ベルがアークスなのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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つい衝動で書いてしまった。


劇場版
オリオンの矢①


「うは~! ボクは神月祭なんて初めてだけど凄いねぇ~ベル君!」

 

「ええ、そうですね」

 

 遠征を終えて数日が発ち、【ヘスティア・ファミリア】はオラリオでまったりと過ごしていた。

 

 本当ならダンジョンに行ってるところだけど、神様から休息も大事だと言われて今も探索はしていない。と言っても、明日以降には再開するつもりでいる。いつまでも休んでいると身体が鈍ってしまうので。

 

 それはそうと、今日は神様と二人でオラリオのイベントである『神月祭』に参加している。お互い初めて見るお祭りに僕と神様は心を躍らせていた。

 

 この祭りを知ったのは、僕が【ロキ・ファミリア】の遠征中にアナキティさんから教えてくれた。神様達が降臨する前から行われている祝祭の日で、月を神様に見立ててモンスターの魔の手から無事を祈るらしい。聞いてて如何にも冒険者が集まるオラリオの文化だと思った。

 

 それを思い出して、神様に『神月祭』へ行こうと誘ってみた。『久々のベル君とデートだぁぁ~!』と大はしゃぎしたのは言うまでもない。

 

「ベル君、イカ焼き食べよ~!」

 

「か、神様、ちょっと、引っ張らないで下さい……!」

 

 完全にお祭り気分となってる神様が、僕の腕を引っ張って一つの屋台へ連れて行こうとする。

 

 小腹が空いていたので取り敢えずイカ焼き二本を注文した。この後も色々な屋台で食べ歩きツアーをするつもりでいる。

 

 因みにお金に関しては、【ロキ・ファミリア】から報酬を沢山もらっているのでお金には困っていない。とは言え報酬の大半は【ヘスティア・ファミリア】の資金として貯蓄してるので、あまり無駄遣いしないつもりでいる。

 

「そう言えば神様、誘った僕が言うのも今更ですけど……」

 

「ん?」

 

「こういったお祭りとかって、バイト先も稼ぎ時じゃないんですか?」

 

 神様がバイトしているのはジャガ丸くんの屋台だ。目の前にあるイカ焼きの屋台のように、神様のバイト先も当然営業している筈だ。

 

 屋台はお祭りなどのイベントでは一番に稼げる日なので、本当なら神様は祭りを楽しんでいる暇は無い。

 

「いや~、久しぶりにベル君と一緒にお祭り行きたかったから、店長に土下座して休みをもぎ取って来たんだよ」

 

「そ、そうですか……」

 

 神が人間に土下座するって……普通に考えて立場は逆なんだけどなぁ。気にしないでおこう。

 

 まぁ遠征中の間、寂しい思いをしていたとミアハ様が僕にコッソリと教えてくれた。だからその埋め合わせをする為に、今日のお祭りで神様にはめいっぱい楽しんでもらうつもりだ。

 

「じゃあ、今度は向こうにあるたこ焼きでも食べましょうか」

 

「お、良いね~! じゃあ行くぞベル君!」

 

「はい!」

 

 再び腕を引っ張る神様に、僕は言われるがまま付いて行こうとする。

 

 

「さぁさぁお立合い!」

 

 

「「ん?」」

 

 すると、どこかから大きな声が聞こえたので、僕と神様は足を止めて振り向いた。

 

 

「遠き者は音に聞け、近き者は目にも見よ!」

 

 

「この声は……」

 

 叫んでいる人の声の主を知っているのか、神様はそう呟いた。ちょっと気になったのか、声が聞こえる方へ向かう。

 

 僕も一緒に向かうと、そこには他の人達も集まっていた。そして簡易的に作られたステージの中央に男神様と思わしき人が立っている。

 

 

「そして腕に覚えのある冒険者ならば、名乗りをあげろ! さぁ! この槍を引き抜く英雄は誰だぁ!?」

 

 

「なにをやってるんだ、ヘルメスは……?」

 

 まるで僕達を試すように言ってる男神様の演説に、神様が呆れるように言った。

 

「お知り合いで?」

 

