながら今まで見てきたどの攻撃よりも鋭く、疾い攻撃だった。

これが風柱、凄まじい。鬼殺隊最上位の柱なのだと全ての感覚が訴えかけてくる。

 

 

 

スゥと息を吸い、上段で構える

 

 

木刀が空気を切り裂きながら迫っているのを見て、技を繰り出す。

 

 

 

《全集中水の呼吸 漆ノ型 雫波紋突き》

 

 

木刀の刃と切っ先がガンと音を発し、衝撃波のようなものが生まれるのをみて驚く。

 

(雫波紋突きの切っ先を止めるなんて…!)

 

自分の実力以上のものを見るのは鱗滝さんを含めてこれが二人目。

 

思わず驚愕していると大谷誠が叫ぶ

 

「なにを驚いているのですか!僕は柱ですよ!」

 

「!!」

 

その瞬間横腹に木刀がめり込んだ。

 

ゔっ!と苦しい声を上げながらも吹き飛ばされつつ受け身を取り、立て直す。

 

「げほっ!」

 

鬼殺隊に入って初めてもろにくらう攻撃がまさかの柱からの一撃とは、なんの冗談だろうか。

 

(木刀だから……時止めが発動しない…)

 

分かっていたことだ。

 

即死性の攻撃にのみ発動するこの力、鱗滝さんとの模擬戦も木刀で発動しなかった。

 

更にこちらへ詰めてきた大谷さんは技を放ってくる。

 

《風の呼吸 陸ノ型 黒風烟嵐》

 

 

下からの切り上げを顔を横に動かすことで躱すと、腹に蹴りを入れられ吹き飛ぶ。

 

更にそこに詰めてくる鋭い連撃をギリギリで回避する

 

《水の呼吸 玖ノ型 水流飛沫》

 

水が流れる様な歩法で躱そうとするが、更に鋭い攻撃がくる。

 

《風の呼吸 弐ノ型 爪々・科戸風》

 

あまりの攻撃の多さに数回木刀が体に当たりつつ、距離を取ると立つのも苦しくなっていた。

 

 

「……はぁ、はぁ」

 

 

思わず片膝を地面につける。強い二撃を食らってお腹が、体のあちこちがズキズキと痛んでくる中、頭の中で考える。

 

少なくとも即死性の攻撃のみに発動する時止めの力は手合わせの中では発動しない。かと言って時の呼吸も使いたくはない。しかしこのままでは負けてしまうし、言われた通りの本気を出してないと処罰があるかもしれない。

 

 

(…どうする?どうしたら)

 

 

そう考えていると、大谷誠が大声で叫んだ

 

「…………っ!なんですか!そのよれよれの剣技は!あの日見た君はあの速さを使わずとも柱に引けを取らない強さでした!それとも僕を馬鹿にしてるんですか!?もしかして君はボロボロに負けて逃げようとしているのですか!?そこまで腰抜けなら許されるとでも?!笑わせないでください!君は柱を超えることができる剣士だ!君は自覚していないのかもしれないが君が実力を誤魔化すことで貴方より弱い剣士たちは次々と死んでいく!なぜ!本気の刀を振らない!なぜ!そこまで自分を蔑む!!もし!………もし、このまま本気を見せなければ、僕は君を軽蔑する…!」

 

 

心の叫びだった。あの穏やかそうな人がこんなこと言うのかと驚くほどの心からの叫び。

 

その叫びを聞いて、目を閉じる。

 

今の自分は全くと言っていいほど手合わせに集中せず、自分の保身ばかりを考えている。

 

情けない。

 

(…失礼になるな、これじゃあ)

 

少なくとも目の前の人は自分の実力を高く買ってくれている。

その後ろに見える産屋敷という人も。

 

(本当、こんな姿みられたら鱗滝さんと病院のみんなに怒られちゃいますね)

 

 

自分が刀を握った理由になった人達が脳裏に浮かぶ。

 

 

(先生…みんな……鱗滝さん、こんな未熟者ですが、高みへと向かいたいと思います)

 

 

そう心で決意し、目を開く。

 

 

「…………大谷さんの言う通りです。私は今の今まで実力をどう隠そうか考えていた腰抜けです。それはその技に無駄な自尊心を持っていたから、まだまだ未完成のこの技を他人に見せたくないと勝手に考え、その我儘を大谷さんに押し付けてしまっていた。ご迷惑をかけてしまって申し訳ありませんでした。

 

……もう、大丈夫です」

 

 

「……やっと、手合わせができそうですね、雫さん」

 

 

「はい」

 

 

スゥと一息吸える間をおいて大谷誠が突っ込んでくる

 

 

《風の呼吸 壱ノ型 塵旋風・削ぎ》

 

 

(もう避けない、もう逃げない、ちゃんとしたお返しをしないと、この人に失礼だ)

 

 

息を吸い、脱力し、刀を下へ向け、集中する。

 

 

恐ろしい速さで振り下ろされる木刀が体に触れる瞬間、息を止める

 

 

《時の呼吸 壱ノ段 瞬き》

 

 

自分を除いた全てのものが欠伸が出るほどのろまな世界で、振り下ろす大谷誠の横に立ち、木刀の刃を首元に添えた。

 

 

 

 

 

 

 

 




そういえば感想欄にランキングからきましたという方がいたのでなんのこっちゃと思ってたのですが、ランキングで上に上がってたんですね。
教えてくれなかったら多分気づいてなかったです。ハーメルン初心者は何が何の機能が把握しきれてません。感想、評価、なんとなーく把握してます。ありがとうございます。

前半と後半で作風を変えたりしています。原作合流編あたりからの作風に統一しようかと思います。

  • 統一した方が良い
  • 別に気にしない
  • 前半のようなほのぼの要素も欲しい

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