ベルがアークスなのは間違っているだろうか   作:さすらいの旅人

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【ヘスティア・ファミリア】の休日④

「うわっ、もうこんな時間か。早く本拠地(ホーム)に帰らないと……」

 

 ゴブニュ様から整備依頼をした大剣を受け取り、工房から出て少し歩いた後、空にある光が沈みかけていた。

 

 近くにある設置された大型時計を見ると午後四時を示している。今日の散策は色々とあり過ぎて、結構時間が経っていたようだ。

 

 ニ~三時間経ったら、神様がバイトを終えて戻って来るだろう。それと今日はジャガ丸くんの売れ残りを持ってくると言ってたから、夕飯はジャガ丸くんパーティーをやる事となっている。と言っても、単にジャガ丸くんメインの夕飯だけど。

 

 夕飯の事を考えていたら、お腹が空き始めて来た。オラリオの散策はここまでにして、本拠地(ホーム)へ帰るとしよう。ついでにお風呂に入って身体をさっぱりさせたいし。

 

 歩く進路を本拠地(ホーム)へ向け、帰る場所を間違えそうになるも、無事に戻る事が出来た。すると、門の前に小人族(パルゥム)と思われる金髪の男性が立っている。

 

「フィンさん!?」

 

 予想外にも、その小人族(パルゥム)の男性は【ロキ・ファミリア】団長のフィン・ディムナさんだった。僕が声を荒げながら近づくと、それに気付いたフィンさんが振り向く。

 

「やぁ、ベル。ティオナ達が言った通り、やはり此処が新しい本拠地(ホーム)のようだね」

 

「え、ええ。前の所は壊されましたから引っ越しを……って、そんな事より!」

 

 笑顔で言うフィンさんに僕はつい返答してしまったが、すぐにハッとなって確認する。

 

「どうしてフィンさんがこんな所にいるんですか? まさかこの前の遠征関連で、僕が何か不手際でも起こしましたか?」

 

「いやいや、そんなんじゃないから。……まぁ取り敢えず、場所を変えてもいいかな? ちょっと君に依頼をしたい事があってね」

 

 真面目な顔をしながら言ってくるフィンさん。この人が僕に依頼って……一体何なんだろう?

 

 

 

 

 

「ええ!? ティオナさんとティオネさんが!?」

 

「ああ。身内の恥を晒すようで非常に情けないんだけど、その二人が相当厄介な【ファミリア】に目を付けられてね」

 

 フィンさんを本拠地(ホーム)の応接室に招いた後、一通りの話を聞いた。因みに神様はまだ帰ってないので、今は僕一人だけで対応中だ。

 

 現在、港町(メレン)へ行ってる【ロキ・ファミリア】の女性陣が旅行中に、外部の派閥――【カーリー・ファミリア】と一悶着が起きたらしい。

 

 外部の【ファミリア】については良く知らないけど、そこはアマゾネスの聖地と呼ばれ、嘗てティオナさんとティオネさんが所属していたようだ。そして主神カーリー様が港町(メレン)に訪れて、アマゾネス姉妹にちょっかいを掛けていると。

 

 向こうの挑発に乗ってしまったティオナさん達は、けじめを付ける為にロキ様達の前から姿を消して今も捜索中であると。同時に後ほど、港町(メレン)で【カーリー・ファミリア】と全面戦争をするようだ。

 

「……取り敢えず、そちらの事情は分かりました。ですが、何故僕にそんな話を? 本来でしたら【ファミリア】間の争いに、第三者(よそもの)の僕が口出し出来ない筈なのでは?」

 

「確かにベルの言う通り、これはあくまで【ロキ・ファミリア(ぼくたち)】と【カーリー・ファミリア(むこう)】の争いで、【ヘスティア・ファミリア(きみたち)】は全く無関係だ」

 

 けど、と言ってフィンさんは話を続ける。

 

「今回の相手は非常に厄介な【ファミリア】だから、僕としては万全を期したいんだ。もしかしたらこの争いで、大事な幹部二人(ティオナとティオネ)を失ってしまう可能性があるからね。ベルとしてはどう思うかな? 特にティオナがいなくなった時の事を考えたら」

 

「そ、それは……」

 