「彼はヘルメスで、天界時代では同郷の神だよ。ベル君は知らないと思うけど、以前に【アポロン・ファミリア】との戦争遊戯(ウォーゲーム)を始める前、【ヘスティア・ファミリア(ボクたち)】側に助っ人を提案してくれたんだよ」

 

「へぇ、そうだったんですか」

 

 と言う事は、あの方がいなかったらリューさんが助っ人として参戦してくれなかったって事か。となれば僕からすれば恩神だな。後でお礼を言っておかないと。

 

 僕がそう思っている中、ヘルメス様の演説はまだ続いている。

 

「これは選ばれた者にしか抜けない伝説の『槍』! 手にした者には、貞潔たる女神の祝福が約束だろう! 更に! 抜いた者は、豪華世界観光ツアーにご招待! 既にギルドの許可済だぁ!」

 

『うおおおおおおお!』

 

 予想外の内容に、周囲にいる冒険者達が喜びの雄叫びをあげた。

 

 あの水晶に刺さっている槍を抜いただけで豪華賞品が約束される、か。あんまり疑いたくないけど、何か妙に都合の良い感じがする。

 

 ストラトスさんだったら速攻で食いつくけど、キョクヤ義兄さんだったら胡散臭そうに見るだろうなぁ。ああ言う展開は必ずと言っていい程に裏がある筈だって。

 

「神様はどう思います? あの内容を聞いて」

 

「う~ん、あのヘルメスの事だから怪しいのは確かだね」

 

 僕の問いに神様も同じ事を思っていたみたいで、胡乱げな目で見ていた。けど、すぐにどうでもよさそうに笑顔となる。

 

「でもまぁ、面白そうじゃないか。一回やってみようぜ、ベル君!」

 

「あ、はい」

 

 楽しそうに言ってくる神様に僕は一先ずやる事にした。僕だけでなく、近くにもやろうとする人達もいる。

 

「ねぇねぇ、アタシ達もやってみよう! アイズ!」

 

「うん……いいよ」

 

「あ……」

 

 どこかで聞き覚えのある声がすると思って振り向くと、その先にはティオナさんとアイズさんがいた。

 

 そして向こうがこちらに気付いた瞬間――

 

「アルゴノゥト君だぁぁ~~!!」

 

「どわっ!」

 

「んなぁぁぁ~~!! アマゾネス君だけでなく、ヴァレン何某まで~~!」

 

「ベル……」

 

 ティオナさんは速攻で僕に抱き付いてきた。アイズさんの方は僕達がいる事に少し驚きながらもジッと見ている。

 

「ヘスティア様は久しぶり~」

 

「ああ、久しぶりだね! 取り敢えずベル君から離れるんだ!」

 

 僕に抱き付きながら挨拶をするティオナさんに、神様はそう返しつつも引き剥がそうとした。しかし、無理だった。神様では力強く抱き付いているティオナさんを剥がすのは無理なので。

 

 取り敢えず僕の方でどうにか引き剥がす事に成功するも、神様が彼女を威嚇する。ティオナさんは全く気にしてないのか、今度は僕とアイズさんの腕を引っ張ろうとする。

 

 因みにティオナさんとアイズさんが此処にいるのは『神月祭』に参加している。アイズさんがいるからレフィーヤさんも参加すると思っていたけど、あの人は現在本拠地(ホーム)で自粛中らしい。リヴェリアさん曰く、17階層の件で僕に多大な迷惑を被らせた罰だそうだ。

 

 だから参加出来ないレフィーヤさんの代わりに、ティオナさんがアイズさんと同行して今に至る。僕からすれば気の毒としか言えない。

 

「せっかくだからアルゴノゥト君も一緒にやろう! 行こう、アイズ!」

 

「う、うん……」

 

「ちょ、ティオナさん、そんなに引っ張らなくても僕もやるつもりですから……!」

 

「だからアマゾネス君! 僕のベル君を勝手に連れて行くなぁ~~!」

 

 僕と神様は完全にティオナさんのペースに巻き込まれ、アイズさんも少し困惑気味になりながらも槍を抜くイベントに参加する事となった。




時間軸としては、一応【ロキ・ファミリア】の遠征が終わった後です。

感想お待ちしています。あと、こんなの書いてる暇があるなら本編書けよってツッコミは無しで(;一_一)

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