生えてた時雨の性事情   作:白魔術師

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白露はきっと無垢


時雨の難儀な日常 朝②

 目覚ましの音で、ぱちりと目を覚ます。

 音を止めて時計を見れば、時刻は7時。良い時間だ。先ほどの眠さもしっかり取れている。白露をK.Oした甲斐があった。

 

 そんな彼女はまだ床に伸びている。

 まさかアイアンクローで気絶するとは思わなかった。そしてまだ気絶しているとも思わなかった。村雨には、いくらやられても気絶したことがないのに。

 僕に才能があるのか、村雨の加減の仕方がうまいのか。どっちだろう。

 

 とりあえず、彼女が寝ている位置は、僕がベッドから降りるには邪魔なので起こすことにした。

 

「白露、そろそろ起きて」

 

 ベッドの上から手を伸ばして、揺さぶると彼女はようやく、うめき声をあげながら目を覚ました。

 初めはぼうっとしていたけれど、状況を把握したのか、やがて僕の方に不服そうな顔を向けた。

 

「……時雨、いくらなんでも酷いよ」

 

「……ごめん」

 

 やりすぎたのは認めざるを得ない。酷いのはお互いさまだと思うけれど。

 

「うっ。まだ頭痛い。しかも、変な夢みたし……」

 

「変な夢?」

 

 白露は痛む頭(というか顔)をさすりながら答える。

 

「えっと……あたしが、あたしの前で正座させられて説教される夢。ちゃんとブラはしろとか、もっと警戒心もてとか……他にも長々と……」

 

「白露が自分に説教……」

 

 想像するとシュールな光景だ。

 それに、白露が他人を正座させて説教するというのも、想像がつかない。

 

「そうだ……説教してくるあたしの他に村雨もいたや。大きな……何かの残骸かな? それに座って私たちを見下ろしてた。そして笑いながら……『あんまり無防備だと、いつか時雨に食べられちゃうよ』って言ってた。

……え? 時雨、あたしを食べるの!?」

 

 白露が尻を床につけたまま、一気に後退る。

 

「食べないよ」

 

 本当にどんな夢をみてるんだ。

 

 警戒を解かない白露を引っ張りながら部屋を出て、廊下の洗面所へと向かう。

 朝の洗顔と化粧水は美容において大切だ。それをやるかやらないかで、将来の肌が変わるという。かくいう僕も毎日やっている。たとえ将来男に戻るとしても、損はないだろう。

洗面所にはやはり先客がいた。

 

「おはよう、村雨」

 

「あら。おはよう、時雨ちゃん、白露ちゃん。珍しいね。いつも、もっと早いんじゃない?」

 

「ああ……それは」

 

「……時雨に襲われたから」

 

 なんで白露は爆弾発言ばかりするのだろう。

 ほらみろ。村雨がわざとらしく口に手を当てて驚いている。

 

「そ、そうなんだ……ふふ。ついに大人の階段、登っちゃったのね……」

 

「上ってない。上ってないから」

 

「そんなこと言ってー。白露ちゃん、どっちが誘ったの?」

 

 これ幸いと村雨がいじり始める。悪い笑顔だ。が、当の白露はきょとんとしている。

 

「大人の階段? 何のこと? 時雨にアイアンクローされたんだよ」

 

 一瞬、僕と村雨の間に気まずい沈黙が流れた。

 

「……村雨。白露、わかってないよ」

 

「……そうね」

 

 やっぱり、もうちょっと性知識をつけてもらうべきだろうか。

 

[newpage]

 

 朝の洗顔を終えれば、僕たちは部屋に戻って艦娘の服に着替える。そして、艦娘としての1日が始まる。

 それはすなわち、元男の僕にとっての難儀な日常が幕をあけるということだ。

 

 

「やっぱ、ブラきつい……」後ろにいる白露がつぶやく。

「今度買いにいかないとね」と背を向けたまま返す。

 