 派閥は違えど、僕にとってティオナさんは大事な仲間だと思っている。

 

 一方的に好意を抱かれているとはいえ、この前の遠征では彼女に守られた事があった。だから、いつかその恩に報いる為の事をしようと考えている。

 

 加えて、もしも突然いなくなってしまう事を考えると、とても悲しい気持ちになってしまう。僕としては、あの人の天真爛漫な可愛い笑顔を見るのが好きだ。好きと言っても、異性としてではない事を付け加えておくが。

 

「まぁ、その返答は敢えて聞かないでおくよ。ではここから本題だ。僕達がメレンへ行く際、前回の遠征と同様に君をサポーター並びに治療師(ヒーラー)として雇いたい。勿論これは冒険者依頼(クエスト)だから、報酬も用意するつもりでいる。と言っても、これはあくまで僕個人の依頼だ。報酬に関しては僕のポケットマネーで支払う事になるが、相応の額を用意すると約束する。急な依頼で申し訳ないけど、今は一刻を争う事態だから、この場で即座に諾否をして欲しい」

 

「………………」

 

 フィンさんが【ロキ・ファミリア】団長の顔となって僕にそう依頼してきた。本当だったら、以前の遠征の同行依頼の時みたいに考える時間が欲しい。だけど、それは無理だ。向こうの言う通り、そんな時間は一切無い。

 

 恐らく、この人は僕とティオナさんが友好関係である事を考慮した上で話を持ち掛けたかもしれない。彼女が失いたくない筈だから、必ず受けてくれるだろうと計算して。

 

 遠征に参加して、フィンさんの事は大体理解した。戦術を考えるだけでなく、その場で即座に決める判断力、自分が何をすべきかと一瞬で考える頭脳があるからこそ、【ロキ・ファミリア】と言う巨大派閥を束ねる団長を務めているのだから。

 

 そして万が一の事を考慮した結果、僕と言う戦力を予め確保しておけば誰一人欠ける事無く達成出来るという答えを出したに違いない。出なければ、今頃この人が僕に会いに来ないと思う。

 

 さて、どうすべきか。本当は神様と相談したいところだけど、未だバイトが終わらずに帰って来てない。だからここは僕一人で決断するしかない。

 

 他所の【ファミリア】である僕としては断るべきだろう。いくら報酬を貰える冒険者依頼(クエスト)だからといって、安易に受けてしまえば色々と面倒な事になる。かと言ってフィンさんの言う通り、もしティオナさん達が失う事になれば……僕は自分を許せなくなってしまう。助ける力があった筈だったのに、と。

 

 なので神様には非常に申し訳ないけど――

 

「分かりました、お引き受けします。但し、後でちゃんとフィンさんから神様に詳細を説明して下さい。それと今回は急な冒険者依頼(クエスト)ですから、報酬もそれなりに弾んでもらわなければ割に合いませんので」

 

「勿論だ。君が了承してくれれば、僕が責任を持って対応する他、君達が満足する報酬も必ず用意する」

 

 緊急の冒険者依頼(クエスト)を受ける事にした。

 

 返答を聞いたフィンさんは満面の笑みを見せ、手続きや後処理については全て自分に任せて欲しいと力強く言ってくる。

 

 だけど、僕としては何点か確認したい事もあった。

 

「ところで、引き受けるのは良いんですが、僕がオラリオの外に出たら不味いんじゃないですか? メレンへ行ける手筈を整えてる【ロキ・ファミリア(そちら)】と違って、僕の場合は先ずギルドに申請しなければならないんですが」

 

 オラリオ、と言うよりギルドは第一級冒険者を始めとした都市戦力流出をさせないようにしている。もしも他国の【ファミリア】に改宗(コンバージョン)すれば、非常に厄介な事となるとギルドは恐れている。だからオラリオで有名な【ファミリア】が外出するとなれば、許可を得る為の煩雑な手続きが必要となる。場合によって長い時は数日の時間を要する事もある、と言う事を(エイナさん講師で)ギルドの講習で学んだ。

 

 それに加えて、僕は先日『Lv.3』にランクアップしているから、オラリオから出るのに当然手続きが必要となる。

 

