生えてた時雨の性事情   作:白魔術師

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遠征から帰還したら休ませましょう。


生えてますか?
いいえ、生えてないです


遠征からの帰還

「あーつーいー!!」

 

 そう叫んだのは、この遠征艦隊の旗艦、白露。振り返れば、その額には大量の汗が滲んでいる。

 

 白露、村雨、五月雨、そして僕、時雨。この艦隊はとある遠征からの帰還中だった。遠征の内容は簡単で、会敵も一切なし。平和に終わって、資源も調達して、現在鎮守府近海。潜んでいるかもしれない潜水艦は怖いけれど、それでも、ここまで何もないと、やはり気は緩みだす。

 

 

「はいはい。白露ちゃん、まだ遠征中です。ちゃんと警戒して」

 

 そんな彼女をなだめるのは、彼女の隣で並走する村雨。村雨自身も汗だくなのに、他者を窘める余裕のある彼女はこの4人の中で一番大人だ。

 

「わかってるよ。でも……うう……暑い、汗気持ち悪い、服ぬぎたいい……。あ、海上なんだから別に脱いでも」

 

「だめですよ?」

 

「痛い痛い! アイアンクローはやめて!」 

 

 白露はもうちょっと大人になったほうがいいんじゃないかな。

 

「私以外、服の色が黒ですもんね……この日差しだと余計に暑そうです」

 

「ああ、五月雨だけ服の色、白だよね……」

 

 さらに言えば袖がない。白い綺麗な脇が丸見えだ。思わず目をそらしてしまう。

 

「? どうかしました、時雨?」

 

「いや、なんでもないよ」

 

「時雨ちゃん、鎮守府ってまだかしら。白露ちゃんが本当に脱ぎそう」

 

「村雨だって本当は脱ぎたいくせに……嘘ですごめんなさい!」

 

「村雨、白露の顔がつぶれちゃいますよ……」

 

「もうすぐだと思うよ、村雨……あ、ほら。見えてきた」

 

 水平線に見えてきたのは鎮守府。僕たち艦娘の本拠地だ。

 

 

「お帰り。皆おつかれさま」

 

 鎮守府港に到着した僕達遠征部隊を出迎えたのは、白い軍服に身を包んだ提督だった。いつもなら執務室に成果を報告に行ってようやく顔を合わせるのに,こんなところで待っているなんて珍しい.

 

「提督がこんなとこにいるなんて珍しいね……さぼり?」

 

 陸に上がりながら、白露がきょとんとした顔で提督に尋ねる。村雨が「直球すぎるでしょ」と呆れたように突っ込んだ。

 

「さぼりじゃないさ。ただの気分転換。執務室にこもりっぱなしだと疲れるんだ。それに、たまには君たちを出迎えてもいいだろ? 遠征結果はどうだった?」

 

「大成功だよ! あと、白露がいっちばーん活躍したよ!」

 

「ははっ。そうかそうか」

 

 誇らしげな白露の頭を提督が、えらいえらいとなでる。なでられている彼女の顔はまさに、若き提督に恋する乙女――ではない。父親、もしくは兄にほめられて嬉しいといった顔だ。最も、提督は白露の家族ではないのだけれど。ふと横をみれば、村雨が白露の事を羨ましそうに見ている.

 

「……村雨もなでられたいの?」

 

「ち、違うわよ」

 

 そうはいっても視線は提督に向いている。いつも大人ぶっている彼女は、白露程素直にはなれないらしい。

 

「私はなでられたいかなー……」

 

 一方、五月雨は遠慮がちにも、本音を口にする。提督はそれを聞き逃さず、間髪入れずに五月雨の頭もわしゃわしゃとなではじめる。

 

 なでられながら気持ちよさそうに目を細めている二人はさながら猫――いや、犬だろうか。どっちだろう。今度夕立と多摩さんをそれぞれ撫でて比較してみよう。

 

 結局提督は執務室に戻ることなく、僕たちが遠征で持ち帰った資源のチェックや、艤装の解除まで付き添っていた。

 ……やはり、さぼりなのでは?

 

 

 ようやく身軽になると、提督は「白露、時雨、村雨、五月雨。君たちの今日の仕事は終わりだ.あとは自由にしていていいぞ」と告げた。

 

「ほんと!? よーしみんな、間宮に行こう!」

 

 唐突な白露の提案に、村雨は「さーんせーい」といい、五月雨も「いいですね」と即答する。しかし、僕時雨はというと。

 

「あれ、時雨はいかないの」

 

「ちょっとお手洗いにね……先行っててよ」

 

「わかった。……時雨も海の上ですませちゃえばいいのに」

 

「よーし間宮行く前にちょっと話そうか?」

 

「白露ちゃん……!」

 

 白露への提督と、赤面した村雨による説教を背に、僕は一人、とある場所へと向かう。

 ドッグの中のトイレの前を通り過ぎて、建物も通り抜けてその裏側へ。ここは鎮守府の敷地でも,ほとんど誰も来ないところだ.

 

 熱された壁に寄りかかる。夏の日差しが熱い。僕は何も言わなかったけれど、本音で言えば汗が気持ち悪くて脱ぎたかった。

 脱ぐ、脱がないで思い出したけれど、そういえば以前、白露と村雨が水着を買いに行こうって言ってたな。きっと露出の高いビキニをたくさん試着しては、あーだこーだと長い買い物をするんだろう……僕も色々と試着させられるのは間違いない。

 嫌だといえばうそになるけれど、でもやっぱり、間違いなく。

 

「絶対疲れる……」

 

 ずりずりと地面にへたりこむ。今日も今日とて、白露の遠慮のない爆弾発言や、そして扇情的な五月雨の白い脇。別にそれくらいで理性は飛ばないけど、それでも抑える理性は必要だ。

 

 僕は白露型駆逐艦、時雨.一般的な駆逐艦の艦娘。ただ、ほかの艦娘よりも被弾率が低かったり、ちょっと運が良い。「時雨」という艦の強運を引き継いだんだろうと、誰かが言っていた。

 

 けれど、もう一つ僕には他の娘と違う点がある。

 

「男に戻りたい……」

 

 それは僕が、元々は男だったということだ。

 

 

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