 最初の関門は、着替えだ。

 着替えは当然、自分たちの部屋で行う。つまり、白露と一緒に着替える。

 元男の僕は当然、目に入らないように着替えるけれど、これが案外難しい。

 もちろん、最初は背を向けて着替え始める。けれど、何かを取ってなんて言われることは多々あるし、そもそも白露は女性同士で着替えていると思っているのだから、動き回って僕の視界に平気で入ってくる。もちろん半裸で。時には裸で。

 もっとも、視覚上の刺激だけならまだいいのだけれど。

 

 白露のほうに耳を傾けていると、ため息が聞こえた。

 

「なんで大きくなるんだろ。邪魔なだけなのに」

 

「白露。それ、人によっては嫌味になるからね」

 

 まあ、気持ちはわからなくはないけれど。そう思いながら、自分の胸にある、2つの膨らみを見下ろす。

 艦娘――すなわち女性となった僕の体は当然、女性として成長している。胸は白露ほどではないけれど、それでも膨らんでいる。そして、今はブラの下で見えないけれど、胸の先っぽには乳首がぷっくりと膨れている。

 自分の体が女性になっていくことには慣れたけど、激しい運動のたびに胸が揺れることには未だ慣れない。

 

「ねえ、もしかして時雨も大きくなってない?」

 

 自分の胸を見下ろしていたことに気づかれたのか、白露が訪ねてくる。

 

「まさか」

 

 まだ、ちょっときついだけだ。

 

「ほんとかなー」

 

 白露のじとりとした視線を感じる。彼女には背を向けているから、僕の胸は見えないはずだけれど。

 

「ほんとだよ……って、ちょっ!」

 

 突然後ろから抱き着かれる。もちろん、白露だ。さらには、その手をブラの中に入れられてしまう。

 完全に油断した!

僕が危惧していたのはこういう状況だ。男子と違って、女子はスキンシップが圧倒的に多い。なぜかくっつこうとする。そして白露は、特にその傾向が強い。

 

「ほらーやっぱり、時雨も大きくなってるよね?」

 

 白露が変態親父みたいなことを言っているが、僕の脳内はそれどころじゃない。

 白露はまだブラをつけていなかったらしい。僕の背中に、直接白露のおっぱいが当たっている。二つの突起物の感触と、柔らかい脂肪の感触が背中から伝わってくる。

 そして僕の胸は、白露のきれいな手に弄られている。きれいな指が僕の胸の膨らみの上をはい回る。妙に触るのが上手い。

 

「し、白露……やめっ……!」

 

 女性同士なら問題ないのかもしれない。

 けれど、女性の体をしていても、僕の精神は男だ。

 こんなことをされて、理性が保てるはずがない。

 

「ふふ。さっきのアイアンクローの恨み、思い知れ!」

 

 白露にはやめるつもりがない。むしろ、楽しみはじめている。性知識がないがゆえに、こういうことに躊躇いがないからたちが悪い。

 

 あ、やばい。理性が——。

 

「――いい加減にっ……しろ!」

 

 白露の左手を自分の左手で掴む。そのまま体を右にずらし、肘でみぞおちに一発かます。白露のうめき声が聞こえる。だが、それには構わず、すぐさま左手でつかんだままの手を、右手に持ち替える。体を落として、白露の左脇の下から体を抜く。

 僕に艦娘になる道を提示した女性軍人。彼女直伝の痴漢撃退法だ。こうすると手首関節が決まって、相手は激痛で動けなくなる。まさか同室の仲間に使うとは思っていなかったけれど。

 

「痛い痛い! ギブ! ギブ! 時雨、悪かったから!」

 

 効果てきめん。もう涙目になっている。

 さて、どうしてくれようか。嗜虐趣味はないけれど、朝からすでに2つの狼藉、易々と許すわけにはいかない。

 

 あ、そうだ。

 

「ねえ白露。今日、任務終わったら間宮おごってくれるかい?」

 

「ちょ! それはなくない!? っていだだだだ!」

 

「返事、は?」

 

「わかった! わかったからぁ!」

 

 取引成立。今日のおやつはパフェで決まりだ。

 


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