 以前に【ミアハ・ファミリア】の冒険者依頼(クエスト)を受けた際にオラリオの外へ出たが、その時は僕が『Lv.2』にランクアップしたばかりと言う事もあって、そこまでの時間は要さなかった。けれど『Lv.3』となれば話は別で、外出許可の手続きを終えるのは最低でも一日以上は掛かる。

 

 不安そうに問う僕に、フィンさんが問題無いように答えようとする。

 

「ああ、それに関しては問題無いよ。既にアキがギルドに『魔法の手紙』を渡している筈だからね」

 

「『魔法の手紙』?」

 

 鸚鵡返しをしながら首を傾げる僕だが、フィンさんは気にしないように立ち上がる。

 

「けれど、アレに君の事は一切書かれてないから、内容を付け足す必要がある。だからベル、今すぐギルドへ行くよ」

 

「ええっ!? い、今からですか!?」

 

 僕がオラリオを出る為に『魔法の手紙』の内容を付け足すって……もしや、ギルドに何かしらの脅迫内容が書かれているんじゃ。

 

 あそこまで自信持って答えるから、フィンさんは絶対通ると確信しているんだろう。

 

「さっき言っただろう? 今は一刻を争う事態だって。早く済ませないとティオナ達が危ない」

 

「……そ、そうでしたね」

 

 確かに今は急いでいる状態だから、すぐに行かないとダメだ。僕と言う予定外の冒険者が急遽参加する為、ギルドに行って手っ取り早く許可を貰わなければならない。

 

 一先ずフィンさんの言う通りにするが、どうしてもやっておかなければならない事がある。

 

「けどその前に、せめて置き手紙ぐらいは書かせてもらえませんか? もし神様が何も知らずに帰って来て、僕がいないと分かった途端に大慌てすると思いますから」

 

「ああ、それは確かに」

 

 必要最低限の事をしておきたい事を言うと、フィンさんは了承してくれた。

 

 そして僕は用意したメモ用紙を用意して簡潔に書いた後、本拠地(ホーム)を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

「たっだいまベルく~~ん! さあ今日は約束通りジャガ丸くんパーティーを……あれ?」

 

 本拠地(ホーム)に戻って多くの売れ残り(ジャガ丸くん)を持ってきたヘスティアだったが、ベルの部屋には誰もいなかった。

 

 リビングにいなかったからてっきり自室にいるのかと思って直行するも、結局はいなかったので肩透かしを食らってしまう。

 

「おかしいな。もうベル君は戻ってきている筈なんだけど……ん?」

 

 まだ散策をしているのかと考えながら、ヘスティアは再びリビングへ戻った。

 

 取り敢えず持ってきたジャガ丸くんをテーブルの上に置くと、メモ用紙らしきものを発見する。

 

 メモを手にしたヘスティアは、書かれている内容を口に出して読み始める。

 

「『神様、【ロキ・ファミリア】から急な冒険者依頼(クエスト)が入ったので、本拠地(ホーム)をあけさせてください』……は?」

 

 途中で一瞬止まってしまうヘスティアだったが、気を取り直して再び読む。

 

「『帰って来るのは明日になるかもしれませんが、心配しないで下さい。行き先については、【ロキ・ファミリア】の団長フィン・ディムナさんからの強い要望により帰って来てから説明します。決して後ろめたいことではありません。それでは、行ってきます』」

 

 読みながらどんどん不機嫌になるも、今度は追伸の部分に目を通す。

 

「『追伸:冒険者依頼(クエスト)が終わったら、お土産を買ってきます。どんなものかは楽しみに待っていてください』」

 

 メモ用紙に書かれている内容を全て読み終えたヘスティア。

 

 そして――

 

「ロキィィ~~~~~~~~~~~!!! どういう事だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」

 

 一目散に本拠地(ホーム)から出て、【ロキ・ファミリア】の本拠地(ホーム)へ全速力へ向かうのであった。

 

 ヘスティアは全ての元凶は糸目無乳(ロキ)の仕業だと思い込んでいるが、全くの見当違いだ。そのロキですらベルが参加する事を全く知らない。それどころか、港町(メレン)で再び会うなんて予想もせず逆に驚く事になるから。




ベルがロキ・ファミリアと一緒にメレンへ行く事となりました。

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